―― 2ターン後。
――《バチバチィッ!!》
「ミュゥ!!」
「たのむ、耐えてくれニドリーナ!」
「ギャウッ!!」
「反撃だ! ピジョン、かぜおこし!」
「ピジョォ!!」
《ゴウッ》
――《スイッ》
「……ミュウゥ♪」
かわすか! ミュウ強いよ!!
なにせ、一部を除いてほとんど全ての技を覚えるポケモンである。俺もなんとなく予想はしていたが、この世界ではおそらく……本当に全ての技を「記憶」できるのだろう。
つまり、タイプ相性・レンジ(射程距離)・直接間接が自由自在なチート性能である!
そのうえ只でさえ技の使い勝手がいいエスパータイプで、空中も自由自在に飛び回っている(ミュウの特異性なのかエスパーによるものなのか……飛んでいる原理は分からん)。
つまり、チートの詰め合わせであったのだ……っと! 反撃タイム!
「ピジョン、でんこうせっか! ニドリーナはどくばり!」
「ピジョッ!」
「ギャウ!」
現在、ミュウ1匹に対して俺達は2匹がかり。ダブルバトルの練習もしておいて良かったと思う!
それでもミュウは、全く2対1を苦にする様子が無いけどな!
そんなミュウへ2匹の攻撃が向かっていく、が。
「……ミュウゥ!」
――《カァン!》
「ギャゥ!?」
――《ゴイン!》
「ピジョッ!?」
『どくばり』も『でんこうせっか』も正体不明の「何か」で弾かれる。
……さっきから使われているその「何か」について、対策をする必要があるだろう。
「(……あれは……『まもる』にしては違和感がある。まぁ『まもる』見たこと無いけど)」
何故違和感があるかと言うと、技を使ったにしては隙が少ないからである。
この世界では、ターンという概念こそ無いものの、かわしたり技を使ったりするのに必要な総時間……所謂「隙」によって、擬似的なターンの様なものは存在している。
それにしてはミュウの「何か」は隙が少な過ぎるのだ。
……予想はできているし、確かめるか?
「……ピジョン、かぜおこし!」
「ピジョ!」
《ゴゥウ!》
――《スイッ》
「(これは、かわされた)」
「ニドリーナ、どくばり!」
――《カィイン!》
「(これは、弾いた。……。)」
「ミュゥウ!!」
《キィイイイ――――グニャッ!!》
ここでミュウから出された「空間の歪み」が、波のようにニドリーナへと向かう。
「……ギュ! ……ャウゥ!!」
「……よし! まずはニドリーナ、戻ってくれ。 んでもってピジョン、しばらく『セルフ』で頼む!」
「ピジョ!」
俺は暫く『セルフ』、つまりはピジョンに行動を任せることにする。
ピジョンの『ふきとばし』はとても使い勝手がいいため、時間を稼がせたら一級品だ。その点について作戦を立てておけば、何とか凌げるだろう。
そしてピジョンに任せている間にニドリーナを近くに呼び、手元で薬を使って回復を図る。
ついでに、ニドリーナはミュウの技を幾つか(おそらくは『サイコキネシス』と『でんきショック』)を食らっているため、効果抜群のエスパー技の威力を半減する「ウタンの実」を再度持たせることに。
「――ピジョッ! ジョ!」
「……ミュ! ……ミュウ?」
――《スッ》――《スイッ》
ミュウとピジョンはけん制し合っていて……今のうちに思考を開始して対策をまとめよう!
ΘΘ思考開始ΘΘ
思索の海の再登場ではなく、マルチタスクによる分割思考だ!
この間僅かに0.…………どうでもいいですよね、はい。
では、思考開始。
さっきから技を弾いている様に見えるミュウの「何か」について、まず……弾かれたのは『どくばり』と『でんこうせっか』で、ミュウがかわしているのは『かぜおこし』。
この2つの違いは、前者2つは「物理技」、後者は「特殊技」だという点にある。
そして物理技への防御力に関するステータスである「防御」とミュウのレベル習得技を照らし合わせたところで、自分の「防御」をアップさせる『バリアー』という技に思いあたった。
「(バリアーも実際に見たことがある訳ではないけど)」
『バリアー』は積み技であるため、最初から展開してさえいれば先ほど挙げた「ターン」が必要ないというのが根拠としては大きい。
……というか、技を弾いたときのあの《カィイン》とかいう妙な音といい、これが『バリアー』なら俺のイメージ的にもぴったりである。イメージとかどうでもいいが。
「(じゃあ、アレはバリアーであると仮定しよう。だが、どう打ち破る……?)」
『バリアー』は攻撃を無効化する技ではなく、あくまで「防御」力アップ。
だとすればミュウ自身も幾らかダメージは食らっているはずだが、このままでは攻撃力の差でこちらが先に力尽きてしまうに違いない。
しかし、俺達は積み技を無効化できる『くろいきり』の様な技を持っていないし……ということは、物理ではなく「特殊技」で攻める必要があるだろう。
「(ダメージ源は「特殊技」だな。けどピジョンでは攻撃力も足りないし、さっきから避けられている)」
まず、物理技ではあるがニドリーナには効果抜群の『かみつく』がある。しかし、ミュウは空中にいて、かつ「間接技」がメインなので当てることができないだろう。
次にピジョンだが、ピジョンの「攻撃」と「特攻」の種族値は同程度で、低くも高くもない。
なのでミュウが『バリアー』を積んでいるとすると、「攻撃」の種族値が関係する「物理技」では満足なダメージは与えられないと思う。
……だが、『バリアー』の能力上昇を無視できる「特殊技」でもピジョンの種族値的に大したダメージにはならないし、そもそもミュウが『じこさいせい』できる可能性もある。そうなっては決定打にならない。
そのうえ、ピジョンの攻撃は相手に避けられている。ミュウはすばやさ種族値も「100」でピジョンより早いしなぁ、確か。
「(なら、まずは当たるように『足止め』。次に『連打』だな)」
つまり、作戦はこうだ。
1.ピジョンの「特殊技」が当たるようにニドリーナで「足を止め」させる。
2.ピジョンが「特殊技」を反撃させずに「連打」して、数でダメージにする
3.多分倒しきれないので、削ったところを捕獲。
……さて、この作戦では「どうやって連打するか」が足りないが、俺に心当たりがある。
「(虹は……でているか!)」
ちなみに、サテラ○トキャノンを撃つためにマイクロウェーブ照射するわけじゃないからな!
そうして、俺が木々の開けた空を見上げると、まだ虹は出ていた。うっしゃあ!
自然の虹なので、BWのように4ターンでは消えなかったようだな。
よし。これで――
ΘΘ現実回帰ΘΘ
――反撃開始だ!
「ピジョン! ふきとばし!」
「ピィ……ジョ!!」
《ゴオォォウ!!》
「ミュ……ミュウ!!」
《ゴォォオウ!!》
ピジョンが先ほどから続けている『ふきとばし』をもう1度放ち、ミュウもおそらく『ふきとばし』だ。同威力の風が押し合い……
……その間に俺は、虹がより近くなる位置へと移動。
《ォォォゥ……》
風が消えたところで、出番だニドリーナ!
「行こう、ニドリーナ! ……どくばり!」
「ギャウ!!」
「ミュッ!」
――《カァン!》
やはり『どくばり』は弾かれる! だが!!
「……! ……ミュ!?」
ミュウがバランスを崩した。よし、状態異常の「毒」が効いてるな!
「ピジョン! (こっちから!)」
俺はこの隙にハンドサインでピジョンに位置取り……俺の真上に来るよう指示する。
そしてピジョンが真上に来て、ミュウがニドリーノの方を向いて技を出そうとする……
「ここだ、たつまき!」
「ピジョォォ!!」
《ゴウゥッ!!》
「ミュッ……!!」
うし、ミュウに『たつまき』があたった! このまま連打!
「ニドリーノはどくばりを、ピジョンはたつまきを……できる限りの速度で連発!」
「ピジョォ!」
《ゴウウッ!》
「ギャウゥ!」
《ビシュッ!》
――「ミュ! ミュゥゥウヴ!!」
ミュウは『どくばり』で「毒」を受けて動きが鈍り、鈍ったことにより避けられなかった『たつまき』でひるみ続けている。
さて。ここでひるみで「連打」できているという状況、その種を明かすと、
―― 天候、「虹」の効果は「追加効果がでやすくなる」なのだ。
「はは! つまりは運頼み!!」
ここに来て運ゲである!!
……だが運さえあればこのミュウに勝てるというなら、リターンは悪くないと思うけどな!
そして、2ターン程攻撃をうけたところでミュウの纏っていた光が弱くなり、俺はボールを振りかぶって、……投げる!
「……そらっ!!」
《シュルルル》――
――《ボウン!》
「(ダメージは十分なはず!)」
ミュウは投げたボールに収まり、
――《カチッ》
その中から出てくることはなかった。
ΘΘΘΘΘΘΘΘ
さて、こうして激闘の末にミュウを捕まえたのだが……
「どうしましょう。ノリで捕獲してしまったんで親登録が俺なんですが、8才なので法律的には……」
「いいんじゃないかね?海外だし」
じゃあいいか!
捕獲できたとはいえ、倒しきるのは多分無理だっただろうし。
ちなみに海外では未だ「トレーナー資格が10才から」しか制定されていないらしい。俺の
……まぁ良いか。
とそこへ、
「ハンチョー! だいじょぶですかー!」
事態の収束を察知して他の班員も集まってきたため、俺は対象の捕獲を告げる。
……おぉ、動ける班員が増えてる。どうやらあれから何人かは回復したみたいで、何よりだ。
「それじゃあ、帰って休むとしますか!」
「「了解です、ハンチョー!」」
「いや、そこは研究じゃないのかね……」
フジ博士のツッコミが入るが、こちらは疲労困憊だから良いだろう!
……などと爽やかに締めようとしているが。この後俺達は負傷した班員を運ぶという重労働に追われ、休むどころではなかったのは……当たり前の話だ。
ミュウ、捕獲です。
さて戦闘に関して幾つか、今回は私が自分でツッコミと解説を入れたいです。長いですスイマセン。
本当は作中で全部解説できればいいんですが、私には力量が足りませんでした。未熟です……。
《以下、興味ない方は飛ばして下さって全く構いませんです》
ΘΘΘΘΘΘΘΘ
1.『ふきとばし』について
『ふきとばし』の有用性について述べてますが、対野生ポケモンにおいては優秀な時間稼ぎとなります。そもそも技自体が、先に繰り出すことができれば『かえんほうしゃ』などは吹き飛ばせるレベルで優秀です。なにしろ、ポケモンを吹っ飛ばせる技ですから。まぁこの世界においてはあまりに重いポケモンとかは無理ですが。
あ、時間稼ぎになる理由はこの技が『相手とのレンジをあけることのできること』、『攻撃範囲がめっぽう広いこと』、『風の中では反撃されにくいこと』があげられます。ピジョンなど飛行タイプにおいては空中から出せるのでなおさらです。
ですが原作どおりに『準備に時間がかかるため、原則として後攻技』となっているため、使う場所を選ばないといけないです。この点を主人公は「指示の先だし」や「元々の距離をあけること」、今回では「別のポケモンに注意を向けさせる」ことで補っている設定です。
……と言っても『かぜおこし』との差は風の向きと威力、持続時間としか決めてません。非常に中途半端です。
むしろ、技の中にはこんな感じの「現実なら便利そうな技」って沢山ありますね……。
2.「虹」について
まず「虹」状態ですが、天候というよりはBW御三家の合体技みたいなもので、本当にあります。
一応第5世代から実在しており、4ターンの間「技の追加効果が出やすくなる」とされていますね。ダブルは詳しくないのですが、「虹」はマイナーな方だと思われます。「火の海」とか「湿原」というのもあって、そちらは使い勝手もよさそうでしたが。
本作でも「虹の麓」という地形での限定効果ということで採用しました。あと、脳内風景的に綺麗そうだったので。
こうでもしないとミュウさんに勝てる気がしなかったんです……。
3.「連打ひるみ」の場面で
ピジョンより早いはずのミュウが、「毒」状態とはいえめっちゃ先手取られてますね。
これは主人公が先にニドリーナを向かわせて「ターンをずらした」からです。
ここではミュウがニドリーナに攻撃する前までピジョンが「ターンを遅らせてずらした」ことによって、擬似的に先手を取りました。(主人公のタイミング指示によってずらしてます)
まぁつまりは「マラソンで1週遅れになると先頭っぽくなる」理論です。
4.運ゲについて
ポケモンって運ゲになることも多いですよね。
というか、この世界設定でのミュウさん考えたら強すぎたんです……。
原作遭遇はLV:30のはずなのに。
5.主人公のボール命中率が凄い
野球好きなのと、練習してますので……ということにしといて下さい。
その内、投げずに直接ボールを持って触れさせようかとすら思ってる次第です。
もしくは誘導機能を付与。
……趣がないのでやっぱり却下ですかね……
ΘΘΘΘΘΘΘΘ
と、書いてみましたが、私の脳内設定ですのでお気になさらず。
ぶっちゃけ自分で書いていて「設定に凝ってるくせに、これだけツッコミどころあっていいのか?」とすら思います。
無駄にバトルにも凝るくせに、描写力含め全般が未熟なもので……。