ポケットでモンスターな世界にて   作:生姜

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 ひとまず2話投稿します。
 9月中はもう1回くらい更新する予定です。


1995/秋へ 残された夏休みを!

 

 Θ―― タマムシシティ/街中

 

 

 セキエイ高原から戻ったオレらを待っていました、学生の楽園こと夏休み。

 暦的には秋にも移り変わろうかという頃。それでも、太陽は諦め悪く、引き続きの炎天下。

 空にうずたかく積もった雲を見上げながら、隣を歩くナツホはポニーテールを揺らして伸びをする。

 

 

「んーっ……今日はお買いもの日和よねっ。帰りにはタマムシデパート寄ってくわよ!」

 

「ワフーッ!!」

 

 

 ナツホが腕を掲げると、その隣を歩くガーディ(わんた)が真似をして背筋を伸ばす。なんともはや日常的な光景だ。

 かくいうオレもマダツボミ(ミドリ)を腕に巻きながら、ナツホと共にタマムシシティを北へ向かって歩いている。その目的地は街の外側に区画整理された住居群、その一棟にある……らしい。

 

 

「ヘナッ!」ピシッ

 

「天気が良いのは良いけどさ。ミドリも喜んでるし。……それにしても、暑いんだよなー」

 

「仕方がないでしょ? セキエイ高原が涼しかったってだけなんだから、タマムシシティの本来はこんなもんだと思うわ。……まぁ、キキョウシティと比べて暑いっていうのには同感だけどね」

 

「だよなー」

 

 

 やはり都会だから、であろうか。故郷のキキョウシティと比べると、アスファルトやらコンクリートやらの比率が高いタマムシシティはやはりというかなんというか、とにかく暑いのだ。

 とはいえ緑化政策が勧められている分、お隣のヤマブキシティよりはまだマシらしい……とは、この暑い中でもゴスロリ(夏服ver)を断固として着こなすミィの談。夏には行きたくないなぁ、ヤマブキシティ。イツキとか大丈夫なのだろうか。

 

 

「……でもま、とりあえずこのままだとキツイ。コンビニで涼むついでにアイスでも買っていくかなー」

 

「ヘナっ!!」

 

「ミドリはアイス、好きだものねー……。あたしのガーディ(わんた)も毛の生え変わりとかは済んでるけど……やっぱり、あなたも暑いの?」

 

「ワンっ、ワフゥッ!!」

 

「暑いってさ」

 

 

 わんたはいつでも元気だなぁ。と、オレは適当な意訳をしておいてコンビニへと入る。

 入口脇に設置されたアイスコーナーを上から覗きつつ、

 

 

「じゃあガリガリ……4本ずつか」

 

ヒトデマン(ほっしー)は食べられないからあたしは3本ね」

 

 

 いつもの資料整理のバイト代の他に今はオレもナツホも、先日のバトル大会をレポートした分の収入(学生のレポートであるため割引かれてはいるらしいが)、〆3000円ほどがある。ある程度の支出も問題は無いだろう。

 コンビニに入ってアイスを手に再び外へと。……むわっとした熱気がトレーナーとポケモンを襲う!!

 

 

「……継続ダメージきつい!」

「ヘナッ?」

「グッグ」

「……ブィ」

 

「……ねえシュン。こっちも暑くなるからそういうのやめてくれない?」

「ワフッ……ワゥン!?」

「……ヘァ」

「キュゥゥン!?」

 

 

 マダツボミ(ミドリ)は口の中にすっぽり。ベニは口元に器用に咥えて。アカネはオレの手の持ったものをおずおずと。

 ナツホの方はというと、暑さに負けてだらっとしなだれたヒトデマン(ほっしー)を抱え、ニドラン♀(どらこ)ガーディ(わんた)は数口で食べきった反動でか頭をキーンとさせて悶えていた。

 そんな風にだれ気味にアイスを片手、歩くこと数十分。

 敷石の詰められた街路の突き当りに、街北東に設置されている第一ポケモンセンターが見えてくる。まずはここが目印のはずだ。そのまま視線を横へとスライド。

 

 

「さて、ショウの指定したアパートは……と。このポケモンセンターの隣の隣の隣……タマムシマンションD棟だったっけ?」

 

「合ってると思うけど、ややこしいわよね。D棟、D棟……あった」

 

「D棟、よし。間違いないな。それじゃあ全員、戻っておいてくれ」

 

「あんた達もよ」

 

 

 それぞれ手持ちポケモンをボールに戻してから、ナツホが指差したタマムシマンションD棟へと足を踏み入れる。入口の管理人のおばあさんに挨拶と要件を告げて、確認を取ってから中へ。

 エレベーターに乗った所で、やっとのことエアコンがお出ましだ。

 

 

「何階だっけ?」

 

「指定は屋上みたい。……別に、屋上に家があるわけじゃあないと思うけど」

 

「ってか、ショウの家に呼ばれたわけじゃあないらしいしな。屋上なんかで、いったい何をしてるんだか」

 

 

 オレが胸元をバタバタしながらショウの行動について考えていると、しばらくしてエレベーターのドアが開く。どうやら屋上に到着したらしい。

 外へと出れば、相変わらずの強い日差し。

 ―― しかし屋上には青空の下、色とりどりの花が一面を埋め尽くす様に咲いていた。

 隣のナツホが口を開けてぽかんとしているのも無理はない。いくらタマムシの屋上だからってこれはやり過ぎだ。……それに何と言うか、ここだけフェアリーな雰囲気だなぁ。以前旅行のパンフレットに写っていた、カロス地方みたいな、整備された美しさがある感じ。

 

 

「ふ、ふぅん……結構キレイじゃない」

 

「それには同意しとく。……さて。ショウの奴は、と」

 

「―― おーい。こっちこっち!」

 

 

 気を取り直してあっちこっちを見渡してみれば、遠くで手を振っている少年(ショウ)が1人。

 オレとナツホはそちらへ向けて、ショウの指示に従いながら、微妙に入り組んだ花壇の中を移動して行く。

 

 

「その柵は乗り越えてオッケー。そっちの土を踏まないように注意してくれれば良い。あ、街中を歩いてきたんだよな? 出来れば花壇の土を踏む前に靴の裏を除菌……ついでに身体にクリームをn」

 

「注文の多い園芸店っ!」

 

「細かいっ!!」

 

「あっはっは! 冗談冗談。雑草は生えてきたら考えるって。色々気遣いが必要なのはあっちの簡易温室に入ってるから、その辺は問題ないしな」

 

 

 屈託なく笑うショウに2人で突っ込みを入れておいて……いや、これはショウ的にはいつもの事だな。うん。

 ショウの居る場所へと辿り着くと、屋上の端に立てられた小屋の中から麦茶を取り出して来てグラスに注ぎ、オレ達の座った机の上に。

 オレもナツホも、それをありがたく受け取る。口に含んで……それじゃあ、

 

 

「―― それよりも、アンタのいうボランティアってのに参加しに来たんだけど。その話は?」

 

 

 といいかけた所で、ナツホが口早に捲くし立てた。……というか、セキエイ高原から帰ってからナツホの機嫌はすこぶる悪い。

 まぁオレとしても機嫌の悪さ、その原因は判ってはいるのだ。そこへゴウ達が気を使って、こういったイベントを紹介してくれてはいるんだけどな。

 だから、

 

 

「だから、今から話す流れだったろナツホ」

 

「ひひょひひょふるふぁー!?」

 

「2人さんとも、相変わらず仲のよろしい事で何より。……そんじゃナツホの言う通り、そっちの話を進めるとしますか。ほいこれ」

 

 

 我が短気な幼馴染の頬を引っ張っていると、ショウが冊子を取り出した。

 ……「ポケモンふれあいの家」?

 

 

「あによ、これ?」

 

「明日の日曜日に、俺がいつもボランティアに行ってる孤児院で催されるイベント。シュンとナツホにはこれの手伝いスタッフをして欲しいんだ」

 

「……お前、いっつもこんな事してたのか?」

 

 

 確かにショウは度々、シオンタウンにあるという孤児院の手伝いに行っている。研究しながら学生やりつつ、しかも学生はエリトレとレンジャーの掛け持ちしてるというにだ。

 ……加えてこんな事もやってると、なぁ。

 

 

「ん? あー、でもエリトレとレンジャーは元々両立出来るようなカリキュラムだろ? それにこの孤児院は俺が学生やる前から手伝ってた施設だしな。こういうイベントの企画とか他の孤児院との交流とかは参加してるんだって」

 

「いや、それもどうなのよ……」

 

 

 ナツホは呆れ顔だ。恐らくは、オレも同じ様な顔をしているに違いないけれど。

 そんなオレ達の反応をみやりつつ、ショウは続ける。

 

 

「ともかく。ボランティアだっても1日拘束する以上、俺と主催者からある程度の謝礼はするつもり。とにかく一般トレーナーのポケモンに多く参加して欲しいんだよ」

 

「でもさ、その孤児院ってポケモンも多く預かってるんだろ? ポケモンの頭数自体は足りてるんじゃないのか?」

 

 

 いつか聞いた話題を記憶から引っ張り出してみる。

 確かシオンタウンの孤児院は子供だけではなく身寄りの無いポケモンを預かり、一般トレーナーに授与するような制度も請け負っていたはずだ。内職の他にそういった活動が国から入る収入源になっているって、ショウから聞いた。

 ……ん? あ、そっか。

 

 

「ポケモンとのふれあいか。なら、確かにオレ達のポケモンのが適任かもしれないなー」

 

「おっと、流石はシュン。気付いてくれたか」

 

「どういうこと?」

 

「先に行っておくけど怒るんじゃないぞ、ナツホ。……前にホラ。春にオレ達のポケモンが配られた時もこういう話、しただろ?」

 

「……あぁ。そう言えば、そうね」

 

 

 説明をすれば、ナツホも思い出してくれたらしい。

 あれだ。孤児院が預かるようなポケモンって言うのは基本的に……捨てられていたり、住処を追われていたり。つまり警戒心の強い状態であることが多いのだ。

 だとすれば、「ふれあい」をするには……ちょっとな。

 

 

「あー、実際には孤児院の孤児とか近所の子供達に毎日のように遊ばれてるから、普通に人懐っこいポケモンも多いんだけどな。それでもそういうポケモンが少なからず居るのは確かで……なら元からトレーナーのポケモンが増えるに越した事はない、ってな」

 

「分かった。そういうことなら喜んで協力するよ。なぁ、ナツホ」

 

「仕方ないわね」

 

 

 それならオレにしろナツホにしろ、力になる事が出来るだろう。アカネは若干心配だけど、最悪ボールの中で待機していてもらうという手もないではない。

 ……アカネ自身もセキエイ高原での一戦以来、前向きになってきてくれている気がするしな。ま、そんな事はしなくても大丈夫だろ。

 しかし、ここで問題が1つ。

 

 

 

「……でも明日、シオンタウンまでって言うと結構距離があるよな。……ナツホはどうする?」

 

「うーん……ヤマブキまで行けばバスがあるでしょ? それを使えば、実質、移動距離は少なくなるんじゃない」

 

「それでも十分遠いんだけど、まだマシか」

 

 

 タマムシシティと現場のシオンタウンは、街1つを挟むくらいには距離が離れている。となれば、移動に時間が掛かり過ぎるのである。

 と、悩んでいるオレ達をみかねたのだろうか。

 

 

「いや、その辺はこっちで移動の準備をしてあるから気にしなくて良い。一瞬で着く予定だ」

 

 

 ショウの奴がここまで自信満々に言うからには、何か用意がしてあるのだろう。ピジョットによる輸送(カーゴ)とかさ。

 ……そんじゃ、その辺はショウに任せるとするか。あとは、

 

 

「何かオレ達が準備すれば良いものとかはあるのか?」

 

「いや、ポケモンだけいれば十分。昼飯もあっちで用意するし、移動手段はこっちもちだし。明日朝8時にスクールの裏門に集合するだけでいいと思う。……多分。俺がなんか忘れてなければ」

 

 

 微妙に不安を煽る返答だ。

 けれどショウはさして気にした様子も無く、手元に持っていた金属部品の組み立てを始めていた。……多分、スプリンクラーとかその辺だろう。

 

 

「うっし、それじゃあそんな感じで。俺はまだ花壇の手入れ続けるから……その用紙に名前書いといてくれるか? それ、本人サインじゃないと駄目らしくてなー。アナクロだけど」

 

「判った。……ほい、ナツホ」

 

「うん。……はい、書いたわよ」

 

「ども。……おっけ、これにて準備は終了だ。今日はわざわざこっちまで来てもらって悪かったな。重ね重ね迷惑かけるけど、また明日、宜しく頼むよ」

 

 

 最後に手製のスプリンクラーを稼動させてから、ショウは小屋の中へと戻って行った。

 ……突っ込みを入れとこう。いや、どんだけ園芸好きなんだよアイツ。手製て!

 

 

「―― さて。こんな感じで用事も終わった事だし。戻るか」

 

「ん? あ、そうね」

 

「……っと。ナツホ、なに見てたんだ?」

 

 

 突っ込みも脳内で済ませ、寮へと戻るべく腰を上げると、ナツホがまだ座ったままどこかへ視線を向けていた。

 視線の先は……花壇?

 

 

「うん……この花壇って、かなりキレイに手入れがされてるわよね。サークルの木の実園も、そろそろ選定を終わらせなきゃいけないかなー……って思ったのよ」

 

「そういや、そうだな」

 

 

 セキエイ高原に合宿に行っている間は業者に任せていたんだけれど、それはあくまで最低限のもの。最も手が掛かる……佳境たる夏場。オレらとて入れ替わりに手入れを行ってはいるが、必要な部分は未だ多く残されているらしい。

 ……成る程。ナツホが言いたい事は大体判った。もしや、ショウの奴……

 

 

「うっわ……マジか」

 

「ぽいでしょ? ……今度、園芸サークルの人員集めて一気に手入れをしといた方が良いのかも知れないわね。ただしショウ以外で」

 

 

 奴は団体行動というものを知らないのか。だとすれば……確かに、オレ達でやっておいた方が良いのかも知れないなぁ。

 そんな感じに、オレはナツホと園芸サークルの集会について話をしつつ。タマムシデパートを経由して、その日は寮へと戻る事にした。

 

 

 

ΘΘ

 

 

 

 そして後日。

 園芸サークルの畑作業について、裏門の木陰にて待ち合わをしていたショウを直接問い質してみた所。

 

 

「……いや、1人でやってる訳無いだろ。ミカンがどうしてもやるっていうから、俺も手伝ってたんだって。昨日だってミカン、屋上の小屋の中でプランターの土弄ってたんだぞ?」

 

 

 とのことでした。

 ……でもなぁ。

 

 

「お前ならやりかねないからさ。本気で心配したんだ」

 

「そうよ。普段の行いのせいよ」

 

「……そこまで言われるとなると、自分の普段の行動を反省せざるを得ないんだが」

 

 

 ナツホの追撃を受けて、頬をかきながら苦笑いするショウ。

 ま、コイツへの戒めはこれくらいにしておくとして。……となると、問題はミカンだな。

 

 

「ミカンはなんで、いきなりそんな事を言い出したんだ? どっちかって言うと引っ込み思案で、そんなにアクティブな印象は無いんだけど」

 

「あー、そうだな。元々、夏休みは実家に帰る予定だったみたいなんだが、どうも予定変更でこっちに残る事になって、時間が出来たらしい。だからといって1人でやるには園芸って力仕事だろ? 流石に見かねた俺が助力を申し出たって流れだった。……予定変更の理由については俺なんかよりナツホとかのが詳しいと思うけど、どうだ?」

 

 

 ショウが話題を向けると、ナツホは目を細くする。

 そういう気配に敏感なノゾミも居る事だし、同じ寮の隣人兼友人としてミカンの事情は聞いているのだろう。やや口を曲げて逡巡した後、他に口外しないよう注意を促しておいてから。

 

 

「……どうもアサギシティの灯台守のデンリュウが代替わりするらしくて、ミカンは帰省どころじゃないみたい」

 

「代替わり? いやさ。それってむしろ帰った方が良いんじゃないのか?」

 

「それがね。ミカンの家は灯台守をやっているらしくて……」

 

 

 アサギシティの灯台といえば、海を往来する船を導く役目を持つ重要な灯台だ。特にアサギシティから先の海域は海流がとても複雑かつ迷い易く、ジョウトだけならずカントーも灯台の恩得は受けているらしい。

 そんな場所で、灯台守の一族と。デンリュウの代替わりがどういった意味を持つのかは判らないが……

 

 

「兎に角、ミカンの家は無関係じゃあないって事か」

 

「……そうみたい。帰ってもばたばたしてて何も出来ないから、ミカンはそっちに居なさいって言われたって。ミカン、仕方が無いって笑ってたけどちょっと悔しそうだった」

 

「うーん……まぁ、子供のうちは気苦労を背負って欲しくないんだろうよ、親としては」

 

 

 表情が若干曇るナツホと、ショウは何故か親目線でのご意見。

 恐らく、ミカンは何でもいいから身体を動かしていたかったのではないだろうか。帰った所で自分に出来る事が無いのは判っているに違いない。だがそれと心とはまた別、というお話だ。

 と。微妙に表情が暗くなっていたオレ達を見越してか、ショウは手が鳴らして場を取り持つ。

 

 

「はいはいそこまで。―― まぁ、そんなこんなでミカンの鬱憤晴らすのに暫く付き合ってたらこの通り、花壇やらクラブの畑やらを一通り手入れしてしまいましたって訳だ。それで昨日は、俺のマンションの花壇の整備当番にも付き合ってくれてたと。こんなんで判ったかね?」

 

「了解。……移動の前だってのに、説明させて悪かったな」

 

「一応は判ったわ。フン、あんたがミカンに手でも出したんじゃないかと思ったじゃない」

 

「いやそれはないなぁ。とかとか、思いっきり否定しておく」

 

「……判ってるだろナツホー」

 

「まぁね。……冗談よ?」

 

「こっちも冗談だと思って相槌うってるし、構わんですよー。……よしよし。そんじゃあ、と」

 

 

 話題を区切ると、ショウは自分の鞄を漁り出した。

 青く塗られた鞄から突っ込んだ手を引き抜いて、手の先に掴まれているのは……

 

 

「実は、孤児院への移動はこいつに任せてるんだ」

 

 

 そう言って掲げたのは、なんら変哲の無いモンスターボール。

 しかし中からピジョットでも現れるのかと思いきや、ショウは一向にボールを空ける気配が無い。いや、これからシオンタウンに移動するんじゃなかったのか?

 ショウはそのままボールに話しかけ、

 

 

「移動するぞー」

 

 

 ボールをかざし、

 

 

「―― あ、目は瞑っておくのをオススメする」

 

 

 最後に付け加えたような一言。……嫌な予感!!

 慌ててオレもナツホも目を瞑り、次の瞬間。

 

 

 

 《《 グニャッ♪ 》》

 

 

 Θ―― シオンタウン/ポケモンハウス

 

 

 ――《グニャオン♪》

 

 

「……」

 ↑ 膝を突いてうずくまるシュン

 

「……」

 ↑ 手で口元を押さえながら壁によりかかるナツホ

 

 

「よっし、着いた着いた。シオンタウンはポケモンハウスに御到着ぅ、っと」

 

「あ、ショウだー」

 

「ショウだー。あと、誰?」

 

「ねえねえショウ、今日はこの間のお姉ちゃんも、ミィも、ナナミお姉ちゃんも居ないのー?」

 

「何だよショウ、フられたのかー」

 

「こないだのお姉ちゃんはここの花壇の手入れにつき合って貰っただけ。ミィは仕事中で、ナナミはポケモン医療資格の上級クラスで実習期間中だ。けど、代わりにこの2人を連れてきたぞー」

 

 

 ショウが(多分)こちらを腕で指して(恐らく)子供達に紹介している。

 

 ……。

 

 ぉぇぅぁ……。

 

 いや……歓迎ムードの中悪いんだけどさ。子供に絡まれる前に。

 

 

「な、ショウ。……トイレって、どっち」

 

「そこ。男女別だから同時に飛び込んで良し。《バタンッ!》―― あー、やっぱり酔ったか。俺も前はよくよくトイレのお世話になってた。まぁ、慣れれば平気なんだけどな」

 

 

 ショウの指差した個室へ、オレとナツホは出来る限りの速さで飛び込んだ。

 

 ……ああ。

 顔を洗っているだけだともさ!!

 

 


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