ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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Θ16 預かりシステム

 

 

 同年、1992の9月。

 相変わらず俺は研究に明け暮れている……のだが、今日は少し毛色が違う仕事だ。

 

 

「いやいや……ゴールデンボールブリッジて、これセクハラだろ」

 

 

 周りに誰もいないにも関わらず呟いたのは、この状況では仕方ないと思うんだ!

 

 

 ……あー、現在俺はハナダシティの北の方へと歩いているところ。目的はハナダ岬にある家だ。

 だが、途中にある橋のネーミングにツッコんでしまったのだ。未熟だな、俺。

 

 …………いやツッコミ入れるけどな、普通! 流石にっ!!

 つか、橋のモニュメントすら金メッキした球体って、どんな拘りだよ……。

 

 

 さて。

 まだ少し後ろ髪を引かれながらも、本題に戻らなくてはいけないので戻ることにしよう。

 

 現在向かっているハナダの岬には、俺と同じタマムシ大学に属する1人の研究者が住んでいる。その研究者 ―― 「マサキ」は、ポケモンセンターに配置されている「預かりシステム」の開発を行っているのだ。

 で、その完全開通が来月に決定したため、本日俺はその預かり先を利用するポケモン研究者からの代表として、挨拶を兼ねてシステムの説明を受けることになっているという次第。

 

 

「いやいや……ハナダの人のギャグセンスって、あんななのか? ……そもそも、アレはウケを狙ってるのか?」

 

 

 などと未だ分割無駄思考に余念が無い俺だったが、意識が浮上したところで顔を上げると――

 

 

「……なんだろうな、あの集団」

 

 

 自身の前を歩く集団に気づいた。

 

 1人はオレンジショートカット、その隣はビッグ三つ編みメガネ、1人は帽子を首から後ろに掛けてサングラス、最後の1人は金髪ポニテ。

 

 

「でもって全員女……。ほんとに何の集団だよ……って、あ。マサキん家入った」

 

 

 しかもその集団は全員、俺の目的地でもあるマサキの家へ入っていった。

 ……謎が膨らんだだけで、全くもって謎の解明へのヒントにはならないけどな。

 

 そんな風に思案しながらマサキの家の前に着いた俺は、しかし中には入らず少々考察をすることにする。

 

 

「(……男女比が……)」

 

 

 現在のマサキの家の中の男女比は、おそらく男:女=1:4だろうと推測される。

 そして、その状況は俺の心象的によろしくないな。うん。

 

 そう結論付けた俺は――

 

 

「……俺、逃げて良いかな?」

 

 

 

 ――「なん! (男性パート)」

 

 

 

 ――「でや!! (女性パート)」

 

 

 

「「ねん!! (両者)」」

 

 

 家の中から飛び出してきた関西風コガネ人と先程の金髪ポニテに、ツッコミを入れられることとなったのだった。

 

 

 

 ――

 

 ――――

 

 

 

「いやぁ全く。冗談キツイわー」

 

「いや、冗談でもないけど……っと、その前に説明を頼んでいいか?」

 

 

 結局は家の中に入った俺だが、こちとらこの状況には順応できて無いんだ。ツッコまれるのは、まぁ、別に良いんだけどな。

 

 

「おぉ、そやな。じゃ、まずは紹介するわ」

 

 

 マサキの紹介によると、オレンジショート=アズサ、ビッグ三つ編み=マユミ、金髪ポニテ=ミズキといって、彼女らはそれぞれ総管理施設、ホウエン地方、シンオウ地方での預かりシステムの管理を行う予定らしい。

 

 因みに、俺はアズサとマユミについてはマサキから名前を聞いて思い出すことができ、……確かに、ゲームで見たことがあったと思う。

 アズサは「ポケモンボックス」で見たし、マユミはRSの部屋が片付かない御人だったと記憶しているな。

 

 ……ミズキ? 

 俺はプラチナは???のボックスのままブレーンを狩ってた人種だから、あんまり印象に無いんだな、これが。誰かからイーブイを貰った記憶はあるんだけどなぁ……。

 ……ん、おっと。俺のボックス管理人への記憶のなさはどうでもいいだろう。んでもって、もう1人紹介が残っている。

 

 

「そのサングラスの人は?」

 

「あぁ、コイツはユカリ。関係を話すんはちぃと面倒なんやけど、まず、マユミの姉のアズサに総管理人をやってもらうゆうのは言うたよな?」

 

「おう、さっき聞いたぞ」

 

 

 この世界での「ポケモンボックス」は、全国から預けられたポケモンの管理を行う施設だ。その施設でのシステム管理を統括する人がアズサだと言っていたな。

 

 

「でもって、ショウらみたいな研究者がポケモン観察するんには、ポケモンを外に出しとける環境が必要やろ」

 

「あー、ポケモン牧場……だったか?」

 

 

 そう。俺達は預けられたポケモン達の一部からデータを取って研究を行う予定であり、そのためには、ポケモンがポケモンらしく生活している所を観察するのが望ましいのだ。でもって、その「らしい」部分を引き出すために、ポケモンを預かりながらもボールから出して生活できる施設が「ポケモン牧場」であると聞いたことがある。

 

 ……なんか、俺の知ってる「ポケモンボックス」「ポケモン牧場」とはかなり違うんだけどな。まぁ良いけど。

 

 

「そやな。でもって、ユカリにはそこの管理をして貰おうとおもとる」

 

「まぁ、この話の流れだとそうなるか」

 

 

 つまりここに集まったのは、預かりシステムに関連する管理人達と言う訳か。んじゃ、まずは挨拶からだな。

 

 俺は椅子から立ち上がり、彼女らの方を向いて自己紹介を始める。

 

 

「どもです、お姉さん方。俺はショウ。今はマサラにいて研究者をやってるんで、預かりシステムには研究方面で凄くお世話になると思います。今後とも是非、宜しくお願いします」

 

 

 俺は目の前にいるマサキへ砕けた口調を使ってしまっていることから、ある程度敬語を崩し、普通に話すことにする(元々、正しい敬語ではないんだが)。

 その所為で変な口調になったが、俺は8才なのでまぁ良いだろう。

 ……都合の良い時だけ逃げ道に年齢使うよな、俺。

 

 でもって(置いといて)、俺が紹介を終えると、次いで管理者軍団も紹介を始めた。

 

 

「あ、どうもありがとうございます。私はマユミといいます。南の方の通信機構構築を担当していますので、よろしくおねがいしますね」

 

「私はアズサ。さっきマサキも言ってたけど、マユミの姉よ。知ってるとは思うけど、ボックスの総管理をさせてもらう事になったわ。ま、わたし1人でやる訳じゃあないんだけどね。国の研究者もかなり使う事になってるしさ」

 

「ユカリです。アズサの友人でして……なんだかポケモンに関われる仕事があるって聞いて、牧場を受け持つ事になりました」

 

「でもってトリはウチ、「マサキさん2号」……ちゃうわぁ!! どないやねんっ!!」

 

 

 さっき家の前で俺にツッコミを入れていた金髪ポニテが、俺の茶々入れに対して律儀にツッコむ。口調的に、この人もコガネの人なんだろーな。

 ……まぁ良いとして……あぁ、ミズキはからかうと面白いかも知れないな。

 

 

「すまんな、ミズキ。なんだかボケないといけない空気を感じて……」

 

「……ウチはなんでしょっぱなから、いじられキャラが定着してんねん……」

 

 

 訂正。ちょっと可哀想だし、なるべく控えようと思うんだ。

 きっといつもいじられ役なのだろう……。

 

 

 

 

ΘΘΘΘΘΘΘΘ

 

 

 

 

「あー……やっぱ専門外の部分はよく判らないな」

 

 

 そう言いながらマサラへと帰る途中の俺は、預かりシステムについての説明を一通り受け終わったところだった。

 転送は電波化データ化が云々とか、牧場にも研究員兼従業員として何人かを常駐させる事とか、実はニシキとか言う人もいるんだけど彼の役割はちょっと特殊だとか何とか……。

 

 まぁ、マニュアルも貰ったから後で見直せばいいか!!

 

 

 ……全てを無駄としたマニュアルの存在は置いとこう。顔合わせの意味が大きかったんだよきっと。うん。

 

 さて、切り替えて。

 

 ポケモンセンターの全面運転が開始されている現在、預かりシステムも完全開通することでトレーナーにとってはより便利な時代になるだろう。

 それは俺達研究者にとっても同様である。

 

 

「(この成長は、やっぱり国が力を入れてるからだ)」

 

 

 実際、国が総力を挙げてポケモン事業に取り組んでいるからこその現在の急成長だ。

 ジムやリーグの運営、トレーナー用のフレンドリィショップへの比較的高めの税金、国内にいる世界的権威オーキド博士の存在……。

 これらがそろっている状況で、ポケモンはより身近なものになったと考えられる。

 だが、この世界ではずっとポケモンと共存してきたとはいえ、近年ほど急な変化を伴ってポケモンが身近になったことは、今までに無かっただろう。

 それはとてもとても、大きな変化で……

 

 

「だけど……そこを狙われるんだろうな。サカキに」

 

 

 トレーナーが多いからこそ、国の中で大きな部分を占めているからこそ、ポケモンと人との距離が近くなったからこそ……「ポケモン犯罪」がより大きな力を持つようになってしまうのだ。

 

 この状況でもし、サカキの計画が……

 

 ……いや、それ以前に、

 

 

「……まぁ……止めればいい話だな」

 

 

 止めなくては原作がブレイクだし、何より……止めなくては俺がこの世界を楽しめなくなってしまう。

 ならば、サカキ達を止めてしまえばいいだけの話。

 そして何より心強いことに、サカキ達を止めるのは俺だけではないのだから。

 

 じゃあ、まずは。

 

 

「そのために……っと。明日は休みだし、久しぶりにバトルの練習がしたいかな」

 

 

 そう考え、今度は誰とどんな練習をするかについて、またもや考え始めるのだった。

 

 

 

 

 

 (※多少真面目なことを考えていますが、主人公は只今セクハラブリッジの上です)

 

 


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