ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ53 グレン島へ

 

 1993年、9月1日の始まった深夜。言い換えるならば、かなりの早朝。

 

 

「それではな。ショウ、気をつけなさい」

 

「うむ。無理はせんようにな」

 

「はい、善処します」

 

 

 グレン島のラボから連絡を受け、俺とミィは決戦のために島へと渡ることとなった……の、だが。

 

 

「それじゃあ、行ってくるんで! 後をよろしく!」

 

「ハンチョー! あとゴスロリの人! プリンちゃんも、頑張ってくださーい!」(跳ねつつ)

 

「いってらっしゃい、ハンチョウ」

 

「怪我にはお気をつけてー、班長ー!」

 

 

 我が班員3名からの声援。

 

 

「……頑張ってください。ショウさん、ミィさん」

 

「もう……こんな時にも愛想がないんだから、うちの男の子(レッド)は。あ、ショウ君もミィちゃんも、キミ達はキミ達のやりたい事をやってるようで何よりだわ。でも偶にはタマムシの御両親に顔を見せてあげてね? 親って、いつでも心配しているものだから」

 

「……あ、あの! ショウくn」

 

「ガンバだね、ショウ! ミィ! ファイト、オー! だよー!」

 

「……ぁぅ」

 

「……うわー、ねーちゃん。そりゃねぇぞ。……とにかく、ショウ! 負けんなよ!」

 

 

 そして順に、レッド、その母、ナナミ、リーフ、も1度ナナミ、グリーンからの声援を受ける。

 

 

「皆さん有難うございます。……レッドにリーフ、グリーンにナナミもな。こんな夜中に」

 

「……いえ……」

 

「おう!」

 

「ったく。こんな夜中に出発かよ」

 

「う、うん! 頑張ってね、ショウ君!」

 

 

 俺はマサラから船に乗り込む前なんだが、両博士だけでなくこの様な人々まで来てくれるという予想外の状況にあるのだった。なにせ夜中に発とうとしている訳で、その時間帯に港に云々というだけでなく、そもそも博士以外には知らせていなかったハズ。

 

「(……いや。見送りに来てくれることはけっこうあったんだけど……)」

 

 確かに今までもイッシュに行く際や各地方へと旅立つ際には、みんなが見送りに来てくれていたんだけど……あぁ、そうか。博士達にしか言っていないというなら、流出元は博士達だな。うーん。これは、気を使わせてしまったか? 流石に隠すべき部分は隠してくれてたし、やる気は出るから感謝しておきたい所ではあるんだけど。

 

 

「……ま、いいか。そんじゃ、行くか! ミィ!」

 

「そう、ね」

 

 

 見送られながらもゴスロリの幼馴染と2人で、未だデボンコーポレーションからチャーターしている小型の高速艇に乗り込む。この船であればここからグレンタウンまで、そうそう時間はかからないはずだ。

 ……うし、気合でも入れなおすか。

 

 

 

ΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

 

 と、まぁ。

 そんなこんなでマサラを旅立ち海を渡りきった俺たちの目の前には、既に件のポケモン屋敷が見えている。……さぁて、

 

 

「潜入……するまでも無いな。焼け落ちてる」

 

 

 隣にいる黒尽くめフード付コートを被ったミィと、状況を確認し合う。

 目の前に見える屋敷は昨晩から謎の火災に襲われ、未だ煙がくすぶっているという状況だ。しかしこうして屋敷をよくよく観察してみれば、ガラスが割れてたり、像やら柱やらがねじれたり削れたりしているなど、明らかに焼け落ちただけではない景観も見て取れるんだけどな。

 ミィも黒いフードの内側から辺りを見渡して、

 

 

「……この、有様。ロケット団もこの屋敷は放棄した様子ね」

 

「そうだろうな。……でも、目標はまだいるぞ?」

 

「えぇ。屋敷の、地下ね」

 

 

 どうやら俺たちがこうしてグレン島までくることになった原因であるポケモンは、未だ地下にて強力なチカラを振るっているらしい。

 ……だってさ。

 

 

 ――《ヒュォオォン》

 

 ――《ォ、ン》

 

 

「念波がなぁ……」

 

「漏れて、いるわ」

 

 《カタカタ! カタカタ!》

 

 

 とまぁ、お聞きの通りに『サイコキネシス』やらなにやらの余波だと思われる念波が、ここまで漏れてきているのだ。

 どうやら俺の手持ち達もその念波に含まれている闘争心に刺激されたらしく、先程からボールの揺れが鳴り止まないってな状況。

 ……うむぅ。気合入ってるところ非常に悪いんだけどせめて屋敷の地下に行くまでは揺れないでいて欲しいかな。侵入中なんで。

 

 

 ―― 、……

 

 

「……おう。どうやら皆空気を読んでくれたご様子で」

 

「……私の、手持ちもね。それなら」

 

「もう行くのか。そんなら俺も、と」

 

 

 ボールの揺れが収まった、直ぐ後。ミィが東側にある割れた窓から屋敷の中へと飛び込んだため、俺も続いて窓から中へと飛び込む。そんでもって着地した位置から柱の影へと隠れ、顔だけを出して屋敷の中を窺ってみてだな。

 ……うお。

 

 

「こりゃあ中々に酷い有様だな」

 

「――、――急――!」

 

「「――――!」」

 

 

 実際に入ってみると、外側から見るよりも酷い有様だ。屋敷の中は俺がいつか見た豪華な装飾の名残を残しつつもところどころが崩れ落ち、あちこちからあがった煙が充満している。

 さらに消火作業や熱傷を負ったポケモンの救助に当たっているのであろう人々の声もここ1階では聞こえているのだが、大変申し訳ない。今は先を急がせて貰うんで!

 

 

「脳内で謝っておいて、ラボ職員の救援要請はしてあるからご勘弁……さて。ゲームでは、3階だったか?」

 

「そう、ね。……こっちよ」

 

「お、階段あった。……つか、よくよく考えたらポケモンより人間のほうが火事場では危ないよな? ミイラ取りがミイラにならなきゃいいんだけどなぁ……特性じゃあなく」

 

「えぇ。確かに『ミイラ』は移るけれど……まぁ、人間には適用されないでしょう。……そして今、屋敷のセキュリティは全て閉じている筈。この隙に行くわよ」

 

「はいはい見事に流してくれてありがとうございます。……うわ、こりゃ煙いな」

 

 

 非常に無駄な話をしながらも、足は止めず。煙の中で人々の目を避けつつ、しかしそう遠回りもせずに階段で3階へと昇る。そして3階を暫く進むと、フロアの端に床が焼け落ちている部分が見えてくる。

 

 

「……あー、飛ぶんだよな? そこから」

 

「えぇ、降りるにはこれを使いましょう」

 

 

 ……これはアレだな。ゲームで飛び降りてた部分。

 そんな思考を繰り広げつつも、時間は有限だ。ここで尻込みしていても始まらないし、飛び降りますか! ただしミィが出してくれている、ワイヤー使って降りるんだけども!

 

 

「最近はよく飛び降りるなぁ、と!」

 

「……、いいじゃない。主人公っぽくて」

 

 

 俺は勢いよくミィは華麗に、まずは1階の「一般の入口とは隔絶されたスペース」へと着地をしてみせた。

 でもって、次は壁を回り込んで、1階から地下へと繋がる階段を駆け降りる。暫くの間降り続け……

 

 

「そんで到着、と。ここまで来れば人も殆どいないし……って、おお。地下は意外とキレイなんだな」

 

 

 そう。こうして走って目的の地下1階へと来てはみたものの、言葉に出した通り。ポケモン屋敷のその地下は、存外綺麗なままで保たれていたのだ。

 倒れているポケモンはまったくといって良いほど見当たらず、また、妙に空調の「はけ」が良いせいか上とは違って煙が充満している様子もない。有毒ガスもまたしかりだ。

 さらに地上部のカーペット敷きとは違い木目調の床となっているのも要因であると思うが、地下施設自体が今までと別種の雰囲気をかもし出している気がする。

 ……いや確かに、地下の研究は地上のそれらとは別種の、もっとアレな研究だったんだけどさ。ひとまずは置いといて。

 

 

「さて……こっからだな。頼む、ミュウ」

 

「お願い、レアコイル」

 

 《ボウン!》

 

「ミュ?」「キュ、キュ↑」

 

 

 互いにポケモンを1体出しておく。辺りに野生のポケモンは見えていないんだが……あー……これは「出しておかなければならない」だろう。

 なにせ俺達の目の前には、

 

 

「目の前には閉じた隔壁……で、向こうに『いる』な」

 

「……、来るわ」

 

 

 《――ギギ、ギ……》

 

 

 念波の大元を向こう側に控えた、如何にも分厚い、壁一面の隔壁。

 先ほどから地下へと降りる毎に強くなっていた『プレッシャー』の大元でもあるそいつは、この隔壁の向こうにいるのだろう。

 なにせその隔壁すら俺達の目の前では、「捻じ曲げられている」のだから。

 

 

 《ギ、ギ、》

 

 

 何か大きなチカラで痛めつけられている金属が歪み奏でる、いやに鈍い音。限界まで張詰めたその扉は、表面張力のごときバランスで成り立っているように見えてならない。つまりは、もうすぐ……

 

 

 《――ィン》

 

 

 軋む音が、止んだ。……やっばいぞ。

 

 

 ―― 来るか!?

 

 

 

 

 《ゴガッ、》

 

 

 《《カァァァアンッ!!》》

 

 

 

 

「ミ、ミュッ」

 

「うっお……あっぶな! どうもな、ミュウ!」

 

「ンミュ!」

 

 

 限界を迎え吹き飛ばされた隔壁を、ミュウが弾き飛ばしてくれた。非常にありがたい! ありがたい……が……

 

「(あー……こりゃあPPがガッツリ減りそうだな)」

 

 ……それと同時に、辺りにはズッシリとしたより一層の威圧感(プレッシャー)と煙が立ち込めた。しかし無常にも砂煙だけは時間経過によって段々と晴れ、俺達の目の前に立っている「そいつ」の姿が見えてきてしまう。

 

「(人間っぽいフォルムから2本の腕を構え、2つの足で地面に立ち、2メートルほどのすらっとした白色と紫色の体躯。おまけに体長ほどもある尻尾)」

 

 ついでに補足すれば、なんか形容しがたいオーラを放っている。……あと、フ○ーザ様じゃあない。たった今現した形容を言葉で聞けば、似てる気がしなくもないけどな。

 

 なぁんて、無駄思考は出来る時にしておいてだな。

 

 

「……出ちまったなぁ、ミュウツー」

 

 《ォ、ォォン?》

 

「ミュー!?」

 

「落ち着くんだ、ミュウ。まだアイツに戦意は――」

 

 《ィ、ォ、ォオッ!!!!》

 

「―― 戦意も、十分の御様子よ」

 

「キュ→ キュ↓ キュ←」

 

 

 俺の予想という名の願望が外れたのはいいとして……うーん。レアコイルもミュウツーのプレッシャーには落ち着かない様子だな。なんか空中でフルフルしてるし。

 ……つか、因縁浅からぬミュウはいつもと様子が……

 

 

「ミュー! ミュー♪」

 

 《スッ――スイッ》

 

「……ミュー」(重低音)

 

 

 違わないなぁオイ! 半ば予想通りか!!

 

 ……あー、ミュウはミュウツーの周囲をすいすいと飛び回っており、興味津々ないつも通りのご様子だった。ミュウツーもなんか呆気にとられて、ミューってな挨拶を返した気がする(実際に挨拶かどうかは知らんが)。

 そんな目の前の光景ではあるんだが、しかし、気を抜こうという考えには至らないな。

 

 

「だって、どうみても戦う気満々だよな?」

 

「えぇ。オーラが、そんな感じね」

 

 

 ミィがオーラ&プレッシャー仲間だからか解説をしてくれたが、ミュウツーはミュウと(多分)戯れながらも、その威圧感を減らしてはいないのだ。

 そして空中を飛び回っていたミュウは地上に立つミュウツーの頭1つ上あたりで停止し、

 

 

「ミュー」(重低音)

 

「ミュッ♪」

 

 

 行動指針が定まらず動けない俺とミィの前にて――

 

 ――「親子で」、笑い合っていた。

 

 

 

 …………って、おいおい待て待てこらこら。

 

 

 

「残念ながら、この笑顔は見たことがあるなー……」

 

「……、どこでかしら」

 

「……ギアナのジャングルで」

 

 

 俺には判る。2度目だしな。あれは互いに相手を「楽しいヤツ」と認めた、

 

 

 

 ―― 小悪魔的な、笑みだ!

 

 

 

 なんて風に判別がついた目の前で、ミュウとミュウツーが早速謎の光に包まれている。さぁて……全速力で、逃げるぞ!!

 

 

 《ヒィン――》

 

 

「……うっぉぉおお! 今回こそ早めに退避ッ!!」

 

「……戻って頂戴、レアコイル」

 

 

 

 ――《ズッ、》

 

 

 《《《ガォォォァアンッ!!》》》

 

 

 

 謎の広範囲、殲滅攻撃ぃっ!!!

 

 親子バージョンかよっ!!

 

 

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

 

 

「……っっっぷはぁ。……なぁ、何の技なんだ? アレは」

 

「知らないわ。……きっと、サイコキネシスなんじゃないかしら」

 

 

 2人して壁に隠れつつ、若干やけくそに、現実から逃避してみる。今の広範囲殲滅撃の正体なんて、ぶっちゃけどうでもいいんだがな。

 さて。こうして物陰に隠れたはいいものの、今の攻撃で辺りを覆っていた壁一面の隔壁が全て吹き飛んでおり、外に出るのが非常に容易になっているのだ。となれば俺達が出やすいのは勿論、ミュウツーも出やすくなってしまったハズ。

 

 ……この状況になったからには仕方がない。こうしていても始まらないし、ミュウだけで戦闘させるわけにもいかないから、さっさと物陰から出て行くべきだろう。

 

 

「……しょうがない。行くか?」

 

「……確かに、仕様がないわね。戦うわ。お願い、レアコイル」

 

「キュキュキュキュイ」

 

「うし、行くか!」

 

 

 ミィがモンスターボールからポケモンを出したため、再度物陰から出る。

 そして俺達の目に入ってきたのは、

 

 

「……ミュー」(重低音)

 

「仁王立ちかよ……で、俺達に何か用か?」

 

 

 先ほどと変わらず、傷1つないミュウツーだ。

 しかしミュウツーは俺達に視線を向けつつも、何故かその視線からは先ほどまでの戦意を感じなくなっているのだ。だから、とりあえずは聞いてみた。

 すると、ミュウが空中を滑りながら寄ってきて……どうやら解説してくれるご様子か。

 

 

「ミュミュ! ミュ、ンミュー♪」

 

「……何て、言ってるのかしら」

 

「あー……」

 

 

 空中をふわふわと漂うミュウのこの感じも、これまたギアナで見たことがある。

 その言葉を口にするのを若干ためらいつつも伝えなければならないだろうと考え、仕方ないので、告げてみる。

 何時ぞやのミュウも見せていたこの仕草は、

 

 

「……戦おう(アソボウ)、だそうだ」

 

 

 ……はぁ、まったく。何もそんな所ばかり(ミュウ)に似なくても良いってのに。

 けどまぁ、仕方があるまい。何しろミュウツーは「戦うために創られた」のだ。ここで製作者側からみて「戦わせるためにどうすれば良いか」となれば、その答えは「戦う事を好きにすれば良い」となってもおかしくはない。つまり元からミュウツーは戦う事こそが遊びで、なによりの楽しみであるという事なんだろーな。

 

 そんな思考を繰り広げている間も、目の前のミュウツーは尻尾をユラユラと揺らしながら、こちらの返答を待っている。

 

 

「しっかし、ふむ。つまりはバトルのお誘いだな」

 

「ミュー……」(重低音)

 

「モンスターボールに入るにしろ、まずは俺達の実力を見せろってか。……となれば街で手当たり次第にバトルを挑んで暴れられるよりは良いし、何で生まれたのかなんて面倒な問題に悩んでいる状況でもないみたいだから、俺達にとっては悪いお誘いじゃあないよな」

 

「成程、ね。ミュウツーは被捕獲率もかなり低い筈。……なら先ずは、私達が勝負に付き合ってあげれば良いということ。……それと、劇場版。私は好きよ」

 

「いや俺も好きだけど……って、どうでもいいな。さて、」

 

 

 ミュウツーと戦う、か。過程と道筋こそ違うものの、元から想定していた結末ではある。……しかし、「違う過程」こそが問題だ。

 戦う事を心から楽しんでいるこのミュウツーは悩んでこそいないものの、このまま放っておいてしまっては手当たり次第勝負を挑みかかっていくだろう。その行動はポケモン1体との勝負から始まり、トレーナー個人、集団、街……と広がっていってしまうとの予想がついてしまう。

 と、すれば。

 

 

「断る理由はあるが、断る道理はないな」

 

「……ミュー」(重低音)

 

「待たせて悪かった。返答はイエスだ」

 

「……ミュー」(不満気)

 

「……ん? あぁ、こんな狭いトコじゃあ満足に戦えないってか。ならどうするかねー」

 

「ミュー」クイッ

 

「向こう、は……海上だな。広いしそれなら被害も出にくい。うし、それで行こう」

 

 

 ミュウツーは、「ふたご島」のある東側を指差していた。

 ミュウツーにとってはただ「戦いやすい」って言うだけのチョイスなんだろうけど、被害が出にくいこと自体は俺にとっても有益だ。『なみのり』はまだ使えないけどダイゴから借りた船の期限が残ってるし、空中戦なら問題ない。

 さらに今ふたご島周辺は野生のポケモンが逃げ出しており、少なくなっているはずだ。それ自体、このポケモンとの勝負に集中するには都合がいいし。

 そう考えてみると、うん。この提案はまったく持って悪くないはずだ。……なら、

 

 

「なら、早速いくK」

 

「……御免なさい、ショウ。私は、申し訳ないのだけど他にやる事が出来たわ」

 

「……ぅえ? 本気で言ってるのか?」

 

「えぇ」

 

 

 俺とミュウツーがやり取りをしている間ずっと黙っていた隣の黒尽くめが、ここにきて衝撃の発言! 俺に1人でコイツと勝負しろと!?

 

 

「ミュー」(寂しげ)

 

「貴方も、期待に沿えずごめんなさい。でも、そろそろ来るの」

 

「何がだ?」

 

「……ショウ、ロケット団よ。なにかしらの変装をなさい」

 

「……あー。もしかして、ボスか」

 

「えぇ、その通り。しかも1人ね」

 

 

 どうやって察知しているのかは知れないが、どうやらサカキが上に来ているらしい。

 ……放棄したと思われる屋敷に1人で戻ってくるというその目的は読めないが、確かに。黒尽くめのミィはともかく、俺がこのままの姿で会っては面倒な事になるだろう。一応面識があるからな。

 

 

「なら、一旦ここで別れるしかないか。サカキは頼んだぞ? 俺は念のために変装してからコイツと遊びに行く。あとはお前の用事が終わったら、トレーナーツールで連絡くれ。どっかで適当に合流しよう」

 

「了解、よ。……それじゃあ」

 

「キュキュ← キュキュ→」

 

「おう、じゃあな。ミィ、レアコイル」

 

 

 俺が変装する間を稼ぐという意味でも、ミュウツーと外へ出る時間が必要だという意味でも、サカキをミィに任せるしかあるまい。

 そう決めたミィの行動は早く、レアコイルと共にすぐさま屋敷の外目指して消えていった様だ。

 

 

「……さて、それじゃあ行くか。ミュウも、外に出るから」

 

「ミューゥ♪」

 

「……ミュー」

 

 《シュンッ!》

 

「うぉ、消えやがったよ」

 

 

 待ちきれないとばかりにミュウツーが外へと飛び出した……の、だろう。その後を追うため、俺も謎のランプが明滅している機械群の中を走り抜けていく。

 

 ……しっかし、俺1人でどうにかなる相手なのかね?

 思ってたよりは確かに、分かりやすいヤツだったけどな。

 

 

 

 

ΘΘΘΘ

 

 

 

 

 ―― スッ

 

「……、……」

 

「オマエは……ふ。我が組織をことごとく邪魔してきたという、『黒いお人』か。オレの部下達が世話になっている」

 

「……、」

 

 ―― チャッ

 

「……オレの目的はオマエと戦う事でも、ましてや『アレ』を捕獲する事でもないぞ。それでもやるか?」

 

「……、」

 

「向こうに、夢破れた老人がいる。オマエが、せめて命くらいは助けてやるといい」

 

「……、……」

 

「成程、信用できないか。それも仕方がないだろう」

 

「……貴方の、目的は」

 

「っは。そんなものは決まっている」

 

「……、」

 

「オマエは、『アレ』をみて何を感じた? 恐怖か、威圧感か……成程。それも仕方があるまい。何しろ『アレ』は、強さを極めんと創られたポケモンだ。ヒトにとって脅威であるのは間違いない」

 

「……、」

 

「だがな。オレがそうであった様に、恐らくはオマエもそうだろう」

 

「……、」

 

「そうだ。決まっている。

 

 

 

 

 ……だからこそ、オレは『アレ』とポケモン勝負がしたいのだ」

 

 






 大分書き方を迷いましたが、屋敷内移動を省略せずに原作その通りに書きました。
 また、出来る限りの力を尽くしましたが、その癖、読みづらいことこの上なく仕上がってしまい・・・・・・申し訳ありません。

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