らき☆すた~if~ たとえばこんな物語   作:岡崎ひでき

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第十一話 はじめての高良家

お盆には一時帰省しようと考えてる、ある意味恐怖の小旅行の数日後。

俺達はみゆきさんの誘いを受けた。

みゆきさんちの近くで花火大会があるらしく、いつものメンバーに声をかけてくれたのだ。

まずはみゆきさんの家に集合して皆で一緒に会場まで行くということになった。

 

 

 

<花火大会当日>

 

 

 

俺は柊姉妹、こなたさんと合流してみゆきさん宅に電車で向かっている。

 

「そういやみゆきさんの家って行ったことないな・・・。どんなトコ?」

「私たちも初めて行くのよ」

「だから改札口までゆきちゃんが迎えに来てくれるんだよね♪」

「結構なお金持ちだから、庭にペットを放し飼いしてたりおっきなピアノとかありそうだよね♪」

 

こなたさん・・・お金持ちに対して何か妙な偏見持ってないか?

 

「屋外プールとかありそう♪」

「大きな庭にパラソルがあって、天気のいい日にそこでお茶会してるのも絵になりそうよね」

 

柊姉妹よ、お前らもか!

さすがに屋外プールはないだろ、つかささん(汗)。

しかしずっと気になってたんだが・・・。

 

「皆のその荷物は何?」

 

何故か全員揃って大荷物を抱えている。

 

「ああ、これは浴衣と着替えその他よ」

「私達はみゆきさん家にお泊りの予定!」

「女の子には色々あるんだよ〜♪」

 

泊まる上に向こうで着替えるのか。

まぁ俺はその間適当に暇つぶしでもすることになるのかな?

だから少し速めに行くことになった・・・あれ?

 

「そういや花火大会最後まで見ると何時で終わるんだっけ?」

「9時には終わるって言ってたと思うよ」

 

・・・速めに抜けたほうがいいだろうか?

ていうかその辺り無計画なのひょっとして俺だけ?

そんなことを考えてると、電車が目的の駅に到着すると言うアナウンスが流れた。

電車内は結構混んでた為、人の波が凄い。

 

「さすがに人が多いわね・・・みゆきと上手く合流できるかしら?」

 

花火大会があるせいなのかさすが都心ということなのか、人ごみも結構なモンである。

といってもみゆきさんの髪の色やらメガネやらの特徴で結構目立つから分かるだろう。

電車が駅に到着し、みゆきさんに指定されていた出口から外に出る。

その際につかささんが自動改札口に引っかかって「なんじゃこりゃ〜!」とおろおろしてたのはご愛嬌・・・どうにか改札口を通してもらってみゆきさんを探す。

 

「みなさ~ん! こちらで〜す!」

「お! 第一目標発見、合流します!」

「どこの軍人よあんたは・・・」

 

かがみさんのツッコミを混ぜながらみゆきさんの案内で高良邸まで案内された。

ていうか周りがなんか高級住宅街って感じなんですけど(汗)。

 

 

 

高良家にお邪魔したらみゆきさんのお母さん・・・高良ゆかりさんが迎えてくれた。

異様に若く見えるのは気のせいじゃないハズ・・・。

柊家のみきさんといい目の前のゆかりさんといい大学生・・・ヘタすりゃ高校生でも通るんじゃないだろうか?

ちなみに旦那さんは出張中だそうだ。

 

「みなさんいらっしゃい。あなたがみゆきの話してた赤井まさき君かしら?」

「あ、はい。はじめまして、赤井まさきです」

 

いきなり話を振られて少し緊張してしまう。

 

「あらあら、赤井先輩・・・あなたのお父さんとやっぱりそっくりね♪」

「周りからよく言われますけど・・・ってやっぱり両親のことを知ってるんですか?」

「2人とも仲のいい先輩だったのよ〜。もうその時から2人は付き合っててね〜」

 

両親の後輩・・・1〜2年両親より年下・・・でも外見上あきらかに両親より若く見えるって(汗)。

ホントに世の中不思議で一杯だ。

その後細かい話は後回しにしてもらって、女性陣は皆浴衣に着替えるために別室に移動する。

 

「覗きたかったら覗いても良いんだよ〜♪」

「アホか!」

 

お約束のやり取りと思えてしまう辺り、だいぶ俺も染まってきてしまったような気がする・・・。

 

全員の着替えが終わりゆかりさんが出してくれた冷たいフルーツと麦茶を堪能して少しマッタリしてから、高良家の真正面に位置するやっぱり高級そうなお宅を訪ねた。

来年陵桜を受験する予定だという娘も一緒に行くと言うことだ。

陵桜を受ける=後輩なんだし今から気楽に話せるようにしといたほうがいいだろうと言うのが女性陣の言だ。

・・・また女子だけど(汗)。

 

「始めまして。岩崎みなみです」

 

女の子にしては少し長身だがおとなしめの可愛い子だ。

俺たちも挨拶をしていると、大型の犬が突然寄ってきた。

 

「こら、チェリー!」

 

岩崎さんは止めようとするも何故か俺のほうによってきてクンクンと足元まわりで臭いをかいでまわってる。

 

「岩崎さんが飼ってる犬?」

「ハイ・・・チェリーっていう名前で、普段はおとなしくて私の言うこともちゃんと聞くんですけど・・・」

 

シベリアンハスキーってヤツかな?

かなり大きい犬だ。

ふむ、試しに・・・。

 

「チェリーって言ったっけ?」

「はい」

「チェリー、お手!」

 

俺は手を出して反応を見てみると・・・。

 

パシッ!

 

普通に叩かれた。

 

「・・・お手!」

 

今度は反対の手でやってみる。

 

パシッ!

 

「・・・・・・」

「あ、あの・・・」

 

岩崎さんは俺とチェリーののやり取りをオロオロしながら見ていたが「大丈夫だよ」と一言。

 

「お手ッ!」

 

ヒュン!

スカ!

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

何だろう。

俺とチェリーの間に火花が散ってる様な気がしてきた。

チェリーは俺を見たまま沈黙を守ってると思ったら・・・。

 

「わう! わうわう! わうわうわうッ!」

 

俺を前足でたたき始めた!

 

「はっはっは! 遅い! 遅いぞチェリー!」

 

パシパシパシ・・・。

たたいてくる前足を片っ端から払いのける。

 

「犬相手に何やってんのよあんたは・・・」

「イヤ、面白そうだからつい・・・」

 

かがみさんが呆れた声で言って来るがこうなったら楽しんだモン勝ちだろう。

そうしている内に、今度は俺に飛びついてきて顔を舐め始めた!

 

「ちょ!? うぉいこら!!」

「コ、コラ、やめなさいチェリー!」

 

数分後、チェリーは満足したのか悠々と家の中に入っていった。

・・・放し飼いって言うか躾がちゃんとしてると言うか屋内でも屋外でも自由に行動してる大型犬って(汗)。

にしてもなつかれた・・・のかな?

 

「すいません、本当にすいません。」

 

岩崎さんは顔を真っ赤にしながらひたすら頭を下げてきた。

・・・ここまでされるとコッチも悪いような気がするぞ。

 

「気にしなくていいよ。てか何気に楽しかったし」

 

まさかこの年で犬とじゃれ合うハメになるとは思っていなかったけどね。

 

「まさきも結構ノリノリだったもんね」

「まーくんお洋服大丈夫?」

「服は大丈夫だけど・・・岩崎さん、洗面所貸してくれる?」

「ハイ。こちらへ・・・」

 

洗面所で顔を洗ったらそろそろいい時間だということで会場まで移動することになった。

っとその前に・・・。

 

「そういえば皆は虫除け対策とかはしてるの?」

『・・・あっ』

 

ちっとは気にしろよ・・・。

てか全員かい!

 

「みゆきさんか岩崎さんに虫除けのスプレーか何か借りたほうがいいんじゃ・・・?」

「・・・帰ったら虫刺されだらけとかはさすがに勘弁だもんね」

「全然考えてなかったよ。ありがとうまーくん」

「お礼はいいよ。ちょっと思った事を言っただけだし」

 

皆それぞれスプレーをかけて、ひとまず安心。

そのあいだ俺は回れ右して目を閉じ、両手で耳を塞いでいたが。

けどまぁ全身蚊に刺されるよりはマシだろう。

 

 

 

<花火大会会場>

 

 

 

「うわ、すっげえ人ごみ!」

 

見ろ、まるで人がごみのようだ! と叫びたくなるくらい凄い数だ。

 

「あう〜、まってよ〜お姉ちゃ〜ん、おいてかないで~!」

「つかさ!? 手をつないで、ホラ!」

 

さすがに首都圏だけあってどこを見ても人、人、人・・・。

こなたさん辺りはあっさりはぐれそうだ。

 

「こういうときはこうすれば問題ないよね♪」

 

そういって俺の服にギュッとつかまるこなたさん。

さすがに手はつながない。

当然だがっていうかつないできたらどうしようとか思ってたり・・・また頭が変な方向に(汗)。

みゆきさんは岩崎さんと一緒のようで、何とかはぐれずにいるのが見える。

 

そして・・・。

 

ヒュ〜〜ン・・・ドン! ドドン!

 

「お〜、見事な花火だな」

「近くで見る花火って音も凄いし迫力あるよね。お〜! た〜まや〜♪」

「こうやって見ると花火って平べったいのかなって思っちゃうよね」

「つかさ・・・いくらなんでもそれは無いから」

「今年も見事ですね♪」

「・・・はい」

 

そういやさっきから気になってたが・・・。

 

「ねぇみゆきさん。岩崎さんって結構寡黙なタイプ?」

 

ここに来るまで口数もかなり少なかったので何か気に触るような事をしたのかもと思っていたのだが。

 

「ふふふ♪ よく誤解されますが、みなみさんはとっても優しくて気が利く子なんですよ?」

 

むう、会ったばかりで性格が中々読めないから少し冷たい印象があるけど・・・。

みゆきさんがそう言うなら間違いはないのだろう。

 

で、結局。

こなたさんに捕まってて抜けるに抜けられず、最後まで花火を見ることになってしまった。

 

「あう〜、蚊に刺された所がかい〜の」

 

虫除けスプレーを吹いても刺される人は刺されるわけで・・・。

 

「俺は刺されなかったけど・・・てか刺されたところをかくと余計に痒くなるよ?」

「あの・・・良かったらこれ、どうぞ」

 

そう言ってみなみさんが虫刺されの軟膏を差し出した。

こういったことに慣れてるのか、準備がいいのか。

みゆきさんが言ってた彼女の優しさというものが少し判った気がする。

 

その後、俺達は一旦高良家に向かった。

時間は既に夜の9時を回っている。

 

「もうこんな時間ねぇ。皆が泊まって行くのは聞いてるけどまさきくんも泊まって明日帰ったほうがいいんじゃないかしら?」

「俺は夜道は別に平気ですけど・・・」

 

ゆかりさんが提案してくれるが、今なら終電にまだ間に合う。

 

「ヘタすると補導されるわよ?」

 

むぅ。

みゆきさんはここが自宅、岩崎さんは自宅が目の前。

こなたさん、柊姉妹は既にお泊り決定済み。

結局俺1人考え無しだったんだよな〜・・・。

さすがに警察の厄介にはなりたくないし。

大体泊まるにしても・・・(汗)

 

「いい加減腹をくくりなよ〜♪」←(=ω=.)

「はぁ・・・そうするしかないのかね・・・やれやれ」←(どこか悟ったような顔)

 

さすがに宿泊費を払えるほどの手持ちはない。

この辺りに24時間営業のネットカフェは無いみたいだし。

それでも散々悩んだ末、ゆかりさんの勧めに甘えることにした。

 

「すいません。一晩だけお世話になります」

「ふふふ♪ 遠慮なんかいらないわよ。みなみちゃんも今日は泊まってく?」

「・・・はい」

「ほのかちゃんには、私から伝えておくわね♪」

 

岩崎さんはさすがに少し迷ったようだ。

そりゃそうだろう、初対面の男が一緒なんだから。

しかし・・・。

 

「あの・・・『ほのかちゃん』って・・・?」

「みなみちゃんのお母さんよ~」

 

・・・ご近所さんで付き合いが長いとは言え、ちゃん付けで呼ぶのはどうかと思います(汗)。

ちなみに寝床は居間のソファで良いと俺が言ったら案の定全員(岩崎さんはノーコメント)に却下された。

 

「まさき君はみゆきのお部屋で2人っきりのほうが良いかしら?」

「さすがにそれは勘弁してください!」

 

この人は天然なのか?

それともこれが素なのか!?

 

 

 

結局俺は客室に泊めてもらうことになった。

皆は今頃みゆきさんの部屋でわいわい騒いでることだろう。

・・・既に入浴も済ませたし着替えも借りた。

何か仕掛けられる前にってか巻き込まれないうちにさっさと寝よう。

 

 

 

<翌朝>

 

 

 

「ふぁ・・・」

 

いつもの時間に目を覚ましたところで腕に妙な違和感を感じる。

気のせいだ・・・絶対に気のせいだ。

そう思いたくても現実は甘くなく・・・。

 

「ん・・・」

 

何でみゆきさんが隣で寝てるんだよ!

しかも腕に抱きついて・・・あ、やわらkって違うだろ俺!?

あれか、寝ぼけた頭でトイレに行って間違えてって言うお約束のアレなのか?

てか自分の家で間違えるか普通!

とにかく起こして部屋に戻ってもらわないと絶対地獄を見る!

 

「みゆきさん、みゆきさん! 起きて、早く!」

「ふぇ・・・?」

 

うっすら目を開けたところ寝起きはいいみたいってそれ所じゃない!

 

「はふ・・・おはようございます・・・て・・・え? ええ!? ま、まさきさん!? なんで・・・あ」

 

裸眼とは言え部屋を見回したみゆきさんは、自分の状況に気づいたようだ。

 

「すすすすすすいません! すぐ戻りますので、その、ホントにすいません!」

「分かったからあまり大声出さないで! 部屋すぐそこなんでしょ?」

「ハ、ハイ! すぐに戻ります〜!」

 

顔を真っ赤にしながら慌てて部屋に戻っていった・・・。

 

「ハァ、何も無きゃいいけど・・・」

 

が、時既に遅し。

数分後、既に起きてたらしいかがみさんの凄まじく迫力のある笑顔と岩崎さんの尋常じゃないオーラを宿した目で尋問を受けるハメになった・・・。

 

 

 

「あらあら、今日はお赤飯かしら♪」

「お、お母さん!? 違うんですコレはその・・・!」

 

 

 

つづく・・・


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