ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ5 携帯獣育成計画

 

 

 ――

 ――――

 

 

 数時間後。

 格闘道場の借り付けを終えた俺を待っていたのは、エスパー少女だった……!

 

 

「ようやく来たわねショウ。さあ、バトルを始めましょう!」

 

「……いやナツメさん。ちょっと間をはさんでくださるとありがたいんですが」

 

 

 まだ髪は背にかかる程度、両手に緑のオーラをまとい、赤色のモンスターボールを宙にぷかぷか浮かせている。既に臨戦態勢なんだよなぁ!

 そもそも、戦いはあまり好きじゃないって言ってなかったっけか? ナツメさん。

 

 

「戦いは好きじゃないわ。けど、自らを守るにも力が必要でしょう。それに悪意をぶつけるような『戦い』と、競技化された『ポケモンバトル』とでは差があるのだもの」

 

「競技シーンとか訓練はいいってことですか。あー、まぁそれはよくわかります。楽しいですもんね、バトルはやっぱり」

 

 

 エスパー少女なる職業柄、何かしらセンシティブな部分があるんだろうなぁ、と予測は出来てしまうもんで。悪意とか害意をぶつけられると、それは確かにキツそうだ。ポケモンで言うとプラチナのバトルフロンティアで(執事の後ろに)初登場したカトレアさんなんかが、そういった背景を示唆されていたはずだし。

 などと相槌をうっている間に、俺は手早くポッポとニドラン♀のコンディションの確認を始めておく。

 ……コンディション確認だけでわざわざ、ポケセンには行かないかなぁ。流石にカントーの中心地だけあって、ヤマブキシティには国営のポケモンセンターが優先的に建てられたけど……南西端の区画にあるからな。このヤマブキジムは北東端。ただでさえ公共施設での回復には待ち時間があるというのに、現在の俺では移動にも時間がかかるからなー。

 それに何より、ナツメさんに急かされてる!

 

 

「……ショウ。薬、足りているのかしら」

 

「おう、多分足りる。どうもな、ミィ」

 

 

 ミィにお礼を言いつつ。ポッポとニドラン♀は気力も……大丈夫みたいだな。よっし。格闘道場の皆さんの手持ちである格闘タイプではニドラン(毒)には効果いまひとつ、ポッポに至っては効果抜群の『かぜおこし』があるため、見事にカモだったりするのだけれども。ここは相手がナツメさん。万全を期したいところだ。

 さて、ここでバトルの前に俺のポケモン育成方針について少し話しておこうと思う。唐突だけど。

 結構な尺を取るんで、この部分は分割思考で無意識の海に沈んで体感時間が1000倍だったりあと別に飛ばしても問題ない。以下略!

 

 

 

 ―― 無意識の海

 

 

 

 大層な単語なのに、やっすい使われ方だな無意識の海!!

 とかいうセルフツッコミはさておいて。早々に本題へ入っておこう。

 

 つまりは、『基礎ポイント』……通称『努力値」を振るかどうか。

 もしくは『個体差』を気にするかどうか、というものだ。

 

 前にも少し話したが、この世界において、現在の所は俺は『必要』以上に努力値・固体値を気にする予定は無い。……実際にポケモンと触れ合ってみるとどうにも愛着がわいてしまい、厳選などする気にならなかったと言うのが正確だろう。

 パーティバランス、というのもあまり気にする予定はなく、ご縁があればどなたでも(大いなる語弊)。そのほうが楽しそうだしな。そもそもシナリオクリアと伝説捕獲くらいなら何とかなるだろう。

 

 ……というかそもそも、ゲームで言うところの「厳選」の類は本当に必要なのか? って疑っていたりする。

 その辺りはまぁ、結論出すには、研究結果が出てくれるであろう未来の到来を待つしかないんだけどさ。

 

 とはいえ、持っている知識を全く活かさないのもそれはそれで勿体無い気がしている。そこで種族を決め手にある程度の基礎ポイントを『必要』とし、最低限の役割(の様なもの)を持たせることにした。例えば攻撃においては「特殊」とだけ決めて努力値を振る……とか、とにかく「HP」の努力値は獲得する、といった具合。

 ただし「狙ったポケモンとだけ戦ってもらう」みたいなゲーム的な振り方は実用性がないので却下。普通に個体数とかあるからな。なのでそれについては減算性……努力値減少木の実なんかを活用させてもらおうと考えてる。どこで育てるんだ〜とか、そう言うのはまぁ学生になって時間ができた時にでも模索しよう。

 

 そんな感じだので、まずはポッポの育成方針から。冒険的には『そらをとぶ』要員を担当して欲しさはある。現在のカントーは、公的な移動手段に乏しいからなぁ。みんながみんな、自分のポケモンを持っているからこその弊害なんだろうけれども。

 戦闘においては、最終形態であるピジョットの習得技から考えて、「特殊振り」にしようと考えていた。特攻と攻撃の種族値に大差はなく、使いやすい『エアスラッシュ』や『ねっぷう』あたりが採用率高そうだなぁと。

 

 ただ、ここでひとつ問題がある。

 FRLGの時代にはエアスラッシュは存在せず、ねっぷうに至っては次世代での教え技だったのだ!

 

 知識が最新のものなのも運用次第だな……まあ良いか。『ぼうふう』が無い時代なのは、流石に分かってたんだけどさ。

 だので、特殊だけ!と決めることはしないでおこうと方針転換。そもそもが平均的ステータスであるのだし……ストーリー攻略面で考えると、『つばさでうつ』という超効率(PP脅威の35)の技があるだけに是非とも生かしたい。デバフ用途に『フェザーダンス』とかもあるしな。選択肢が多いのは良いことだ。

 

 次にニドラン♀の育成方針。冒険において担当してもらいたい秘伝技があるとすれば、『かいりき』と……多分……一時的に『なみのり』要員くらいかなぁ。覚えられる余裕があれば『いわくだき』も。常々、新作ポケモンの移動における利便性が向上していることを実感できる話題内容である。ビーダルさんとか、カイリューとか、トロピウスとかの有能性も同時に実感出来てしまうあたりは大変に切ない!

 そんな願望はさておき、ニドラン♀については、最終形態であるニドクインから役割を考えたいところ。ニドクインの「強み」を活かしたい。つまりは「技の多様さ」だ。

 ニドクイン(並びに夫)は、他のポケモンと比べても非常に多くの技をマシンや教え技によって習得できる。だとすれば、まずは大事なのは「効果抜群」の技を習得することそのものだろう。最終的には特殊がいいのかも知れないけれど……技を覚えるってどうやら大変みたいだからなぁ。この世界。ゲームでやってた1、2のポカン!は、システム的な都合による省略かの末なのだと実感できていたりする。遺伝技とかどうなってるんだろうな。いずれは調査に手を出したいところ。

 

 ただなぁ。ここについてはひとつ問題があって。

 ……技の多様さやらニドキングとの差別化やらのために、二ドリーナがレベル53で習得する『かみくだく』が欲しい!

 

 教え技や技レコードの存在が未だ確認できていないので、レベルで覚えられるならそれに越したことはない。正直、サブウェポンとして「あく技」は大変に欲しいところだしな。つまりはまぁ、進化石による最終形態への移行は、ニドランに関してはとても遅くなるだろうと言うことだ。

 

 

 

 ここで意識浮上。

 非常に分かりづらいうえにあっちこっちと考えが飛ぶ無意識だったなぁ。

 しかもこれから初められるナツメさんとのバトルにおいては、何ひとつ方針が定まっていないというな!

 

 

「……ぇ! ……っ……!」

 

 

 っと。ナツメさんから何かしら声がかけられている。

 無駄思考もしくは無意識から浮上したばかりなので、聴覚をそちらへ。

 

 

「ねえって! ニドランとポッポは大丈夫なの?」

 

「開口一番それは優しいなナツメさん」

 

「……。……やめなさい、ショウ……」

 

 

 えー。遅いことを咎めるでもなく、今の無駄思考の間、俺がポケモン達のコンディションをずっと気にしてるんだと思ってたってことだろ? 普通に優しいと思うんだが。

 俺がまじで?的な視線を向けると、ナツメさんはぷいと視線を逸らした。頬はちょっと赤い。寒いし仕方ないね(現実逃避)。

 デレた(おそらく)ナツメさんはミィに任せた方が良いと判断して、俺は準備スペースにて手持ちの確認を始める。現在の俺の手持ちはこんな感じ。

 

 

・ポッポ LV:13

『かぜおこし、たいあたり、すなかけ、でんこうせっか』

 

・ニドラン♀ LV:19

『どくばり、にどげり、ひっかく、なきごえ、しっぽをふる』

 

 

 『かみくだく』云々の件から、ニドランの方が若干レベリングは早めに進んでいたりする。技が4つなのはただの偶然で……と。

 

 もひとつだけ無駄思考をご紹介しておく。バトルに関わる内容だ。

 ゲームにおける「ターン制」が完全に無視されてはいないと言うこと。「すばやさ」が移動スピードにも影響していたり技の同時撃ちがあったり指示が面倒だったり……と色々要素はある。しかし何より、場所によっては繰り出せない技 ―― 「技の制限」があるのだ。

 ポケモンリーグの公式フィールドであればともかく、大掛かりな技……例えば『なみのり』とか『いわなだれ』なんかは、フィールドによっては規模がかなり小さくなる。大きな水たまりがなかったり、割って砕ける何物がなかったりするからだ。一応、ポケモン自体の「器官」を使って、技そのものを出すことには問題はないんだけどな。

 また、制限じゃあないが技に関して、ポケモンの覚えていることのできる技の量が4つ以上に増えている。これはゲームでは技スペースに悩んでいた俺からすれば嬉しい限りだ。ついでに俺達の研究データからして、この技の記憶容量にもポケモンの種族や個体による差は出ているようだ。

 その技も種類を変えればずっと出せるという訳でもなく……「出せる総数はおおよそ決まっている」とかな。パワーポイント(PP)まわりの都合をつける決まり事なのだろう。

 

 最後のおまけに、ダメージとか技の種類について。

 技ダメージはきちんと分かれていて……物理は「こうげき」特殊は「とくしゅ」を基準に計算されているみたいだった。つまりDP以降の基準である。ここはFRLG基準じゃなくてよかった、と心底思っていたり。

 ……と、長々と思考させてもらったけども…そんな感じで色々な変化があって、バトルをより難しくしており、ゲームのようにはいかなかったりするのだ。俺もミィも、その違いに四苦八苦している所なんだよ。

 

 で。最後の技とフィールドの関連性から、事前に確認をしておくのは大事だなぁという結論には至るので、今回のバトルフィールドを確認する。

 目の前に広がるのは、ヤマブキシティは「格闘道場」のメインフィールド。いやよりによってメインフィールドを貸してくださったんだよカラテ大王さん。お弟子さんが沢山いる道場からちょっと奥へ抜けた場所で、ポケモンがこれでもかと技を放てる広さを持つ立派なフィールドだ。リーグの公認も降りていて、かつての公認ジム候補に恥じない素晴らしい出来。

 地面の材質は板張りとかではなく、土。水・岩場的なものは今は無い。必要に応じて変形できるという脅威のギミックを内蔵していたりする。今は誰も水棲のポケモンを持っていないので、解放していないんだな。

 つまりは技に制限がかかるフィールドだ、と言うことなのだが……まあ、俺の手持ちになみのりだのを使えるポケモンいないから技制限なんて無いようなものだな!!

 ってな感じで。本当に無駄だった思考を閉じてバトルに切り替える。目先のナツメさんにフォーカスを合わせよう。

 

 

「……なに。早く準備しなさい」

 

 

 物理的にも視線を向けていたらお叱りを頂きましたありがとうございます!

 いちお、ナツメさんについて特徴と注意点を挙げておこうかな。何度もバトルはしてるんで判ってはいるんだけれども。

 

・現在の手持ちポケモンはケーシィとユンゲラー

・ユンゲラーはレベルが高い、切り札(おそらくLV:23相当)

・フィールドによる得意不得意は、エスパータイプにとって無いも同然。

・実際のエスパーポケモンは技ではなく「宙に受ける」。種族によってはこれもまた技じゃない『テレポート』までしてくる。

・ナツメさんは部分的にテレパシー(!)的なもので指示を出せる。

 

 

 ……最後のが特に厄介なんだよなぁ。

 つまりは口頭で指示を出さないってことは……「相手のポケモンが何の技を出したか、出されたか、出してくるのかが全くもって判らない」と言うことなのだから。

 うぉぅ。エスパーつよぉい!!! 初代のエスパータイプの強さをオマージュしてるのかな!(混乱)。

 まあ、でも。

 

 

「さあ、準備はできたの?」

 

 

 ニドランとポッポにウィンクしてから顔を上げると、既に準備を終えたナツメさんがいた。

 俺がはいと頷くと、ナツメさんは満足そうに頷き返した。

 

 

「今度こそは完璧に勝って見せましょう。エスパーというタイプにあぐらなんてかかない。わたしはこの超能力を含めたうえでの全力で、ポケモン達とバトルをしてみせる。この全力こそが、バトルにおける頂上に至る道だって、信じているのよ!」

 

「それはありがたいです。……というか手加減されても困りますからね?」

 

 

 ちょっとだけ挑発を含んで見せると、ナツメさんはどうやらお気に召したようで、ふふんと鼻を鳴らしてみせた。

 実際、エスパートレーナーとの対戦経験はかなり貴重なものだと思う。どんな相手、どんな条件でも、自分のポケモンに対してはその都度自分の最善を見せていたいっていう気持ちはよぉく判るしな。俺も。

 ……何より、そういう全力でのぶつかり合いこそが、ポケモンバトルの醍醐味なんだし!

 

 

「面白い勝負にしようか。ナツメさん!」

 

「ええ。貴方達、ショウ達が望むのなら。わたしとそのポケモン達の全力のエスパー、見せてあげるわ!」

 

 








 今読み直しても、とても説明回。
 ここで読者さんをふるいにかけていますが、当時の私には自覚がありません(ぉぃ。



2020/1220 とても修正。主に文言。

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