柊家の庭先。
ただおさんが野球ボールを投げてくる。
俺はそれをミットで受けてただおさんに投げ返す・・・いわゆるキャッチボールというヤツだ。
「夢だったんだよ。息子とこうしてキャッチボールをするのがね」
「父親ってそういうものなんですかね?」
漫画とかでよく見る描写・・・あ、いけね。
そう思いながらボールを投げ返した。
「まさき?」
「っとと・・・そういうモンなの? 父さん」
「・・・ああ。まさきも、父親になったら分かるよ」
まさかこの歳になって叶うとはね、と言うのは
でもやっぱり違和感があるな〜・・・。
今日は12月24日、世間で言うクリスマス・イブの日だ。
柊家でクリスマスを過ごさないか、と提案されたのは2学期がまもなく終わりそうな日の通学中のこと。
しかし俺は柊家の皆にプレゼントを用意するような余裕があるはずも無く、その上バイトで生活費を稼いでいる1人暮らしの学生の身。
柊家一同へのプレゼント等どうしようか悩んでるのを見抜いたんだろうか?
かがみさんがご両親に相談した上で俺に出した提案が今の状況。
つまり・・・。
『柊家の息子(誕生日的に末弟)としてクリスマスを一緒に楽しく過ごすこと』
そんな事で良いのか、そもそも何か違うような気がすると思ったんだけど向こうがそれで良い、と言うのだからそれに甘えることにしたのだ。
しかし女子からの誘いにあっさり乗る俺も俺だよなぁ・・・(汗)。
そんな訳で、ある意味滑稽かも知れないけど柊家の一員として今日の朝から明日の夜まで、柊家で過ごすことになった。
ちなみに寝場所は居間だと思ってたんだけど何故か柊夫妻の寝室に・・・ある意味こっちのほうがよっぽど緊張するんですけど・・・?
<柊家:昼食時>
「まさきには他に誰かとクリスマスを過ごす予定とか無かったのかな〜?」
さっそくからかい口調でまつりさんがそんな事を尋ねて来た。
ちなみに父さんとキャッチボールの時に呼び間違えしてしまったものの、演技力にはそこそこ自信があるほうだ。
「あったら今頃ここにはいないよ、姉さん」
反撃しても良かったけど不毛な争いになると判断して無難に返したが・・・。
「あ〜ら、姉さんって誰のことかしら♪」
姉さんだけじゃ分からないわよ?
と言うまつりさん。
いのりさん他2名・・・つまり4人全員がどうしても名前付きで○○姉さんとかで呼んで欲しいからだろうか?
ちょっと目を妖しく輝かせてるようだが・・・そんな時、何となく悪戯心が湧いてくるのが男の子である♪
「ん〜む、それじゃあ、分かりやすいように・・・」
少し間を置いてみる。
4姉妹は目の輝きが強くなるが・・・。
「上から順に姉壱号、姉弐号、姉参号、姉四号で・・・ってあれ?」
指差しながらそう呼んでいったら、4人揃ってものの見事にひっくり返ってた!
父さんも
「ちょ、ちょっとまさき! いくらなんでもそれは無いでしょう!?」
「お、落ち着きなさいってまつり・・・しかしまさ、あんたって結構侮れないわね」
ヨロヨロと起き上がって抗議の声をあげるまつりさん・・・じゃなくて姉弐号。
ちなみに「まさ」は
ついでに言うと実際にいる俺の二人の姉も、普段は『姉さん』だが2人揃った時やメールでは『姉壱号』『姉弐号』と呼んでいるため、俺としてはそっちで呼んだほうが分かりやすいのだが・・・。
「何なのよそのどっかの決戦兵器の型式番号みたいな呼び方は・・・もうちょっと何とかならないの?」
「そうだよま〜くん・・・」
あ、姉四号が少し拗ねてる。
「いや〜、ちょっとひねりがあったほうが面白いかと・・・」
『そんなことで面白がるな(らないでよ)!』
「え〜、いいアイデアだと『思わないよ(わよ)!』・・・が、がぉ・・・」
4姉妹の全員一致で否決されました・・・。
<午後:市街地のデパート>
俺は父さんに連れられて一緒について来た姉弐号、姉参号とデパート内のホビーショップ(つまりおもちゃ屋)に来ていた。
ちなみに母さんと姉壱号、姉四号は食料品の買い物中だ。
「本当に良いの、父さん・・・冗談のつもりで言ったんだけど(汗)」
「息子のワガママを聞くのも父親の役目だからね」
「男の子っていくつになってもそういうのが好きなんだね〜」
「そういえばまさきの部屋ってロボットがたくさんあったわよね・・・それにしてもお父さんって息子にはずいぶん甘いわね~♪」
父さんがクリスマスプレゼントを買ってくれるというから冗談交じりに超合金シリーズのある物が欲しいといったのだが・・・まさか本当に買ってくれようとは。
父さん、懐広すぎ(滝汗)。
「福澤さんと樋口さんが軽く飛んでっちゃう位の額なんだけど・・・?」
「それくらいの甲斐性はあるから遠慮はいらないよ、まさき」
・・・
「おおぅ、パッケージがでか!」
「へぇ〜・・・合体変形を完全再現、武器を飾る台座付き・・・」
「ほほぅ、台座を使って飛び蹴りのポーズをとれるのか。最近はこういうのがはやってるのかい?」
「いや、まぁ元は俺らが生まれる前のOVAなんだけど・・・」
ゲーム等で再評価され、何らかの形で再び日の目を見る・・・というロボットアニメ作品は結構ある。
模型化、最新技術でプラモデル化、中には数十年ぶりに新しいシリーズをDVDとしてリリースする等々。
クリスマスセールという事で値段はある程度落ちてはいるが、大きさと材質に見合った金額がする。
が、それ以前に・・・。
何でデパートにあるんだよコレ!
発売されたの2年くらい前だぞ!?
「ガン○スター・・・設定上の全長が200メートル!?」
「・・・こいつが出てきたゲームでは反則並みの性能を誇ってたんだよね〜」
ノンスケールとは言えコレだけの大きさのものだから驚いて当然だろう。
「斧に指先からミサイルに・・・シールド? どう見てもマントなんだけど。てか盾になるのこれ?」
「約2万の集中砲火から全長7kmの戦艦を守ったヤツだよそれ。額からビームも出るし。あと両腕両足から大量の棒が出てきて電撃を出したりパーツ差し替えで胸の装甲板をはがして動力部を引きずり出すシーンとかも再現してるし」
「どんな状況でそうなるワケ・・・?」
「私は全長7kmの戦艦ってのが気になるんだけど・・・」
他にも全長70km超の超弩級戦艦とかも登場するがこれ以上説明しようとすると小1時間近くはかかるので割愛しとく。
「他にも色々あるのね・・・知ってるのってある意味有名なこっちのマジ○ガーZくらいなんだけど。」
「かがみやまさきの歳で知ってるだけでも凄いと思うわよソレ・・・まぁ確かに有名だけど。あ、鉄○28号だ。」
「ほほう、ゲッ○ーにザブン○ル・・・懐かしいな。こういうのも最新技術で立体化しているのか・・・さて、おしゃべりはこれくらいにして、お会計を済ませるとしよう。」
あくまで温和な父さん。
今の内は家族でも、クリスマスが終わればただの他人に戻ってしまうのにな・・・。
だから本当に、感謝の気持ちを込めて言おう。
「本当にありがとう、父さん。これ、ずっと大事にする・・・」
「なに、これ位なら気にすることは無いさ。こっちはまさきのお陰でかなった夢もあるからね」
「あ、お父さん実はジ〜ンと来てる?」
「こういうお父さんもある意味新鮮かも♪」
「こ、こらこら、あまり父親をからかうんじゃない」
あはは、父さんの顔が赤くなってる♪
本当に・・・大切にしよう。
10年後も、20年後もずっと・・・。
でもいつまでも感慨深い想いに浸ってる暇も無く。
「あ、姉さん、あれカワイイ♪」
「こっちもいいわよ?これなんかまつりに似合いそうじゃない」
「お姉ちゃん、こんなのどうかな?」
「うん、似合ってるわよつかさ♪ 私は・・・う〜ん」
「これだけあるとやっぱり迷っちゃうわね・・・ただおさん、こんなのどうかしら?」
「ああ、よく似合ってるよ、みき」
男の子定番の荷物持ち。
女性の買い物は長いからなぁ。
母さん達と合流した後、彼女達の分もクリスマスプレゼントを買ってあげてると言う父さん。
一家の大黒柱も大変だ。
姉壱号は社会に出てるからと言う理由で断ったらしいけど、結局親にとって子供は子供のままと言うことらしく、結局押し切られてしまったとか。
俺は先ほど買ってもらったということもあり、母さん達が買ってきた食料やら何やらが入った袋を脇に置いてベンチで待機中。
柊一家のやり取りをぼんやりと眺めていた。
将来、俺も実家の親父や
でも今は・・・この瞬間を、この時を大事にしよう。
「いやしかし、大家族も大変だよネ〜」
「私は少し、羨ましいですね。ああやって仲の良い大家族って憧れます・・・」
「そうだよな〜。あの仲の良さをウチの姉貴達も見習って欲しい・・・ってうえぇぇぇぇ!?」
自然に会話してきたからまったく気付かなかった(汗)。
「いつから居たの、こなたさんにみゆきさん!?」
「ついさっきだよ。まさきがベンチでボ〜っとしてたからその間に♪」
「泉さんとは先に合流してましたので♪」
げ、見られてたのか!?
いや、楽しそうに言うけど二人とも確か・・・。
「こないだ言った私のバイト予定は明日だよ」
「私も、出かけるのは明日の午前中ですから」
ちらっと姉参号と姉四号を見ると姉参号は微笑みながら小さく舌を出し、姉四号は満面の笑みでしてやったり、と言った感じのガッツポーズをとっていた。
他の柊家の皆も知ってたようでこちらを見た後、笑いあっていた。
・・・何も知らなかったのはまたしても俺だけかい。
「しかし何を買ってもら・・・うわぁ、よくこんなおっきいの買ってもらえたね」
「冗談のつもりで言ったのが本当に買って貰っちゃってね・・・」
「すごく・・・大きいですね。やはりロボットなのですか?」
包装してるから中身は解らないだろう。
とは言え、俺の部屋の状況を知ってたらそう思うわな。
「・・・原作じゃそいつ1体で億単位の宇宙怪獣と渡り合ったロボットだよ」
「ど、どんなロボットなんですか!?」
「話すると長くなるからみゆきさんには後で説明してあげるよ。で、まさき。お姉さん達のことを何て呼んでるのカナ? カナ?」
さっきの言葉でこなたさんも解った様だが・・・まぁスパ○ボ貸したことがあるから解るか。
てかこなたさん、アンタもそのネタで来ますか。
「とりあえず姉さん達のことは上から姉壱号、姉弐号、姉参g『だからそれはやめてってば!』おわ!?」
いつの間にかプレゼント選びも終わってたらしく、俺の言葉に反応するや否や4人揃ってダッシュで駆け寄ってきて否定された。
「まさき、さすがにそれは無いよ〜・・・」
「あ、あはは(汗)」
こなたさんは愚かみゆきさんも微妙な反応だった。
ウチの姉貴たちはそれでよかったんだけどなぁ・・・。
ま、人それぞれって事にしておこう。
つづく・・・