ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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1996/冬 来ちゃった年始、その延長

 

 Θ―― ジョウト地方、エンジュシティ

 

 Side ゴウ

 

 

 

 年が明けて、西暦1996年。

 すでに年始とは言えないような日付にはなったのだが、(ゴウ)とノゾミは実家に顔を出さなければならない約束があった。

 ここで言う実家とは、僕らが今現在在学中の「カントー地方」とシロガネ山やトージョウの滝を挟んで隣接する、「ジョウト地方」はチョウジタウンに土地を持つノゾミの生家のことである。

 顔を出す。様式的なものだが、これが暗黙の強制となってしまうのは、主にノゾミの家柄に由来する。

 家柄とはいっても、特に高貴な訳ではない。ノゾミが強制されていた訳でもない。しかし実際、土着の名士というか、そういう古い……いや。歴史のある家であるため、顔を出さないというのもまたつまらぬ波風が立つものだ。

 今はカントーにいる学生だという大義名分はあるものの、しかし2人で話し合った結果、1週間ほどは顔を見せに帰省する予定となったのである。

 

 

「……ゴウ」

 

「なんだ」

 

「大会は大丈夫?」

 

「む。心配は不必要だろう」

 

「そう」

 

「ああ」

 

 

 小さく2人で会話を交わす。髪をすっと流す和風な装いのノゾミだが、こんな時にでも僕が出場する予定となっている年度末ポケモンバトル大会の調整について心配をしてくれているらしい。

 実際、心配は要らないだろうな。僕にとって大会は……こう言ってはシュンなどの本気の参加者には失礼かもしれないが……本戦出場程度でも箔がつく。御庭番として一定以上のポケモンバトルの実力があると示すことが出来れば、それで構わないものである。

 ポケモンリーグ本線に則った複合トーナメント式であるため、何処まで行けるのかは運の要素がかなり出ると思う。順位だけで実力を測ることは難しいという側面も有り、負けたところで言い訳は十分に可能だ。そのため、僕としてはかなり気楽な気持ちで挑める大会と考えている。

 ……とはいえ流石に友人にも感化されたのか、バトルに関する準備は万端にしておく予定だ。まだひと月ほどは猶予もあるため、その辺りはお役目を終えて、戻った後に詰めてゆこうと考えている。

 

 そんな事を考える僕たちが現在歩いているのは、ヤマブキシティ。

 実家が得ていた「特()」を使用し、この街の北側にある駅から終着のコガネシティを経由。エンジュシティを目指す予定となっている。

 実家の在るチョウジタウンではなく、スリバチ山を挟んで西側のエンジュシティへ挨拶へ向かうのにも理由がある。

 近年に観光地であった塔が焼け、ごたごた(・・・・)によってその修復予定が難航していたりはするものの、ジョウト地方における文化の中心地と呼んでも過言の無い都市。古き良きこの国の美しさを現代に残す都。それが、エンジュという街だ。

 それら上下の繋がりは、僕らの故郷チョウジタウンとて例外ではない。要するに「年始の挨拶回りはお上方へ向けて行うもの」という訳だ。本来はもっと上の大人達がやるべき仕事なのだが……そんな大人達は、纏めて体調不良を訴えており同道は不可能とのこと。主に酒による体調不良らしい。これは仕方の無い人たちだと呆れるべき部分か。それとも、こういう人たちだからこそ現代の姫たるノゾミも自由を許されていると喜ぶべきか。これについては悩みの尽きぬ部分ではあるのだが。

 当然のこと、大人達も後々、大した遅れは無く挨拶回りへ訪れるであろう。だが僕とノゾミは学徒である。加えて1週間という期限が存在する為、先んじて顔を出しておくという運びになったのだ。

 挨拶、それ自体は滞りなく終えられる。何分エンジュシティの上役達は、皆幼少の頃からの知り合いばかりだからだ。

 一応の形式は存在するが、むしろ僕とノゾミに気を使って毎年、お年玉という名目の小遣いを山ほど手渡されている程である。甘えてばかりではならないとは思うが、彼ら彼女らにとって僕たちはまだまだ子供だということなのだろう。

 

 さておき。

 ヤマブキシティは広い上、高低差の明らかなカントーにおいては珍しく交通網の発達した街だ。だからこそシロガネ山を挟んだ大都市、コガネとの直通幹線などという荒唐無稽な計画も進められている。

 僕とノゾミは、はたしてその恩恵に預かろうと、こうして北側を目指している訳、なの、であるが。

 

 

「……む」

 

「あれ」

 

 

 駅の前、見知った顔を目にして、思わず立ち止まる。

 どうにも新年らしからぬ格好をして荷物を抱える、ショウだ。

 

 

「おおっと、ゴウとノゾミか。まさかこっちに来てまで出逢うとは思わなかったが……いや、こないだのシュンの件もあるしそうでもないか?」

 

「―― あらあら。ショウ、先にあけましておめでとうございます、ですわね」

 

「あー、そだな。スマン、まずは新年の挨拶か」

 

 

 ただしその傍らにはめかしこんだ様子のエリカ教員を添えて、ではあるのだが。

 (少なくとも言動をみれば)吃驚している様子ながらに挨拶をしているショウ、およびいつもの丁寧さそのままのエリカ教員。2人へ向けて、余程吃驚した此方も新年の挨拶を返す。

 

 

「あけましておめでとう」

 

「新年、おめでとう」

 

「おぃっす。そんじゃま、目的地は同じみたいだし、さっさと駅の中で待つことにしようぜ?」

 

 

 ノゾミと僕が挨拶を返すと、引き連れて駅の中へと入り込む。

 吃驚しておいてなんだが、この男(ショウ)ならば(僕らと同じく)ジョウト地方にまで出歩いていても不思議ではない。タマムシシティの生まれだとは聞いているが、研究者という社会的な立場を持っている。むしろエンジュシティやコガネシティであれば挨拶回りに訪れて当然とすら言えるであろう。

 ……とはいえその隣にエリカ教員がいるのは最早病魔の類であるのかも知れないが、さておき。

 駅の構内は、そこまで人は多くない。それもそのはず。この場に居合わせられるのは、特殊な権限を持つか、もしくは顧みない(・・・・)人間の類いだけなのである。

 

 

「先生まで、どうしてコガネへ?」

 

 

 ここヤマブキから鉄道で向かうことができるのは、コガネシティで間違いない。

 構内を移動する間に、ノゾミがそう直球で尋ねると、エリカ教員が上品に微笑みながら説明をくれる。着物の袖をついとひっぱりながら。

 

 

「恐らくは貴方方と同様の、挨拶回りですわね。わたくしはこういう(・・・・)(なり)なもので、ジョウトのエンジュシティには知己の方が大勢いらっしゃるのです。近頃は母様から名実共にタマムシジムのお役目も任せて貰っていますし、この場へは両親を伴わず訪れようと考えていました。ならばとショウに同道して貰っているのですよ」

 

 

 説明内の「ならばと」という流れは恐らく、ショウも同様に挨拶回りをしている最中だったという事なのだろう。肝心要の一緒に行く意味は……護衛役を含めて、であろうか。いずれにせよそれもこれも、好意があればこその行為ではある。

 

 

「まぁ、俺自身ジョウトには出資者もあんまりいないんだけどな。実家に帰ったマサキらポケモンボックスのグループのとこに顔出したりとか、あとはエンジュに寄ってる間にアサギシティを、ミカンを連れ帰りに訪ねるくらいか? ……っと、来た来た」

 

 

 首を傾げながら、ショウはさらっと会話をすげ替える。

 年相応の笑顔を浮かべたショウがくいと腕を上げると同時、駅のホームへと電車が滑り込んできた。

 文字通り滑り込むというに相応しい、流線型。

 

 

「さぁてさて。……リニアモータートレインのお出ましだな!」

 

 

 開いた客車の扉の中へ。

 嬉々とした表情でもって、ショウは真っ先に飛び込んでいった。

 

 

 

 

 ΘΘ

 

 

 

 

 リニアモーター鉄道。車輪のない、磁力を利用して高速移動を行う車両のことだという。

 その線路の整備は、僕が知る限り数十年以上も前……確かホウエンがシーキンテツのご破算で揺れていた頃から手がけられていた筈だ。ヤマブキシティ周辺における地下開発やゲート管理とも平行して行われた、実に計画的なものである。

 窓の外に流れる石壁を眺めながら、僕は思わずぽつりとこぼす。

 

 

「試運転、か」

 

「あー、そだな。俺たちが無理やり割り込んだからなー。客車を引いての実働訓練だっても、スピードは落としてる筈だぞ?」

 

 

 スピードを落としている……これでもか。

 ボックス席に腰かけた4者。僕の向かいに座るショウの言葉を無意味に疑うわけではないが、窓の外の景色は、通常考えられないほどの速度で変遷を続けている。ヤマブキ‐コガネ間ほどの長距離を数時間で移動するという謳い文句は、どうやら飾りではないらしい。

 思わず景色に目をとられる僕へ向けて、ショウは駅で買った駅弁などを手元の台に並べながら。

 

 

「んまぁ、2人の立場なら分かってるとは思うけど、確認含めて解説挟むか。確かにポケモンは移動にも便利だけど、それだけで良いって事にはならないよな。何かの拍子にポケモンが調子を崩すかもしれない。ポケモンは生物だから、もしかしたら動かすのが躊躇われる状況もあるかも知れない。大荷物の輸送にも向いてないしな。それにそもそも、移動のための秘伝『そらをとぶ』自体が、結構なマイナーだろ? だからこそカーゴとかの大衆向け業務が成り立つ訳で」

 

「む。そのあたりは僕でも判るな」

 

「おう。でもって副次的な交通手段を整えるのは国の役目。都心辺りには車とかバスとかも整備されてるけど、あれは道路の整備が必要だ。……それによって失われる住処にしても、移動の手段にしても。ポケモンがいるだけあって、国中に道路を敷きまくるなんて事業にお金をかけるだけの同意は得られないだろーな」

 

「それもそうか。……だからこそ区間を選定し、大都市間を結ぶ鉄道をという訳だな」

 

「そうそ。あとは海外向けの長距離をカバーできればいいと思うし。このリニアも本来の時期的には貨物の輸送試験を行ってるんだが……そこに客車を連結して乗客訓練なんて予定があったもんで、俺とエリカは乗り込む権限を差し込んだ訳だ。それはまぁ、無理矢理だし事故っても大丈夫的な誓約書も券受け取る前に書いたし、降りたらアンケートも記入するし」

 

 

 僕とノゾミはその「事故っても文句を言わない」券を知らぬ内に掴まされた訳なのだが……うむ。

 ショウから聞かされた事情は、概ね理解できた。シロガネ山を貫くトンネルも、要するに「利益はともかく必要なもの」だという事だ。

 

 

「すごい速度」

 

「あらあら」

 

 

 席が窓際で向かい同士のエリカ教員とノゾミが、揃ってお茶を片手に窓の外を眺めている。

 む。……しかし、ショウが挨拶回りに出ているということは、だ。

 

 

「シュン達の修行の程は、順調だと思って良いだろうか?」

 

「俺もずっと見てる訳じゃなく、移動に便利な場所を貸して、必要な時に助言してるだけだけど……多分な」

 

「多分、か」

 

 

 思わず納得の感を挟んでしまう。ショウの言う「多分」ほど範囲の広いものはない。

 ……とはいえシュンが「自身とそのポケモンの力で勝ち進めた」という実感を持てねば、大会に参加する意味そのものすらも失われる。うむ。介入の加減が難しい部分ではあるな。

 

 

「んー……つっても、あんま心配することはないと思うぞ? シュンがやってた練習自体、あのレベルでのバトルの練習としちゃあ100点満点みたいなもんだと、個人的には思うしなぁ」

 

「そうなのか」

 

「そーだった。だからまぁ、俺としてはそれを集中して実践できる機会を作ったってだけだよ。そもそも負けちゃいけないバトルでもないだろ?」

 

「それは、そうだな」

 

 

 ショウの語る「負けちゃいけない」は本当に気負いがない。軽い調子ともとれるが、しかし、ショウの発する奇妙な心強さがその不穏さを埋めてしまう。

 頼り易さ、とでも呼称すべきだろうか。この気性は。

 

 

「てー訳で、だ。これは昔にエリカにも言ってた事なんだけどな? ゴウもノゾミも、堅っ苦しく考えることはないって。きっと時代がぼんぐりからモンスターボールに、鉄道がリニアに変わるみたいに……なるようになるさ。俺ら個人なんかが好き勝手やっててもな」

 

(やわ)ではない、か。……それは、ショウ。体験から来るものか?」

 

「おー。判るか? 流石のご慧眼だなゴウ。シュンが言ってた眼を見れば人と成りも、ってのはマジなんだなー」

 

「その程度の見極めが出来ぬならば、姫つきのお庭番など務まらん」

 

「凄いハードル高いなジャパニーズニンジャ」

 

「うむ。そういう意味でも、セキチクのアンズ嬢などと知り合えたのは幸運と言えよう」

 

「アンズなぁ……。あのファザコンさえなければ、大会でも良いとこ行くんだろうけどなぁ」

 

「仕方があるまい。キョウ殿は、憧れて当然と納得出来る偉大な父君だ」

 

「まぁ、毒タイプ専任ってだけで凄いのは確かだ」

 

 

 こちらが懐古的な表情にでもなっていたのだろう。ショウの軽口に、少しばかり付き合ってみせる。

 伺うようで気遣いの感じられる、決して見かけほど薄くはない……薄く見せているのであろうその内容に、同室のシュンの気苦労を少しだけ実感しつつ。

 

 

「ショウ。君のこの先(・・・)での健闘を、友人ながらに祈っておくとしよう」

 

「あー……それは、バトル大会か?」

 

「それとも、の側だ。バトルの方は心配するまでもない。そうなのだろう?」

 

「……俺って結構判り易いか?」

 

「ああ。君が興味のある部分……嬉々として取り組んでいる件に関しては、かなりな」

 

「……んー……あー……そっかー……」

 

「ふふ。それについては、わたくしも同感です。子どもみたいで愛嬌があるかと」

 

「そうなの」

 

 

 僕が「隠そうとしている部分は判らぬが」と付け加える前に、エリカ教員とノゾミが会話に復帰する。どうやら結構な時間が経過しているらしく、そろそろリニアがトンネル……シロガネ山をくり貫いた部分にさしかかるようだ。

 程なくして、辺りが暗闇に包まれた。窓の外との対比で、車内灯の明かりが少しだけ眩さを増す。

 

 

「うぉっと、もうシロガネ山まで来てたか」

 

「ならば、今の内にお昼を済ませてしまいませんこと? どうやらショウははしたなくも、待ちきれない様子ですからね」

 

「駅弁駅弁駅弁」

 

「早いね」

 

 

 ……うむ。これで僕の役目も終了だろうか。あとはエリカ教員がショウの手綱を握ってくれるはずである。

 ショウは文字通り研究者という楔であり、旗頭でもあり、そして同時に世の流れを見るべき立場にある。ポケモン界隈という枠には収まりきらない才を見に宿した人物だというのは、今年を通じて実感することが出来た。

 先ほどは流したが、そのショウが僕たちへ向けても「堅苦しく考えることはない」と言っている。

 あの学園祭の時にノゾミとも話はしたのだが……恐らくは、僕たちがエリートトレーナーとして活動しようとも、実家へ実害が及ぶようなことはないのだろう。きっと。

 

 

「(今年の……いや。これから(・・・・)のポケモンバトル大会は見物だな ―― 学生も、カントーも)」

 

 

 カントージョウト間を結ぶべく走るリニアモータートレインの中。

 ショウが「目指せ世界遺産登録・シロガネ山弁当」やら「トージョウ海の幸山の幸弁当」やらを楽しげに広げる向いで、僕は終始そんなことを考えながら駅までを過ごすのであった。

 

 

 

 

 Side End

 

 ΘΘ

 

 

 

 

 コガネシティへ到着し、エンジュシティへと向かうゴウやノゾミと分かれて数時間。

 ゴウ達との遭遇は想定外ではあったが、まぁリニアの道中が賑やかになったので良き哉良き哉からのそれはさておき。

 オレことショウとエリカは予定の通り(・・・・・)、コガネシティのゲストハウス的な場所で打ち合わせを重ねていた。夜間でも明かりの絶えない第二の首都は、事務的な作業にはとても便利だと思う。

 書類の束を端に置き、エリカから緑茶を受け取ってお礼を挟んでおいて。

 

 

「打ち合わせっても難しいもんじゃあないけどなー……本来は俺の仕事じゃないし」

 

「あらあら。ですが、チャンピオンとしての仕事としては正しいのではありませんこと?」

 

「それな。ったく、ワタルが素直にチャンピオン位を譲渡されてくれれば良かったものをーぅ」

 

 

 最後の方で思わず面倒くささにだれてしまったが、ジョウト地方における「押し上げ」は必要不可欠なものだから仕方がない。原作的にも。エリカの言う通り、チャンピオンとしての仕事だと言われてしまえばそれまでだ。

 さて、それじゃあこの場を借りて少しだけ解説をしておきたい。

 ―― これまで放っておかれてた「ジョウト地方」について、だ。

 

 

「まとめとくと……残念なことにジョウト地方のポケモンバトルクラブってのはやっぱり、カントーの利権に飲み込まれてしまってるんだよな」

 

「ええ。それらの体制はわたくしの母の代、祖母の代から変わりないと伺っております」

 

 

 エリカの同意に、オレはうんと頷く。

 

 

「丁度間に挟まれたセキエイ高原にリーグを置いたっていうのも、資料を見る限りは、まぁそういう理由なんだろーな。ジョウトの利権を吸い上げるため」

 

「あらあら。リーグを統合した方が管理を行い易いというのは確かですわ……一応は」

 

「その最後の一言が全部を物語ってるぞー、エリカ」

 

 

 とまぁ、そんなこんな。どうやらジョウトにおけるポケモンバトルというのは、カントーのそれと同一視されてきた歴史があるらしい。

 やはりタマムシ・ヤマブキの両大学を筆頭とした学問の進歩が大きかった……大き過ぎたのだろう。

 ポケモンの縮小特性の発見。英傑・オーキド博士の出現。それらを目指した人の流れ。いずれもがカントーを中心として発展を遂げてきた。

 それ自体は自然なことだ。ただ、それだけに。ジョウトは隣の「先進地域」たるカントーに、それらポケモンに関する研究や制度について「引きずられてきた」感がある。

 

 

「要するに、おんぶにだっこって感じか?」

 

「少なくとも、自治制は確立されておりませんね。いずれもカントーの下部組織の様な枠に納められてしまっています。それこそが問題なのでしょう」

 

 

 隣の地方がポケモン関連事業で進んでいるからこそ。これまでの発展を、カントーに頼ってきたからこその負い目という奴だ。

 上級トレーナー資格を取得するための学校にも乏しい。フスベのワタルやホウエンのシバの事例の様に、トレーナーはカントーへと流出する。そのまま四天王の選出もカントーに偏る。重役も。故に、利権が離れない。

 悪循環……とは、一概には言えないけど。でもそれを利用されているこの状況は、面倒な事この上ないしなぁ。まあ良いけど。

 

 

「地盤がでかいってなると、それ自体が分散させるための障害だからな。出来れば事前に切り離しておくまではいかなくとも亀裂くらいは入れておきたくて、こうして仕込んでんだが……やっぱ、時期を待つしかないのかねー」

 

「その時期というのが、今年なのでしょう? 貴方とミィが何やら忙しく準備をしているのは存じ上げております」

 

 

 エリカにはまだ明言していないんだが、ここまで忙しく動いていれば判ってしまうのは仕方がないか。

 今年 ―― 1996年はレッド達が旅に出立する年なのだからして! 原作としても動きがあるのは当然なんだよなっ!!

 と、脳内ハイテンションと表情ローテンションを乖離させつつも、俺は無言で肯定の意を示しながら。

 

 

「んまぁ、おっきな会社とおっきな組織が……色々とな?」

 

「ふふ。それだけでも十分に足る事を、わたくしは嬉しく思いますわ。理解できているという証しですもの」

 

 

 この話題を切り返した上に、惚気てきただと……!

 などと戦慄する俺を余所に、エリカは上品に微笑み返し。

 

 

「その亀裂を入れる為に、わたしが差し込んだ年末の大会も一助となれるかと思いますわ」

 

「ああ、マルチトーナメントだな」

 

「ええ。ショウとミィも参加してくださるという事ですし。それに、大会の『その先』こそが本命なのですから」

 

「頼りになるなぁ……」

 

 

 いやほんと。むしろちょっと怖い。

 協会のタマランゼ会長は協力してくれているけど、トップのトップ過ぎて通し辛いんだよな。あの人も実働部隊は持ってるみたいだけどさ。

 そういう意味で、エリカみたいに強く影響力を持つ人が手伝ってくれるのは大変にありがたい。……借りを作り過ぎてお後が、というかそろそろ手遅れな気もしてきてはいるんだよ。一応は。

 

 

「本腰入れて根回ししとかないとな」

 

「はい。わたくしも御伴致しますわ」

 

 

 年始だってのに。いや、年始だからこそだ。

 こうして動いておいて損はないだろう。うし。こうして力強い友人(カテゴリが正しいかは微妙になってきている)も居ることだし。

 気合を入れなおして、さっさと終わらせてきますかね! 暗躍とかとか!!

 





 SSでお茶を濁しまくって後も濁る(意味不明
 久しぶりにSide使い。
 バトルの展開が詰まった合間にだらだら書いている感じでこれだけという……説明が無駄に長いのは変わりませんね。駄作者私。
 展開が進まなくて申し訳ありません。

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