ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ3 5の島にて

 

 

「……ようこそ、ショウ。アタクシの別荘へ……」

 

「ショウが来てくれた事、嬉しく思うよ」

 

 

 旅行3日目、昼も過ぎた頃。壁一面のオーシャンビューを眺める事の出来る、実に豪華な絨毯敷きの応接間で、表情の読めない顔で座っているお嬢様 ―― カトレア。その横手に控えるのは、俺の友人でもあるコクランだ。

 そう。俺はやっとの事で目的地である『5の島』――『ゴージャスリゾート』にある、『御家』所有の小島へと到着していたりする。

 ……御家所有の『小島』な。言い間違えじゃあ無い。小島が丸々1つ、カトレアん家のものな! 建築物どころの話じゃあ、なし!!

 

 

「ども。お邪魔しまーす、と……靴は脱がなくていいのな」

 

「アナタが望むなら、和室もセッティングしますが……コクラン?」

 

「待て待て、いいって。つか、コクランも身構えんなよ。別に和風万歳な人間じゃないぞ、俺」

 

 

 俺は本気でやりかねないカトレアの言葉を、手をかざして留める。反応の限りで出したストップサインは、コクランが踏み出そうとした足を一歩だけで留める事に成功したみたいだ。ふぅ、危ない危ない。

 さて。1年近く(かなり)昔の話にはなるが『御家』がここ『ゴージャスリゾート』に別荘を建てようとしている、なんて話題が挙がっていたのを覚えているだろうか。

 『ゴージャスリゾート』は5の島の北側、海上に広がった「天然の水上迷路」の中にある小島の数々の事を指す。ゲームではそうそう大きなイベントがある部分ではなかったんだが、どうやら本来の役目は違うらしい。つまりは、その名にそぐわぬ『金持ち達の別荘地帯』となっていたのだ。前々に思考内話題に上げた「保護理由」の内、この島が「リゾート開発されている地域」なワケである。ま、金持ち達が集まるからには治安維持もしなきゃならないからな。

 ……ああ見えて、ここへ来る途中で釣りをしていた親父も、実際には比較的金持ちな部類に所属するやんごとなきお方なのだろう。多分だけど。

 

 さてと、こんなんでいいか。そろそろ現実へと復帰すべきだろう。

 いや。だってさ……

 

 

「……そう……」ムッスー

 

 

 上座を陣取るエスパーお嬢様は、俺の言葉が不満なご様子でだな。いつも無表情でわかり辛いが、視線が僅かに横へと逸らされている。俺の経験からするに、これは不機嫌モードで違いないだろう。

 うん。何でそんなのがわかるか、を解説すると長くなるが……あれからカトレアは宣言通り「この国でトレーナー資格を取る為」、タマムシのトレーナースクールに通って来ているんだ。流石に俺達みたいに寮住まいとはいかず、タマムシ郊外の別宅から送迎されて来ているんだが……どうも俺を師匠として仰いでいるらしい(本人談)。

 そんな風にしているもんだから自然と交流も多くなり、いつしか俺はカトレアお嬢様のオーラを読み取れるまでに成長していた、と言う訳だ。……残念な事にコクラン曰く、俺には「執事の才能がある」らしい。そんな才能なんて、なくても損はしないと思うんだが。

 強いて言えば、その才能がお嬢様のご機嫌取りにも働いてくれれば万々歳なんだがなぁ……とか考えつつ、俺は口を開く。

 

 

「いや、好意を袖にしてる訳じゃあなくてだな? えーと、」

 

「―― お嬢様。なんでも思い通りになってしまうのは、不幸の始まりです。できない事があって、できる事がある。それを知ることが大事なのです。……思い通りにならない事こそが、本当の楽しみなのですよ?」

 

「……はい。判っては、いるのです……アタクシの悪癖ですね」

 

 

 言い淀んだ俺の間を埋めるように口を開いた、コクラン。流石は本職だな。

 でもって、諭されてその内容には理解を見せながらも若干頬を膨らましたままであるカトレアの姿は、年相応の少女そのもので実に微笑ましい。俺にはないものだよなぁ、アレ。精神年齢的に仕方が無いし、ああいった挙動をしたい訳でもないけど。

 この結果に俺がとりあえず安堵の息を吐くと、カトレアが頭を下げる。ウェーブがかった毛量増し増しの髪はお嬢様の下げた頭につき従い、優雅に揺れる。

 

 

「……ショウ、ごめんなさい」

 

「あー、だからいいって。今日は俺がカトレアからレインボーパスを貰いに来たんだ。それに、もてなしてくれようとするのは嬉しい。迷惑だとは微塵も思わないぞ」

 

「……でも、パス(それ)も、言って下さればアタクシが……」

 

「いやいや、御家のお嬢様に……引いては御家の側に使いっ走りをさせる訳にゃあ行かない。……そもそも俺の都合で手配してもらってたんだぞ? 俺が自分で出向いて取りにくるのが筋ってもんだろ」

 

 

 俺が5の島を目指していたのは、このため ――『以前俺がカトレアに依頼していたレインボーパスを取りに行く為』だったのだ。カトレアに申請してもらった結果、俺の研究者権限でのレインボーパス発行は受理されていたからな。

 

「(ただし、発行された場所へパスを取りに来る必要があったんだ)」

 

 カトレアは別荘を持つ5の島で、俺のパスを申請してくれた。なので、5の島へ渡りさえすれば手に入るレインボーパスによって他の島への渡航許可も出る……のだが、しかし、5の島に行くにもレインボーパスが必要な訳で。この面倒な問題を解決する為に、俺は先日マサキの依頼を受けていたという次第なのだ。マサキのパスで5の島へ渡るためにな。

 

「(だからって『御家』のお嬢様やその執事頭に届けてもらうのは、論外だっての。こういった証明物品の類はポケモン郵送出来ないし)」

 

 わざわざ、相手側に手を煩わせるのもなんだし。ってか、ゲームで主人公達もニシキのレインボーパスを譲り受けてたからな。この作戦なら何とかなるだろう、ってな確信はあったんだ。

 そんな俺の頑固さを感じ取ったのか。隣に居た執事頭が、溜息をついてから口を開く。

 

 

「お嬢様。ショウはこういう性格です。言い合いでショウを負かすには、お嬢様では経験不足かと」

 

「……言ってくれますね。けど、その通りみたい……ありがと、コクラン」

 

「身に余る光栄です」

 

 

 うーん。毎度の事だが良い主従漫才だなぁ、これ。でもって、

 

 

「人聞きが悪いぞコクラン。まるで俺がカトレアを苛めてるみたいじゃないか」

 

「実際そうだろう?」

 

 

「(……ショウが……アタクシを……イジメて(・・・・)……?)」

 

 ――《ゾワッ》

 

 

「ですから、……お嬢様」

 

 

 ――《ウゾゾゾゾ》

 

 

「……お嬢様?」

 

 

 ――《ズニャッ》

 

 《《……ゾゾゾッ!!》》

 

 

「おー……もしかして、全自動型の触手(パワーウィップ)?」

 

「……っ!! 還って来て下さい、お嬢様ぁ!?」

 

 

 コクランが叫び始めたのも無理はない。なにせお嬢様が遠い目をしたのと同時に、その長い髪がワサワサと動き出したのだ。その動きのキレたるや、お嬢様の表情が見えなくなる程である。コクランが慌てて能力の暴走……というか漏出らしきこの状況を止めようと、お嬢様に呼びかけているのだが、

 

 

『(フフ、ウフフフフフフ……)』

 

 《《ゾワワッ》》

 

 

 脳内に鳴り響く笑い声といい絶賛稼働中の髪といい、効果は芳しくも無いらしい。

 ……つーか、おいおい。何所に行ったんだよエスパーお嬢様……って、いや待て。言わなくて良い。言われても困るからなっ!? トリップしてるのは見ればわかるしっ!

 コクランは生きた髪と化したお嬢様の周囲をひとしきり走り回った後、俺の隣で立ち止まり、頭を抱えながら溜息を1つ。

 

 

「駄目か。……ねぇ、ショウ。キミが止めてくれないかい?」

 

「まぁ、止めれるもんなら止めるよ。けど、あんなのをどうやって止めろってんだ」

 

 

 それにそもそも、今んトコこっちに実害無いし。髪がウゾウゾしてるだけだ。

 放っておけば……ん? ああ……もしかして、

 

 

「放っとくとそのまま暴走するのか」

 

「ご名答だよ、ショウ。不満(ストレス)が溜まった所へ、ショウが追い討ちしたからね。……それで、止めてくれないかい?」

 

「少なくともあの言葉が『追い討ち』になるとは思わないだろ、フツー。……それに、だから、どうやれと」

 

「何時だかイッシュで、エスパー相手はお手の物だぜ! とか言ってくれてたじゃないか」

 

「ぅぉい。その台詞、コクランの頭の中で都合よく美化されてるよな!?」

 

 

 対エスパー戦の経験が云々とかいう内容だった気がするんだがっっ!!

 

 

「どちらにせよ、お嬢さまがヨロコんでいらっしゃるのを止めるに、オレじゃあ力不足だよ」

 

「……字の変換が悦んで、じゃあ無い事を祈っておくとして……あー……これはお前からの挑戦状だな、コクラン」

 

「さて、どうかな」

 

 

 コクランはいつもの燕尾服で腕を組み、俺へと視線を向けている。……エスパーの名家たる「御家」の執事であるコクランが、実害すら出ていないこの程度の状況に「全く対応できない」ってのは無いだろうからな。「俺に」この状況を解決して見せて欲しいんだと思うんだ。

 でもって、いや。「歓んで」だったら歓迎的な意味で……と。無理があるか? そうだと信じたいけど、願望にしか過ぎないよなぁ。多分。

 俺はそんな無駄思考を繰り広げつつ、マルチタスクを広げ ―― コクランの期待に応えるべく、お嬢さまを止める方法を思考することに。

 ……えぇと、……そうだな。

 

 

「手伝ってくれ、モノズ」

 

《ボウンッ!》

 

「―― ガウッ!」

 

「よ、いしょっと。ちょおっと手荒な方法になるけどな。さぁて、」

 

 

 物理で攻撃するよりは幾分かマシだろう。

 俺は1メートル近くはあろうかと言うモノズをボールから出して、持ち上げる。腕に抱えてカトレアに近づいていく事に。

 ……体重17キロ超のモノズを(以前よりはトレーニングもしているとはいえ)10歳の身で迷いなく持ち上げる、なんて……この世界に慣れてきたんだろうなぁ、俺も。これならイシツブテ合戦も問題ない。

 で、カトレアの至近に寄った所で。

 

 

「モノズ、カトレアの髪を……って、あ」

 

「フンフン……ガゥ?」

 

 《パクンッ》

 

 ――《カヒィンッ!》

 

「―― ッッ! あ、う!?」

 

 

 モノズに髪の端をハモっと噛まれたカトレアの身体が、エスパー技を無効化した時特有の音をたてながら、大きくよろめいた。

 おおっと、危ない、って!

 

 

「っとと。……だいじょぶか、カトレア?」

 

「は、はい。……ご迷惑をお掛けしました、ショウ……」

 

「いや、俺らも悪かった。コイツ、動くものに興味持って噛み付くんだ」

 

「ガググゥ?」

 

 

 つまりは悪タイプであるモノズを近づけさせて「エスパー能力をはじき出そう」てな作戦だったんだが、近づききる前にモノズがうごめく髪を甘噛みしてしまったのだ。視力の悪いモノズの「探索用の噛み付き」だったので、エスパーたるカトレアに効果抜群じゃあなかったのが幸い。……いや、元々カトレアにポケモン的なタイプとか無いし、抜群じゃあないんだけどな?

 俺は協力してくれたモノズを労いとお叱りの2つの意味でぐりぐりしつつ、左腕と体で抱えたカトレアを地面に下ろす。

 

 

「ガーゥ」グリグリ

 

「うーしうし。……カトレアも、力の使い方と練習方法はよぉく考えるべきだな」

 

「……はい。続けざまに、申し訳ありませんでした。ショウがナツメお姉様を紹介してくれて、練習を重ねていたので……アタクシも少しはコントロールが上手くなっていると思っていたのですが。……慢心でした……」

 

 

 普段と比べれば微妙に渋い表情をしながら、カトレアが両足を着く。

 そのまま立ち上がろうとして……しかし。

 

 

「―― とう、――」

 

 

 立ち上がったのは俺の耳元でぼそっと、「ありがとう」と呟いてからだったという。

 ……ぅぉぅ。このお嬢様、やりおる。

 

 

「―― お嬢様、ご無事で?」

 

「……はい。貴方にも心配をかけました、コクラン」

 

 

 当の本人は動揺もせず、何時ものカトレアに戻って、駆け寄ってきたコクランの下へと歩いて行く。

 ……んー、まぁいいか。素直な礼で何よりだ。気にしない気にしない。

 

 そうして一波乱あった後、俺は無事に『レインボーパス』を受け取ることに成功したのだった。

 いやぁ、終わりよければ全て良し! 

 

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

 

 ……まぁ、いつかと同じく。

 これで終わりなんて都合のイイ展開、俺には縁が無いっぽいんだけどな?

 

 

 《バタンッ!》――《キキッ》

 

「―― んん? どうしたコクラン?」

 

「おっと、食事中に早足ですまない。……お嬢様、ご用件が」

 

 

 レインボーパスを受け取った、1時間ほど後。俺とカトレアは居間(と呼んでいいのかはわからんが)でそこそこというか結構豪華な昼食中だったのだが、そこへ、大急ぎのご様子でコクランが燕尾を翻しながら駆けて来たのだ。当のコクランはその革靴でどうやって出したのかという疑問が残る程のブレーキ音を甲高く響かせ、何とも格好良く停止してみせたが……それはどうでもいいな。うん。

 カトレアが気だるげな表情に訝しさを交え、俺と一瞬見合った後に、近づいてきたコクランへと尋ねる。フォークを口にくわえたままで、

 

 

「……何か、ご用事が……入ったのですか?」

 

「はい。電信が入りました。―― この『御家』の島からそう離れていない島で、行方不明者が続出しているそうです。近場にいたために『御家』もその捜索へと狩り出されるので……私も指揮を取らねばなりません」

 

「……そう……」

 

 

 パスタを咀嚼し、カトレアがフォークを手放す。周囲に居たメイド達が口を拭き、

 

 

「それでは仕方が無いですね。この『家』の力と貴方の力が必要なのであれば、手助けをしてあげなさい、コクラン。それが『御家』としての役目でもあります」

 

「はっ。それでは、しばしお暇を頂きます。……ところで、ショウ」

 

「おう。呼んだか?」

 

 

 でも今お前、カトレアにも許可を貰ってたじゃないか。この状況で俺に話しかける意味合いは無いだろ。

 ……ただし、1つだけ。嫌な予想は残っているんだが……

 そんな予想を抱えたままでいると、コクランは俺へと向き直り、早口で語り始めた。

 

 

「これから俺は、屋敷のトレーナー達を連れて急ピッチで捜索に出かける準備をしなければならないんだ。人探しとはいえ場所が場所だから、事態の終結まであと2~3日は見て欲しい。……けど、問題が1つあってさ」

 

「あー……成る程、わあった。俺がカトレアの面倒見とくよ。ただし俺にも予定はあるから、この島を出て連れまわす事になる。その了解をお前が取ってくれるんなら、お嬢さまにもパスはあるんだし、問題ないぞ」

 

「……流石はショウ! 理解が早くて助かる!」

 

 

 部隊編成なども考えるとなると、時間的猶予も余り無いのだろう。コクランは俺へ向かって、会心の笑みを浮かべた。

 ……俺がこんなに早く理解できたのも、当然と言えば当然。この屋敷は今年から使い始めた居宅であり、何よりここは『別荘』なんだからな。管理する人数はいくら『御家』とはいえ小数になっているはず。そして屋敷にいるトレーナーの質も、本宅や別宅と比べて段違いに低いに違いない。となれば、捜索に借り出されるのはこの別荘にいる殆どの……もしくは「全てのトレーナー」になってしまったんだろーな、との予測が(俺の脳内で)ついていた。

 けれども、お嬢様を1人で置いて行く訳には行かないし。そんなら、俺が預かれば1人でこの別荘に残されるより大分マシになるだろう。そんな流れで、先程の申し出と相成ったのだ。

 さてさて。俺の申し出を即座に受理したコクランはどこかへ通信をかけ……すぐさまお嬢様の外出許可を取り付けて見せてくれてだな。何とも言えぬ早業で振り返りつつ、此方へシュビっと手を挙げた。

 

 

「それじゃあ頼んだよ、ショウ」

 

「おう。……ほい、これが俺のトレーナーツールへの連絡先。進展とか経過とかあったら」

 

「すまない。この恩は、必ず返す」

 

「楽しみにしてるぞ。今度は昼飯くらいじゃ割に合わないかもなぁ」

 

「おいおい……脅してくれるな」

 

「友情割引で、晩飯も追加でオッケーにしとくさ。ただし……お捜しの人達は無事に見つけてくれよ?」

 

「ああ、そうだね。……なにせ、」

 

 

 2人して一旦息を止め、タイミングを合わせて。

 

 

「「―― 飯が不味くなる!」」

 

「……だろ? ショウ」

 

「ん。そのとーり」

 

 

 互いにニカッと笑ってみせた。

 そして、うん。折角探したのに無事じゃあありませんでしたーなんて、後味が悪すぎるのはゴメンだ。最悪の場合も想定せざるを得ないが、コクラン達にはせめてもの全力を尽くして欲しい。

 ……ま、俺がさっき「お嬢様がコクランについていく」ってな選択肢を残さなかったのはこのためなんだからさ。お嬢さまも戦力にはなるだろうけど、コクラン達にとっては守るべき対象なのだ。そんなのが近くにいちゃあ、本末転倒だっての。

 

 

「悪いがお嬢さまを頼んだよ」

 

「いってらー」

 

 

 俺は扉を開け放って出て行くコクランへ向かって、メインディッシュを咀嚼しながら適当に手を振った。

 さぁて、そんならカトレアを連れ歩く算段でもつけるかな。んーと、

 

 

「そんじゃカトレア」

 

「……はい」

 

「俺はこれから2の島に行くつもりだったんだが、少し予定を変更しとく。2~3日ってなら、まだまだ余裕があるからな。カトレアはどっか行きたいとこあるか?」

 

「……ショウと一緒なのであれば、どこへでも。アタクシはまだ、この辺りに詳しくは無いので……」

 

「どこでも、ね。そりゃまた案内泣かせな回答だなぁ。……ん、と」

 

 

 言いながら、FRLGのナナシマの記憶を思い返す。観光になりそうな場所は……と。どっちにしろ、ナナシマってトレーナーと連戦してた記憶が強すぎるんだよなぁ。面積の割りに密集してて。

 強いて言えば……うし。

 

 

「うし、6の島に行くか」

 

「6の島……ですか」

 

「ああ。あの辺なら散策には丁度良いし、自然保護区域だからな。観光目当てで行ってみても損は無い」

 

「……それなら、アタクシのバトル指導もお願いできます?」

 

「おう、いーぞ。引き受けた」

 

 

 6の島。ナナシマの中でも最も自然が残っている島で、遺跡群『てんのあな』やら数々の散歩道やらを要する所だ。

 カトレアの意向はともかく、単純に俺が行ってみたい場所でもあるからな。楽しみ楽しみ!

 

 

「そんなら、昼飯食ったら準備するか。カトレアの着替えやらはどうする?」

 

「……アタクシもこの間、テスターとして四次元バッグを購入しました。ご迷惑はお掛けしません……」

 

「お、流石はスクールの優等生お嬢様だな。んなら心配ないか。……俺もちょっとは準備し直すべきかねー」

 

「……ウフフ、そうですね。用意はしていても、損はありませんし」

 

 

 別荘を出て船に乗れば、今日中にも6の島に到着できるだろう。

 コクラン達の動向はちょっと心配だが、よーし。気合入れて観光に行きますか!!

 

 

 

 ……、

 

 

 

 ……、

 

 

 

 ……。

 

 

 

「(……流石はコクラン。Good Job です……!)」

 

 






 カトレアが猛威を振るっております。

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