ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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第3話 強襲の末に 知った強さ芽生えた友情

「勝……負?」

 

「せや、男と男の真剣勝負」

 

 コタローは気を全身にめぐらせ、臨戦体勢

 

 一方の悟飯もとりあえず受けの構えを取ったが、戦意はまだ見られない

 

「俺も武道家の端くれなんや、目の前にいる強そな相手を見逃すほど根性腐ってないで?」

 

 逆にコタローは地に着けている両足へさらに力を込め、いつでも飛び出せるよう準備した

 

「でも、ケガとかしたら危ないし……」

 

「アホ!武道家が対戦相手のケガ心配してどないすんねん」

 

 だがやはり、悟飯に戦う気は見られず

 

 この後コタローは『男なら覚悟決めろ』だの『それでも男か』等と悟飯に説得兼挑発を繰り返すが、まるで進展しない

 

「……じゃあそれとも何か?俺じゃ全然相手にならへんて馬鹿にしとんのか?」

 

「ち、違うよ!僕はただ……」

 

 コタローに残された手段は、一つだけだった

 

「……せやったら俺が、お前が隠してるその本気を出させたる!マジでぶっ倒しにいくで!」

 

 そう、実力行使

 

 悟飯から了解という名の開始合図をずっと待っていたコタローの足は、それを待たずして大地を蹴る

 

 一瞬で距離を詰め、気を込めた右拳を放った

 

「わわ、ちょっと!」

 

 あわや顔面直撃かと思われたコタローの奇襲だったが、悟飯はそれを回避

 

 右足を軸に左半身を退かせ、攻撃を避ける

 

「まだまだ!」

 

 コタローも攻撃の手を緩めない

 

 胴体や顔をめがけて、さっきよりさらに高速で拳を連続で放つ

 

(やっぱりな……)

 

 その間にコタローはあの時の、悟飯の家へ移動中の際の違和感が確信へと変わっていた

 

(別の『地球』か、なるほど確かに俺らのいた地球とは全然違うわ。気の巡り方が尋常やあらへん、おそらくネギも同様に魔力を行使できると見たで)

 

 麻帆良にいた時、もっと正確に言えばこの世界に来る前と比べて明らかに動きのキレが違う

 

 歩きながら悟飯の家へ向かう際にふと意識し、次に右手を軽く気を通してみた際かなりの違和感として頭の中に留まっていたのだ

 

(ちょっと前に行かせてもろたエヴァンジェリンの別荘では、全体の魔力がどうとかでネギらのパワーが上がっとったが……こりゃ気も魔力も該当するうえ上昇量も半端ないスーパー版やな)

 

 つまり現在コタローは、普段の十二分以上の実力を発揮しながら攻撃していることになる

 

 だが悟飯はその攻撃を難なく受け流す、動きに乱れは皆無

 

「やっぱり強いやんか悟飯!けど避けてばっかじゃ……」

 

 打撃のみでは難しいと判断したかコタロー、即座に戦法を変更

 

 握っていた右拳を解き、防御のために出していた悟飯の腕を掴んだ

 

「勝てへ、んおおっ!?」

 

 これで攻撃が届く、そう思い左拳を突き出そうとしたコタローは宙を舞う

 

 そうなった理由はごく単純、コタローも受け身をとった後すぐ把握

 

 悟飯が掴まれた自身の腕を大きく回し、掴んでいたコタローを全身ごとふっ飛ばしたのだ

 

 それも、コタローが怪我をしないよう配慮された、ギリギリの力加減で

 

「くっそ……があっ!」

 

 受け身をとってコンマ数秒で起き上がったコタローは、再び打撃技で攻め立てる

 

 蹴りも混ぜて攻撃パターンを複雑にするが、それでも悟飯には当たらず

 

「コ、コタロー君!とりあえず落ち着いて!ね?」

 

 まだ悟飯には大きく余裕が見て取れ、最小限の回避を繰り返しつつコタローへ制止を呼び掛けた

 

 だがコタローは止まらない

 

 彼の胸の内に芽生えるのは、苛立ちと焦りと怒り

 

 一向に攻め返してこない悟飯に延々と攻め続け、さらに数十秒

 

「……はあっ、はあっ、はあっ……」

 

 コタローの攻めの手は止まり、悟飯の目の前で棒立ちになって顔を俯かせる

 

 悟飯の方からはコタローの表情を窺い知ることは出来なかったが、ようやく分かってくれたのかと一先ず安堵の悟飯

 

 もっとも

 

「さよか……俺じゃ相手にならへん、相手する価値も無い。そう言いたいんやな?」

 

「え!?」

 

「ここまで馬鹿にされたんはいつぶりやったかなぁ……」

 

 これは悟飯が勝手に思い込んだだけの、完全な勘違い

 

 コタローが重く言葉を絞り出し両拳を握りしめ、彼の顔から出た雫が一粒地面に吸い込まれる

 

 そして、それに悟飯が動揺を見せたのとほぼ同時

 

「くっそ、思い出してもうたやないか!上等!何が何でもその隠した爪出させたる!」

 

 コタローは大きくバック宙で跳び上がった

 

(単なる肉弾戦じゃてんでダメ、覚悟はしとったがこれほどまでとはな……なら、これや!)

 

 宙を舞いながらコタローは下の地面を見据え、右手の五指全てに力を注ぎこむ

 

 その右手は着地直後に地面へ付けられ、コタローの咆哮が周囲に轟いた

 

「狗……神ぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

(っ!?コタロー君の周りの影が!)

 

 今の時刻は昼過ぎくらいであろうか

 

 太陽の光は二人の上から降り注ぎ、足元に影を作り出している

 

 が、コタローの影は彼のもとから飛び立った

 

 闇の如き黒を身に纏った『狗神』に姿を変え、主である彼の意のままに駆けだして

 

(その反応、やっぱこれ系の技は未経験……ならまだ目はある!)

 

(全部から気を感じる……気を使って生み出した分身体!?)

 

 数は八、それら全員が悟飯を追い込まんと四方八方を疾走する

 

「いっけえええええええっ!」

 

 コタローの合図で、一斉に飛びかかった

 

 悟飯の腕を、足を、頭を、体を、それぞれが別々に狙いを定める 

 

(これで体勢崩させて、その隙を狙うしかあらへん!)

 

 その間にコタローは、気で残りの狗神を練り上げ右拳に集束

 

 破壊力を増したその拳は狗神同様漆黒に染まり、彼自身も飛び出した

 

「うっりゃああああああ!」

 

 目の前で、狗神全部が消滅した

 

 

 

「!?」

 

 コタローの目に映るのは、右腕を大きく振るった後の悟飯の姿

 

 そう、あくまで『振るった後』の姿のみ

 

 振るったその瞬間は、コタローの目に一切映らず

 

 だが事実、悟飯に襲いかかっていた狗神は全ていなくなったのだ

 

 そして悟飯に突撃するコタローの足は、もう止められない

 

「狗音……」

 

 だが考え方を変えれば、現在悟飯は攻撃直後で動きが止まっているとも取れる

 

 狗神で固めた拳を、コタローは悟飯の顔面めがけ突き出した

 

「爆砕拳ーー!」

 

 狗神越しだが、ズンと拳から確かな手応えが伝わる

 

(よっしゃ!もろた……)

 

 コタローは悟飯のもとから吹っ飛んだのは、その直後だった

 

(……は?)

 

 視界の中でどんどん小さくなる悟飯

 

 木にぶつかったか、背中に走る衝撃と鈍痛

 

 起き上がる力もすぐには沸かせず、コタローは全身を地に預ける

 

 自分達を探しに家を出たネギがあの音を聞いて駆けつけ、合流するのはこのすぐ後のことであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあー、こんなボロクソやられるとは思わへんかったわ。完敗やな……」

 

「コタロー君、本当に大丈夫なの?」

 

「ちょっと痛むけど平気や平気……まあ、思い返せばさっきは随分とガキ臭いこしてもうたし、因果応報やんな」

 

 ある程度回復したコタローは、悟飯達の手を借りることもなく共に帰路につく

 

 ネギは未だに怪我の塩梅を気にしているが、平気平気とコタローは軽く笑って返す

 

 とは言ってもコタローが激突した木、実はあの後なんとへし折れる始末

 

 それほど凄まじい衝撃だったということだ、ネギが心配するのも無理はない

 

「けどまあ最後のあれは悟飯も幾らか本気出してくれたみたいやし、良しとしとくわ」

 

 最後に悟飯が行ったのは、単純に『全身から気を放出する』という行為

 

 コタローが感じた手応えは拳と気がぶつかり合った際のそれで、その拮抗は一瞬と持たず吹っ飛ばされていた

 

「けどコタロー君も凄く強いんだね、僕今まで大人の人としか戦ったことなかったから驚いちゃったよ」

 

「よせや、まだ悟飯には全然届いてへんやろ。あ、ちなみにネギもそこそこやれるで?俺と同じか少し上くらいは」

 

「え?いや、僕なんかまだまだ……」

 

「そう言えば、ちょっと前に魔法とか言ってたよね?ネギ君は使えるの?」

 

「……まあ、そうだね。あとは拳法とかも教えてもらってて、それと併用して戦う感じかな」

 

 学校には通わず自宅学習という形をとっていた悟飯にとって、ネギやコタローのような同年代の話し相手ができるというのは本当に稀なこと

 

 先ほど悟飯も言った通り今まで年上の面々としか接しておらず、やはり嬉しかったのだろう

 

 ネギ達との会話は、途切れることを知らない

 

 そうやって、悟飯の自宅が目の前まで見えてきた際のこと

 

「あ、そうだ。ネギ君達も一緒に大会出ない?」

 

 悟飯が二人に、こう提案したのだ

 

「ん?」

 

「大会?」

 

 そもそも、あの場所でネギ達と悟飯が出会ったのはそれが理由

 

 二週間後にバトルアイランドという島で行われる武道大会、『天下一大武道会』

 

 悟飯は自分の師匠と共に参加することを決めており、しばらく勉強ばかりで鈍っていた戦闘の勘を取り戻すためにあそこで修行していたとのこと

 

 その際ネギが飛ばされてきた光を目にし……というわけだ

 

「ネギ君はまだちゃんと見てないから分からないけど、コタロー君と同じくらい強いなら二人ともきっといいとこまでいける筈だよ」

 

「面白そうやな……ネギ、どないする?俺は当然出るで、二週間ばっちし修行してな」

 

「うーん……けどまだ他のみんなの場所も分かってないのに、僕達そんな大会に出てもいいのかな?」

 

 そもそも自分達同様、この世界に来ているかどうかも不明なのだ

 

 悟飯の言うドラゴンボールで『他の異世界にいる仲間含め全員を元の世界に戻す』という方法もおそらく取れるわけだが、自分の生徒達の安否を確認しないことにはやはり不安でしょうがない

 

 ネギは大会までの二週間を、生徒らの捜索ではなく修行へあてることにやや抵抗を感じていた

 

「まあそれも一理あるんやけどな……けどネギ、来てるかも分からへん仲間全員を二週間中に探すのなんてまず無理やろ?」

 

 おそらくこの世界の地球も、元いた世界の地球とそう大きさは変わらない

 

 加えてネギはあちらの世界に、飛行用の杖を置いてきてしまっていた 

 

 このことから、二週間での捜索はまず不可能だと言えた

 

「それに今思いついたんやけど、闇雲に探すよか大会出て目立った方が絶対効果あるで。悟飯、確かその大会かなりでかい言うてたな?」

 

「え?うん、まあそうだね、世界中から参加者を募集してるし、スポンサーもかなりのお金持ちみたい」

 

「…………あ、そうか!僕達がその大会に出れば、中継とかを通じてみんなに僕達の無事を教えられるし、何より合流がしやすくなる!」

 

「しかも世界中から参加者を募る大規模な武道大会や。菲部長なら真っ先に飛びついてくるやろうし、他にも俺らみたいな考え持ったのが大会会場に来るかもしれへん」

 

 他にいい方法もない現状だ、ネギ達の行動方針は纏まった

 

「それじゃあ悟飯、俺達もみっちり修行さしてもらうで!大会までに絶対一泡吹かせたるからな!」

 

「じゃあ僕もよろしく、えっと……」

 

「コタロー君と同じで呼び捨てでいいよ。僕たち殆ど同い年だしさ」

 

「……よろしく、悟飯君」

 

「うん!一緒に頑張ろうね、ネギ君、コタロー君!」

 

 ネギの照れながらの笑みを、悟飯も同じく笑みで返した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみにその晩

 

(ネギ先生と同じ部屋、ネギ先生と同じ部屋、ネギ先生と同じ部屋……)

 

 チチに与えられた一室の中で、あやかは延々と毛布にくるまりながら感激&興奮で一睡もせず初めての夜を終えた

 




 とりあえず、以上四本で今回の投稿を終了させていただきます。近いうちに続きの話も加筆修正なんかをしつつ投稿したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 ではでは

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