<修学旅行2日目:早朝>
「ふぁ・・・」
いつも通りの時間に起きてしまうのはしょうがないだろう、もう生活習慣なんだし。
まだ5時半・・・さすがに出歩くわけにも行かないしどうしたモンか。
ひとまず窓から朝の光景を眺めてみる。
今日も天気が良さそうだ。
太陽が顔を出し始めてかすかに明るくなっているのが何だか幻想的。
「ぐ・・・あう・・・」
「そ、それ、だけは・・・」
「あ、ああ、・・・」
「ひい・・・う、うあぁ・・・」
これで後の寝床で悲痛な寝言さえ聞こえなければ・・・ね(汗)。
どっちみち見つかるだろうと判断した俺は、被害が出る前に黒井先生に通報しといたんだけど・・・一体何したんスか、黒井先生?
朝食の時間は7時半。
はたしてそれまで起きれるのだろうか・・・。
反省してないヤツとか今日もやらかしそうだけど・・・耳栓、買っといた方が良いかな?
「うう・・・はっ! ハァッハァ・・・夢、か・・・あんなコトは・・・もう・・・」
時間は過ぎて7時頃。
そろそろ起こした方がいいかなと思っていたらうなされてた男子のうちの1人が目を覚ましたみたいだ。
「あ、おはよう。皆してうなされてるけど・・・何があったかは聞かないほうがいいのかな・・・?」
「聞くな! 頼むから思い出させないでくれ!!」
「あ、う、うん・・・(汗)」
本当に何されたんだろ・・・。
<移動中:車内>
国宝の約20%、重要文化財の約14%が集まる日本有数の古都、京都府。
今日はそんな観光名所をガイドさんの案内でひたすら回ることになる。
もっともそのガイドさんはさむ〜いギャグでバス内の気温を氷点下まで持ってくというある意味恐ろしい人だが・・・あ、白石君、1人で爆笑してる。
「京都といったら嵐山に平等院鳳凰堂、それから祇園祭りくらいしか思いつかないんだけど?」
「どんだけ知識が偏ってるのこなたさん・・・?」
どれも某マンガのキャラ名に技名その他じゃん。
そういえば極楽鳥の舞はどっから来たんだろ?
「泉さんの仰ってる意味はよくわかりませんが、嵐山は桜や紅葉の名所でして平安時代の貴族の別荘地となって以来、観光名所となった所ですね。嵐山の名前の由来までは分かりませんが・・・」
苦笑交じりにみゆきさんが解説する。
「へ〜、さすがゆきちゃん♪」
「そこまで知ってりゃ十分だと思うけど・・・やっぱりみゆきさんって物知りだね」
「い、いえ、たまたま知ってただけなので・・・(真っ赤)」
たまたまでそこまで知識を取り入れてるみゆきさんって・・・。
何でそこまで詳しいのかツッコミたくなるが、俺も雑学として憶えておこう。
・・・ウチの親父、歴史マニア(酒が入ると歴史語りが更に止まらなくなる)だからみゆきさんと語らせたらどうなるかなぁ?
「むむう・・・じゃあ平等院鳳凰堂は?」
「それは、本尊阿弥陀如来像を安置する中堂、左右の翼廊、中堂背後の尾廊の4棟をあわせたのが『平等院鳳凰堂』と呼ばれていまして、国宝に指定されているんですよ」
詳しいことは長くなるので割愛しますが、とあっさり答えられてこなたさんは既にぐうの音もでないようである。
絶対ウチの親父と歴史で互角に語れるぞ、みゆきさん・・・。
「ちなみに10円玉にもかかれてるよね。平等院鳳凰堂」
「はい。1万円札に書かれてる鳥も、鳳凰堂の屋根に飾られてる鳳凰がモデルなんですよね♪」
コレくらいは一般じょうs「ふぇ、そうだったの?」・・・じゃなかったらしい。
結構有名なんだけどなぁ。
で、あっちこっち回って現在位置は清水寺。
ガイドの案内が終わったあとの自由行動ということもあり、かがみさんや峰岸さん、日下部さんと合流した俺達は境内を回っていた。
「うわ、ここって凄く高いね〜!」
「コレ飛び降りたらぜってー死ぬぜ?」
「でも下は一面木が生い茂ってるから助かるかもしれないよ?」
その場合でも大怪我は避けられんだろ。
「でもさ、漫画じゃ赤ん坊を助けたヒロインが下に落ちて、主人公がナイスキャッチする場面とかもあるよね?」
「いくらなんでも両腕骨折もしく脱臼を免れないような気がすると思うのは俺だけ?」
「同感・・・てかまた漫画の話か?」
こ○亀でそんな話があったような気がする。
「まさきやってみる?」
「絶対NO! んな無謀なこと出来るかい!」
そんな会話の後、くじ引きして運試し。
俺の運勢は末吉・・・『女難の気有り』と書かれてたのは何だか偶然じゃないような気がするんだが。
ちなみに神社の娘が、
「くじ引きの結果なんて参考程度にしかしないわよ。結局は本人の努力次第なんだから」
ときっぱり言い切るのはどうなんだろう・・・?
<清水坂>
清水寺まで続く長い坂道、通称『清水坂』にはたくさんのお土産屋が軒を連ねている。
お土産選びも旅行の楽しみの一つ。
実家に送るのは自宅アパートに帰ってからで良いとして、何かご当地の名産品なんか無いか皆でわいわい騒ぎながら見て回る。
地元での買い物とはまた違った感覚が楽しいんだよね。
「あ、コレかわいいかも」
「へへ〜。かがみんはこういう頭でっかちなキャラがお好き?」
「でも愛嬌あっていいんじゃないかな・・・家族お揃いに買っとこ」
そう言って俺は色違いの物を1つずつ取っていく。
「むむっ? まさきとおそr「じゃあ私も〜♪」「私もお母さんに買っていきます♪」・・・お父さんのお土産に買っていこうかな、わたしも」
少し手を出しにくかっただけで絶対みんな買う気だったなコレ。
「でもどっかでみたような顔だよな〜」
「そうね・・・白いのが一番近いような気がするわ」
日下部さんも峰岸さんも変なところで頭を使ってるな。
そういやニュース番組のとあるコーナーで出てきたあれに似てる様な気が・・・。
「ト○と旅する・・・」
『それだ(よ)!!』
なんとなく思いついたのをボソッと言ってみただけなんだけど(汗)。
自分で言っといてアレだけど、耳が付いてないだけで確かに似ているなコレ。
「ははは、赤井って中々おもしれーやつなんだな〜」
「はっ?」
「柊ちゃんったら昨日今日とバスの中で「峰岸ストップ!!」モゴモゴ」
峰岸さんが何かを言いかけるけどかがみさんが慌ててストップをかけた・・・影で何て言われてるんだ、俺?
「ふ、私が最初にフラグを立てたから自然に溶け込んだのだよみさきち」
「・・・ま、確かに話をするきっかけにはなったかもしれないけど」
考えてみるとこなたさんがきっかけになって柊姉妹やみゆきさんと仲良くなったようなモンだよな。
さすがに平日ほぼ毎日女子と行動するようになるとは思わなかったけど(汗)。
「何か夜食になるようなヤツ無いかな?
「少し・・・少しくらいなら大丈夫・・・毎日ジョキングしてるし・・・」
「みさちゃん・・・柊ちゃんまで(汗)」
隣のクラスの2人はよく食べるようで・・・。
「なぁ赤井・・・」
「ん?」
横から突然声をかけられた。
これで『やらないか』と聞かれたらどうしようかと内心ビビッていたりする・・・んな事あるワケ無いのは分かってるが。
ちなみに今現在、俺は男子便所で用足し中ある。
「さっきの土産物屋で買ってたやつ、金出すから譲ってくれないか?」
「はい?」
「いや〜、自分で買おうにも何か恥ずかしくて♪」
「いや、普通に買えばいいでしょ・・・」
家族にお土産として買っといたんだが・・・ま、合わせていくつか買っといたから別にいいけど。
「サンキュー赤井。あ、これ御代ね。んじゃお先!」
そう言って去ってしまった・・・そういやあいつどこのクラスの人だっけ?
俺の名前知ってるからどっかで会ったことあるんだろうけど・・・記憶に無いや(汗)。
その後、集合時間になったのでバス移動、宿泊するホテルへと向かった。
ちなみにバスは坂の下に止めてあるのだが下に降りきった時・・・。
「この学校は好きですか? 私はとってもt「ネタやってないでさっさと行くよ、こなたさ~ん!」ぶ〜ぶ〜! ノリが悪いよまさき!」
相変わらずネタに走るこなたさんとそこをツッコム俺がいた・・・。
ちなみに不覚にも一瞬かわいいと思ってしまったのは秘密である。
<宿泊ホテル:自室>
「諸君、今宵も
『おお〜!!』
「いや昨夜のことで懲りたんじゃなかったの!?」
食事も入浴も終えて就寝時間を待つだけとなったのだが・・・こいつらは(汗)。
「赤井の周りはいつも女子ばっかだからそんなことが言えるんだ!」
「ちょっとくらい俺達にも良い思いさせてくれよ!」
「昨夜は不覚を取ったが・・・赤井、お前の時代は今日で終わる!」
「どんな時代だ!?」
何か理不尽だ・・・。
そして昨日同じく嬉々として彼らは天国へ(地獄とも言う)向かっていった。
さて、通報通報っと・・・。
「・・・もしもし、黒井先生ですかー?」←ちょっと投げやり
『お、赤井か?・・・昨夜と同じメンツで女湯に向かってってるん?』
「ええ、すいません止められなくて」
『気にすることあらへんよ。しかし昨夜で懲りとらんかったんか・・・まぁええわ。ウチらが始末しとくで♪』
何か楽しそうだな黒井先生・・・取り合えず今日は買っといた耳栓つけて寝よう。
そう思っていたところ・・・。
「やっほうまさき〜。遊びにって・・・あれ?」
「このお部屋、まーくんしかいなかったっけ?」
さすがに本音は言えないが・・・何で皆揃ってくるかな?
「まぁいつ戻ってくるかわかr(ボフッ)・・・またやる気かい、こなたさん他みんなして・・・?」
「いや〜、今回は宣戦布告だけで・・・」
「赤井、話は聞かせてもらった・・・柊のカタキはあたしが取ってやるんだってヴぁ!」
「だから勝手に人を殺すな・・・」
夏休みの時の事話してたんかい。
てかヴぁって何だヴぁって・・・。
「私達はたまに援護するだけですよ♪」
「みさちゃんの応援で・・・ゴメンね赤井君?」
そう思うんなら止めてくれ・・・。
そんな感じで日下部さんとの枕投げという名の一騎撃ち(日下部さんは援護有り)は、就寝時間10分前というタイムリミットを条件に始まった。
で、結果はやっぱり引き分けに終わる。
「くっそ〜・・・赤井、次は絶対、絶対決着つけてやるからな! 絶対だぞ!」
「みさちゃん取り合えず落ち着いて・・・」
峰岸さんが宥めてるが日下部さんは若干不満だったのか、興奮気味である。
「はいはいチャッチャと部屋に戻る。ゴメンねまさきくん」
「いやはやいいものを見せてもらったよ」
「おやすみなさい、まさきさん」
「まーくん、また明日〜♪」
「ああ、おやすみ」
女性陣が部屋に戻った後、一気に部屋が静かになる。
寂しさを憶えるのは、騒がしすぎたからなのかそれとも・・・。
とりあえず、未だに戻ってこない男子達に心の中で黙祷を捧げるという軽い現実逃避をしつつ、俺は布団に入った。
つづく・・・