ぼっちサーガ~最強ぼっちの異世界漫遊記~   作:ガスキン

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この小説は思いつきと勢いのまま書いていきますので、矛盾点や違和感はスルーでお願いします。

『ふくろ』を『アイテムボックス』に変更しました。


第二話 ゼロからのスタート

弾け飛んだグリーンゲルの残骸に目を移す亮一。緑色のそれは、最後に激しく振動すると地面に溶けていった。消滅の瞬間を呆然と見つめ続ける亮一。

 

「ふむ、流石だな。グリーンゲルなど素手で十分といったところか」

 

「ッ!? だ、誰!?」

 

低く嗄れた声は背後から聞こえる。バッと振り返った亮一の前には、一人の老人が立っていた。その顔を見た亮一を再び驚きが襲う。何故なら、その老人の顔には確かに見覚えがあったからだ。

 

(こ、この人は・・・!)

 

間違い無く、記念すべき初プレイの時、エターナル・ワールドについて説明してくれたあの老人だった。そしてつい先日のイベントで“戦った”人物でもあった。

 

「な・・・あ・・・その・・・」

 

「混乱するのも無理は無い。そなたの疑問には全て答えよう。だがその前に深呼吸でもして落ち着くがよい」

 

パニックを起こす亮一を、老人は優しく落ち着いた口調で宥めた。一呼吸置き、老人は改めて語り始めた。

 

「さて、話を始める前に・・・まずは自分の姿を確認してみよ」

 

「え?」

 

言われて亮一は自分の格好を見て目を丸くした。学校から帰宅した後、自分は白のTシャツに短パンを履いていたはずだ。それなのに今、亮一は漆黒の服とズボンを身に付け、同じく漆黒のコートを纏っていた。さらに、裸足だったはずなのに、黒い靴を履いていた。

 

「な、何この格好!? って、あれ? この服どこかで見た覚えが・・・」

 

不思議な既視感に首を傾げる亮一。そしてふと思い出した。今自分が着ている衣服は、ついさっきゲームで自分のキャラに装備させたばかりの物に瓜二つだったのだ。亮一は益々混乱した。

 

「な、何で僕が『創世の聖衣』を・・・」

 

「その聖衣は創世神の試練を乗り越えた者の中でただ一人に授けられし物。それがそなた・・・ゼロだ」

 

本名ではなく、キャラクターネームで呼ばれ、ライトノベル好きな亮一の脳裏にある仮説が浮かんだ。まさかこの状況は、まさか自分は・・・。

 

「お、教えてください。この世界は何なんですか。ここはどこなんですか。僕はどうしてここにいるんですか」

 

混乱し過ぎた事が逆に良い方に作用したのか。見慣れない人物と普通に会話で来ている事に気付かない亮一。

 

「ここはエターナル・ワールドの『始まりの草原』。ゼロよ、そなたは真の救世主としてこの世界に呼ばれたのだ」

 

この瞬間、仮説が現実となった。亮一は“ゼロ”として、エターナル・ワールドの世界へとやって来てしまったのだ。

 

(あ、あはは。これは夢、夢なんだ・・・)

 

夢である事を望む亮一。だが、夢にしては現実感がありすぎる。汗が流れる頬を風が薙いで行くが、その感触もどこまでもリアルであった。

 

「ゼロよ。その力で、邪神とその配下共より人々を守って欲しい。この世界に光を与えてはくれないだろうか」

 

「ど、どうしてですか!? 他の救世主・・・プレイヤー達はそれこそ山のようにいるのに! そもそも、どうして僕なんですか!?」

 

「確かに、救世主候補は他にも大勢いた。しかし、その全てをこの世界に呼ぶわけにはいかなかった。そこで我は救世主候補達へ試練を与えた。その試練を乗り越えた者の中から選ばれしたった一人を救世主とする為に」

 

「し、試練?」

 

―――我が試練を越えし者。この世界を救うため、今こそ汝を呼び出さん。

 

亮一の頭の中で全てが一つになった。

 

「あ、あのメッセージはあなたが送って来たんですか・・・!?」

 

「左様。その聖衣こそがその証。ゼロよ。()()()()を乗り越えしそなたこそ、真の救世主よ」

 

つまり、あの限定イベントの報酬を手に入れたのが自分だったから呼び寄せたと。自分に戦えと。この世界を救えと目の前の人物はそう言っているのだと、亮一はようやく理解した。理解したが、それとこれとは話が別である。

 

「お、おっしゃる事はわかりました。でも、僕はただの高校生です。そんな僕が救世主だなんて・・・」

 

「謙遜も度が過ぎればイヤミにしか聞こえぬぞ」

 

「謙遜とかじゃなくて・・・」

 

「ならば、そなたの目で確かめてみろ。手をかざせ」

 

「え?」

 

「危険は無い。とにかくやってみせろ」

 

「は、はい」

 

亮一が恐る恐る目の前に手をかざすと、突然パネルのような物が出現した。そして、それに表示されたものに亮一の目が限界まで見開かれた。

 

NAME ゼロ

種族 人間

性別 男

Class オーラ・ブレイダー

LV 99

HP 9999/9999

MP 9999/9999

オーラ 9999/9999

ATK(攻撃力)8564

DEF(防御力)8201+3000

INT(知能)7980

MND(精神力)8004+3000

AGL(素早さ)9359

DEX(器用さ)9999

LUK(運)786

 

・・・何だこのぶっ飛んだステータスは? 唖然とする亮一だが、これは間違い無く、自分が育て上げたゼロのステータスだった。つまり、これが今の自分自身の能力値だという事になる。

 

「どうじゃ。これでもまだ自分の力を過小評価するのか?」

 

「・・・」

 

「それにしても、よくぞここまで己を鍛え上げたものだ。ここまで来ると賞賛どころか恐怖すら覚える」

 

確かに、ここまでのステータスにするのは並大抵な事ではなかった。何度も何度も転生と呼ばれる、ステータスそのままにレベル1に戻る儀式を繰り返し、特定のモンスターを狩り続けてステータス底上げアイテムを集め、ようやくここまで鍛える事が出来たのだ。

 

「で、でも、僕は戦いなんてやった事はありません。元の世界に返してください!」

 

「そなたが邪神を倒した時、その願いは叶う」

 

「そ、そんな・・・」

 

つまり、邪神を倒さなければ元の世界に戻れない。そう言っているのだ。色んな感情が混ざり合い、亮一の体がブルブルと震える。が、その震えが突如止まり、亮一は決意の込められた目で老人を見つめた。

 

「・・・わかりました。それしか帰る方法が無いのなら、やります。ゼロとして、この世界で戦ってみせます」

 

その顔は、さっきまで気弱な姿を見せていた人物とは思えないほど力強いものであった。

 

親友である昴が以前こんな事を言っていた。

 

「お前は大人しくて引っ込み思案だけど。追いつめられたり、一度決意したら誰よりも勇敢になれるんだよな」

 

亮一が八歳の頃、こんな事があった。この時はまだ身長も同い年の子達と同じくらいで、左目の傷もなかった。その日、公園に遊びに行った亮一は、そこで二人の子どもに虐められていた子犬を見た。最初、怖くて近寄らなかった亮一だが、子犬が悲鳴をあげた瞬間、その二人に向かって駆け出していた。そして気づけば、その場には自分と子犬しか残っていなかった。後にそれを聞いた昴が言ったのが先程の昴のセリフである。

 

また、知りもしなかった東雲真里を助けるために高校生達の前に飛び出した事からも、亮一の勇気は決して小さなものではない事がわかる。

 

「よくぞ言ってくれた。ゼロよ、そなたに無限大の感謝を」

 

「あの、もう一度確認しておきたいんですけど、この世界には僕以外のプレ・・・救世主はいないんですよね?」

 

「うむ。先程申した通り。そなた以外には誰一人な」

 

「では、僕は一人で邪神と戦わないといけないって事ですか?」

 

「そなたがそれでよければな。もちろん、この世界の人々と力を合わせて挑んでも構わん」

 

「そ、そうですか」

 

「最も、そなたにはすでに強力な配下達がおるがな。まずはそなたの持ち物の中から“ソウルクリスタル”を取り出すがよい」

 

エターナル・ワールドの世界に存在するモンスター達は、他者によって倒された際、完全に屈服状態になっていると、その魂が結晶となり、その者の眷属として永久の誓いを結ぶ。屈服させるには圧倒的な実力の差を見せつけたり、精神的に追い込んだりと様々な方法がある。装備すれば、各モンスターごとに異なる能力が付与される。先程、亮一がバチュンさせた「グリーンゲル」のソウルクリスタルを装備すれば“HP三%上昇”の恩恵を受けられる。

 

さらに、戦闘中にMPを消費する事でモンスターを実体化させ共に戦わせる事が出来る。ただし、モンスターテイマーとその派生先の職業以外の職業では最大二体しか召喚出来ない。これがモンスターテイマーだとパーティー一杯まで召喚出来たりする。これは“ジョブスキル”ではなく、その職業に就いた時のみに得られる能力なので、モンスターテイマーを極めた状態で他の職に就いても二体までしか召喚出来ないのは変わらない。

 

なお、ソウルクリスタルに封じられるのはモンスターだけでは無い。各地に存在する遺跡には遥か太古の英雄の魂が封じられたソウルクリスタルが存在する。また、神霊や神などの上位存在は認めた相手に魂の一部を切り離して授けたりもする。

 

「と、取り出すと言われてもどうやってですか」

 

「救世主候補達は皆、自由に持ち物を出し入れする事が出来る『アイテムボックス』を持っている。そなたもそうであったろう?」

 

「あ……」

 

そういう事かと納得する亮一。RPGなどでお馴染の、冒険中に手に入れたアイテムをなんでも、いくつでも収納出来るシステム。他のゲームでは『ふくろ』や『ポーチ』など様々な呼び名が付けられているが、このエターナル・ワールドでは『アイテムボックス』がそれに該当する。

 

「『アイテムボックス』を開くには、先程と同じ様に手をかざして念じればよい」

 

言われるままに亮一チャレンジしようとしたその時だった。突如、かざした右手の先から光り輝く何かが飛び出して来たのだ。

 

「な、何・・・!?」

 

驚いて手を下ろしてしまった亮一の周囲を光が舞う。よく見ればそれは一つでは無く二つだった。光は一度空に向かって上昇すると、亮一の前方に勢い良く落下して来た。直後、激しい光が亮一を襲う

 

「ッ・・・!?」

 

咄嗟に目を瞑る亮一。やがて光が治まった頃に恐る恐る目を開けた亮一は驚きと戸惑いで今度は目を丸くした。その目線は、彼の目の前で跪いている二人の人物に固定される。

 

 

「“天剣の戦乙女”シャイニング・ヴァルキリー・・・我がマスター、ゼロ様の求めに応じ参上いたしました。これより、我が剣、我が肉体、我が魂の全てを懸けマスターをお守りいたします」

 

「“万魔を討滅せし騎士”ジークムント・・・同じく我が主君、マスターゼロの求めに馳せ参じました。騎士として、我が主君の前に立ち塞がる全ての物をこの槍と、この忠義を持って討ち果たしてみせる事を誓います」

 

美しい金髪の髪をたなびかせ、神聖な光を放つ戦装束を纏った美女と、燃える様な紅い髪に、勇壮な鎧で身を包んだ偉丈夫が、その翡翠と真紅の瞳で亮一を見つめていた。

 

“天剣の戦乙女”シャイニング・ヴァルキリー。“万魔を討滅せし騎士”ジークムント。どちらも最近ゼロが装備していたソウルクリスタルに封じられた英雄だ。もしかしたらそれが理由で自分の前に現れたのかもしれない。しかし・・・。

 

「あ、あの・・・僕、別に呼んだ覚えは無いんですけど・・・?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「・・・え?」

 

見つめ合う三人。何とも言えない微妙な空気がその場を漂うのであった。




リメイク前との変更点として、能力封じを止めました。最強系なのに封じてどうすんだって話ですよ。

もう一つ、この世界に来たばかりの主人公に仲間はいません。ですが、今回の最後に出て来た二人以外にも“配下”は数えきれないくらいいます。ぶっちゃけこの時点で魔神余裕で倒せます。タイトル通り、この小説はゆったり諸国漫遊の旅にしていくつもりです。

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