らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第五十四話 みんなで過ごす、夏の1日 後日談

『ありがとうございました!』

「楽しんでもらえて良かったわ。あと、こちらこそありがとう。大掃除までしてもらっちゃって」

「俺達で使ったんですからそれくらいはやらないと」

「ふふふ・・・特にまさきさんは念入りにお掃除してましたね♪」

「・・・べ、別にみんなと大して変わらないと思うけど・・・」←少し照れてる

 

軽井沢の岩崎さん所有の別荘での生活を終えて、特にトラブルも無く帰ってきた時には既に夕方。

別荘を使わせてもらったお礼を言うためにいったん岩崎さんちによってみんなでお礼を言ったところだ。

主の娘やご近所さんが一緒だったとは言え、中々気軽に使わせてもらえるなんて普通は無いだろう。

だから掃除も念入りにしたし、本当に心を込めてお礼を言ったのだ。

 

「機会があったらまたいつでもいらっしゃいね。赤井君や田村さんにはウチのチェリーがずいぶん懐いてるみたいだし。」

「い、いや、私の場合は懐くというレベルではないんスけど・・・」←ちょっと複雑

「みゆきさんちの目の前だし、機会はいくらでもあるとは思いますがね・・・」←チェリーが足元でお座りをしている

 

ある程度仲の良い後輩とはいえ女の子の家に自分からホイホイ行くほど俺は軽い男じゃないつもりだ。

誘われたら話は別だが。

そんな所で会話も程々にして、それぞれ自宅に帰ることになった。

 

 

 

「それにしても1週間なんて結構あっという間だったわね~」

「そうですね。まぁ色んな意味で忘れられない1週間になりましたよ」

「へ~・・・まーくん的にはどの辺が忘れられないのかな?」

「参考までに教えて欲しいわね・・・」

「いや、何の参考だよ(汗)」

 

いのりさんの運転する車の中でちょっとした議論を交わすハメになる・・・まぁ、優柔不断な態度ばっかり取ってる俺も悪いんだが。

てかつかささん、そのバルサミコ酢、そこまで大事そうに抱えるような物か?

・・・あ、忘れてたけど一応高級品か。

くじで引いたから実感無いけどね。

ちなみにかがみさんにもすでに金魚を預かってもらってる。

 

「みんなで過ごした時間全部かな・・・勉強はもちろん、トランプで遊んだり川辺で遊んだり森の中を散歩したりお祭りで遊んだり」

 

いろんな意味で忘れられんぞ。

トランプ=罰ゲームで女装。

水遊び=集中砲火もとい砲水。

お祭り=酔っ払った保護者に絡まれる。

一番のサプライズは・・・いや、あえて言うまい。

それに普段滅多に会うことの無い他校生(やまとさん)との交流も出来た。

この1週間で親しくなったのは良いけど、同時にトラブルも発生したんだよなぁ。

 

「そ・れ・に♪ かわいい女の子達と一緒におh「いのりさんそれマジ勘弁して下さい!」・・・お父さん達に話したらどうなるかしらね~?」←ニヤケ顔

「・・・人生・・・オワタ」←思い出して全身真っ赤

「あ、アレは・・・まさきくんは、別に悪くないじゃない」←上に同じ

「はうぅ・・・」←上に同じ

 

経験の差か年期か、それとも年上に弱いのか。

最近弄られる回数が増えてるような気がしてならない自分が少々情けないと思う、帰宅中の車内での会話だった・・・。

 

 

 

それから数日後。

俺はお盆の時期に差し掛かった所で里帰りをした。

帰ったら帰ったで従姉弟達に振り回されたが。

墓参りや家族、親戚への顔出しの意味もあったが別の理由もある。

その理由とは・・・。

 

「今年はみなみちゃんトコの別荘とコミケだけだったな~」

「それでもこなたさんはコミケに行ったんかい」

 

コミケに行かされる事(きょうせいれんこう)を回避するためだ(汗)。

ただでさえ暑いのに相乗効果でさらに数倍にも暑くなるあんな場所になんて連れて行かれたらたまったもんじゃない。

ちなみに現在こなたさんちに柊姉妹、みゆきさんと一緒にお邪魔している。

 

「ふ。苦難の先にある希望を求めて私達は向かったのだよ、まさき!」

「私・・・()?」

「今年はおとーさんも一緒だったから♪」

 

ダメだこの父娘(おやこ)、早く何とかしないと・・・。

 

「丁度ゆーちゃんも実家に帰ってたからある意味タイミングが良かったんだよ~。そうじゃなきゃおとーさん共々丸1日遠出なんてするわけ無いじゃん?」

「その辺の気遣いは良いけど、どのくらい使ってきたのよ?」

「ん~・・・1冊500円とすると・・・」

 

こなたさんは完全に人生楽しんでるからな~。

趣味にはお金に糸目をつけずに結構な額をつぎ込むから・・・そういや去年の年末に行った時も預かった財布の中身に驚いたっけ(汗)。

 

「ざっと4~5万円くらいかな?」

「そ、そんなに使ったの、こなちゃん!?」

「金銭感覚絶対おかしいわよそれ・・・」

「まさきさん、同人誌というのはそんなに高いのですか?」

「物によるとは思うけど・・・そうだね。本の厚さに比べたら少し高いかも」

 

自費出版物は高い、という話は聞いたことがあるけどこなたさん、何をそんなに買い込んだんだ?

あ、彼女の場合、新刊を3冊ずつ買うのが常識だったっけ・・・。

ちなみに限定品なる物もあるがソレはそうじろうさんに任せたとか。

限定品に限らず、そこ(コミケ)ではそんなに高くはなくても市場・・・てかぶっちゃけオークションとかに流れるととんでもない額になる事も珍しくはない。

 

「しっかし随分買い込んだわね~。徹夜とか迷惑行為はしなかったんでしょうね・・・?」

「お父さん同伴とはいえさすがにそれは無いよ~。私はチケット組みだし」

「・・・あんたまさかダミーサークルとかじゃ」

「そこはコネだよ。売り子もやったからね」

 

ちなみにこうさんの所の売り子をやっていたそうだがそれにしても・・・。

 

「かがみさん、何気にソッチ方面も詳しくなってきたよね」

「そんな事無いわよまったく・・・少しはそのエネルギーを私生活に回せば良いのに」

「いやいやかがみ。君はもう立派なオタクだよ」

「ち・が・う! 大体、それを言ったらまさきくんだって分かってるじゃない」

 

まぁ確かに俺も分かる。

実際ソッチの世界に片足を突っ込んでしまったと自覚している身だ。

今更隠そうとは思わない。

が・・・。

 

「かがみさん、あの2人の反応を見てみ?」

「へ?」←振り向く

『・・・・・・?』←2人揃って何の事? と言いたげな顔

「・・・・・・(汗)」←気づいた

「かがみさん、認めたら楽になるよ?」←かがみさんの右肩を叩く

「何気にオタク用語も理解してるモンね~」←かがみさんの左肩を叩く

「な・・・ちがっ! コレはこなたが、あぅっ・・・!」

 

かがみさん、テーブルに突っ伏して撃沈を確認っと。

そこで扉がノックされてゆたかさんが入ってくる。

 

「えっと、冷たい飲み物を持って・・・て、かがみ先輩、どうしたんです?」

「あ~・・・暫らくほっといてあげた方が良いと思うよ」

「・・・はぁ」

 

首をかしげながら氷を入れた麦茶を出してくれる。

クーラーが効いているとはいえ喉は渇く。

礼を言ってありがたく頂いてると・・・。

 

「おに~ちゃん♪」

「ぬぉ?」

 

ゆたかさんがポフッと後からくっ付いてくる。

『お兄ちゃん』と呼ぶのは夏休み中まで、という事にしているためか、別荘に行って俺の事を『お兄ちゃん』と呼び始めた時から、ゆたかさんはよく後から甘えるようにくっついてくる。

よっぽど『兄』に憧れてたのかね?

さすがに正面からは抱きついてはこないが。

 

「それにしてもゆーちゃん、随分と懐いてるね~。下手すりゃきー兄さん以上に」顔は笑ってるけど目が笑ってない

「何だか、見てて微笑ましいですね」←言ってる事とは裏腹に黒いオーラ発生

「じ~・・・」←羨ましそう

 

セリフに微妙なトゲがあると思うのは俺の被害妄想なんでしょうか(汗)。

あとつかささん、頼むから羨ましげに見ないでくれ。

落ち着いて考えると結構恥ずかしいんだから。

とりあえずゆたかさんからは、俺を一種の『憧れ』のように見ている感じがする。

だから、諸々の理由もあって意識せずにすんでいた。

ちなみにこの状況は復活したかがみさんの冷静なツッコミが入るまで続く事になる。

 

 

 

翌日早朝。

俺は日課のために今日も早起き。

昨日聞いた話では、ゆたかさんに付き合う形でこなたさんもランニングをしてるそうだ。

さすがに早朝は無理だったようだが・・・こなたさんが、ね。

この調子だとひょっとしたらみゆきさんもやまとさんも続けてるかも知れない。

そんな事を考えながら外に出る。

 

「おはよ~。」

「おはよ、まーくん♪」

「おはよう、まさきくん」

「おはようございます、先輩」

「それじゃ今日も行きますか・・・ってやまとさん!?」

「気付くの遅っ!?」

 

なぜかいつもいないはずの娘がいた!

さりげなく混じってたから本気で流す所だったぞ(汗)。

 

「1人で走ると何だか物足りなくて。続けるなら、やっぱり誰かとやってた方が楽しいし、継続出来ると思ってここに来たんです」

 

友 達(パートナー)としてこうさんが思い浮かぶが・・・無理だな、彼女には悪いが早起きするイメージがわかない。

 

「・・・ココまでどうやって来たの?」

 

いくらなんでもこんな時間にバスが動いてるかは分からないし、タクシーだと無駄に金がかかる。

 

自 転 車(マウンテンバイク)です。鷲宮(ここ)ならそんなに時間はかからないので」

 

意外と近いらしい永森家。

自転車は一時的に柊家に置いてもらってるらしい。

そういやあの時の事はもう完全にやまとさんの中で解決したのか、普通に喋ってるな、俺と。

とりあえず気を取り直してランニングを開始する。

・・・今の時間、6時前。

何時に起きたんだやまとさん(汗)。

 

「こうと違ってちゃんと早起きくらい出来ますよ。それに、自転車でここまで走る2~30分くらいなら私にとっては準備運動みたいなものです」

「そういうのをこなたにぜひ見習って欲しい所だわ」

「やまとちゃん、すごいね~♪」

「・・・にしてもさりげなく酷い言われようだな、こうさん」

 

俺も似たような事を考えたが・・・本当にこうさんの親友なのか、やまとさん・・・?

もっとも、あっちは社会人になったら・・・場合によっては昼夜逆転生活になってたりして。

ま、生徒会に入るくらいだからそれは無いだろう・・・多分。

そういえばやまとさんがどの辺りに住んでるのかまだ聞いた事無かったっけ。

走りながら聞いて見ると隣町・・・いや、隣市?

確かに自転車でいけない距離ではない。

とりあえず夏休み中こっちに来てランニングに付き合う事も考えてるそうだ。

が、毎朝俺達の時間に付き合わせたらさすがにキツイと思うんだけど(汗)。

てかランニングじゃなくてもサイクリングでいいんじゃ・・・?

あ、そうなると結局やまとさん1人になっちゃうのか。

 

「あんまり無理しないようにね?」

「・・・ありがとうございます」

 

礼を言われながらそっぽ向かれてしまった。

う~ん、女の子って分からない。

 

 

 

その日のバイト帰り。

俺は本屋に行くつもりで町に出たが、たまたま1人でぶらついていたみさおさんに捕まってしまった。

 

「いや~、あやのが兄キと買い物中だから暇でさ~♪」

「いや勉強しようよ、みさおさん。せっかくがんばったんだから」

 

・・・・・・

 

「て、峰岸さんはデート中ってこと? わざわざ遠まわしに言う事かそれ・・・」

「いやだってさ、まじめに言ったらこっぱずかしいじゃん・・・」

 

『デート』って認識かかるまで少し時間かかったぞ。

 

「で、俺は本屋に行くとこだけどみさおさんは?」

「せっかくだからゲーセン行こうぜゲーセン♪」

「少しは受験生としての自覚を持てよ!?」

「たまには遊んだって良いじゃん。こないだの旅行で大体宿題片付いたし」

「全部終わったわけじゃないでしょ・・・」

 

みさおさん、沈黙。

さらに追い討ちをかけておいた方が良いかな?

 

「受験勉強、ちゃんとやってる?」

 

さらに沈黙・・・てか硬直?

このまま話してても時間がもったいないから歩きながら話そう、と思った矢先!

 

「さて、俺はそろそr「いーじゃんいーじゃん遊ぼうぜ! たまには息抜きも必要だってヴぁ!」・・・おのれは子供か(汗)」

 

とりあえず人の往来のド真ん中でみさおさんが暴れ始めたから、本屋での用事が済んだ後に付き合うことにする。

 

で、最寄のゲーセンに入ると早速『戦場の絆』が置いてあるスペースへ。

みさおさんは最近Aランクになったのに対して、同じAランクでも俺には少々ブランクがある。

ちなみに夏休み中ということもあり、俺達と同じくらいの学生や小学生くらいかと思われる人達が順番待ちをしているため、俺達も少し待つ事になった。

 

「今日の戦場はジャングルか~。まさきはどうs「みさちゃん、こんな所で赤井くんと何をやってるのかな・・・?」ってあやの!? 何でココに!」

「お、峰岸さんお久しぶり。」

「お久しぶり赤井くん。お土産アリガトね?」

 

俺がくじで引いたリラッタヌのぬいぐるみは結局『俺が取ったヤツ』として渡したという。

それはさて置き、何だか随分ご機嫌ナナメようだが・・・?

 

「峰岸さんはデートじゃなかったの?」

「うん、お兄さんに急用が・・・って何で赤井くんが知ってるのかな、みさちゃん?」

「え、あ、えっと~・・・」

 

あ、峰岸さん、顔は笑ってるけど額には青筋が・・・(汗)

話を聞いたら峰岸さんの彼氏・・・みさおさんのお兄さん(そういや名前知らないな・・・)が突然急用が出来たとかでこれからの予定もパーに・・・峰岸さん、不憫な子。

そんな時、たまたまゲームセンターに俺達が入って行く所を偶然目撃して追ってみたら案の定、だったらしい。

予定が狂った鬱憤も溜まってるのかもしれない。

という事はこれってもしかして・・・八つ当たり?

いつだったか『キレると怖い』と聞いたような・・・。

何となく嫌な予感がしてきたから早々に退散しよう。

 

「う~ん、待ってたら遅くなりそうだし、やっぱり俺はやめとくよ」

「うん、またね赤井くん。さて、みさちゃん。残りの宿題はどのくらい進んだのかな?」

「ヴぁ!? まさき~!」

 

みさおさんの断末魔が聞こえたような気がするが気のせいだろう、きっと。

さて、夏休みもすでに残り1週間。

宿題は終わらせてるし、受験勉強でもしますかね。

そう思ったとき、俺の携帯電話が鳴り響いた。

発信者は・・・柊家。

出てみたら、みきさんからの夕飯のお誘い。

1回家に寄って本を置いたらすぐに柊家に向かう事にする。

ただ心配なのは、柊一家の面々に弄られないかと、それだけだ。

既に躊躇や戸惑いはかけらも無い、こんな日々が俺の日常。

人間、そう簡単には変われない・・・と思ってたんだけどなぁ。

そう思いながら、俺は柊家に向かい、インターホンを鳴らすのであった。

 

 

 

つづく・・・


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