<4月の朝:通学路>
「春・・・新しい何かが始まりそう・・・そんな予感をさせるような季節。新しい出会いと少しの不安。そして大きな期待! まさに恋する5秒前!・・・てさわやかなイメージがあるけどさ。実際知らない人と1から始めなきゃならないからなんか欝だよね」
「今日は朝から絶好調だねこなちゃん(汗)」
「小早川さんは、ああいう風にならないようにね?」
「あ、あはは・・・(汗)」
「私はもう慣れたわよ・・・」
冒頭から失礼。
4月に入り、俺達は3年生に進級し、小早川さんたちが無事に入学してから数日。
こなたさんも小早川さんにあまり負担をかけないように、早めに登校するようになったり、弁当作ったりと言うのはある意味ビックリなんだがホントの話である。
小早川さんはみにまむなテンポで隣をてってって〜と歩いており、それを見てるとなんか癒されるというか・・・まぁそれはさて置き。
「かがみさん・・・実はまだ気にしてるとか?」
「だ〜か〜ら〜! いつもの事だって言ってるでしょうが!?」
「ようするに寂しいんですね? わかr「くぉ〜なぁ〜たぁ〜?」ってかがみ様おゆるsぐへぇ!?」
今年もかがみさんは隣のクラス(C組)だった。
だが遠いクラスじゃない分まだマシだろう。
もともと双子で同じ学校に通う場合、大抵別のクラスになると言う話を聞いたことがある。
その後、峰岸さんは困ったような笑みを浮かべて、あの日下部さんですら呆れたのはもはやお約束だ。
ちなみに小早川さんは本当に岩崎さんと同じクラスになったという・・・あれか、こうなったらもう運命か?
「オ〜ッス、皆の衆〜♪」
「おはよう。みんな今日も一緒なのね♪」
「おはよう。でもその中で俺1人だけ思いっきり浮いてると思うんだけどね・・・視線も痛いし」
「・・・あれ? ねぇまーくん、しせんってそんなに痛いの?」
つかささん・・・それは天然か、素で言ってるのか?
新1年生(主に男子)から感じる視線・・・他の2、3年生は既に気にしてないようだが1年生は・・・まぁ、多分俺も同じ光景を見たら後から刺したくなるかもしれん状況だからな。
その内慣れるだろう。
しかし・・・いつも思うが俺もすっかり染まっちまったもんだ(汗)。
<陵桜学園:3−B>
「おっはよ」
「お〜っす赤井。今日もやっぱりハーレムしてるか?」
「アホか」
「ぬお!?」
ビシッと一発脳天に入れておく。
去年の修学旅行以来、何かと話す機会が多くなってる白石さんちのみのるくん。
今年は席替えの結果、白石くんは俺の前の席になった。
ついでに言うと俺の隣がこなたさん、その後ろにつかささんとみゆきさんが続く。
ホントに縁があるな〜(汗)。
・・・しかしこなたさん、黒板は見えるのだろうか?
それはさて置き。
去年の修学旅行の後、
当初は思いっきり一撃をお見舞いしたもんだが、今は挨拶代わりに軽い拳骨(もしくは裏拳)で済ませている。
つくづく慣れとは恐ろしい。
「しかし修学旅行以降、何かと縁があるよな、赤井とは」
「縁があるかどうかはともかく、話することは多くなったよね・・・内容は主に
「い、いやいやそこは、あの、ほら、赤井にモテる秘訣を教えてもらおうとだな(滝汗)」
話して分かった事。
コイツはこういうヤツである。
「・・・全員友達だって言ってるのにいつになったら分かるのかねぇ?」
「またまた〜、そんな事言って、実際は心の中で『よっしゃぁ! 俺様超ラッキー!』とk「イッペン・・・シンデミル?」ごめんなさいごめんなさいマジごめんなさい」
某ギャルゲーのパン屋の親父か俺は。
やれやれ・・・。
「すいませんまさきさん、無理をお願いして・・・」
「さっきから何度も言ってるでしょ? このくらいなら気にしないって」
休み時間中、先生経由でみゆきさんが荷物運びを頼まれたと言うことで、席が近くて話しやすい男子な俺に協力要請が来た。
てかこの荷物(大量の紙)って何に使うんだろ・・・印刷用紙?
「結構な量だしみゆきさん1人じゃ相当無理があるぞこれ」
塵も積もれば何とやら、枚数が多けりゃその分かなりの重量になる。
先生は俺が
考え・・・いや、自惚れすぎか。
「あ、まさき先輩、高良先輩!」
「・・・こんにちわ」
そこで遭遇した1年生の凹凸コンビ(身長的な意味で)。
小早川さんと岩崎さんだ。
正式に知り合ってまだ半月も経ってないにも拘らず、相変わらず仲が良い2人である。
「よ。どうしたのこんな所で?」
「何か用事ですか?」
「いえ、ちょっと確認しようと思ってたのをすっかり忘れてて・・・保健室の場所聞こうと思ったんですけど・・・」
「でもその様子では・・・すみません、別の人に聞いてみます」
聖人君子の妹(正確には幼馴染)はやっぱり聖人君子か・・・見た目では分かりにくいのが難点だな。
それにちょっと抜けてるところまでよく似ている。
「ああ、それなら今すぐにでも案内出来ると思うよ?」
「ふふふ、そうですね」
「近いんですか?」
「いや、すぐ分かる場所にあるというか・・・」
「・・・・・・?」
岩崎さんも少ない表情で疑問を投げかけている。
俺とみゆきさんの取った行動はまったく同じでとてもシンプルだった。
俺達は隣の教室(?)のプレートを見上げてみる。
釣られるように後輩2人も同じところを見上げる。
『あ・・・』
後輩2人の声が重なる。
そのプレートにはこう書かれていた。
『保健室』
<3−B:昼休み>
「あはは、そんな事あったんだ〜」
「しっかりしてる様に見えても、どこか抜けてるところがあるんだな、岩崎さんって」
いつものように7人でお昼ご飯。
先ほどの出来事を皆に話したら大爆笑・・・とまでは行かないが一気に明るくなった。
ちなみにあの後、2人とも顔面真っ赤になって慌ててお礼を言ったが、何を言ってるのかさっぱり分からないくらい慌てふためいていたのは俺とみゆきさんの秘密だ。
「パティもゆーちゃんと同じクラスみたいなんだよ」
「パティって・・・ああ、パトリシアさんか」
「加えてみなみちゃんとゆーちゃんが同じクラスになったのってある意味奇跡だよね。」
まぁ13クラスもある時点で、知り合いが同じクラスになるかどうかは完全に1割以下の確率ではあるからな。
「そだね〜。わたしもこなちゃんやゆきちゃん、まーくんにみさちゃんやあやちゃんと知り合えたのも、奇跡かも〜♪」
「・・・そうかもね」
つかささんはいつからか峰岸さんと日下部さんもあだ名で呼ぶようになっていた。
2人とそれくらい親密になったからだろうか?
かがみさんもつかささんと同意見のようだ。
「それを言ったらあたしらなんか5年連続同じクラスだぜ♪」
「そうね・・・みさちゃんと幼馴染になれたのも、あの人と出会えたのも・・・」
出会いはいつも偶然から。
でもそれをいくつも重ねたモノはやがて必然となる。
そこから友達になり、こうやって気軽に喋れるようになるのは、大した事では無くても小さな奇跡のようなものだ。
「私達がこうやって過ごすことが出来るのも、あと1年なんですね」
「奇跡・・・か。ここから窓の外の桜を皆で見られるのも奇跡・・・なのかな?」
そしてみんなの視線は、多少散り始めているものの、校庭で咲き誇る桜へと移る。
こんな光景をみんなといつまでも見ていたい、と思うのは俺のワガママだろうか?
ちゃんと花見もしたのにまだ見ていたいと思うほど、俺たちはしばらくの間、外の桜を静かに見続けていた・・・。
<6時間目:授業中(歴史)>
メキャ!
「ふおぉ・・・」
「まったく懲りんやっちゃな。これで少しは目ぇさましたやろ。仏の顔も3度までやで泉?」
「は、はひ・・・」
黒井先生はそう言ってても、3度目はとっくに超えるくらいの拳骨を与えてる様な気がする。
まぁ涎たらして寝てるんだから気付かないはずは無いわな。
「うぅ〜、まさき〜。どうやったら居眠りしないで授業受けられるの〜? 毎朝ジョキングして疲れてる上にかなりの早起きじゃん?」
眠くならないのかと放課後に聞かれたが・・・。
「こなたさん、『早寝早起きは3文の得』ってことわざを知ってるか?」
「・・・参考までにまさきは何時に寝てるの?」
「遅くても11時」
「早っ!? 人生絶対損してるよそれ! それは私には真似出来ないよ〜!」
人間、6時間眠れれば十分である、と言われている。
それに人生の楽しみ方なんて人の数だけあると思うぞ。
おそらく毎日朝早く起きる努力はしてるんだろうけど、夜早く寝る努力はほとんどしてない・・・てか無理か。
こなたさんだし。
「まーくんはそうなんだ。わたしは9時には寝ちゃうよ〜?」
「わたしは今でこそ11時くらいですが、去年までは10時には寝てましたね」
こなたさん、撃沈を確認。
「お〜い帰ろ〜・・・って今度は何があったのよ・・・?」
ガバッ!
「うぉっ、復活した!?」
「かがみ! かがみは何時に寝てる!?」
「な、何よ急に・・・まぁ、大体日付が変わる前には寝てるわ。毎朝ジョキングもしてるし」
「・・・わたしもやってみようかな、ジョキング」
撃沈したと思ったら突然起き上がって必死になったりまた落ち込んでみたりと元気いっぱいの様な気がするが。
だがそれ以前に・・・。
「睡眠時間の確保のために、やめろとは言わないけどゲームを少しは控えて早めに寝ること。あとは
「そういうことよ。アンタも今年は大学受験あるでしょ? 大学行くことを決めた以上キチンとした日常生活送るようにならなきゃダメじゃない」
「そんな事言ったって・・・深夜アニメが・・・積ゲーが・・・ネトゲが・・・」
「答えは聞いてないからがんばれよ〜」
「うう〜、まさきの鬼〜・・・」
俺とかがみさん、2人がかりで説教されたこなたさんは今度こそ撃沈・・・いや、轟沈するハメになった。
つづく・・・