ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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第2話 発覚した事実 今いる別の『地球』

「まあ!こんな山奥で、お母様とお爺様の三人で暮らしてますの?」

 

「それと生まれたばかりの弟が一人、悟天っていうんです」

 

 ネギ達三人は、少年悟飯に連れられて未知なる山、パオズ山を歩き進んでいく

 

 その間の三人の行動は、それぞれがまるで違っていた

 

 ネギは山内に自生する植物や、時折姿を見せる小動物から現在位置の特定が少しは出来ないかと周囲に目配せし、

 

 あやかは今も『自分達が見知らぬ場所にいつのまにかいる』という事実しか分かっておらず、暇を持て余した結果悟飯と会話を交わし、

 

 コタローは自身の右手を強く握っては放し、握っては放しを繰り返す

 

(やっぱりおかしい……なんやこれ)

 

 そうする中でコタローは、自身の中に沸く違和感に眉をひそめていた

 

(確認したいんやけど、あやか姉ちゃんもおるし大っぴらには出来へんな。やるなら一旦あいつの家に着いて、一段落ついてから……)

 

「コタロー君、どうしたの?」

 

「……ん、なんでもない」

 

 自然と歩みが遅れ、それに気付いたネギが声をかけたがコタローは掌を左右に振る

 

(あとそれとは別に……あやか姉ちゃんはともかくとして、まさかネギまで気付いてないとかあらへんよな?)

 

「あ、見えてきた、あれが僕の家」

 

「随分と変わったデザインですのね……」

 

 そうこうする内に一行は目的地に到着、悟飯が前方へ指をさす

 

 見えてきたのは、半球に近い形状をした一軒屋

 

 悟飯はとりあえず母に事情を説明してくると言って、一足先に家の中へと駆け込んだ

 

(孫悟飯、気ぃ抑えて誤魔化してるみたいやけど分かるで……あいつ、達人とかそんなレベルやない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、事情を説明して母から了承を得た悟飯と共に三人は家へとあがる

 

「な、何これ!?」

 

「これホンマに地球儀か!?」

 

「私達が知っているのと、全く違いますわ……」

 

 すぐに悟飯が地図とついでに近くにあった地球儀を持ってきたが、地球儀を見て三人が放った言葉は確実に驚きを帯びたものだった

 

 地球儀に記されているもの全てにまるで覚えがない

 

 慌ててネギは、今度は地図を借りて目を通し始める

 

「……違う」

 

 パオズ山を含めた一地域を記した地図、やはり見覚えがない

 

「……違う」

 

 パオズ山がある大陸全体をまとめた地図帳、やはり見覚えがない

 

「……違う」

 

 その他片っ端から見てみたが、全て自分の記憶とは合致せず

 

 いくら探しても『麻帆良』どころか『日本』そのものが無かった

 

「……無い、麻帆良が」

 

「ネ、ネギ先生?」

 

 ネギの声色は、焦燥と不安を如実に示していた

 

(まさか……まさか……)

 

「あの、君大丈夫?」

 

 顔色を悪くしたネギを心配したのか、悟飯が覗き込む

 

「……すみません、今西暦何年か分かりますか?」

 

「え?西暦?」

 

「……言い直します、今年は何年ですか?」

 

「えっと……エイジ768年、かな」

 

 何か思うところがあったか、ネギは悟飯の問いには答えず逆に訊き返した

 

 悟飯は『西暦』という言葉を把握できず、帰ってきたのはまるでネギも知らない年号

 

 そんなネギの中で一つの仮説が打ち立てられ、表情がさらに険しく変わる

 

「おい、どうしたんやネギ?ネギ!」

 

 ネギは自分達に何も言わない、そのことにコタローが苛立ちを覚え声を荒げる

 

 ネギは少し深めに一回呼吸し、不安を覚えながらもその仮説を話し出す

 

「まだ推測の範囲を出ないけど……いや、でも十中八九そうだと考えるしかないんだ……」

 

「だから何やねんそれは!」

 

 ネギはちらりとあやかの方を見た

 

(もう、話すしかない……)

 

 完全な非常事態だ、魔法バレがどうと言っている場合ではないとネギは悟っていた

 

 悟飯以上に今の自分を心配そうな表情で見つめるあやか

 

 彼女にも聞こえるように、ネギはさっきよりももう少しだけ声を大きくし再び口を開ける

 

「おそらく、僕達はあの暴走した転移魔法のせいで……」

 

「神隠しの一種、だべか」

 

「っ!」

 

 するとその最後の部分を、先程からネギ達の近くで話を聞いていた大男が代わりに口から零した

 

「んぁ、そういえば自己紹介してなかっただな。オラは牛魔王、そこにいる悟飯のじいさんだべ」

 

 孫悟飯の祖父、牛魔王である

 

「昔オラのお師匠様……武天老師様が話してくれたことがあるだ。うんと若ぇ頃、何処からともなく見知らぬ子供が突然迷いこんできて、すぐに何処かさ消えちまったことがあった、ってな。つまり坊主達もその子供みてえに、こことは別の世界から来ちまったんでねえだか?」

 

「はい、僕が言いたかったことと殆ど同じです。つまり僕達は『麻帆良のある地球』から『麻帆良のない地球』へ……所謂並行世界、別次元の地球へ飛ばされたと考えられます」

 

「べ、別次元の地球!?んなこと有り得るんか!?」

 

「世界樹のあの膨大な魔力を考えれば、不可能とは言い切れないよ……それといいんちょさん、さっき言いかけたこと、お話します」

 

 もうここまで考察が進んだ以上、あやか相手に隠し続ける気はもうなかった

 

 事の現状を自分やコタロー同様に把握してもらうべく、ネギは意を決してあやかに話し始めた

 

 自分達がこんな場所まで飛ばされた原因であろう、『魔法』についてを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……成程、そういうことでしたのね……まだ混乱が収まっていませんが、全て把握いたしましたわ」

 

「本当にすみませんでした、ずっと黙ってたこともそうですし……それに、こんなことに巻き込んでしまって……全部僕の責任です」

 

「何を仰いますのネギ先生!ネギ先生に悪いところなど、何一つ有りませんわ!」

 

 全て言い終わった後も、やはりあやかはあやかだった

 

 ネギの両手を両側から握りしめ、腰を屈めて顔をネギのすぐ近くまで持ってくる

 

「それよりも、本来秘匿である魔法の存在について、私を信頼して話してくださったこと……この雪広あやか、歓喜の極みですわ!」

 

「あの、いいんちょさん顔近……」

 

「ネギ先生へ最大限の助力をいたすことを、私はここに約束いたします!ですのでネギ先生、是非私もその『仮契約』とやらでパートナーに……」

 

「ほい、終了ー」

 

「ちょっ、何するんです!折角ネギ先生とさらに分かりあうことが出来た私の至福のひと時を……」

 

 と、ここでコタローが後ろ襟を引いてあやかを引き剥がす

 

「んなことしてる場合ちゃうやろ今は……で、ネギ。帰る方法は何か心当たりあるんか?」

 

「それについては、まだ……」

 

 そう、今自分達がいる場所が分かったのは良い

 

 しかし彼らの肝心な目的、『麻帆良への帰還』が出来ないことには意味が無いのだ

 

 コタローにそこを突かれ、たじろぐネギ

 

 一方で牛魔王は顎に手を当てて何か考え込んでいる

 

 彼や悟飯もネギが話すことに多大な理解を示しており、ネギもそれには大いに助かっていた

 

 そんな牛魔王が、今度は悟飯へと視線を向ける

 

「そういや悟飯、もうあれからそろそろ一年経つんでねえだか?異世界っつうのがどれだけ凄ぇところかはオラもよく分からねえが、ひょっとすりゃあ……」

 

「そうか!ドラゴンボールがあった!」

 

 悟飯も牛魔王の意を察し、大きな声をあげた

 

 そう、この世界にはあるのだ

 

 『不可能』を『可能』に変える、神にしか作れぬ神秘の龍玉が

 

 再び『?』な顔になった三人に、悟飯はこの奇跡の存在『ドラゴンボール』についての説明をするのだった

 

 これには三人とも、『異世界の地球』など問題外と言わんが如く大いに驚いたという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃあ、三人はこの部屋を使ってけろ」

 

「本当にありがとうございますチチさん、こんな見ず知らずの僕達のために……」

 

「いいだいいだ、気にすんな。悟飯ちゃんも一緒に居たいって言ってることだしな」

 

 一連のことを話し終わった後、次なる問題は『帰還までの居住場所』であった

 

 ドラゴンボールは一回使用すると、それから一年以上経たねば再使用出来ない

 

 悟飯達は去年ドラゴンボールを使ったらしく、あと三週間ほどでちょうど一年経つとのこと

 

 その三週間の間、どこでどうやって寝泊まりするのか

 

 頭を悩ませるネギ達だったが、思いのほか簡単に解決へと至った

 

 悟飯の母、チチがこの家で居候することを提案したのだ

 

 このことには悟飯も、そして牛魔王も一切反対なし

 

 特に悟飯は同年代の知り合いが出来て嬉しいという部分も大きかったのだろう、一番強く賛成した

 

 というわけで他にあてもなし、そのご厚意に甘えることとなったのである

 

 今はチチがネギ達を、今日から寝るのに使う空き部屋に案内しているところ

 

「じゃあ何か家のお手伝いだけでも……ってあれ?コタロー君は?」

 

 ネギがふと後ろを振り返ると、さっきまでいた筈のコタローの姿がない

 

 チチとあやかもこの時ようやく気付いたようで、三人揃って辺りを見回すがやはりいない

 

 さらに言えば、悟飯まで姿を消している

 

「おっ父、悟飯ちゃん達そっちさ行ってねえだかー?」

 

 チチはリビングにいる牛魔王に声をかける、返事はすぐ返ってきた

 

「ん?さっき二人揃って外へ出てっただぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コタローくーん?何処ー?」

 

 悟飯はコタローの気を追い、最初にネギ達が倒れていたすぐ近くの場所まで足を踏み入れる

 

 この辺りまで来たところで気が消え、目視でコタローを探し始めていた

 

(消えたっていうよりは、多分コタローが自分で気配を消したんだよな……)

 

 平地ではあるが、その周囲には高い木々が生え揃っている

 

 悟飯は視線を高くし、隠れていると思われるコタローの捜索を続行するが

 

「っ!」

 

 すぐに終了

 

 コタローが自分から居場所を教えてきたからだ

 

 背後から突如、凄い速度で手のひら大の石が飛んできた

 

「危ないじゃないかコタロー君!どうしていきなりこんなこと!」

 

 悟飯は石が飛んでくる気配をすぐ察知し、振り向きざまに右手を伸ばして受け止める

 

 そのまま身体の向きを反転させ、木から飛び降りて着地したコタローと目を合わせた

 

「危ないやて?余裕ぶっこいてその石キャッチしといてよく言うわ、やっぱり俺の見立て通りやったな」

 

 コタローは突如構えをとり、悟飯へ鋭い視線を飛ばす

 

 さらには体内で気を練り上げ、どんどん高めていることを悟飯は感じ取る

 

「お前の着てるそれ、道着やろ?しかも今は隠してるみたいやが、かなりぶっ飛んだ腕前と見たで」

 

「えっ!?」

 

「まあ何が言いたいかっちゅーとな……悟飯、俺と勝負してもらおか!」

 

 コタローは拳を握りしめ、悟飯の返事も待たず気を開放

 

 吹き出た気は、周囲の木々の葉を揺らした

 




 

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