ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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第66話 先制を決めろ!天より食らえ第一撃

「やはり、やはりボージャックじゃ!ボージャックも、手下の四人も、全員おる!」

 

 トランクスとゴクアが繰り広げた激闘

 それを悟空と界王はあの世から見届けており、当然結末も目にしていた

 不意を突いたとはいえ、たちまちトランクスを倒した五人目の登場

 彼の姿を見た界王はついに、閉じていた口を開いた

 

「界王様、やっぱり知ってるんだな!?」

「……う、うむ」

「教えてくれ界王様!あいつらは一体……」

「……ボージャック一味じゃ」

「ボージャック一味?」

 

 親玉であるボージャックの登場によって、疑念は確信に変わった

 悟空に事の詳細を求められ、やむなく界王は語りだす

 

「はるか昔四つの銀河を渡り歩き、あちこちの星を荒らしまくった悪者じゃよ」

「ピッコロ大魔王みてーなやつか?」

 

 悟空は自分が幼き頃の最大の敵、ピッコロ大魔王を思い浮かべる

 人も命を何とも思わず、次々と容赦なく殺していった彼のことは今でも強く記憶に残っていた

 

「ピッコロ大魔王より悪の気がずーっと強い、正に悪の化身じゃよ。そのため以前、東西南北四人の界王で何とか封印したんじゃが……ああっ!」

 

 ここで界王は、漸く気付いた

 長い間封印されていた彼らが出てきた、その切っ掛けが

 

「そうか……だとしたら奴らが出てきても何ら不思議は……」

「ど、どういうことだ!?界王様」

「……悟空、お前がいけないんじゃぞ、セルとの戦いで界王星をメチャクチャにしよってからに。ワシが死んでしまったことで封印の力が弱まり、あいつらに自力で解かれてしまったんじゃろう……」

「え!?そ、そうだったのか……」

 

 話を聞き、悟空は表情を苦くする

 今の事態を招いてしまったのが、自身のしたあの時の行動

 しかも、自らの手によってけじめをつけることすら出来ないのだ

 

「すまねえ界王様……でもあの時は本当に……」

「……わかっとる」

 

 セルが命を賭して行った自爆は、地球を丸ごと消してしまうほどの威力だった

 悟空が決死の瞬間移動をしなければ、今の地球は無かった

 

「しかし、まさか地球に目をつけてくるとは……」

「……でも界王様、地球には悟飯がいる!」

 

 父である自分の強さを超え、一年前地球を守ってくれた悟飯

 悟飯ならきっと、今回も守ってくれる

 悟空はそう信じるしかなかった

 いや、『信じるしかない』ではない

 絶対に守れる、そう心から信じていた

 

「そ、そうじゃな……おぬしが認めた、あの悟飯なら……」

「ああ、ぜってえ大丈夫だ!」

 

 悟空と同じく、悟飯の強さは重々分かっているはずの界王

 だが、それでも一抹の不安は取り除けないでいた

 

(な、なんじゃこの感じは……嫌な予感がする……)

 

 それを口にはせず、黙って再びテレビへと視線を移す

 ボージャックのもとに手下達が、次々と集い始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだザンギャ、お前は手ぶらか?」

「……うるさいわね」

 

 手下達の中では一番の巨漢、ビドーが抱えていた楓を放り投げた

 既に地に伏せていたトランクスの上に、同じくうつ伏せで重なる

 その様子を恨めし気に見つめるザンギャを、ビドーは横目で見ながらからかった

 

 クリリン達に逃げられ、暫くは周囲を探したザンギャだったが結局見つからず

 他の面々がボージャックのもとへ向かい始めたのを気の動きから察すると、やむを得ずつ捜索を断念

 結果、ビドーと違って目に見える成果を持ち帰ることが出来なかったのだ

 

(やっぱり、ここにもいなかったわね。次見つけたら、あいつは必ず……)

 

 逃げてる最中に他の仲間に捕まり、ここへ運ばれてくる可能性にも僅かながら期待していたが、叶わず

 自身より力が大きく劣りながらも策を講じて逃げおおせたクリリンに、ザンギャは苛立ちを覚えていた

 

「ブージンは逃げながらこっちへ獲物を連れてくるようだし、まともに仕留めたのは俺とゴクアの二人だけ……久々とはいえ、ちょっと気が抜けてるんじゃないか?」

「……」

 

 ゴクアが殺されかけ、ボージャックが助けに入ったことをビドーとザンギャの二人は知らない

 ボージャックが自らの口から語ろうとせず、ゴクアも言い出すことが出来ない

 本来向けてるつもりのないビドーの言葉が否が応でも刺さり、悔しさから眉間に皺が寄った

 

「おい、お喋りはそれくらいにしろ。来るぞ」

 

 そこへ、ボージャックが腕を組んだまま一言

 このままビドーの自慢話、あるいはザンギャを巻き込んでの口喧嘩に発展しそうだったところを、ぴしゃりと止めてみせる

 ボージャックが向けた視線の先に、三人ともが追従

 

 接近する二つの気、一つはよく知るブージンの気

 そしてもう一つ、彼らが戦う相手の気

 隣のエリアとを仕切っていた、かりそめの空がぶち破られる

 

「ボージャック様!」

「待ってたぞブージン」

「待て!逃が……っ!」

 

 追われる者ブージン、すぐボージャックを見つけその名を叫ぶ

 追う者孫悟飯、目の前の集団を目にしブージンが逃げ回っていた目的を知る

 

「小僧、地球は良い星だな」

 

 ブージンは他の手下三人と同じように、ボージャックの傍まで移動

 悟飯の追随の手は、多対一の現状を受けひとまず止まる

 場が落ち着いたところを見計らい、ボージャックが悟飯へと話し掛けた

 

「(凄い戦闘力だ……あ!)ト、トランクスさん!楓さん!」

 

 目の前の五人の中で、特にボージャックは別格

 それを肌で感じ取った悟飯は警戒を強めるが、直後彼らの少し前方にいる二人に気付いた

 

「一人は取り逃がしたが、見ての通り俺達の手で二人はこのザマだ。残るはお前だけだぜ」

「お、お前達は一体……」

 

 楓を仕留めたビドーが、倒れる二人を指差す

 二人に手をかけたのが目の前の集団、分かってはいたがこうして口に出されると少なからず悟飯の焦りは増す

 思わず漏れた言葉に、ボージャック自らが一番手を務め答えた

 

「俺達は銀河を渡り歩き、次々と星を奪っていった銀河戦士」

「そしてこの方こそが我らの主、ボージャック様だ」

 

 ボージャックの次はゴクアが言葉を述べる

 

「ボージャック様は銀河で敵無し」

「最も美しい北の銀河、そのなかでも最高級の地球に目を付けられたというわけさ」

 

 ビドーとザンギャがそれに続いた

 

「そんなこと、させるもんか!」

 

 一年前に続いて再び訪れた地球の危機に、悟飯は吼えた

 両拳が強く握られ、噴き出しこそしないがその身の中で気を滾らせる

 

「へっ、俺達五人相手に一人でやろうってのか?」

「随分と、嘗められたものね」

 

 しかしビドーの言う通り、現状は五対一

 悟飯は五人の実力をよくは知らないが、少なくともトランクスが倒されているという事実

 厳しい状況であることは、目に見えて明らかであった

 

(くっ、あいつらの言うとおりだ。どうすれば……)

 

 何か、打開策はないか

 そう思い悟飯が必死に頭を回す、そんな時

 

 

 

 

 

「「悟飯ーーー!!」」

「悟飯君ーーー!!」

 

「え!?」

 突如、三人は空からやってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コタロー君!ネギ君!それにヤムチャさんも!」

「助太刀に来たで、悟飯」

「あいつらが、茶々丸さん達をあんな酷い目に……」

「っ!あそこにいるのは、トランクス達か!」

 

 三人は悟飯の前に降り立ち、ボージャック達と対峙する

 コタローは後ろの悟飯と言葉を交わしはするが、視線は切らさない

 地上で茶々丸の惨状を見たネギは、怒りからか三人の中で一番険しい表情

 ヤムチャはボージャック一味とは別に、トランクスが倒れているのにいち早く気付く

 

 ボージャック達はおろか、彼らの気をよく知る悟飯までも直前まで接近に気付かなかった

 その理由は、三人がここまで来た移動手段にあった

 悟飯達が地下へ向かう際に乗ったマシン、それと同じものに乗ってやって来たのだ

 地上からここまでの移動に舞空術を使わず、気を抑えることで感知されずに済んだ、というわけ

 

「あの位置は、ちょっとまずいか……」

「ヤムチャさん?」

「いや、こっちの話だ。とにかく悟飯、俺達も戦わせてもらうぜ」

 

「おい聞いたかお前ら、あいつら俺達とやり合うつもりみたいだぞ?」

「身の程を知らない奴らめ……」

(一番ましなあの男で、精々あいつくらいか……)

 

 数の上で不利だった状況からの、三人の登場

 しかしビドー達は彼ら三人を、自分らの優勢を脅かす存在とはまるで見ていなかった

 ブージンは嘲笑し、ザンギャは直前に交戦したクリリンと比較し大まかに戦力を推測する

 

 残るゴクアはつい先程のことがあったため、他の三人ほど嘗め切った様子ではなかった

 それでも、自身よりかなり実力が劣るという認識は共通

 

(しかし、たったの三人か。地上にはもう少し頭数が揃ってた筈だが……)

 

 そして彼らを束ねるボージャックは、強さとは別のことを気にかけていた

 ここへ馳せ参じた人数が、僅か三人しかいないことである

 

 ゴクアとトランクスが戦っていた時点で、既にボージャックは悟飯側の頭数を地上にいる者も含めて意識していた

 つまりやって来るタイミングはともかく、加勢に来ること自体は織り込み済み

 だからこそ、その加勢に来た人数がやけに少ないのに違和感を感じていた

 

(辺りに気配は感じない。となれば残りの奴らは恐れをなしたか、あるいは戦況を上で見ながら随時送り込む気か?どっちにせよ俺達が困ることはないが、もし後者だとしたら随分悠長な……)

 

 考えられる可能性を二つ挙げたが、どちらも問題無しと判断する

 特に後者の場合は言うなれば駒の出し渋りであり、今回の場合では愚策と言えよう

 

「ボージャック様、ここは俺達四人にお任せを」

「ほう、言うじゃないかビドー」

「ええ、敵は四人とはいえその内三人は雑魚。貴方の手を煩わせずとも、充分です……おっと」

 

 ビドーが一歩前に出ると、三人もそれに続く

 すると倒れていたトランクスと楓がつま先に当たり、気付いたビドーは右足を振るった

 

「か、楓さん!」

「来いよ雑魚ども、この二人と同じ目に遭わせてやる」

 

 蹴った、というよりは足の甲に乗せた二人を振り上げた勢いで飛ばした、という感じ

 意識を失ったままの楓とトランクスは宙を舞い、悟飯達の前で再び倒れ伏した

 

「……しめたっ」

「え?」 

「おいお前ら!俺達を……舐めるなよ!」

「「はああああああっっ!」」

 

 するとボージャック一味には聞こえない大きさで小さく言葉を漏らした後、ヤムチャが動いた

 今度はよく聞こえる大声で向こうへ叫び、全身から気を開放させる

 ネギとコタローも続き、それぞれ魔力と気を高める

 

「へっ、やっぱりそんなもんかよ」

「私達の中の一人だけで三人とも相手にしても、あれなら充分かもしれないわね」

 

 それでも、ビドー達四人は動じない

 戦闘態勢になったヤムチャ達に最低限の注意こそ払っているが、難なく倒せるという自信は変わっていなかった

 そんな四人が顔色を変えたのは、この直後

 

「むっ!」

「これ、は……」

 

 四人の立つ足場の中心が、突如として爆ぜたのだ

 地中から地上へガスが吹き上がるかのように、地が割れ大きな音があがる

 そこに足元が一番近かったブージンは咄嗟に足を引っ込め、ゴクアは剣の柄に手をかけて空いた穴を覗き見る

 空いた穴を中心に、地面は爆発後もゴゴゴと脈動を続けていた

 

「あいつら、他にも仲間を……」

 

 一歩下がった位置にいたボージャックは、部下四人と敵四人の動向を同時に見ることが出来た

 部下四人は地面に目をやりつつも、悟飯達の方にも度々視線を向ける

 一方でヤムチャ三人は行動を変えず、悟飯は何が何やらとその場で狼狽えている様子

 

 あの四人の誰かが爆発を引き起こしたとは考えづらく、先程とは別の新たな可能性をボージャックは思いつく

 それは、『ヤムチャ達三人とは別に、近くに他の仲間が潜んでいた』というもの

 

(地面に潜って直接、は流石に無いな。おそらくブージンのように、念動力が扱える使い手……随分と上手く、気配を消してやがったな)

 

 自身の探知能力を潜り抜けたと思しき相手に、多少ながら感心してみせる

 

(だが、あの威力じゃ精々陽動止まり。雑魚が一人増えたくらいじゃ……)

 

 とはいえ大勢は変わらず、というのがボージャックの考えだった

 あの爆発が当たってたとしても、自身の部下であれば殆どダメージにもならない

 ああして初見相手の気を引くのが精いっぱい、部下一人の足止めすらろくに出来ないだろう

 

「おい、いい加減にしろ。いつまでやってやがる、とっとと始末し……っ!?」

 

 『感知出来なかった敵から攻撃された』が先行し動揺する四人を見かねたボージャックは、ついに叱責の言葉を漏らす

 あの程度なら、いたところで問題ではないだろ

 そんな意を込め、いい加減にしろとボージャックは言った

 

 そう、あの爆発程度なら問題ではない

 

(馬鹿、な!)

 

 精々陽動程度とボージャックが評したように、実際あれは陽動だった

 ただし、ヤムチャ達三人の攻撃を当てるための陽動ではない

 

(何故あれを、今の今まで俺は……)

 

 隠れていたヤムチャ達の仲間は、一人だけではなかった

 突如として現れた気配を、手下四人に先立ってボージャックがいち早く感じ取った

 

 視線を向けた先は、上空

 地面からの攻撃と、地上で戦闘態勢のヤムチャ達に注意を向けた手下達にとって、意識の外にある位置

 

 準備は、既に整っていた

 もう攻撃で撃ち落とそうにも間に合わない、それをすぐ察したボージャックは叫んだ

 

「お前ら散れーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

「新気功砲!!はああああああああっ!!!」

 

 その叫びを掻き消すかのように、攻撃がボージャック一味へと降り注いだ

 天津飯が命を賭して放った、新気功砲が

 




近日中にもう1話投稿します

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