らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第三話 初訪問、柊家にて

GW最終日。

今日はバイトも休みだし、宿題も消化したしのんびりくつろごうと思っていたのだが・・・。

 

「普通に考えたら絶対無い話だよな・・・いくらなんでも」

 

こんなこともぼやきたくなるのは人それぞれだろう。

話はGW終了2日前の昨夜、かがみさんからの電話を受けるところまで遡る・・・。

 

 

 

「勉強会?」

「うん。宿題の答え合わせも兼ねてどうかなって。アンタも結構勉強できるほうなんでしょ?」

 

俺の場合、成績はトップとまでは行かなくても最低でも100位以内を維持しないと親の制裁(ちと大げさだが)があるので勉強は結構頑張ってる。

 

「俺は別にかまわないけど、何か難しい所あったっけ?」

 

彼女が詰まるような所って特に無いような気がするけど・・・。

かがみさんは結構な努力家のようで、つかささんの面倒を見るために勉強面ではほぼ独力で頑張っていると言う。

ちなみに以前、かがみさんが分からない所をお姉さんに聞いたらまるで役に立たなかったとか(笑)。

 

「っていうより別なところに問題があってね〜。こなたのヤツ、宿題写させろって毎回うるさいのよ。丸写し禁止にするとあたしはつかさに教えてやるので手一杯だしさ。そうなると戦力は多いほうがいいしまさき君なら家がすぐそこだし」

「なるほど(汗)・・・ま、上手く教えられるかは分からないけど俺でよければ手伝うよ」

 

さすがに無下にするわけにも行かないか・・・。

聞いた話じゃこなたさんは基本的に遊んでばっかりらしいし。

明日の集合時間を確認して必要な筆記用具、教科書、ノートを準備しておく。

そして寝る前にあることに気づく。

 

「俺、女子の家に行くのって初めてじゃね?」

 

小さい頃に母親の友達の家に付いていってそこに娘さんがいた、という事はあったがその時は子供だった上に当然親も一緒だっだ。

が、今回は1人で行く上に男1人、女3人・・・。

 

「落ち着け俺・・・家には柊家の面々が当然いるんだからそんなやましいことは・・・いやこなたさんがいるんだ。彼女が何かたくらんで・・・って何悶々としてるんだ俺は? 女の子の家に行くっていったって勉強しに行くんだろうがいやしかし・・・」

 

余計なことを考え出してしまいしばらくの間眠れなかった・・・。

 

 

 

・・・と、こんな感じで微妙に寝不足だったりする。

濃い目のブラックコーヒーを飲んで強制的に頭を起こしたから多分大丈夫だろう。

集合は柊家に10時。

ちなみにかがみさん曰く

 

「こなたは()()に時間通りには来ないわ」

 

とのこと。

約束の時間になった所で柊家に入ることにする。

 

「ごめんくださ〜い」

「は〜い・・・あら? あなたがかがみとつかさのお友達?」

「あ、はい。はじめまして。つかささんのクラスメートの赤井まさきです」

「あらあら男の子がウチに来るなんて今日はお赤飯かしら?」

「いやいやいや、勉強しに来ただけですから!」

 

やっぱり男子が女子の家に来ると家族はそういう認識をするのだろうか?

にしても落ち着いた雰囲気のお姉さんだな。

 

「かがみ〜、つかさ〜。お友達が来たわよ〜」

『は〜い』

 

お姉さんに呼ばれてかがみさんが玄関までやってきた。

 

「いらっしゃいまさき君。今日はワザワザごめんね?」

「まあバイトも休みだから別にかまわないけど」

「今つかさがクッキー焼いてるの。もうすぐ出来るから先上がって」

「2人ともずいぶん張り切ってたものね?」

「ちょっとお母さん!? 変なこと言わないでよ!」

「へ・・・?」

 

今・・・かがみさん、お姉さん(このひと)の事お母さんって言った・・・?

見た目若すぎ・・・(汗)。

 

「まさき君どうかした?」

「いや、世の中不思議がいっぱいだな〜と」

「あらあら♪」

 

俺の呆けた顔を見て柊母がなにやら嬉しそうだ・・・てか考えてることがばれてそう(汗)

かがみさんは何がなんやらという顔をしていたが気を取り直して俺を部屋まで案内してくれたが・・・。

どこからか視線を感じるのはなんでだろう?

 

 

 

<かがみさんの部屋>

 

 

 

「こなたさんまだ来てないけどつかささんが来たら先に始めようか?」

「そうね、あいつはいっつも時間にルーズなんだから・・・」

 

こなたさんの遅刻は何時もの事らしい。

 

「にしても・・・女の子の部屋ってなんか男には分からん独特の雰囲気があるね」

 

所々にぬいぐるみがあったり小説らしきものが結構並んでる・・・かがみさんは読書家かな?

考えてみると姉さんの部屋にもあまり入った覚えは無い。

 

「そういう物なの? じゃあ今度まさき君の家に行ってみようかしら」

 

・・・女の子がそんなことを言うのは彼氏に対してだけではと思うのは俺だけだろうか?

くどいようだが今の所誰ともそういう関係じゃない。

 

「来ても何にも面白いものなんて無いよ? 母さんには男臭いって言われたし」

「男臭いってどんな部屋だ・・・」

 

たまに母さんが掃除やら飯作りを名目に遊びに来る(事前告知無し)。

そのまま東京に住んでる姉さんの所に行くのが定番だ。

ちなみにどんな臭いなのかは俺にも分からん・・・ファ○リーズでも使えと?

 

「まーくんいらっしゃ〜い。クッキー焼けたよ〜♪」

「あ、お邪魔してるよ。サンキュ〜つかささん♪」

 

そこにつかささんが焼きたてのクッキーを持ってきてくれた。

美味しそうな香りが部屋いっぱいに広がる。

 

「どれ、1つ・・・うん、美味しい!」

「今日はお姉ちゃんと一緒に作ったんだよ」

「ちょ! つかさ!? あたしは別にっ!」

 

何故か赤くなってつかささんに文句を言おうとするが

 

「良いじゃん美味いのは確かだし、姉妹仲が良いのも別に悪いことじゃないでしょ?」

「・・・アリガト」

 

赤面してしまった。

何か恥ずかしがること言ったかな?

普通に褒めただけなんだけど・・・。

取り合えずクッキーと一緒に飲み物も来たしやることをやっちゃおうか。

 

「結局こなたさんまだだけど宿題やる?」

「ま、あいつもそのうち来るでしょ」

「そういえばまーくんはどれ位やったの?」

「もう終わってるよ。俺はかがみさんと答え合わせしてから2人の指南役」

「え、そうなの? まーくんって頭良いんだ〜」

「感心してる暇があるならちゃっちゃと始めなさい。分からない所は教えてあげるから」

 

そう言って勉強開始して30分後・・・。

 

「やっほ〜! 遅れてごみんごみん!」

「遅れてきた人の態度じゃないでしょそれ」

「まったく遅いわよ! こっちはもう始めてるんだからあんたも始めないと今日中に終わらないわよ?」

 

遅れてこなたさんがやってきた。

 

「いや〜、いろいろとやることが多くってさ。そんなワケで恒例のやつをおn「ダメ」うわっ即答!?」

 

なんか既視感・・・。

 

「ちゃんと自分でやんないと力にならないでしょ? 休み明けたら中間テストもすぐだし、分からない所はわたしかまさき君が教えるから!」

「あれ、まさきって頭いいの?」

「一応順位は二桁保ってるよ」

「な、なんだって〜!?」

「ほら早く始めないと本当に終わらないよ? つかささんも頑張ってるんだからこなたさんも頑張らないと」

 

なんか失礼なことをネタ混じりに言われた気がするが、気にせず宿題の解答をかがみさんのノートと照らし合わせていった。

 

「私は一夜漬けが得意だから大丈夫! だから見せて♪」

「アンタは少しくらい悩みなさいよ!」

 

こなたさん、一夜漬けはどうかと思うよ?

かがみさんも怒りのリミッターが外れそうだ。

 

「ねぇねぇまーくん。ここはどうするの?」

「ん? ああここは・・・」

 

2人があんなだから俺がつかささんに数学を教えてるんだが・・・隣に来るのは良いけど近い、顔が近いってつかささん!

内心のどきまぎを何とか押さえつつ解き方を教える。

 

「ひょっとしてつかさフラグ、立った?」

「変な事言ってないでさっさと宿題始めてくれ!」

 

こんな感じで午前中が過ぎていく。

なんか途中からかがみさんからじろじろ見られていたような・・・。

それにさっきからまた誰かに見られてるような気がする・・・はて?

 

 

 

<昼食後>

 

 

 

「さ〜て、昼飯食って元気が出たところでちゃっちゃと始めるか」

 

柊家のリビングで昼食をご馳走になった後、少し休憩を挟んで再びかがみさんの部屋に戻ってきた。

 

「まーくん一杯食べてたね♪」

「あんなに食べておなか大丈夫?」

「いや〜、みきさんの料理美味しかったもんだからつい・・・」

 

みきさんの作った昼食は本当に美味しくて、いくらでも箸が進んだためご飯も結構な量食べてしまった・・・ちょっと図々しかったかな?

ちなみに見た目の若さから「おばさん」と呼ぶのはなんとなく気が引けてしまうので名前で呼ばせてもらった。

 

「・・・やっぱりもうちっと休憩しない?」

「アンタはサボりたいだけだろ・・・てかぶっちゃけつかさより進んでないんだからもうちょっとがんばんなさい」

「やれやれ・・・」

 

ちなみにこなたさんの荷物の中に携帯ゲーム機が入っていたのはご愛嬌である。

そしてつかささんとこなたさんに指導すること2時間・・・。

 

「この辺で休憩しようか」

「そうね、さすがにだいぶ進んだし。まったくまさき君がいなかったらどうなってた事か」

「とりあえず何でも無いように言ってるけど内心まさきにありがとうと素直に言えないかがみん萌え♪」

 

突然何言い出すのこなたさん!?

 

「アホかっ!」

 

バキッ!

 

「ひでふ!?」

「まさき君には感謝してるわよ! でも別に変な意味なんて無いんだからね! 勘違いしないでよ!?」

「あ〜もう分かったから・・・」

 

こなたさんの言葉にやたら過剰にかがみさんが反応する。

実際怒られてるようにしか思えないんだが・・・まあ間違ってもゲームみたいな展開にはならないだろうけど。

 

「ん?」

 

ふと見ると部屋の入り口が微妙に開いてる。

よく聞くと誰かがヒソヒソと話をしてるようだが・・・?

 

「とりあえず見た感じ普通の友達っぽいわね・・・かがみが面白い反応してるけど」

「まつり・・・いい加減覗きなんてやめたら?」

「そういう姉さんこそかなり乗り気だったじゃない?」

「別にそんなんじゃないわよ。ただかがみ達が同年代の男の子を呼ぶなんて今まで無かったから少し気になっただけで・・・」

 

キィッ。

 

『あ・・・』

「え〜っと・・・どちら様で、何をやってるんです?」

 

なんとなく怪しい雰囲気をかもし出していたから、気づかれないように無言で入り口を開けてみた。

そこには2人の女性がやっぱり怪しい体勢で、何だか覗き見をしてるような・・・。

ひょっとしてここに来たときから感じてた視線って・・・?

 

「お、お姉ちゃん達!? 何やってのよそんなとこで!」

 

突然の出来事にかがみさんが慌てふためくが、別にやましい事をしてるわけじゃないでしょ。

ちなみにつかささんは事態を飲み込めずキョトンとしてる。

 

「あ、あはは。気にしないで続けてて。どうぞごゆっくり〜!」

「あ、こらまつり! もう・・・お邪魔してごめんね?」

 

そういって2人は下に(まつりと呼ばれた方は逃げるように)降りていった・・・。

事態は把握したものの、さすがに反応に困るぞ。

 

「今の2人はお姉さん・・・? 昼間はいなかった様な気がするけど」

「そうよ。まったくも〜、まつり姉さんはともかくいのり姉さんまで何やってんだか」

 

昼間いなかったのは家の手伝いをしてて昼食時間がずれたとか。

しかし6人家族とは聞いていたけどかがみさんにつかささん、そこに姉が2人・・・親父さんは肩身が狭そうだ・・・。

 

「ウチのお父さんなら涙を流して喜ぶシチュだよね〜♪」

「度々思うんだけどこなたさんの父親って・・・?」

「ん〜? あえて例えるなら・・・犯罪者予備軍?」

「どんな父親だっ!?」

 

娘にここまで言われる父親って(汗)。

 

「相変わらずこなたは自分の父親にも容赦ないな・・・」

「母親は何も言わないのそれ?」

 

普通の母親なら娘がギャルゲーに興味を持っても買わせないってか必ず防ぐと思うが。

 

「ああ、ウチお母さんいないから」

 

・・・・・・。

 

「・・・へ?」 

「私がすごく小さいときに死んじゃったんだ」

 

・・・無言で柊姉妹のほうを見るが2人ともバツの悪い顔をしている。

っていうかさすがのこなたさんでもこんなタチの悪い冗談は言わないだろう。

 

「あ・・・えっとわr「だから家事はバッチリできるよ♪ かがみんと違って」うっわ空気ぶち壊したよこいつ・・・」

「シリアスなのは嫌いだしね☆」

 

GJしながら言うがずいぶんと前向きなヤツである。

 

「こいつはそういうヤツよ・・・それより! 大きなお世話だ!!」

 

ガツンッ!!

 

「あいたぁ!?」

 

このツッコミもお約束だ。

 

「前にこなちゃんちにお泊りに行った時にこなちゃんのお料理食べたけど、とっても美味しかったよ〜♪」

「そのわりには毎日昼飯にチョココロネを頬張ってるようだけど?」

「いや〜、ゲームやらアニメやらで忙しくてさ。毎日夜遅くって♪」

「その情熱をもうちょっと学業に注いでたら今頃こんなことにはならなかったでしょうね・・・」

「それは言わないお約束だよかがみさん・・・さて、そろそろ続きを」

 

とその時、扉がノックされる。

 

「は〜い?」

 

部屋の主のかがみさんが答える。

 

「お姉さん達からの差し入れよん☆」

「頭がスッキリするようにハーブティーを入れてきたわ」

 

再開しようとした時に来たのはさっきの事があったからだろうか?

まぁ宿題をしながらお茶を飲むのも良いだろう。

 

「わぁ、ありがとういのりお姉ちゃん、まつりお姉ちゃん♪」

「ありがとう・・・でもなんか企んでない?」

 

つかささんは微塵も疑ってないがかがみさんはさっきの事もありかなり不信の眼を2人に向けている。

 

「あらあら人の好意を疑っちゃダメよ?」

「そうそう、間違っても2人が男を呼んだことに関心を持ったわけじゃないから♪」

「ってちょっと! なんか誤解を招くような発言しないでよ!」

 

・・・こんな時、当の本人はどんな顔をすればいいんだろう?

 

「笑えばいいと思うよ?」

「っていきなり人の心読まないでよ!?」

「顔に出てたよ〜。こう、どんな顔すればいいんだろう、みたいな?」

 

・・・俺ってそんなに顔に出やすいのか?

 

 

 

<夕方5時:柊家>

 

 

 

結局あの後2人のお姉さんをかがみさんが追い返すことで決着し、何とかこなたさんもつかささんも宿題を終わらせることができた。

で、こなたさんは「アニメが始まる〜!!」と絶叫しながら自転車に乗り、猛スピードで帰っていった。

この時間帯に絶叫したら近所迷惑だっての。

 

「え〜っと・・・それじゃあお邪魔しました」

 

玄関先でなぜか4姉妹そろってお見送りしてくれた・・・俺、そんなに何か気になるようなことをしただろうか?

逆に恐縮してしまう。

 

「近所ならいつでも遊びに来なよ」

「まつり! あんまりまさき君を困らせないの」

「そうよまったく・・・また明日ね?」

「宿題教えてくれてありがとう。またね〜♪」

「はは、ありがとうございます。それじゃ2人ともまた明日!」

 

軽く手を上げて俺はきびすを返した。

なんか長かったけど・・・それでも楽しい勉強会だったな。

こういう日もたまには悪くない。

ただ・・・。

 

「そのうち男子から闇撃ちされそうな気がする・・・」

 

女の子の家に勉強目的とは言え招待されたのだ。

しかも俺以外は全員女子・・・こなたさんじゃなくともこれなんてギャルゲ? と言いたくなる。

クラスメートあたりにばれたらと思うと・・・いや、あまり考えないようにしよう。

とりあえずいろんな意味でこれからの学園生活は退屈しないんだろうなぁと思いつつ帰路についた。

 

 

ちなみにその後の中間テストの結果・・・

 

 

「みゆきさんって本当に頭いいね?」(平均80点半ばくらい)

「いえ、たまたまですよ」(学年トップ5入り)

「はぅぅ・・・」(平均約50点、一部赤点ギリギリ)

 

みゆきさんはやっぱりトップクラス。

つかささんは・・・ドンマイ!

君はきっとやればできる子だ!

 

だが・・・。

 

「おかげさまでバッチリ♪」(平均70点前後、最高点89点)

「あんたの結果だけは納得いかねぇ!!」(平均90点ちょい)

 

俺もかがみさんに同意見だという事はここだけの話である。

 

 

 

つづく・・・


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