らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第四十三話 萌えの定義

6月もすでに下旬・・・梅雨の真っ只中なためか、不安定な天気が続いている。

今日も朝から湿っぽい空気が纏わりついている上に霧雨が降ったり止んだり。

そんな中でも授業は滞りなく進行するわけで・・・。

 

「お〜っす。なぁチビッ子、オマエってすっげぇオタクなんだって? 生でホンモノのオタクなんて初めて見たぜ♪」

「なんだかみさきちにそう言われるとさ、ものすっご〜く馬鹿にされてる様な・・・」

「ていうか今更それを言う?」

 

昼休みになって、いつも通りにやってきたC組の面子(さんにん)が来るなり、日下部さんがこなたさんにそんな事を言ってきた。

というか普段の言動を見てれば大体そうだと分かる様な気がするけど。

 

「こなた、教科書ありがと・・・でも落書きはどうかと思うわよ?」

 

かがみさんは珍しく世界史の教科書を忘れたらしく、学校に教科書を置きっぱなしにしていたこなたさんから借りたのは良いが、それが落書きだらけだったそうだ。

タイミング悪く、その落書きだらけの教科書のページを黒井先生に見られたらしい。

 

「いや〜、授業中暇だったから眠気対策でつい♪」

『眠気対策で落書きなんかするな!』

 

スパン!

スパン!

 

「ぶべら!?」

 

久々のダブルツッコミ・・・かがみさんが手にしてたこなたさんの教科書と俺がとっさに手にした机の中のノートがほぼ同時に小気味いい音を上げる。

 

「なぁなぁそれよりチビッ子、私らをオタクで言う『萌えー』で言うとどんな感じなんだ〜?」

「・・・かがみ〜?」←頭をさすりながら珍しく困った顔

()()()はこういうヤツよ」←溜息交じり

 

諦めろ、と言わんばかりにかがみさんが言う。

まぁこういう困った表情のこなたさんもある意味初めて見るかも・・・もう少し静観してみよう♪

で、当人はヤレヤレと溜息をつきながら解説を始める。

 

「かがみは釣り目ツンデレにツインテール、あやのさんはオデコと絶対領域・・・かな?」

「まだ言うか・・・」←半分諦め気味

「絶対・・・領域?」

 

峰岸さんは分からない様だが分かったら・・・てまて、分かる俺ってひょっとしてもう手遅れ?

ちなみにツインテールは本来ツーテールと呼ぶらしいのは余談である。

 

「みさきちはボーイッシュに八重歯、後は・・・馬鹿キャラ?」

「なんだと〜!?」

「否定する要素が見当たらないわね」

「あ〜・・・ガキっぽいってのもあるかも♪」

「・・・あやの〜、ちびっこと柊が〜!」

「よしよし・・・(汗)」

 

日下部さん、撃沈(笑)。

ある程度気が済んだのか、こなたさんはいつもの調子に戻っている。

 

「あと、わたしはチビッ子&貧乳にアホ毛、つかさが天然ドジッ子に妹属性、みゆきさんは同じく天然ドジッ子、巨乳にメガネ、まさきは人当たりのいいギャルゲ主人公ってトコかな?」

「わたしって天然なの?」←自覚無し

「あ、あまり大きいという事は無いと思うのですが・・・」←真っ赤

「誰がギャルゲ主人公か・・・てか俺も入るのかソレ?」

 

今度はこっちに飛び火した!

いや確かに周りに女の子はいっぱいいるけど一応否定しておく。

それ以前に男に対する萌えって・・・ある意味危険な領域だろ。

てかでかい声で『巨乳』とかゆ〜な・・・何人か男子生徒が反応しているぞ。

 

「そういえばこなちゃん、萌えって何?」

「むう・・・改めて聞かれると・・・ねぇ? 好きってことの感情表現には間違いないんだけどね〜」

「分からんまま使ってたんかい」

 

俺は苦笑気味に言ったがまぁ、大体言葉なんてのはそんなモンだろう。

噂とかと一緒でいつから使われた、とか誰から聞いた、なんてのは結構有耶無耶になるもんだ。

 

「『萌える』と言うのは、古典文法で言うヤ行下二段活用の動詞の連用形でして、草木が芽吹くなどの表現で使われる、と言う意味では聞き及んでますが・・・」

「・・・普通に勉強になったよみゆきさん(汗)」

 

そういう意味もあったのか・・・。

古典でそんな単語が出てきたら普通に目に付きそうなもんだが。

 

「あ、それともう1つ前から気になってた事があるんだけど・・・」

「まだ何かあるの、つかさ?」

 

そんな事をどうでも良いと思えてしまうような疑問を、つかささんの口から爆弾発言として投下されることになる!

 

「うん、今の話とは違うんだけどね。犬の躾って言うか、芸の

 

『ちんちん』

 

ってどんな意味なんだろ?」

 

 

 

ピシィッ!!

 

 

 

空間が凍りついた・・・ような音がした。

幻聴だと思いたい・・・つかささんの口から・・・いや、あくまで犬の躾のことだろ落ち着け俺(汗)。

だが爆弾発言には変わりない。

俺達はもとより、クラス中にも聞こえたのか、(見える範囲の)全クラスメートが完全に硬直している。

 

「え、えええええっと! ち、中国から由来する言葉なのは、あの、その、確かなようd☆Ωωγ♯@!!?」←我に返るも激しく動揺中

「みゆきさん、ひとまず落ち着いて・・・」←表面上冷静だが内心は上に同じ

 

一瞬早く我に返ったみゆきさんが解説するが、動揺しているため言葉が支離滅裂になっている・・・ってか動揺しないほうがおかしい。

つかささんってやっぱ天然だよな・・・あ、言った本人も何気に固まってる。

 

「へぇ〜・・・そうなんだ〜」

 

こなたさん、再起動を確認・・・ってなんか嫌な予感がするんですけど(汗)。

 

「今のつかさの発言を聞いてまさきの(自主規制)を想像した人挙手〜」

「て、うぉい!?」

 

こなたさんの追い討ち・・・さすがに誰も手を挙げなかったが皆揃って顔が真っ赤なのは仕方ない・・・のか?

峰岸さんは少し困ったような顔をしていたが。

 

 

 

<放課後:教室>

 

 

 

「はぁ、梅雨なのに野球が中々中止にならないし、延長の時の録画やり直しがメンドくてさ〜」

 

外はちょっと雲行きが怪しいがこなたさんの調子も晴れてないようだ。

まぁドーム型球場が増えて、本格的に中止になるという話は最近じゃあまり聞かないからなぁ。

異常気象で雨の量も少ないっぽいし。

 

「姉貴も似たようなことして失敗したことがよくあったな〜。今のこなたさんほどじゃないけど」

「まーくんのお姉さんもそ〜なんだ〜」

「何や自分らまだ残ってたんか? 受験生ははよ帰って勉強しぃ」

 

と、ここで黒井先生が登場・・・前にも似たようなことなかったっけ?

まぁいっか。

 

「あ、せんせー。野球の延長嫌だね〜って話ですよ〜」

 

それにしてもこなたさん、完全にダレてるな・・・。

 

「あ〜、延長ね。ま、仕方ないんちゃうか?」

「うっわ、交流戦でパもゴールデンで見れる時期になったからソレですか先生!?」

 

何年か前からセとパの交流戦が行われるようになったため、パのロ○テファンである黒井先生は特に気にしてないどころか、逆に嬉しいようである。

こなたさんはこなたさんで『先生は味方だと思ってたのに!!』と大騒ぎの真っ最中。

ちなみに俺も一緒に残ってるつかささんも野球には興味がないので2人の舌戦を静観している。

俺の場合は、よく見る番組が潰れたら別のチャンネルに回すか、ネットで動画見てるから特に害とは思ってない。

 

「まぁ今だけのお楽しみなんやし、少しは容赦せぇよ」

「アニメはそれっきりですよ。DVDが出てもいくらすると思ってるんですか〜?」

「格闘技だって時間とって特番組んだりするやろ。やってたんやろ、泉?」

「経験者だけど特にそういうのが好きってワケじゃありませんしあんま見てません!」

「アニメやってたまに特番組んでんやん」

「延長とかして後続番組の邪魔はしませよ!」

 

う〜ん、泥沼だな〜。

てか先生が目に見えていらついてきてる。

てことは・・・。

 

「・・・ええぃ、つべこべ言わずに! 受験生ならそんな事言っとらんで、勉・強・せぇ〜い!」

 

メキャ!

 

「ぎゃふん!?・・・うう、最後はやっぱり力技だよ〜」

 

おおう、かなり良い音したなぁ・・・まぁこういうオチになるわな。

こんな感じで不毛な舌戦は黒井先生の拳骨で終了となった・・・。

 

 

 

<下校前:昇降口>

 

 

 

「お、雨降ってきた」

「にゃんと!?」

 

帰り際、天気予報の言う通りに雨が降り始めた。

あまり強い雨ではないが、傘を差した方が良さそうだ。

 

「こなちゃん、傘持ってきてないの?」

「いや〜、前は置き傘してたんだけど、1度持って帰っちゃったらそのまま・・・。てなワケでどっちか貸してもらえないかな?」

「俺は多少濡れてもいいから貸してもいいけど・・・明日ちゃんと返すよ〜に?」

 

ちなみにかがみさんとみゆきさんは用事があるために既に下校済み。

後輩組も、遭遇しない限りは誘って帰るということも無い・・・ついでに言うと、ゆたかさんは体調を崩して今日は休みらしい。

そもそも女の子が雨でずぶ濡れになって帰るって事が分かってる時点で、俺が傘を貸すのはある意味必然だ。

 

「まーくん、風邪ひかない?」

「・・・このくらいの雨なら平気だと思う。」

 

よく言ってせいぜいにわか雨、といったところか。

 

「帰る方面一緒なんだからつかさの傘に入れてもらうとか♪」

「ふぇぇぇぇっ!?」←真っ赤

「あのねぇ・・・」

 

明らかに周囲から誤解されるだろ(汗)。

 

「にしても男子ってあんまり濡れるの気にしないよね。やっぱり女子(わたしら)と違って下着とか透けても平気だから?」

「それもあるけどそういう事を平然と言うのはやめい・・・」

 

周りにいた生徒が一瞬こっち見たぞ。

結局、途中まで一緒だからということでこなたさんとつかささんが同じ傘を使い、こなたさんと別れ際に傘を貸した後は、駅からそんなに遠くないからダッシュで帰ろうと思ったのだが・・・。

 

「なんで雨足が強くなってるかな・・・?」

 

家からはさほど離れてるわけじゃないから駅から家までダッシュすること事態は問題ない。

が、ソレは晴天時や雨が降ってもにわか雨程度の時くらい。

最寄の駅は小さく、売店がない上、近くにコンビニもスーパーもない。

てかコンビニに寄ろうとすると逆に遠回りになってしまう。

ついでに言うと雨の勢いは学校を出た時の倍くらい強くなっている。

・・・傘貸したの、失敗だったかも。

よくよく考えれば、学校の職員室に行けば傘って借りれたんじゃ・・・?

気付いた所で今更だけどね。

何事も上手くいかないのは世の常だ。

そんな訳で覚悟を決めたところで・・・。

 

「え〜っと・・・。まーくんの家、そんなに離れてないし、少しくらいならわたし、一緒に入っても、大丈夫だよ?」

 

本日のつかささんがお送りする爆弾発言パート2。

やべぇ、この表情めっちゃ可愛い・・・じゃないだろ俺!

そういう事を頬を赤く染めながらモジモジと言わんでくれ。

大体、そう言われたら無下に断れない。

・・・あ〜、なんか雨降ってるのに暑くなってきたな(汗)。

 

 

 

「で、2人仲良く相々傘になったってワケね♪」

「あうぅぅぅ〜・・・」←真っ赤

「もう勘弁してください・・・」←涙目

 

たまたま帰宅途中だったまつりさんに遭遇してしまい、散々冷やかされるハメになった。

何でこんな時に遭遇するかなぁ・・・。

今日は昼休みの時といい今といい、恥ずかしい目にあってばっかりのような気がする・・・。

 

後日、そこからかがみさん、こなたさんとゆたかさんから話の内容が脚色されつつ友人全員に伝わり、度々からかいのネタにされるようになったのは別の話。

 

 

 

つづく・・・


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