ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ3 マサラ、非常にまっさら

 

 時は変わらず1991年。

 俺はタマムシシティから、遠路はるばるマサラタウンにまで来ることになった。これもオーキドのおっさん……いや流石にこれからは博士と呼ぼう……の研究手伝いの一環である。

 マサラタウンはカントー地方の南西側。位置的にはむしろジョウト地方の方が近かったりもするくらいの端っこにある町だ。小さいが港も有り、グレン島との往還船が出ているため、ニビシティからそちらへ向かう人などはよくよく通る。まぁ、クチバシティからも船は出ているから、そっちの方が圧倒的に利用者が多かったりはするけどな。何が言いたいかというと、つまりは田舎町という訳だ。

 そんなマサラへ、タマムシ大学の大御所であるオーキド博士が拠点を移したのは理由がある。なんとオーキド博士はポケモンリーグの上位入賞を期に、故郷であるマサラへ研究施設をまるごと移したらしいのだ。凄い思い切ったことをしたなぁとは思うが……理由はわかる。これから大規模なポケモンの育成と管理を行うってのに、タマムシシティは地価が高すぎるんだよ。おかげで俺や研究班も一緒についてくる羽目になったのだ。

 ちなみに、ミィはマサラに来ていない。

 この間の試作品ボール使用に関するレポート報告をミィに任せたところ、大学に籍を残したままシルフカンパニーに引っ張られる事になったらしい。……シルフカンパニーとか、なんかのフラグだろうか。あちらに所属してくれるのはとてもありがたいので、そのまま出向してはもらうのだが……ううん。

 ま、なんとかなるだろう。近況を報告。

 

 現在、俺の手持ちはポッポとニドラン♀。

 ……あっさり増えたな! ニドラン♀!

 

 実は、シルフカンパニーに出向く前に妙な気迫を纏ったミィに連れられて、ニビ辺りまで捕まえに出向いたのだ。ミィはニドラン♂を捕まえ、俺が♀。ゲームのNPC的には逆じゃないか? とは思ったが、まあ別に良いだろう。この時点じゃあバトル的には大差ないと思うし。そもそもニド夫婦自体、技のデパートであることには相違ない。

 ついでに言えばポッポとの関係も中々に好調で、戦闘の指示などは問題ない状態だ。この間『かぜおこし』を覚えて、戦闘の幅も広がってきているしな。基本的にボールからは出して生活してもらっていて、洗濯や買い物なんかを積極的に手伝ってくれている。順応早くないか……いいけど…

 

 次に、開発中のポケモン図鑑の話。

 最近、実際にポッポとトレーニングしていて思ったのだが……ポケモンのステータスが目に見えないのがキツいのだ。当たり前なんだが、ポケモンのステータスは自動的に表示されてくれる訳じゃあない。俺の場合は技を覚えたポッポが嬉々としてアピールしてくれたので大体のレベルが分かったが、普通に見ている分には細かいレベルがはっきりしないのだ。体力(HP)は何となく分かるんだけどなあ……。

 実はモンスターボールに表示されてくれたりしないかと期待してみたものの、そのボール自体も普及の途中。パソコンの預かりシステムの管理者はそっちの開発にかかりっきりでそんな機能に力を割く猶予はないときた。俺としては、ゲーム通りにはいかないとはいえ、数値は存在するなら可視化するのも悪くはないだろと踏んでいる。

 そこで、図鑑である。

 現在の図鑑は単純にポケモンの属性、進化などから系統的にナンバーを割り当てて配列したもの……つまりは本当にゲームの『図鑑』メニューみたいな機能だけが搭載されている。そこに俺はポケモンの種族としての成長限界を100とした相対的な肉体・知能成長……「レベル」のチェック機能をつけようと提案してみたのだ。こないだの図鑑開発ミーティングでな。これら数値の判明は、かなり育成が違うと思うんだ。

 レベルチェック機能は図鑑意外、例えばポケモンセンターに置いたポケモン交通専用PCなどにも機器を配置して、一般トレーナーも使用できるようにすれば万々歳。とはいえ図鑑自体もまだまだ未完成なので、俺はレベルや種族判別のための外観データ採取に駆け回る毎日である。

 などと頭の中で今後の予定を立てている内に、1軒の家の前を通りかかる。

 

「(……おっと、挨拶しておくか)」

 

 そう考えた俺が家の近くに寄ると、庭で遊んでいた2人の子どもが近寄って来る。

 

 

「ショウ! 今日はなにやってるの?」

 

「…………」

 

 

 今はまだ帽子を被っていないこの2人。黒のワンピースの気さくな少女と、無口ながらに視線を俺から外さない少年。ああ。原作主人公たちである!

 

 

「よっす。リーフにレッド。今日も元気だな」

 

「おー! 元気だ元気!」

 

「……(ペコリ)」

 

 

 俺の挨拶に、元気に飛び跳ねた方がリーフ。FRLGの女主人公になる奴だ。無口なほうが言わずと知れたレッド。これまた主人公候補だな。

 あと、2人は俺の1つ年下ながらに同年代。リーフが妹だが、出生月のおかげでギリギリ、レッドと同学年となったのである。

 さてそんなレッドとリーフの2人だが、俺がマサラに来てからは結構付き合いがある。そもそも住民が少ないマサラ在住のうえ、子どもはさらに少ないからな。とはいえ俺と遊ぶ時はバトルの見学とかだったり、俺の研究中にポッポ達と遊んでいることなんかが多いけど。

 

 

「学校は終わったのか?」

 

「終わった! 今、ナナミお姉ちゃんと一緒にトキワから帰ってきたところだよー!」

 

「……(こくり)」

 

 6才とは思えない程クールだな、レッド!

 まあ、レッドは無口なだけでポケモンを見る目は優しい。何より、仏頂面で分かりづらいが……唇の端は緩やかに上吊り。笑顔なのである。将来のチャンピオンは、ポケモンへの愛情も並々ならぬものなのだろう。ポケモンへ愛情を注げることも才能の一部、ということだ。

 

 

「で、ショウはなにやってるのー?」

 

「今度外国に行って現地調査をすることになっててなー。その準備だ」

 

「外国!? 外国行くの?」

 

 

 リーフの問いにおうと頷く。

 なんとなんと。来年度、俺と別の研究班との合同で、大きな調査が行われるのだ。その場所が場所だけに、俺としてもポケモン界としても最大級の調査だろうと思う。実際には図鑑分布調査のための試運転みたいな感じなのだが、そこへ思わぬ出資者が現れたので、ついでに相乗りさせてもらったという流れだ。

 俺は研究についてリーフに噛み砕きながら説明し、隣のレッドへも視線を向ける。すると。

 

 

「……あの、ポッポとニドランは元気ですか……」

 

「そうだ、ポッポとニドランは!?」

 

 

 どうやら2人とも俺のポケモンたちにご執心の様子。

 ……まあ良いか。ちょうど2人の母である叔母さんも来た様だし、家の中なら任せても良いだろう。

 

 

「どうも叔母さん。いきなりですが、こいつらをお願いしても良いですか?」

 

「あら、全然いいのよショウ君。2匹とも上手に遊んでくれるんだから」

 

 

 遊んでくれるか。実際その通り。

 俺はポーチからボールを外し、ポッポとニドラン♀を外へ。

 

「ッポー!」

 

「キュゥン!」

 

「じゃあ……レッドとリーフ。仕事が終わるまでこいつらを頼んだ!」

 

「頼まれたー!!」

 

「……はい」

 

 

 2人と「遊んでくれる」事になるポッポとニドラン♀にも「よろしくな」と声を掛けると、2匹から鳴き声による返答があった。うん、任せるぞ。

 さらに叔母さんに再度お願いしますと伝えて……うっし。研究所に行って計画を詰めるかな!

 

 

「ショウ、後で遊びに来るんでしょ?」

 

「おう。行くと思うぞー」

 

 

 研究所へと振り返りつつの俺の返答に、リーフは顔を輝かせる。

 

 

「後でエキサイトバ○クしよう!!」

 

「……今度こそあのコースをノーミスで走破してみせます……」

 

「ふはは! 俺の技術の粋を凝らした新開発コースは、オーバーヒート必至だぞ!」

 

 

 そう。この時代じゃメインはファミコンである!

 早くスーファミ出ないかな!!

 

 






 一応FRLG本編は時代としてもうちょっと先なので本当はゲーム機の進化も進んでいるのですが……年代的な方を優先しています(ファミコン



2020/1214 かなり改稿 主に文体整え

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