らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

13 / 62
第十二話 9月のある日

<始業式当日>

 

 

 

「おはよう2人とも」

「おっす、おはよ~!」

「おふぁよ〜・・・」

 

2学期初日の朝。

久しぶりに制服に袖を通し、柊姉妹と当たり前のように合流する。

何だか懐かしい光景だ。

 

「・・・つかささん、ずいぶん眠そうだね」

「夏休み中、昼間まで寝てる癖を付けたままだったからよ」

「えへへ・・・ごめんねおね〜ちゃん」

 

何だかまだ夢見心地の御様子。

話の内容からするとかがみさんに起こしてもらったようだ。

フラフラしてるから見ててひじょ〜に危なっかしい。

そんなわけで万が一の時にフォロー出来るように、つかささんの反対側に回る。

 

「新学期早々悪いわね」

「まぁこのくらいは、ね」

 

しばらくはこんなやり取りが続きそうだ。

 

 

 

<学園校門前>

 

 

 

「お・・・おはよう(汗)」

「おはよ~、こなちゃん・・・大丈夫?」

「あ、3人とも・・・オハヨ〜・・・」

 

学校に入る前に合流できたと思ったら、こなたさんはえらい憔悴しきった姿だった。

 

「どうしたのよ・・・なんとなく予想はつくけど」

「いや〜・・・3日間徹夜でゲームやってたもんだから・・・ふわぁぁ、眠くて」

「この2人、なんだかだらしない所ばっかり似てるわね・・・」

「つかささんはまだマシだとしてもこなたさんは・・・(汗)」

 

こなたさん、あんたは勝つまでやめないギャンブラーか?

かがみさんがまだ寝ぼけてる二人を引きずるようにして2人を連れて行く。

 

「フォロー役、お疲れさん」

「それを言うなら半分手伝いなさいよ・・・」

「さすがにコレはなぁ・・・」

 

いくら仲のいい女子とは言え教室までおぶってくか、かがみさんみたいに手を引っぱるかどっちかしか手が無い以上やっぱ問題あるでしょ。

 

 

 

<2−B教室>

 

 

 

「おはようございます、まさきさん・・・あの、泉さんとつかささん、大丈夫なんでしょうか・・・?」

「おはよう、みゆきさん。まぁ意識はあるから大丈夫なんじゃないかな?」

 

こなたさんもつかささんも席に着くなり机に突っ伏してしまったので、さすがに心配になったんだろうけど・・・。

あの2人の、ある意味自業自得である。

 

「ま、2〜3日経てばいつもの2人に戻るでしょ」

「・・・だといいんですけど」

 

ちなみにつかささんは何とかこらえたようだが、こなたさんは始業式の真っ最中にいびきをかくという偉業をやってのけ(もちろん褒めてない)、黒井先生に引きずられていくことになる・・・。

 

 

 

<放課後:2-B>

 

 

 

「やっと学校終わったよ〜。さて今日はバイトだ〜!」

「こなちゃん元気になったね♪」

「呆れて言葉も無いわ・・・」

 

こなたさんは2〜3日どころか学校が終わった瞬間に復活しており、あきれ返るかがみさんだった。

ちゃっかりつかささんも復活してたりする。

 

「あ、そうそうかがみん、つかさチョットいい?」

「どしたのこなちゃん」

「何よ? あ、アレのこと?」

 

こなたさんが2人になにか話しがあるようでワザワザ呼び出して教室の端でごにょごにょ話始めた。

さすがに聞き耳立てるのは野暮かと思ったのだが・・・。

 

 

 

<下校途中>

 

 

 

「ねぇねぇまーくん、男の子の部屋ってどんな感じなのかな?」

「いきなり何?」

 

色々話してる内につかささんが俺の部屋に興味を持ったのか、唐突にそんな事を言って来た。

まぁ友達として柊家にお邪魔したことはあってもお邪魔されたことは無い、てか普通女子を呼ぶような事はない。

 

「近所に住んでるクラスメイトなのに一回も行った事も無いから、つかさが興味を持ち始めちゃったのよね」

「いつか言ったと思うけど本当に何も無いよ? こなたさんあたりが期待してそうなものも含めて」

 

ちなみに寝床はベットじゃなく布団を敷いている。

その代わり棚にいくつかのプラモデルが並んでて、ゲーム機を1台もっている程度。

後は・・・パソコンくらいかな?

 

「そういう訳であたし達の知的好奇心を満たすために、一旦家に帰って着替えたらまさきくんの家に行って見たいから玄関で待っててね♪」

 

あれ?

いつのまにかがみさんも・・・って(汗)。

 

「いや知的好奇心ってなんか言動がこなたさんに似てきてない? オマケに拒否権無しかい。」

 

来ること事態は構わないけど、と言った時にかがみさんが少々顔を引きつらせていたのは気のせいではないだろう。

 

 

 

<自宅>

 

 

 

『お邪魔しま〜す♪』

「なんも無い所だけどゆっくりして行ってくれい」

 

2人とも部屋に入るなりきょろきょろと部屋を眺め回す。

 

「へぇ、私達の部屋より少し広いくらいかしら・・・結構綺麗だしチョット意外かも」

 

学生とはいえ男の1人暮らしだ。

多少の偏見はしょうがないだろう。

 

「家事は最低限母さんに色々叩き込まれててね。整理整頓も掃除もやってる。たまに模様替えってか配置換えもしてるし」

 

フローリング約八畳分、風呂、トイレにキッチン、洗濯機を置けるスペースもある。

部屋代がいくら掛かってるかは聞かされてないが、母さん曰く『結構格安だったわよ?』とのこと・・・。

ここは親の施しをありがたく受け取っとくとして、その内何か親孝行でもしてやろうかと思ってる。

 

「あ、何だかロボットがいっぱい飾ってある♪」

「その辺はやっぱり男の子ね。結構手間かけてるの?」

「いんや、普通に組み立ててシール張って、後はたまに墨入れしてるくらい」

 

プラモデルを作る事はあっても、流石に手間暇かけて塗装したりはしない。

本格的にやろうとすると何日もかかる上に器具だけでも万単位で金が飛んで行く。

 

「そこまでやれば十分でしょう・・・っていうか何よ墨入れって」

「この辺の黒い線になってる所は本来はパーツの地の色なんだけど、墨入れして色をつけてやるだけでグッとリアルになるんだ」

 

墨入れ自体はそんなに難しいものじゃない。

が、たまにメンドイから・・・と言う理由でやらない事もある。

 

「ん〜・・・この2つで見れば分かりやすいかな?」

「・・・ホントだ〜。チョット色付てるだけで全然印象が違うね」

「へ〜・・・うわ! コレ片足で立ってるわよ? しかも2体正反対のポーズで!」

 

それはMSならぬMFである。

重心考えないとあっさり倒れるけど。

 

「ちなみにこないだ地震あったでしょ?」

「結構大きかったよね。あたし机の下で速く収まれ~って叫んじゃったよ・・・」

「っていってもアレは震度3くらいだったでしょ」

「その地震の中で倒れたプラモは多かったけど・・・その2体、しっかり立ってたんだよね」

「うっそぉ!?」

「うわ〜、すごーい!」

 

その辺の事情を説明しながら買っておいたジュースを用意する。

つかささんが自宅に立ち寄った時に持ってきたクッキーを摘みながら雑談してると、かがみさんが俺のゲーム機を発見。

残念なことに対戦できるのは某龍球Zのスパーキングでメテオなヤツくらいしかない。

ためしに対戦してみよう、なんてかがみさんが言ったので対戦することにする。

かがみさん自身、プレイ経験が少しあるみたいだが結果は・・・。

 

「だ〜! あんた背後取るの上手すぎ! どうやったらあんなトンデモアニメみたいな動きが出来るのよ!?」

「タイミングがシビアすぎるからね〜。どれだけやりこんだことか・・・」

 

攻撃される瞬間に相手の背後へ回りこみ、連続攻撃でぶっ飛ばして更に高速移動で追撃すると言う、あの世界的にも有名なアクションアニメを再現したかのようなこのゲーム。

ちなみにその一連の操作方法は前作(メテオは3作目)より非常にタイミングがシビアである。

某動画サイトのプレイ動画を見て徹底的にやりこんだと言ったら二人揃って興味を持ったみたいなので、パソコンを起動してそのプレイ動画を見せたみた。

 

「うわ・・・次元が違うわ」

「ほぇ〜・・・」

「原作再現したような、いわゆる『魅せるプレイ動画』ってヤツ? 俺も最初はコレを見てひょっとしたら俺でも簡単にって思ったもんだ・・・」

 

何せ背後の取り合い(CPUは最大レベルと思われる)になってるからな〜、この動画。

見てると自分も・・・と思うのが不思議だが現実は非情に厳しい。

ついでに俺のお気に入り動画を見せてやると、2人ともウケが良かったようで自宅に帰ったらさっそく自分も利用する! とはしゃいでいたのはなんとも微笑ましい光景である。

そんなこんなでそろそろ日が沈みかける時間になった。

 

「それじゃまたね!」

「また明日〜♪」

「気をつけてな〜・・・ほぼ目の前だけど」

 

俺の最後の一言に笑いながら2人は帰っていった。

・・・そういや何で2人が家に来たんだっけ?

この時はまぁ楽しかったからいいか、としか考えていなかった。

 

 

 

数日後にその理由が明かされることになる。

 

 

 

「まさきくん、明日は空いてる?」

 

ある日の昼食時、かがみさんに尋ねられた。

 

「? 特にバイトも入って無いけど」

「明日はまーくんの誕生日だよね♪」

 

・・・あ。

 

「おお、そういえば!」

「自分の誕生日にそういう反応するのは・・・それはともかくとして、ちょうど土曜日で学校休みでしょ?」

「だからまさきの誕生パーティを私達で立案、企画したのだよ」

 

んな大げさな・・・祝ってくれるのは嬉しいけど。

 

「・・・ひょっとしてこないだ柊姉妹が家に来たのって?」

「そゆこと。まさき含めて5人全員が入れるスペースや台所事情を調べてもらってたのだよ♪」

「それってひょっとして・・・」

 

わざわざ家で手料理を振舞ってくれるってことか?

そこまでしてもらうと流石に悪い気がするが・・・。

こなたさんや柊姉妹のときは精々ケーキやお菓子が出たくらいだし。

それ以外にも何となく嫌な予感がしてならない。

 

「料理は泉さんとわたしの2人で、つかささんはご自宅でケーキの準備をするんです。」

 

家が近いのが幸いしましたね♪ なんていってるが・・・。

 

「私は・・・料理(そういうの)は苦手だからプレゼント係を勤めるんだけど、何か欲しいものある?」

 

思いっきりストレートだなオイ。

 

「いやいやいや、手作りケーキや料理だけでも十分ありがたいのに、そこまでしてもらうのは流石に悪いって。」

「私たちのこともお祝いしてくれたし、コレくらいのことはしてあげようって皆で話して決めたのだよ」

「私もお勉強教えてもらったりしてお世話になってるから、張り切ってお祝いしてあげたいんだ♪」

「それにお家ではお食事を1人で食べることが多いのでは?」

 

・・・そこまでいわれると拒否出来ない・・・な。

それ以前に拒否権は皆無か(苦笑)。

1つ。

1つだけ懸念事項があるが・・・それは電話で済ませてくれることを祈ろう。

 

「・・・それじゃあ、お言葉に甘えようかな」

 

そうして明日は特に欲しいものが思い付かなかったため、10時ごろからかがみさんに連れ出されてプレゼントを選びに、他の3人は俺の家もしくは柊家で準備をするとのこと。

いつ以来かな?

友達に・・・しかも女の子に誕生日を祝われるのは。

 

 

 

<誕生日当日>

 

 

 

かねてからの企画、計画の通り俺は時間になったら早々にかがみさんに連れ出されて自分のプレゼント選びに・・・何か違うような気がするが・・・。

あまり高いものをってのも悪いし、俺の考えに考えた答えは・・・。

 

「腕時計?」

「ああ。せっかくの皆からの、初めて貰うプレゼントだし、いつでも身につけていられるのがいいかなって思って」

「ふふふ・・・まさきくんらしいわね」

「へ?」

 

なんのこっちゃ?

 

「あんたのことだから『あまり高い物は・・・』とか悶々と考えてたんでしょ」

「・・・俺ってそんなにわかりやすいの?」

 

そうこういいながらデパートに2人で入った。

そのまま時計を扱ってるスペースに移動する。

普通の腕時計、耐久力が高い腕時計、電波時計など種類も様々。

 

「色んな種類があるのはいいけど、電波時計にするだけでここまでの値段になるとはな〜」

「パッと見どう違うかも分からないわよね」

 

あれこれ見て選んだのは電波時計の中でも一番安かった物・・・それでも1万近くするものだが。

 

「(・・・大事に使わないとな)」

 

多少時間がかかったが、プレゼントも無事選び終わって時間は既に正午。

かがみさんが電話で確認した所、まもなく準備が終わるという。

今から行けばちょうど良い頃だろうとのことで、かがみさんと帰路についた時・・・。

1台の大型トラックが通り過ぎるを見かけた。

いつもだったら気にも留めないのだが、物凄く見覚えのあるトラックだったのだ。

運転席までは見えなかったがアレは・・・。

 

「・・・・・・」

「どうしたの、まさきくん?」

 

まさか・・・こんな時に限って・・・?

今日は土曜日なのにって言うかもう皆と遭遇済み?

何もこんな狙ったかのようなタイミングで来なくても・・・(汗)。

 

「いや、何でもない、何でも・・・」

 

この嫌な予感・・・外れてくれればいいんだけどほぼ9割9分9厘当たりと見ていいかもしれない。

ヘタすりゃ質問攻めか。

やれやれ・・・。

 

 

 

つづく・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。