ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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第61話 いざ発進!決勝戦開始

「はえ~、このお魚ほんま美味しいわぁ。なあせっちゃん?」

 

「はい、お嬢様」

 

 朝倉がハルナ達と入ったのとは別の店、会場に数店舗あるレストランの内の一つ

 

 四人掛けのテーブルの片側に、木乃香と刹那が並んで座り昼食をとっていた

 

「なるほど……近くに港町があったし、そこで獲れた新鮮なものを使っているのか」

 

「そういうこと。三人とも、しっかり食べてよね」

 

 その向かい側にはトランクス、そしてブルマが座っている

 

 ピッコロに言われた通り、トランクスは試合後木乃香の所へ行き回復

 

 そのあとは客席にいるブルマのところへ木乃香含めた四人と共に移動、そこでお礼を兼ねた昼食の誘いがブルマからされた

 

 ハルナ達が朝倉と合流した際にブルマがいなかった理由はそれで、アスナとあやかは別の用事で外れて残ったのがこの四人、というわけだ

 

「ブルマさん、ほんまにありがとうございます。んー、うまぁ」

 

「いいのよ気にしないで。だってあなた、これまでにトランクスと刹那ちゃんだけじゃなく、ヤムチャや他のみんなも回復してくれたっていうじゃない」

 

 準決勝で木乃香が上空に移動して空いた席に座ったのは、コタロー戦を終えたばかりのヤムチャ

 

 バトルステージ上での負傷が嘘のように消えていたことを不思議に思ったブルマはヤムチャに尋ね、その時既に治癒魔法の使い手木乃香の存在を認知していた

 

「それに魔法っていうのはトランクス達が使う『気』みたいに、たくさん使うと本人も消耗しちゃうんでしょ?」

 

「はい、それにこの後はネギ君や楓さんとも会うて怪我治したらなって思うてましたし……あと、クリリンさん?やっけ、あの人もネギ君と試合して怪我しとったし、折角やから一緒に」

 

「あら、クリリン君も?ありがと。ならなおのこと、いっぱい食べて精をつけて貰わないとね」

 

 ハルナ達が居候していて話を聞いていたことで、ブルマも魔法についての知識は幾らか持っていた

 

 舞台の上で戦う選手だけが、この大会で頑張っているわけではない

 

 そのことを、ブルマは知っていたのだ

 

「そういえば木乃香も、ハルナやのどかと同じ図書館探検部なのよね」

 

「あ、二人から聞いてはったんですか?」

 

「向こうの世界の話は色々とね。なんせそんな名前のクラブ活動、こっちの世界じゃ聞いたことないもの。自然と興味が湧いちゃうわ」

 

「まあ、うちの世界でも図書館探検部は麻帆良学園だけやけどなぁ」

 

 ハルナやのどかの話題を介して、木乃香とブルマの会話はそのまま弾んでいく

 

 一方で残る二人、刹那とトランクスもまた盛んに言葉を交わしていた

 

「しかし本当に驚きました、ピッコロさんにあれほど見事に勝ってしまわれるとは……」

 

 この二人、今日の大会でピッコロと拳を交えたという共通点がある

 

 自身では殆ど引き出せなかったピッコロの本気、その全てを引き出し勝利した

 

 それに対し刹那は、本当にお強いんですねとトランクスへ掛け値無い賞賛を贈る

 

「いや、でもかなり紙一重だったよ。影分身達に捕まった時は、実際詰んでいたようなものだったからね」

 

 トランクスは謙虚に言葉を返した、実際最後の逆転は狙って起こしたものでは無い

 

 流石は悟飯さんの師匠、そのことを今回拳を交わして改めて知ることが出来た

 

 すると直後に、トランクスは刹那のある一点に目をやった

 

「あれ?そういえば君が提げてる物って……」

 

「ああ、これですか?夕凪といって私が愛用している野太刀、刀剣の一種です」

 

 刹那は予選が終わって控え室に戻った際、置いておいた夕凪を回収していた

 

 精神と時の部屋にも持ち込んでいた、彼女の愛刀

 

 木乃香の『剣』として、彼女の傍にいる時は手放せない存在だ

 

「へえ、君も剣術を使うんだ」

 

「元々はこっちが専門で……え?君『も』、と仰いましたか?」

 

 そうだよ、とトランクスは頷く

 

「僕も一応心得があるんだ」

 

「そうなのよ!」

 

「わわっ!」

 

 トランクスの言葉の直後、いきなりブルマが声をあげて入ってくる

 

 それにおもわず、刹那はやや身を引いた

 

「初めて私達の前に姿を見せた時なんか、そりゃもう凄かったんだから」

 

 ブルマは刹那と木乃香の二人に、あの時の出来事を嬉々として語り出す

 

 悟飯やピッコロを苦しめた、宇宙の帝王フリーザとその部下達の地球襲来

 

 そこへ突如現れたトランクスの、大群を相手取った一騎当千っぷり

 

 続いてフリーザを反撃すらさせず一刀のもとに斬り捨て、とどめの連撃

 

「こう、剣をスパパパッてやって細切れにして、最後に気でボーンッてね」

 

 ブルマは自分の右手を剣に見立て、素早く動かして表現する

 

 動きは刹那から見て速いと言えるものではなかったが、話し方からして相当のものだったと刹那は理解した

 

「けどブルマさん、せっちゃんかて凄いで。うちらの世界じゃせっちゃんの腕は天下一品なんやから!例えば……」

 

「お、お嬢様!おやめくださ……」

 

 それに負けじと、お次は木乃香が刹那の凄さを語ろうとする

 

 刹那は慌てふためいてそれを制しようとした、力の大きく劣る自分がトランクスと張り合うような形になるのがおこがましいと感じたからだ

 

「だったら是非、大会が終わったら手合わせをお願いしたいな」

 

 しかしトランクスは刹那に興味を持ったようで、彼女の予想の斜め上の反応を返してきた

 

 慌てふためきっぷりはさらに加速し、行き場の無い両手がゆらゆらと胸元で動く

 

「ええっ!?そ、そんな……私なんかが恐れ多くもトランクスさんとだなんて……」

 

「さっき心得があるとは言ったけど、実際のところ僕の剣術は我流なんだ。話を聞いてたら、ちゃんとした使い手とも戦ってみたくなってね」

 

 トランクスのいた未来の世界で彼が戦えるようになった頃、既に殆どの戦士は死んでおり剣の教えを請おうにも相手がいなかった

 

 辛うじて悟飯が幼少期に刀剣を扱ったことがあったが、恐竜などを相手取っての食糧調達目的の使用であり、何より最後に使ってからあまりにも年数が経ちすぎていた

 

 人造人間との戦いを通しても、結局剣の使い手は現れず

 

 ゆえにトランクスは、刹那という少女に強く関心を持っていた

 

「駄目、かな?」

 

「……わかり、ました」

 

 しばし考えを巡らせたのち、落ち着きを取り戻した刹那は返答する

 

「私なんかでよろしければ……その手合わせ、お受けしましょう」

 

 思えば刹那もこの世界に来てから、碌に人と剣を交えたことがなかった

 

 楓が少しは特訓に付き合ってくれたが、楓は剣術使いではない

 

 精神と時の部屋の修行期間も含めれば、ほぼ丸一年

 

 トランクスが望む『剣の使い手との戦い』は、今の刹那にとっても必要なことではないかと感じたのだ

 

「ありがとう、じゃあ日時と場所なんだけど……」

 

 二人の剣士の激闘、それはもう少々先のお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、やっぱりこっちに戻ってたのね」

 

「見つけましたわよ、楓さん」

 

「……ん?おお、アスナ殿に委員長」

 

 女性選手控え室に、三人の姿

 

 入って来たアスナとあやかを、屋台かなにかで調達したと思しき食べ物を片手に楓が出迎えた

 

「ピッコロさんの試合が始まってから、ずっと見えないと思っていましたら……」

 

「やっぱりボロボロじゃない!」

 

 入ってすぐ、アスナは楓の現状を指摘する

 

 平然そうな顔をしているが、準決勝で天津飯の猛攻を受けた彼女の身体は相当のダメージを受けていた

 

 服は替えたため幾つかの箇所は隠れているが、それでも元々肌が見えている部分の傷は隠せない

 

「楓さん、木乃香のところ行きましょ」

 

「ネギ先生とも連絡を取ったところですし、ご一緒に」

 

 アスナとあやかが木乃香達と別行動を取ったのは、準決勝で消耗したネギ達を探して木乃香に治療させるため

 

 クリリンとの戦いを通して、ネギが少なからず負傷しているのは間違いない

 

 この後試合が無いとはいえ、放っておいたせいで後々尾を引く可能性がある以上見過ごせなかった

 

「いやいや、こう見えて大分回復してるでござるよ?ほれ、こんな時のために野草から調合しておいた傷薬が……」

 

「嘘をおっしゃいな、痩せ我慢はみっともありませんわよ。それにこの後の試合に臨むなら、万全の状態でありませんと」

 

「そうそう。あとそういう言い方されると、天津飯さんの攻撃が大したことないって言われてるみたいに聞こえるんだけど?」

 

 その上楓に至っては、決勝戦を控えている身だ

 

 本心でなく遠慮した結果と見抜いたあやかにたしなめられ、アスナには天津飯の名を出されてしまう

 

「うぅむ、それを言われると参ったでござるな……いやなに、これ以上木乃香殿に負担を掛けるのが申し訳ないと思った次第でござるよ」

 

「あら楓さん、ピッコロさんと同じことを考えてらしたんですの?」

 

 ここでついに観念し、楓は本心を口にする

 

 考えていたのはあやかの言うように、大会中何人も治療し消耗しているであろう木乃香への気遣い、つまりピッコロと同じ事であった

 

「ほう、ピッコロ殿もでござるか?」

 

「本人からじゃなくて、トランクスさんからの伝聞だけどね」

 

 試合後木乃香のもとに来たのがトランクス一人というのは当然気になったわけで、尋ねるとあっさりと教えてくれていた

 

「ていうか、そんな心配要らないわよ。それ以上に木乃香の方が心配してたしね、『楓さんあんな大怪我のまま大丈夫かいな?はようちがパパッと治したらな』って」

 

「ですわね」

 

「そうで、ござるか……」

 

 しばし、言葉が止まった

 

 準決勝の始まる前、コタローとヤムチャを立て続けに治療する姿を目の前で見ていた楓

 

 これまで自身と刹那の修行に付き合い地力を上げたとはいえ、前日に神殿まで遠出したことによる疲労もあり、無視出来ない消耗が木乃香にあるのでは

 

 トランクスの治療も併せて、楓はそれを他人より一層心配していた

 

「……木乃香殿は、いま何処に?」

 

 しかしアスナ越しではあるが木乃香の言葉を受け取ると、それは自身の一方的なものと気付かされる

 

 直接会いもせず木乃香の限界を断じたことを諫め、考えを改めた

 

「刹那さんやトランクスさんと先にお昼食べてるわ、けどそことは別の場所で待ち合わせ」

 

「楓さん、ということは……」

 

「うむ、案内をお頼み申す。それと……昼餉(ひるげ)がまだなら、食べるでござるか?」

 

「え、いいの?食べる食べる!」

 

 多めに調達し、詰めていた袋を揺すって楓は笑う

 

 実は控え室に入った際、漏れ出た臭いを既に鼻孔へ迎え入れていたアスナは堪らず手を伸ばした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ……にしてもネギ、お前も似たような知り合いがいたんだな」

 

「はい。もう、カモ君ったら……」

 

「老師も、カメハウスの時と同じで平常運転だたアルな」

 

「あの爺さん、ほんまにクリリンさんやヤムチャさんのお師匠さんやんな?」

 

「はい、あと僕のお父さんやお爺ちゃんも……」

 

 ネギとクリリンの二人が、辟易とした様子で会場内を歩いていた

 

 古は苦笑い、コタローは訝しんだ顔で、悟飯は苦笑いに申し訳なさを加えたような表情

 

 というのも、この五人で昼食を取ろうかと移動した先程のこと

 

 どこで食べようかと辺りを歩いていると、とある喫茶店の中から聞き覚えのある声

 

 

 

 

”くぅ~~~っ!うらやましい!ピチピチ女学生の下着布団!わしも、入りたいっ!!”

 

”うぇへへへ流石爺さん、話がわかんじゃねえか!おう姉ちゃん、お代わりー!”

 

 

 

 

「なんでコーヒーで酔えてるんだよ……」

 

「その場のノリ、というやつアルかな?」

 

 一行は、彼らに声を掛けずスルーした

 

 結局その喫茶店とは別の店に入り、昼食

 

 それを終え、来た道を戻るとそこには

 

 

 

 

”しかしのう、その時ブルマは既に、ううっ……用を足し終えていたのじゃ。あと少し!あと少し早ければ、気付かれず見れたというのに!”

 

”わかるぜ爺さん!その、あと一歩届かなかった悔しさ!”

 

 

 

「んでネギ、あのエロガモを店から連れてかんで良かったん?」

 

「まあ、お店に迷惑掛けない範囲で喋ってたみたいだし……」

 

 まだ二人がいた

 

 これも一行はスルー、当初カモが情報交換を亀仙人に持ちかけていたことなど知るよしも無い

 

「まあ、ネギがそう言うなら別にええわ。で、昼飯も食うたし、この後は木乃香姉ちゃん達と待ち合わせやったか」

 

「うん。それとさっきアスナさんからカードの念話が来て、楓さんとも合流したって」

 

 バトルアイランド2、決勝の舞台の到着まであと僅か

 

 遮蔽物が無ければ既に会場の何処からでも、その姿は容易に確認することが可能

 

 となればネギ達も時間は無駄に出来ず、予定通り木乃香達に会うべく待ち合わせ場所へとまっすぐ向かっていた

 

「治癒魔法、か。そういえばそこのコタローも、ヤムチャさんから受けてた傷が準決勝が始まる頃には全部治ってたもんな」

 

「うむ、予選前に楓から話を聞いた限り、相当コノカは腕を上げたようアル。これでクリリンも全快アルよ!」

 

「アハハ、まあ治してもらえるのは嬉しいんだが……」

 

 クリリンはまだ木乃香の魔法を見たことが無かったが、デンデの存在があってかどういうものかのイメージは大体ついていた

 

 加えて古の話から『回復可能な負傷度合いや回復速度が、使用者の力量によって変わる』という情報も得て、把握具合はより正確に

 

 なんだかんだでネギとの試合では手痛い一撃を幾度と食らっており、万全にはほど遠い状態

 

 故にありがたいという気持ちに嘘は無い、しかしそれ以上にクリリンには憂慮すべき事態が迫っているわけで

 

(……治ったところで、相手が悟飯やトランクスだからなぁ。ははは)

 

 元々は、予選の時点で既に考えていたこと

 

 優勝を目指すに辺り、あまりにも高い壁

 

 悟飯やトランクスと対峙しなければならないという、避けられぬ現実

 

 しかもその内の一人がすぐ傍におり、クリリンはちらりと悟飯に視線をやり自嘲めいた笑みを浮かべた

 

「む、どしたアルかクリリン?変アルよ」

 

「ん?いや……なんでもないよ」

 

 その様子を古に見られ怪しまれるが、クリリンははぐらかした

 

 返答のため顔を合わせた古に続き、コタローやネギへと視線を移す

 

(そう、だよな……こいつらだって、悟飯やトランクス相手に物怖じせず最後まで全力で戦ったんだ)

 

 自身と戦ったネギも、もし勝ち抜いていれば同様に戦っていたに違いない

 

(なのに俺だけが、弱音を吐くのは……違うよな)

 

 そう考えたクリリンは、喉元まで来ていた弱音を引っ込めた

 

 自分より一回りは下の、異世界から来た若き戦士達

 

 この大会での彼らの戦いぶりに、クリリンは知らず知らずのうちに感化されていた

 

「よし!やるか!」

 

 そして両頬を叩いて気合いを入れ直し、決意する

 

 奇しくもこの気合いの入れ方は、クリリンとネギの戦いを見守っていた古と同じ

 

「おお!その意気アルよクリリン!」

 

(……こうなった以上、見事に負けてやるぜ!)

 

 とはいえ完全に彼らのようにはいかず、前向きなんだか後ろ向きなんだかよく分からない決意

 

 されど、これはこれでクリリンらしい、そんな決意

 

『皆様に、ご案内致します』

 

「ん?なんや?」

 

 と、ここで、全員の耳にしっかりと入る声

 

 備え付けられたスピーカーから流れる、アナウンスのようだ

 

『もう少々の時間をもちまして決勝戦の会場、バトルアイランド2へ到着です』

 

「ありゃ、結構時間経てたアルかな」

 

『着岸時大きく揺れることがあります、落下の恐れがありますので船が静止するまでは端に近付き過ぎないようお願い致します』

 

「あ、木乃香さんですか?はい、今そっちへ向かってるところです。はい、クリリンさんもいます」

 

(確か、昼飯の前にも他の子相手にやってたな……カードでの念話ってやつか)

 

『また、降り口に一斉に皆様が詰めかけても危険です。近くにおります係員の指示に従って順番に列を作って並び、落ち着いて降船を行ってください。また、選手の皆様は他のお客様とは別に……』

 

「そうか、僕やクリリンさんはみんなと一緒に降りられないのか……ネギ君、木乃香さんの所に急ごう!」

 

 来たるべき時が、もうすぐそこまで迫っていることを知らされる

 

 別の場所で同じアナウンスを聞いたであろう木乃香から心配され、ネギへ念話も飛んできた 

 

 悟飯の言葉を受け、一同は足を早めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『えーみなさん、大変お待たせいたしました!』

 

 決勝の舞台、バトルアイランド2

 

 元々は森あり火山ありの巨大無人島で、その一画に人の手で切り拓き建てられた特設会場

 

 その中ではすでに大盛り上がり、観客席が寿司詰め状態

 

 アナウンスが聞こえ、更なる歓声が沸き起こる

 

 その中には、悟飯やネギの仲間達のものも含まれていた

 

『ただ今より天下一大武道会、決勝戦を始めます!』

 

 一層声援は激しさを増した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても天津飯、惜しかったのう」

 

「……どういう意味ですか?武天老師様」

 

 観客席の亀仙人は、隣に座る天津飯に話しかける

 

 新たに出来た盟友と、カフェにて下ネタ談議に話を咲かせていた亀仙人

 

 ネギ達がスルーしてから暫くして、ウーロンに五月にまき絵、予選や準決勝の観戦を共にしていた面々と合流

 

 更にはまき絵繋がりで天津飯と餃子までおり、決勝戦の観戦もこの七人で一緒にすることになった

 

「楓姉さんに負けちまったことだろ?正直あの逆転は、俺っちも予想出来なかったしな」

 

 そう、今回カモは朝倉や夕映と別れこの面々に加わり、亀仙人の肩に乗っていた

 

「うむ、そうじゃ。この一年間も修行を続けておったようじゃし、悟飯やトランクスと思い切り……己の腕を試すべく戦いたかったのではないか、と思ってのう」

 

「……仰る通りです」

 

 そして天津飯は、亀仙人の言葉を肯定する

 

 元より彼は、腕試しを目的にこの大会に参加していた

 

 賞金を狙って出てくるであろうヤムチャはもとより、クリリンや、あわよくば悟飯やピッコロ

 

 直接彼らから出場の意思を確認したわけではなったが、もし出るなら、もし大会で当たるなら

 

 人類の脅威セルも消え去った平和な時代の今だからこそ、戦ってみたかった

 

 例えばそう、準決勝辺りでトランクスと当たっていれば、彼は堂々とこう言い放っていたことだろう

 

 

    トランクス、手加減などしたら承知しないからな   と

 

 

「しかし武天老師様、準決勝での楓との戦い……決して、無駄ではありませんでした。アスナもですが、彼女らと拳を交えたことで己の糧に出来たと、今俺の中には確信があります」

 

「ふむ、何かしら得るものはあったということか」

 

 彼らと戦えなかったことを惜しみはしても、楓との戦いそのものを悔いることはなかった

 

「けど天津飯さん、ほんとに悔しくない?あたし格闘技はさっぱりだけど、多分天津飯さんの方が楓さんよりずっと強かったんでしょ?」

 

「たとえ力で勝っていても必ずしも勝敗には直結しない、ということさ。そう、あの時のように……」

 

 あとほんの少し早く、楓の技から抜けられていれば

 

 彼女との勝敗を決したのは、ほんの紙一重の差

 

 だが自身もかつてそんな紙一重で、本来負けていた試合で勝ちを拾ったことがあった

 

 それをふと、天津飯は思い出していた

 

「カモよ、アスナというのは予選にもおったツインテのあの子か?」

 

「そうだぜ」

 

「ほう、やはりか。いやなに、あの子は予選の時から目をつけておったんじゃよ」

 

(スケベ的な意味でだろ)

 

 亀仙人は、まだ直接の面識がないアスナの名と姿を合致させようとする

 

 カモに確認をとる一方で、ウーロンには予選時の言動を知られていることもあり内心突っ込まれていた

 

「アスナ凄い、カリン塔にも登った」

 

「なんと!」

 

『それでは、四人の選手に登場していただきましょう!』

 

「あ、楓さん達だ!」

 

 と、ここで追加のアナウンスが流れ、一同の視線が下へと注がれる

 

 まき絵の言うように楓を含めた四人が、スモークが噴射する入場ゲートから姿を現した

 

 

 

 

 

 

 

 

『まず選手の皆様には、四台あるマシンの中から一台を選んでもらいます』

 

 四方からせり上がるように伸びた観客席に囲まれ、その中央にあるステージに選手らは集う

 

 そのステージは例えるなら、ピラミッドの上から三割ほどを切り取ったような形

 

 階段を上がり、平らになったてっぺんに四人全員が立つと、ルール説明が始まった

 

「あ、これか」

 

 悟飯は、アナウンスが流れる前から既に目についていたマシンに改めて目を向ける 

 

 一人用ジェットコースターのような形状で四隅にそれぞれ設置され、1~4までの番号が正面にふってあった

 

『その後選んだマシンに乗り込み、スタートと同時に地下にあるバトルゾーンへ出発です』

 

 マシンはレール上に乗せられており、そのレールの延びる先はここより更に地下

 

『バトルゾーンは全部で四つ、選手の皆様はその内のどれか一つに到着します』

 

(ふむ、どこに着くかは運次第……このマシン選びが全てというわけでござるか)

 

 楓はマシンを一台一台ゆっくりと見渡す

 

 見た目に大きな違いはなく、頭を悩ましてまでマシンを選ぶ必要は無さそうである

 

『そしてバトルゾーンには一人ずつ、今大会に招かれた東西南北の銀河戦士達が待ち構えています』

 

(ああ、あの普通の人達が変装した……)

 

 トランクスは説明を聞いて苦笑する

 

 大会の受付を終えてヤムチャらと合流する直前、彼らがジェット機から降りて姿を見せたところを目撃していたトランクス

 

 衣装や特殊メイクによっていかにも宇宙人かのように見せていたが、バレバレ

 

 一人一人の気を注力して探ったわけではないが、地球人には無いような異質な気は一つも感じ取れなかった

 

 彼らの正体はミスター・サタンの弟子、てんで弱いのだ

 

 そう、トランクスには遠く及ばないものの、ただ一人を除いては

 

『その銀河戦士を倒していち早くここへ戻ってきた選手が優勝、賞金と世界温泉巡り旅行と、ミスター・サタンへの挑戦権が与えられます』

 

(……あれ?ってことは悟飯君やトランクスと直接戦わなくてもいいのか!?)

 

 ルール説明が進むにつれ、クリリンはこの決勝戦の特殊性に気付いた

 

 話を聞く限り、求められているのは銀河戦士とかいう人物の相手をすることのみ

 

 下で繋がっていてどこかで悟飯らと鉢合わせする可能性は捨て切れないが、それでも勝ち目0から抜け出せたことはあまりにも大きかった

 

(ラッキー!さっきはああ言ったけど、勝てるに越したことはないもんな!望みが出てきたぞ!)

 

『ルール説明は以上です。質問が無いようでしたらそのままご自分のマシンを選び、乗り込んでください』

 

 ルール説明が終わると指示が入り、各々がマシンに乗り込む

 

 先程も触れたがマシンに大きな違いはなく、特に迷いもせず今いる位置から一番近いマシンを全員が選択

 

 そんなマシンの中はいたって単純な構造になっていた

 

 座る部分にシートベルト、あとは緊急時脱出するためのものかボタンが一つ

 

 自分で自由に動かすような仕組みは見当たらず、どうも片道専用らしい

 

 おそらく戻る道を探すのも試合内容の一つだったのだろうが、全員が全員空を飛べるため意味のないものになってしまっていた

 

 そんなこんなで全員が内部の様子を確かめ、シートベルトを締めたところでハッチが動く

 

 強化ガラスで出来たハッチが四人のマシンを完全に閉め、あとは発車を残すのみ

 

『では、カウントダウンに入ります!』

 

 10!

 

 アナウンスと観客席全体から、決勝戦開始のカウントダウンが大きく響く

 

 9!

 

 また、会場におらずテレビ等から見る者も同じくカウントダウンをおこなった

 

 8!

 

 悟空達はあの世から

 

 7!

 

 カリン様はカリン塔から

 

 6!

 

 アックマン達は無理を言って占いババの水晶から

 

 5!

 

 戦い好きの悪人は地獄から

 

 4!

 

 そして

 

 3!

 

 ついに

 

 2!

 

 戦いの時が

 

 1!

 

 訪れる

 

 0!!

 

 四台のマシンが勢いよく発進した  

 

 並のジェットコースターでは比べ物にならない速度で、地下へと通じる入口へと進む

 

 ほぼ同じタイミングで四台のマシンは入口に入り、会場から姿を消した

 

『決勝戦の模様はモニターを通してお客様にお見せいたします!』

 

 天井付近から超巨大モニターが四台、四方に向けられてゆっくりと降りてくる

 

 そしてすぐに、各バトルゾーン内の様子が映し出された

 

『さあついに始まりました、天下一大武道会決勝戦!果たして優勝はだれの手に渡るのでしょうか!?』

 




 ようやく書けました、今回はいつもみたいな2話投稿でなくこれ一本だけです。早いとこ続き書きたいです。

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