ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 長い間お待たせしてすみませんでした。新章開始と同時に、連載再開させていただきます。


天下一大武道会編
第41話 天下一大武道会開幕! 集結する仲間たち①


 時刻は午後八時過ぎ、まだ朝が訪れてそう時間が経っていない頃

 

 快晴の空の下で日光に照らされるアーチが一つ、そこに書かれている文字は

 

 『天 下 一 大 武 道 会 』

 

 ここはその開催会場、バトルアイランド

 

 港の沿岸部分から長く延びる人工路の先にある、浮島のような会場だ

 

 開始時刻まで二時間を切り、朝方ながら近くには人が次々と集まってきていた

 

 既に港で出店が数店立ち並び、販売の準備を整えている

 

 大会開催に伴い港内でのこういった営業許可もとっているようで、港を含めた全体を『会場』と称していいかもしれない

 

 とはいえまだ時間があるのも事実、賑わいを見せるほどには至らない

 

 そのため南方から飛来する二つの人影、それが港からやや離れた場所に降り立つ様子を見た者はいなかった

 

「着いたアルー!」

 

「へー、凄えやこりゃ……会場の大きさは本家の天下一武道会の上をいくぜ」

 

 程なくして、同じ山吹色の道着を身につけた男女二人が会場に足を踏み入れる

 

 古はここまで飛んで来た達成感に声を弾ませ、クリリンは初めて目にする会場の大きさに舌を巻いていた

 

 二人は早朝カメハウスを出発し、ここまで舞空術で移動

 

 亀仙人は知り合いと合流してから会場に向かう手筈となっており、現在は別行動中である

 

「クリリン、ボサっとしてないで早く受付を済ますアル!ホラホラ」

 

「おいおい古、焦るなって」

 

 長時間の移動で少なからず気を消耗し疲れているはずなのだが、古はいつもと変わらぬ明るさでクリリンを引っ張った

 

 古は到着してすぐに受付を発見していたが、こんな時間のためか自分ら以外の参加者はいない

 

 並ぶ手間もなくクリリンは渡された用紙に名前を書き、登録はすぐに完了した

 

 持っていたペンを古に渡し今度は彼女の番、終わるのを待ちながらその間に辺りを見回す

 

 受付周辺にはいなかったが、会場全体ならどうだろうか

 

 そう思って探してみたが、参加者らしき姿は一つも見られない

 

「……あのー、もしかして俺達が一番乗りだったりします?」

 

 こんな早い時間に彼らが会場入りしたのは、移動時の古の消耗の回復を考えてのことだった

 

 移動中も海上で『参加者の中で一番最初に着くんじゃないか』と話していたことも思い出す

 

「いえ、少し前に三名の選手が登録しにいらっしゃいました」

 

「あ、そっすか」

 

 しかし受付の者に尋ねてみたところ、どうもそうではないらしい

 

 少しして古が書き終えると、今度は二枚の番号札を手渡された

 

「予選の際に必要となりますので、なくさないようお願いします。時間までには選手控え室にお集まりください」

 

 五センチ四方ほどの大きさの紙で、それぞれに『4』と『5』の数字

 

 番号自体は、受付を通した順番に則しているようだ

 

「てことは、その三人が最初に来たわけだ」

 

「むー、一番乗りは先を越されたアルか……」

 

 ひとまずこれで、古の体力回復を除けば予選開始まですることはなくなった

 

 番号札を受け取った二人は受付をあとにして、海の上の人口路を進み会場へと向かう

 

 控室の場所や周囲の施設を把握するのが目的で、そのあと近くを散策するのも面白い

 

「よーし着い……おおっ、やっぱ広いな」

 

「あっちにはでっかいモニターアル!」

 

 そう考えながら入口をくぐると、まず目に入ったのが大きく広がるロビー

 

 明るい黄色の床が一面に貼られ、古の言う通りそこかしこにモニターも設置されている

 

 映されているのは無人の試合場、外に出ずともここから試合を観戦できるというわけだ

 

 中央が吹き抜けた形で二階もあるようで、上がるための階段とエレベーターもすぐに見つけられた

 

「んー?けど控え室はどこアル?」

 

「どうも俺達、観客用の入口から入ったみたいだな」

 

 しかし肝心の、真っ先に確認しておこうとした控え室が見当たらない

 

 建物内を少し歩いて運営スタッフらしき人物を見つけ尋ねると、やはり選手用の入口が今入った所とは別にあるらしい

 

 受付で貰った番号札を許可証代わりに使うようで、なるほどと思いながら二人は来た道を引き返す

 

 そしてその途中でクリリンはある物を目にし、足を止めてポケットに手を入れた

 

「そうだ古、休みなしで飛んでて喉乾いたろ。そこの自販機で飲み物買ってやるよ」

 

「おっ!サンキューアルクリリ……」

 

 建物内には、外の出店とは別にジャンクフードの店やカフェも内設されていた

 

 しかしまだ開店はしておらず、その一方で自動販売機は既に稼働中

 

 クリリンの指差した方向にそれはあり、古は指を追うようにしてその先を見る

 

 自販機のすぐ近くには、買った飲み物をその場でくつろいで飲めるようにかベンチが設置

 

 そこにまだ早い時間ながら座る運営スタッフでない二人組を見つけ、古の言葉は途中で止まった

 

 遠目からでもよくわかる桃色の髪を小さく両サイドにまとめ、缶ジュースを傾ける少女が一人

 

 その髪を見ただけでも九割がた彼女と言い切っても良く、横顔を見てそれは完全な確信へと変わった

 

「……まき絵アルか!?」

 

「え!?くーふぇ!?」

 

「……?」

 

 こちらを向いた顔は間違いなく彼女のそれで、互いに名前を叫ぶとすぐ駆け寄る

 

 まき絵の隣に座っていたもう一人、餃子は何のことやらといった様子でポカンとした顔のまま動かない

 

「良かったー!このまま誰とも会わなかったらどうしようって思ってたもん!」

 

「こっちも心配してたアルよー!」

 

 両者の距離がなくなると、手を握り歓喜の言葉を吐き出し合った

 

「おい古、もしかしてお前のクラスメイ……餃子!」

 

「あっ」

 

 遅れてクリリンが古のあとを追うと、古同様自身の知り合いの存在に気付く

 

 これだけでは終わらない、先程クリリン達が入ってきた正面入口が開き二つの足音がこちらへとやってくる

 

 内一つは、まき絵と共にいる古のことを視認するとすぐさま駆け出してきた

 

「古ちゃん!」

 

「アスナもアルか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そこから少々時は進み場所は変わる

 

 天下一大武道会会場へ向けて、海上を移動する者が一組

 

 本来海上を移動するのであれば、大抵用いるのは船か飛行機

 

「おおっ、速い速い。前見たときより速くなってんじゃん」

 

「あれ以降も特訓は続けてたですから。そろそろ到着のはずです」

 

 しかし海上の少女三人が乗るのは、船や飛行機にあらず

 

 先頭の綾瀬夕映が魔法によって操る箒、それによって飛行を続けていた

 

 明朝に天下一大武道会の詳細を聞いた夕映は、朝倉とさよを乗せてすぐに占いババの館を出発

 

 さよは幽霊のため数えないとしても、朝倉を乗せたことで総重量はいつもの二倍強

 

 それでもこの二週間の鍛錬の成果か、夕映は相当な速さで箒を飛ばすことができていた

 

「それにしても綺麗ですねー。私、海の真ん中から見る景色なんて初めてです」

 

「私は前にいいんちょの飛行機で似たようなの見たことあるけど、直接見るのとじゃ段違いだねー」

 

 そんな速さにもかかわらず、乗り慣れている夕映や元々飛べるさよはともかくとして、残る朝倉にも怯える様子は見られない

 

 箒による飛行は、単純に『浮いた箒が飛ぶ』というだけではない

 

 鉄棒にまたがる場合を考えれば想像はつくだろうが、ただ浮いている棒状の物に跨ると左右のバランスを誤った途端すぐにひっくり返ってしまう

 

 そこで魔法使い達は箒で飛行するに伴い、多少横にぶれても落ぬよう魔力によって周囲に力場を作っている

 

 自分から降りようとするか、もしくは余程強い力が横から掛かりでもしない限り落ちることはない

 

 その説明を事前に受け、なおかつ適応力の高い彼女はすっかり慣れてしまっていた

 

「さて、占いババさんからいただいた地図によればそろそろの筈なんですが……」

 

 舵を取る両手のうち右手だけを残し、夕映は左手で地図を開いて確認する

 

 占いババの館を出発し、一行が飛んでいった方向は東

 

 左手側には中央エリア、東エリアと続く大陸の沿岸部が見え、ここを沿うように進めば目的地のバトルアイランドに着く手筈となっている

 

「……船や飛行機が随分と集まってきてますし、あそこがそうみたいですね」

 

 視線をうんと遠方にやり、各方角から人が来てると思しき建造物にあたりをつけた

 

 その間に同じ方向へ進む船の真上を通過するが、簡易的な認識阻害の魔法をかけていたため気付かれることはない

 

 ただし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……む?」

 

「ん?どうした爺さん?」

 

「今さっき、船の上を誰かが飛んでいったように見えたんじゃが……」

 

「クリリンは先に向かってんだし、ヤムチャあたりじゃねーの?」

 

「いや、あれはヤムチャでは……」

 

 例外が一人、船上にいたようではあるが

 

 ともあれ、ついにその日を迎えた天下一大武道会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーっし!そんならそろそろ出発やな!」

 

「悟飯殿、道中の案内お願い致す」

 

「はいっ」

 

 各人がそれぞれの思いを持ち、次々と集結していた




 次回も書き溜めが済んでいるため、数日以内の投稿を予定しています。明確な日時が決まったら活動報告に書くかもしれませんので、もしよければそちらにも足を運んでください。ではでは

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