ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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1995/秋 ゴスロリの少女、あと妹

 

「どこまで行くんだろーな?」

 

「さぁねー」

 

「それは、あの少女に聞かなければ判らないだろうな……」

 

 

 3人で話をしながら追いかけていると、だんだんとタマムシシティの郊外へ差し掛かる。

 タマムシシティの郊外はとても範囲が広い上に背の高い木々が生い茂っており、その暗さといえば、隣接する「黄金に輝く街」……もといヤマブキシティによる、やたら眩しい明かりすらシャットアウトする程である。とはいえこれは、ヤマブキシティが四方に高い壁を作っているというのも大きな理由の一つではあるんだけどさ。

 さて。オレ達が追いかけている今も、辺りは着々と薄暗く……というか真っ暗になって行ってる。少女が何をしにこんな場所へ……って、それよりもだ。

 

 

「……お、追いつけない! あの子、やたら足が速いなぁ!」

 

「年齢もそんなに違わねーのになぁ」

 

「む……あの足捌き。僕達と同じく、隠密に繋がる訓練を受けているのか……?」

 

 

 ゴウがなにやら物騒な事を言っているなぁ。それだとオレ達、心配して追いかけてきたのに追いつけないとか言う格好悪い結果になりかねないんだけど。

 言う間にも少女は垣根を飛び越え草むらを突っ切り、街の外へと向かってゆく。随分とワイルドな順路だ。とはいえオレ達も、ここまで来たからには追いかけない訳にも行くまい。既に野生ポケモンが飛び出してきてもおかしくは無い区画だしな。

 

 

「……っ!」

 

 

 などと考えながら、野生ポケモンに備えてモンスターボールに手をかけると、少女は突如足を止める。

 何事だ、と……。うん?

 

 

「―― おおっと嬢ちゃん、残念ながらそこまでだ。手を挙げな。ついでにそのモンスターボールをこっちによこしちゃあくんねえか?」

 

 

 少女の周囲を囲むように、黒尽くめの集団が現れた。威圧的で高圧的な黒尽くめ。その胸には「R」のマークがでかでかと掲げられている。後ろを走っていたオレ達は運よくも、彼等に見付かる事無く距離を保ったままで草陰に身を潜めた。

 ―― ポケモンを使って悪事を働く集団、ロケット団。間違いない。その数は、目に見えるだけで5人は居るだろうか。

 まずいな。ならば……とオレは友人達に軽く目配せをしつつ……ロケット団の団員達は、どうやら此方の存在には気付いていないらしい。各々がズバットやコラッタを正面に繰り出し、少女に向けてじりじりと輪を狭めてゆく。

 ここでちらりと横を見る。ユウキとゴウが頷く。ケイスケも、寝ては居ない。

 

 

「そのポケモンはおじちゃん達にとって、大事な大事な商品なんだ。それさえ渡してくれれば、お嬢ちゃんは無事にお家まで……」

 

 

 先頭に立った紫髪の男が横柄な態度で一歩を踏み出し、その手を少女へと伸ばしかけ。

 ……よし! 今だ!

 

 

「―― 頼んだ、クラブ(ベニ)ッ!」

 

「行って来い、ヒトカゲ(ホカゲ)!」

 

「っしゃあ、出番だコダック(あひる)!」

 

「たのむよーぉ、コイキング(キングゥ)ー!」

 

 

 《《ボボウンッ!》》

 

 

「グッグ!」「カゲェー!」「……グワ?」「コッ……コッコッ!」

 

 

 オレ達の放ったボールから、それぞれポケモンが飛び出した。

 飛び出した4匹は、囲んでいる団員達のポケモンへと一斉に飛び掛る。

 

 

「―― ちぃっ! てめえら……」

 

 

 頭っぽい風貌の団員は此方に素早く振り向き手下に指示を出すも……遅い!

 

 

「グーッグ!」

「コラッッタッタ!?」

 

「カゲッ、カゲーッ!」

「ズババッ!?」

 

 

 コラッタをオレのベニが、ズバットをゴウのヒトカゲが蹴散らし。

 

 

「グワ?」

「ドーガーァァァス」

 

「コッコッ!」ビチビチ

「コッコッ!」ビチビチ

 

 

 ユウキのコダックがドガースを『ねんりき』でねじ伏せ、コイキング同士が『はねる』。しかしなにもおこらない。

 

 ……うん! 組み合わせが良かったな!! というかロケット団員は何を思ってコイキングを出していたのか!!

 

 等々。

 頭の中で突っ込みをいれつつも確固撃破。割り込むことに成功したオレ達は、それぞれのポケモンを前に出しながら少女の周囲を守るように取り囲んだ。

 ロケット団員達からの視線が突き刺さる……が、ポケモン達をのされているせいなのか強い視線は感じられない。どちらかと言えば弱腰だ。

 ただし。

 

 

「……またガキか。どうもこの所、ガキに邪魔をされてんだよなぁ……おい、お前ら」

 

「へい!」

 

「ランスに失敗だって報告しとけ」

 

「は? 宜しいので? だってこいつら、ガキじゃあ……」

 

「馬鹿か。こいつらは確かにガキだが、この特別製のモンスターボール見る限りトレーナーズスクールの上級科生のガキじゃねえか。てめえらなんぞより、ずぅっとポケモン強えんだよ。判ったか? 判ったらさっさと引き上げな。邪魔だからよ」

 

 

 このマフラーをした尊大な態度の男(紫髪)だけが、最初から強気の視線を崩していないのが気にかかる点か。

 ……というか、勢い勇んで飛び出したのは良いし後悔もしてはいないけど、随分とあれな状況だよな。なにせ相手は本物の悪の組織ってやつなんだからさ。

 さて、とりま状況を振り返ろう。正面に陣取る尊大な態度の男は、これまでのやり取りを見る限りリーダー格なのは確かだと思うのだが。……などと考えていると、しっしっと払った手に従い、手下達は全員が引き上げて行ってしまう。

 1人残った男が腰に手を当て、此方に再びの視線を向ける。

 

 

「さて……ガキども。お前らが本当にスクールのガキだってんなら、一石一鳥分ぐらいの手間が省けるんだけどよ……お話をする余裕はあるかい?」

 

「悪党に語る言葉はない。去ね」

 

「おーおー、随分と強気だねえそこの坊ちゃんは。……んー」

 

 

 男はこういった状況に比較的慣れているゴウの返答を気にも留めず、順繰りにオレ達を見回し……ん?

 

 

「っお。良いねえ」

 

 

 よりにもよって、オレと視線が合ってしまう。良いねえ、とか! 何が宜しいのでしょうか!!

 

 

「お前は他の奴らよりも話が出来そうだ。ま、つっても勝手にこっちの伝言を押し付けるだけなんだが」

 

「……いや、それは困るんですが」

 

「がっはっは! 困る事をすんのがおれさまども、悪党ってもんだからな。そこは諦めな!!」

 

 

 いや、悪党の癖に言っている事は間違っていないから困る。

 一頻り笑った男は顎を撫でながら、にやりという悪党風味に笑った。

 

 

「お前。この損害の分までロケット団はタマムシ大学の学園祭で荒稼ぎさせてもらうぞお……ってな。手前らの頭に伝えな」

 

「……? いや、オレらの頭って誰ですかそれ」

 

「そらあ、お偉いさんの事だろ。生徒会とか教師会とか、あんじゃねえの? その辺りで構わねえぜ」

 

 

 おいおい、随分と適当な伝言だぞ。しかも意図がよく判らないと来ている。

 とはいえ、今の内容が確かなら伝えない理由は無い。それに、どちらにせよこの場は頷かないと引いて貰えなさそうだ。後から脅迫状を贈りつけられても困るので、とりあえずは頷いておくか。

 

 

「よし。そんじゃあついでにお嬢ちゃんの持ったポケモンを……ん?」

 

 

 頷いたオレを見て、男が満足気に……って。

 

 何だ。上?

 

 ……っとおおお!?

 

 

 

 《ピローン》

 

 ――《《ズバババババババッ!》》

 

 

 

 突如降り注ぐ、黒色の光線っっ!!

 

 そのまま、もの凄い威力の光線は一文字に地面を抉り……オレ達とロケット団の男との間に溝を作ってみせた。

 男が顔を引きつらせて腰を引いていると、目前に誰かが降り立つ。

 

 

「……」

 

「ピロリーン♪」

 

「てめえ、黒尽くめっ!! 直接『はかいこうせん』をぶっ放すとかどんな神経してやがんだてめえはっっ!?」

 

「……次、容赦しない」

 

「ピロリ~、ピロリロリ~」

 

「そのポケモンもだ!! せめてこっちがポケモン出してからにしやがれ!?」

 

「……仕様がないでしょうに。悪党を困らせるのが此方の仕事なのだもの。労働は国民の義務よ」

 

「っち! 覚えてやがれ!!」

 

 

 姿を現した全身真っ黒のポケモントレーナーを前に、最後まで悪党らしい台詞を吐きつつ、男は全力で逃げ出していった。

 ……。

 何がなんだか判らないけど、とりあえず助かったのか?

 

 

「む……貴方は?」

 

「……」スッ

 

 

 ゴウが黒尽くめと呼ばれた人物に向かって尋ねるが、当のお人は無言。カタカタとバグッた様に動くポケモンをボールに戻し、そのまま横の空間を指差した。

 だよな。こっちが優先だ。黒尽くめのお人が正しい。

 隣にはへたり込むゴスロリの少女。ただしそれは、かのミィではなく。

 

 

「えーと、そうだよな。……まずは君、大丈夫だったか?」

 

「……。……。……ん」

 

 

 オレが少女の安否を確かめるために尋ねれば、三点リーダを多用した沈黙の後、コクリと可愛らしく頷く少女。

 年は、オレらと同じかそれ以下だろうか。少女はモンスターボール2つを胸に抱きかかえたまま、無表情でもってこちらを見上げている。

 ……。

 そのまま、続く沈黙。あ、判った。これコミュニケーションに困るパターンの人選だ。成る程……仕方が無い。ならまずは。

 

 

「とにかく、奴に習ってまずは自己紹介だな。オレはシュン。エリトレのスクールで学生やってる。宜しくな。隣の軽いのがユウキ。お堅いのがゴウ。だるいのがケイスケ」

 

「よっす」

 

「む。無事でなにより」

 

「ほーい」

 

「……」

 

 

 三者三様の挨拶を見届け、少女の視線が再びオレに帰ってくる。頷いて。

 

 

「君の名前は?」

 

 

 見上げる少女が唇を ―― ぽかっと、開けたり震わせたり。何かを戸惑うような間の後、再びの沈黙。

 ……大丈夫。大丈夫だ。待つぞー、待ちますよー。だから今は茶々を入れないでおいてくれよ、ユウキ。との合図を目線でだけ送っておいて。

 

 ……。

 

 ……。

 

 ……。

 

 

「……ぅぇふ……。……。……マ、イ」

 

 

 だから大丈夫。きっと名前は「マイ」だ。「うえふまい」じゃあない。きっとな。そんなユウキみたいなボケはユウキだけで十分だからさ。

 

 

「そんじゃ宜しく、マイ」

 

「……」

 

「……ん」

 

 

 オレの挨拶と同時に黒尽くめが手を差し出し、マイを立たせてくれる。

 さて。まずは……一先ず。タマムシに戻るとしますか。夏休みの終わりに、とんでもない事に巻き込まれてるなぁと思いはしつつ。

 

 

 

 

 Θ―― タマムシシティ/街中

 

 

 

 少女を引き連れたオレらは、それ以降ロケット団と遭遇する事も無く街中へと辿り着くことが出来ていた。

 安全な道順をと、案内役を買って出たのは黒尽くめ。しかし彼または彼女は案内を終えるとすぐさま、どこぞへと姿をくらましてしまっていた。お礼をいう暇も無い電光石火だ。唯一、マイだけが手を振っていたらしいのだが……ま、機会さえあればまた逢う事もあるだろう。お礼はまた今度。

 時間も時間。マイが違和感無く立ち寄れる公共施設をと言う事で、オレ達はすぐさま最寄のポケモンセンターに立ち寄った。

 オレ達と出会う以前からロケット団とバトルをしていたのだろう。マイは手持ちのポケモンが収められていると思われるモンスターボール3つをジョーイさんに預け、通信機にて両親への連絡を取ることに成功。そこまでを終えるとと、オレ達の元へ戻ってと来た。

 

 

「……ん。……その……あの……。……どうも、あ、ありが……んん」

 

 

 視線をあちこちへと彷徨わせながら、どうにかこうにかお礼を紡ぎ出しつつ、頭を下げた。

 ああ、いやさ。

 

 

「大丈夫。君の人となりは何となく判ったよ。伝わってるからさ、気にしないで」

 

「そうだぜ。おれ達も好きでやった事だしな」

 

「ぐぅ」

 

 

 最後の寝息が全てを台無しにしている感が否めないが、それは兎も角。

 

 

「だが、あの時間に1人で出かけているのは感心しないな。何か理由があるのならば聞かせて欲しい所だが。……僕達でも力になれる事はあるかも知れないからな」

 

 

 ゴウがオレの聞きたかった部分をも代弁してくれた。流石はゴウ。こういう仕切りをやってもらうと大変に頼もしい。

 少女は予想通りいつも通り、若干の間無言でいた後。

 

 

「……これ。……この子」

 

「む? このボールは……」

 

 

 思わずゴウが唸るのも無理はない。マイが胸元に大事に抱え込んでいたものを差し出すと、それはモンスターボール……しかも研究者が時折使う、「ポケモンの親を決めないで居られる」特別なモンスターボールであったのだ。

 その辺りはショウが詳しいのだが、研究協力トレーナーに渡す際、相手方の手続きを減らす為の制度であるらしい。授業で習った限り、あまり頻繁に使われては居ない制度のはずなのだが……

 

 

「……中に居るの。……ポケモン。……ロコン。……おねえちゃんに手伝ってもらって、譲ってもらった。……おにぃちゃんに、って。……あたしのガーディのお礼に、って。……交換みたいに、って。……でも……ロケット団……追って来て……」

 

 

 ふむ。たどたどしくも語ってくれるマイの言い分によると、どうやらマイが兄へのプレゼントの為にと手に入れたポケモン……キツネポケモンのロコンがボールの中に入っているのだが、それをロケット団に横取りされそうになったらしい。

 郊外へ出かけて戻る中途の出来事。姉とやらは捕まえた後別行動となり、別れ際から執拗に追い掛け回されていたらしい。流石はロケット団。事案だ事案。犯罪だ。

 

 

「しっかし、そうなると学園祭を襲うってな脅しが意味わかんねーな」

 

「襲うとは言っていないぞユウキ。『荒稼ぎさせてもらう』……だったか。いずれにせよ繋がりが判らない部分なのは間違いないがな」

 

「ぐぅ」

 

 

 ユウキとゴウがロケット団幹部(っぽい)男の台詞を思い出しながら話し出す。……そうだよなー。そこが判らない。何故そこで学園祭の話に繋がるのだろうか。

 とはいえ。

 

 

「まあさ、オレ達はロケット団の目的も活動理念も、何もかも知らない訳だろ? こういう時に頼れる奴も今は居ない事だし、まずは無事な事を喜ぼう。その上での対策としては、やっぱり、生徒会か教師の人たちに事の運びを伝えに行くのが最善だと思うんだけど……どうだ?」

 

 

 頼れる奴ことショウは学園祭の半ばまで研究で手が空かないらしい。だとすれば現在正しく佳境。部屋にも帰ってくる予定が無い程だ。

 ただでさえショウに頼りきりなのも良くは無い。ならばまずは、頼れる組織の力を頼ろうというのが当然といえば当然だろう……と考え口に出してみる事に。

 

 

「む、そうだな。相手の思惑通りに行動するのも癪ではあるが……僕達に出来ることなどたかが知れている。まずは協力を仰ぐ事から始めるべきか」

 

「シュンのいうことは間違っちゃあねえと思うぜ。そう理屈で固めんなよ、ゴウ」

 

 

 さては友人からの同意も得られた所で、得心しながら、オレはマイへと視線を戻す。

 

 

「そんじゃ、まずは君のお兄さんにポケモンを渡しに行こう。ちょっと時間も遅いけど、君の安全も考えるとロコンは早めに渡しておいた方が良いだろ?」

 

「そうだな。ロケット団にも狙われてたみたいだしよ」

 

「……。……あ」

 

 

 兄へのプレゼントだというのもそうだが、かのロコンが再びロケット団に狙われる可能性も捨てきれないのである。用心するに越したことはない……と思っていたのだが、マイの反応が芳しくない。どうしたか。

 

 

「……。……おにぃちゃん……明後日(あさって)まで、居ない、の」

 

「明後日……って言うと、『虹葉祭』の2日目だな。それまでマイが預かってるのか?」

 

「……。ん」

 

 

 マイが頷く。ま、そうだよな。普通はロケット団に狙われるなんて思わないだろうし、プレゼントというのは前もって用意しておくものであるのだからして。

 しかし、これは困った事になった。「虹葉祭」は全3日からなる学園祭だ。その2日目まで残るは2日。明日には学園祭が始まってしまうと来ている。ロケット団と出会うとは限らないものの、出会ったならばロコンを奪おうとする可能性は低くない。しかも兄の側は予定も詳しくは不明と。難題だなぁ。

 うーん……。

 

 

「……仕様がない、か。これもまとめて生徒会に相談してみるか。もう夜だし……。うーん。学園祭の前々日にこんな事案を相談とか、大分迷惑だけどさ」

 

「そういや今の生徒会は学園祭に関する相談窓口も請け負ってたな。生徒会長の方針だっけか?」

 

「ああ。ギーマ会長……それに、今は上級科生のトップを張っているイブキさんも役職に籍を置いていた筈だ。教師陣の評判も良い。真偽の定かではない情報ならば、真っ直ぐに教師達に相談するよりも、まずはそちらを通した方が良いかも知れないな」

 

 

 ギーマ会長。何かにつけて賭け事へ持っていくキライはあるものの、バトルと政務共に優れたお方。イブキさんは言わずもがな、目下タマムシスクール最強と謂われるポケモンバトルの腕を持つ人。

 どちらも見聞でしか知らないものの、学生の生徒会といえば教師達の言いなりみたいな形式が多い中、学園祭などを取り仕切ってみせる現生徒会はかなりの手腕を持っていることは間違いない。それに、だからこそ、学園祭に関する事態は生徒会を通した方が良いかも知れないしさ。

 それに、先生方に相談するとなると恐らくエリカ先生が1番手だ。ゲン先生はまだしも、カリン先生とダツラ先生は微妙にそういった部分に疎そうに思えるし。それで、だとすると、この大変な時期にエリカ先生を真っ先に頼るのは正直言って気が引ける。

 

 

「まぁ、だったらお兄さんに会えるまではオレ達が護衛として付き添おう。それでいいかな。あ、大丈夫。オレにも女子の友人が居るからさ。その娘にも手助けしてもらおうと思ってる」

 

「……ん」コク

 

「よし。じゃあ、生徒会に掛け合ってみよう。……ところで、君もタマムシスクールの生徒なのか?」

 

「……」コクコク

 

「上級科じゃなくて、一般科生?」

 

「……」コクコク

 

「とすると、オレ達の1個下か。トレーナーに成り立てなんだなー。あ、だとしたら大学の方の敷地はあんまり判らないか」

 

「……」コクコク

 

「そんじゃあさ。少なくとも目の届く範囲にいた方が安全っぽいし、敷地内を移動することにするよ」

 

 

 問いかける度にマイの反応を窺いながら、こちらも言葉を重ねてゆく。「イェス or ノー」で答える質問形式。エリトレクラスの授業の雑学方面でちらっと目にした気もするコミュニケーション方法だ。

 マイの様なタイプの人種とコミュニケーションを図るには、感性が似通った人が相手をするか、こうした一般化された方法を使うか。流石にオレは、今から感性を寄せる訳にも行かないからな。うん。学ってのは意外と裏切らないものだ。

 と、暫し質問と返答の流れを繰り返していると……どうにも友人達から視線を感じる。

 

 

「……何だよユウキ、それにゴウまで」

 

「いや。お前、マイと普通に会話? っつーか意思疎通してんのなー……って」

 

「うむ、思わず凝視してしまっていた。すまない。シュンがそういったコミュニケーションに長けているとは思っていなかったのでな」

 

「ぐぅ」

 

 

 成る程。だが確かに、それは尤もな疑問だ。そしてケイスケは眠っている。

 うーん。自分でも原因の仔細についてはよく判らないけれど、多分こないだの孤児院で子供達に「揉まれた」のが影響しているに違いない。何ていうかこう、マイは1つ下とは思えない感じがするからな。被保護的、とでも言えば良いのだろうか。もっと年下に感じる。

 

 

「ま、これも社会経験の賜物だと思っておいてくれよ」

 

「……ふむ。やはり社会経験というものは大切だな。ノゾミにも機会を与えて貰うべきか……」

 

 

 あ、ゴウが長考に入った。ノゾミとお家(・・)の事になると、ゴウは大体こうだよなぁ。相変わらずだ。

 それならゴウは置いといて、

 

 

「生徒会室……は。管理棟の5階東、だったっけか? アポイントメントとっとくよ」

 

 

 言いながら、オレは通信機に登録されている総合案内を呼び出す。

 さてさて、厄介な事に巻き込まれかけている気もしないでもないけれど……ポケモンセンターの休憩区画から、ひとまず。相手方の都合を伺っておくことにしますか。

 

 





 御年最後の更新をばさせていただきました。
 遅ればせながらのORASの想い出は活動報告にでも!

 さて、私が拙著におきまして心がけているバトルがここにて入ります。
 ……はい。バトル形式以外のガチ、野良(ゲリラ)バトルという奴です!

 見ての通りタマムシシティですし、やはりというかロケット団がお相手。学園祭を巻き込んでどたばたさせます。
 この時のためにショウの方もフラグを溜めに溜めております。爆発させますっ!

 少ーし、原作に則った残酷気味な表現が入るかもしれません。イベント的にも。
 とはいえ駄作者私の事。大分ハッピーで御都合なエンドにしますので、そこはご容赦をいただければと思います。

 さてさて、年末も楽しく指カタカタしますので!

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