Side リーフ
あたしの実家はマサラタウンという所にある。海の見える丘の上にある町だ。
そこには沢山のポケモンが暮らしていて、たぶん、人よりも多いと思う。
あたしの家ではママのポケモンであるラッキーとバリヤードしかいないのだけれど、都会に出るともっと沢山の人と暮らすポケモン達がいるみたいだ。
とはいえここ、トキワシティはカントー西側の中では都会なほうだ……と、思う。
ここ以外の町にはほとんど行ったことがないんだけれどね。タマムシくらい?
「……」
目の前に座ってノートを取るむっつりは、レッド。あたしの兄だ。双子ではないのだけれど、生まれの関係で同じ学年となっている。
そしてレッドの他にも、ここ ―― トレーナーズスクールにはあたしと同学年の子どもが大勢いた。
「―― こんな感じで、モンスターボールに入れたポケモンは自動的に『おや』登録がなされることになる。捕獲地も記録されるから、ポケモンをボックスから逃がす際なんかに、これを基準に生態系バランスを考えつつ逃がされるわけだな」
先生が電子黒板に色々と書き込んでいるので、ノートにまとめる。もしくはコピー&ペースト。テストの答えになりそうな部分だけにブックマークをつけておく。
いまはギムキョーイクの範囲を終えて、ポケモントレーナーになるための資格を取るための勉強をしているところだ。
開けっ放しの窓で結ばれたカーテンがゆらゆら。外をばさばさ飛んで行くポッポの羽音。
(……あたしも来年には旅に出ることになるのかな?)
ちょっとだけ未来の、そんなことを思う。
カントーを旅する。ポケモン図鑑を持って。レッドはそれを目標にトレーナー資格を取りに来ているんだってさ。
グリーンのやつにもかなり影響されてる。あいつが今ここに居ないのって、外国……どこだっけ。かろ、かる、かれ……まぁどこだかの外国でトレーナー資格を取るのと同時に、ポケモンの勉強をしてくるためだって聞いてるし。
(じゃあ、レッドとグリーンは
ショウだ。いつだかマサラタウンに越してきた、年ひとつ上のポケモン研究者。
研究者だからって早くポケモンを持てていたらしい。あんなのが近くにいたら、憧れてしまうのもしかたないでしょ。
ポケモン図鑑。カントー地方のポケモンをぜんぶ記録した、トレーナーツールふくごー型の最新アイテムだ。
わくわくしないはずはない。あたしだって、そらそうだ。
……というかどうせイソーローするなら、あたしの家に来れば良かったのに。まぁさ。オーキド博士と一緒に来たんだから、ナナミおねえさんの居るグリーンちに行くのは仕方ないと思うけどさ。
(なーんか、目をかけられてるみたいなんだよね。あたしもレッドもグリーンも)
ショウは
んー、でもひとつ年上だと思えば遊ぶのはフツーだろというか。
でも、やっぱり、よぉく見られている感じはするんだよね。
(……あたしが好きとか!?)
ないな、と思いつつムダなことを考える。
うん。ないな。ショウに限って、ナイナイ。好きならモーションかけるよね。
見られてる、っていうのはイッテーの距離を置かれているってことでもあるもん。
というかアイツ、ナナミさんのアタックをかわし続けてるし。鯉とか恋とかにはかまけていられない、って言ってるし。
(……というか、じゃあレッドたちはどーなんだって)
そっちから考えてみよう。
あたしがレッドに関していちばんにインショー深いのは、ナナシマへ旅行に行った時のこと。
研究員さんたちと一緒の旅行。そこで、子どもたちがスリーパーっていうポケモンに連れ去られる事件があったらしい。
あたしも巻き込まれた……んだけれど、じっさい、森の中で目を覚ましてからの記憶しかないからなぁ。あんまり覚えてない。
(あの時からだもんね。レッドがポケモンバトルに興味を持ったの)
お爺さんのニドリーノと、野生のゲンガー。
あたしはゲンガーが勝つと思ってた。ポケモンリーグの「べすとばうとしゅう」で、何度も見たことがあるからだ。ゲンガーは強いポケモンだって、知っていた。
けれども結果は違った。
回りがみえにくい森の中。ニドリーノが自由に動いて、叩いて、けれどぴったりな補助をするお爺さん。
ポケモントレーナーがいる意味っていうのを、しっかり見た。
(トレーナーズスクールに行かないって言う選択肢もあったけど……トキワシティまでちゃんと通うし。テストの成績も良いし)
ユートーセイというやつなのだ。兄は。
いつもぼーっとしていたあの眼も、今はポケモン達に全てが向けられているとわかる。
なんというか。妹のあたしでも……今のレッドが考えたり感じたりしてることは、とても意味のあるものなのだと思うもの。
そんなレッドに対抗するために、グリーンは海外っていう場所を選んだんだしさ。
(……どうなんだろーなー、あたしは)
スゴいとは思った。でも、怖いとも思った。
あたしが真っ先に思い出せるのは、駆けつけてくれていたミィに抱きついて安心したことだし。
(レッドみたいにポケモンとすっごい仲良く出来るわけでもないしなー。グリーンみたいにすっごい勉強してバトルに活かせるわけでもないしなー)
わくわくはある。怖くもある。何が出来るのかわからなくて、それが楽しくもある。
ふしぎ。そういうコトバが合っている気がするのだ。
(こんどショウに合ったら、ちょっとお願いしてみようかな?)
このもわもわしたふしぎを晴らすのに、きっとショウが良いと思う。
だから今度合ったときに聞いてみよう。あたしも旅に出て良いと思うかな……って。
もし出るのなら……うん。もうひとつ、お願いをしてみようと思う!
――
――――
「でさー。ショウ、あたしもポケモンと一緒に旅に出れると思うー?」
「おう。思うぞ。良いんじゃないか? 行くならポケモン図鑑もらえるように用意しとくぞー」
「やった! ならさならさ、ショウ! ……あたしと一緒に旅してよ!」
「……おん?」
短めはさみ。
改修してるとこういうはさんだほうが良さそうな視点ばっかり浮かんでくるんですよ私。
今まで出していない視点①。
ナンバリングのとおり、いくつかエリトレ編の時系列に入れておこうと思います。
季節ごとにひとつずつくらい……かな? リハビリなので書き上がり次第の不定期。