ネギドラ!~龍玉輝く異世界へ~   作:カゲシン

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 もっと長くかかるかと思ったけどこのくらいで済んで良かった(小並感)

 というわけでどうぞ


第20話 ちう茶々地球冒険録② とある港町編

 カプセルコーポレーションがある西の都から、さらに西

 

 大陸の西端に、とある港町があった

 

 西の都には劣るが、それでも港があることで人の出入りも多くそれなりの賑わいを見せている

 

 そんな町の中の喫茶店で、テーブルに地図と雑誌を広げて会話を交わす二人組の少女

 

「ここから定期的に出てる東の都行きの船、その乗船料が……いや、確かに距離考えたら高いのは当然なわけなんだが」

 

「客船ですから、サービス料金もそれなりに含まれてると考えていいでしょうね」

 

 長谷川千雨と絡繰茶々丸、二人はこの港町で現在三日程足止めを食らっていた

 

 聖地カリンを出て一日少々、無事当初の目的地であったこの町に到着

 

 しかしながら次の目的地、大陸東エリアまでどう行くかについては困難を極めた

 

 当座の資金については何とか茶々丸が日雇いの仕事を見つけたが、ここを出て東へ渡るにはあまりにも足りない

 

 なけなしの金で世界地図と旅行雑誌を買い、一杯のコーヒーだけで粘ってそろそろ一時間が経とうとしていた

 

 ちまちま飲み進めていたコーヒーも、あと一口で空になる

 

「第二のルートとしては、ここから西の都まで向かってそこから飛行機に乗るという方法もあります。こちらの方が代金としては安上がりです」

 

「それはそれで、こっから西の都までどう移動するかって話になんだろうが。タクシーにしろバスにしろ、結局料金が上積みになっちまう」

 

 ちなみに、茶々丸の魔力供給をどうするかという問題があったがそれは既に解決していた

 

 ネギとの仮契約でパクティオーカードを持つ千雨は、カード経由で魔力をある程度発現させることが可能だと聖地カリンからの移動時に発覚

 

 供給のためのゼンマイも茶々丸が普段から持ち歩いていたことが功を奏し、今では一日一回仕事終わりに千雨が巻いている

 

 そうすると今度は『東の都まで茶々丸で飛んでいけばいいじゃないか』という案が挙がったが、本人によりこれは却下

 

 聖地カリン到着前にも言われていたことだが、魔力ジェットによる飛行はかなりの消費を伴う

 

 するとどうなるかというと、途中休憩が挟めない海を渡っての最短ルートが不可能

 

 また、大陸横断も距離や飛行性能を考えると途方もない時間がかかるのは明白

 

 したがってこうして、交通機関での移動を検討しているわけだ

 

「なんにせよ、まだ暫くの間はこの町で旅費を稼ぐ必要がありますね」

 

「まあそういうこったな、それに関してはよろしく頼むわ」

 

「千雨さんも、引き続き情報収集をよろしくお願いします」

 

 茶々丸が見つけた日雇いの仕事は、どれも肉体労働に属するそれ

 

 千雨にはとてもじゃないがこなせそうになく、代わりといってはなんだが町の中でネギ達についての情報は無いか調べて回っていた

 

 とは言っても、現状の成果は殆んど無い

 

 ギリギリ成果と呼べそうなものは、もしかしたら古菲辺りが出たがるかも知れない武道大会の存在くらいか

 

 その点も含めてやはり、出来る限り早くこの港町を発ちたいと考えていた

 

「では、休憩時間も終わりますしそろそろ私は戻ります」

 

「ああ、それじゃまた夜に此処で……」

 

 千雨はカップを手に取り、最後の一口を飲み干す

 

 カップをテーブルの上に戻し、会計を済ませ店を出ようと席を立ったその時だった

 

「ドロボーーーー!」

 

「「!?」」

 

 突如耳に入った男の声、その声は千雨の耳を震わせ思わずその場で立ち止まらせる

 

 無論自分らはドロボウ、つまり無銭飲食をするつもりなど毛頭ない

 

 そもそもその男の声がしたのは店の外、二人はその方向を見やった

 

 店の壁ガラスを隔てて千雨と茶々丸の前を、三人組が大層慌てた様子で通り抜ける

 

 背がかなり低い、全身水色の男

 

 ロングの黒髪の、三人の中では一番長身の女性

 

 最後に、紫の忍装束を着た犬型の獣人

 

 三人の手の内には、零れそうなほどに大量の貴金属類が抱えられていた

 

 というか逃げるのに精一杯らしく、現に三人が通った後には一つ二つネックレスや指輪が落ちている

 

「あいつらドロボウだ!誰か!誰でもいいから捕まえてくれー!」

 

 ここで最初の声の主の男が、走りながら千雨達の前にようやく姿を見せた

 

 三人組を追い続けてはいるものの既に疲労困憊、声を出すのが精いっぱいで自身ではとても追いつけそうにない

 

「……千雨さん」

 

「ん?」

 

 男の様子を見た茶々丸は、続いて彼の先を走って逃げる三人組に視線を合わせる

 

「ちょっと行ってきます」

 

「は?まさかあいつら追いかけるってのか!?」

 

「そのまさかです」

 

 伝票を千雨に握らせ、茶々丸は駆け出した

 

 ガラス戸は勢いよく開かれ、瞬く間に彼女の姿は千雨の視界から消失

 

「こんな時まで人助けかよあいつは……あ、平気ですあいつ私の連れなんで。会計お願いします」

 

 後を追う理由も脚力も持たない千雨は、何事だと慌てる店員に伝票を渡した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピラフ様、見事成功ですね」

 

「わっはっは!ピラフ様の実力思い知ったか!」

 

「実力というか、ただ逃げ足が速いだけのような……」

 

 現在逃走中の三人組の彼ら、通称ピラフ一味

 

 十数年前、悟空達からドラゴンボールを奪い、世界征服を企んだ悪党である

 

 だがその目論見は二度にわたって失敗

 

 さらには融合前のピッコロの父、ピッコロ大魔王の封印を解き共謀を図ったことまであった

 

 しかしそれも、大魔王に裏切られたことで無様な失敗を遂げる

 

 それ以降ズルズルと落ちぶれていき、今に至るわけだ

 

 先頭を走る青色の男、ピラフは店の男が追いかけてこなくなったことに大層上機嫌

 

「これらを他の都市で高く売り飛ばし、世界征服のための資金にしてくれるわ!」

 

 今彼らが走っているのは、人混みも大分はけた裏路地

 

 このまま町の外まで出れば、あとは自前のマシンを出して逃走完了である

 

「ん?……うぎゃあ!ピ、ピラフ様!」

 

「なんだシュウ!騒々しい!」

 

 と、ここでふと後ろを振り返った犬型の獣人、シュウがひっくり返ったような声をあげる

 

 走るその足は動かしたままだが、明らかに意識は視線の先一点に集中していた

 

「建物の上から誰か追いかけてきます!それも凄い速さで!」

 

「なんだとぉ!?」

 

 間違いなくそれは、ピラフ達を一点目標に据え追跡していた

 

 建物と建物の間をほぼ水平に近いジャンプで次々と飛び越え、確実に追ってきている

 

「お、落ち着け!ほら見ろもう路地を抜けた!あとはピラフマシンを出せば逃げ切れ……」

 

「そうはいきません」

 

「「「え!?」」」

 

 路地を抜け広い場所に出たところで、三人の目の前に一人の少女が舞い降りた

 

 建物の屋根の上から踏み切り、彼らの頭上を一回転して着地

 

 いったん背を向ける格好となったが、すぐさま向き直し少女絡繰茶々丸は視線を向けた

 

「その両手の物、返していただきます」

 

「な、何だお前は!?そこをどけ!」

 

 四人がいるのは、ちょうど町の入り口近辺

 

 ここを突破できれば、後はどうとでも逃げられる

 

 しかしそれを、茶々丸が許すはずがない

 

「どくことは出来ません、持っているそれをこちらに」

 

 表情一つ変えず、淡々とピラフ達に言い放つ

 

「ピ、ピラフ様、いかがいたしましょう!?」

 

「し、しょうがない……これを使って追っ払うしかあるまい」

 

 長髪の女性マイが震え気味に言うと、ピラフは懐から何かを取り出し二人に見せる

 

 それに反応し、二人も同じ行動をとる

 

 右手には万能収納カプセル、ホイポイカプセルが収められていた

 

「出でよ!ピラフマシン!」

 

 三人は同時にカプセルのスイッチを押し、目の前に放り投げる

 

 ボンという音と共に出てきた物、それは

 

「!?」

 

 青、緑、ピンクの三体の巨大ロボだった

 

 三人はすぐさまそれぞれのマシンに乗り込み、起動させる

 

「ピラフ様!準備できました!」

 

「こっちもです!」

 

「ようし!ピラフマシン、合体!」

 

 ピラフの掛け声と共に、三体のマシンがそれぞれ飛び上がる

 

 マイが乗る一番大きいピンクのマシンを中心として、三体が一体のマシンへと組みあがっていく

 

 組みあがるといっても、緑の上にピンク、ピンクの上に青という単純な合体なのだが

 

 合体を完了させ、茶々丸の目の前に鎮座する

 

 やや風が起こり、茶々丸の髪の毛が軽くなびいた

 

「どうだアンテナ女!怪我をしたくなければそこをどくがいい!」

 

 てっぺんの青のマシンに乗るピラフが、マシン内で茶々丸を指差すのが見える

 

 だが茶々丸は

 

「どきません、こちらへお返しを」

 

 どくことはない

 

「……ええい!だったら力づくだ!マイ!」

 

「はい!」

 

 ピンクのマシンに乗っている女、マイは自身のマシンを操作し、右腕を茶々丸に伸ばす

 

 そのまま捕まえてしまおうという考えらしい

 

「無駄です」

 

 しかし茶々丸はこれをジャンプして楽々とかわす

 

 そのまま落ちた勢いを利用し、右腕にパンチを一発

 

 真ん中から先が木っ端微塵に砕けた

 

「「「!?」」」

 

 三人が驚くのもつかの間、茶々丸は次なる行動に移る

 

 動きを止めるために、合体ピラフマシンの膝部分を突きを入れて両方破壊

 

 肘打ちで左腕部分を肩から粉砕

 

 そして、胴体に回し蹴りをして仰向けに転倒させる

 

「あわわわわ……」

 

 一連の動きを、茶々丸は表情をまったく変えずに遂行

 

 それに対し何も出来ずにいるピラフ達を、次第に恐怖させていった

 

 最後に茶々丸は、ピラフの乗る青マシンのハッチの上に立つ

 

 無機質な彼女の瞳は、ちょうどピラフを見下ろす形となる

 

「返してください」

 

「わ、分かった!じゃあこうしよう!見逃してくれたら今持ってる分から半分、いや三分の二を……ひぃっ!」

 

 声を震わせながらも最後の抵抗(というより半分逃げの妥協案か)を見せたピラフ

 

 しかし、ついにはその気力さえも喪失してしまった

 

 茶々丸が目から発射したレーザーが、ビュンと音を立てピラフの顔の両隣にそれぞれ命中したのだ

 

 強化ガラスのハッチはなんの意味も成さず、穴が二つ

 

 茶々丸はひざを折り、さらに近距離でピラフを見据えた

 

「返していただけますね?」

 

「は、はひ……」

 

 弱々しい声で、ピラフはそう答えるしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『間もなく、東の都行きの便が出港いたします。乗船される方は……』

 

「んー……改めて確認してみると、東の都からも結構距離あるなおい」

 

「今まで同様、旅先旅先で資金調達が必須になるかと」

 

「せめて私もやれる仕事があればなぁ……」

 

 船外に流れる放送を、千雨と茶々丸は船内にて耳にする

 

 しかしそれについて関心は0、客室のテーブルに広げた地図に全て向けられていた

 

「一番の問題は、この世界では私達の身分を証明する物が0ということ。結果として私がやったような日雇いくらいしか無いのが現状です」

 

「しかも都会となると、ありそうな日雇いの仕事と言えば……」

 

「おそらく工事関係が大半、過酷な肉体労働となるのは確実でしょうね」

 

 ピラフ一味から盗まれた貴金属類を奪い返した茶々丸は、逃げる道中落とした物も出来るだけ回収し店へと返却

 

 金が無いと困っていた矢先での出来事ではあったが、ネコババして町を去るという選択肢は初めから茶々丸には無かった

 

 すると店の者が取り返してくれた礼ということで、ある物を手渡される

 

 ピラフ一味が盗みに入った店は貴金属店に加えて金券ショップとしても営業しており、ここから出港している船の乗船料として使用できる金券を手に入れることが出来た

 

 かくしてもう暫く滞在して旅費を稼ぐ筈の予定は急遽変更、その日の晩出港の便に二人は乗り込んだ

 

「千雨さんは引き続き、現地での情報収集をお願いします。次の東の都はこの世界の地球で五指に入る大都市、ネギ先生達の誰かが身を置いている可能性も高いでしょう」

 

「その点考えると、西の都経由で飛行機乗るのも悪くはなかったんだよな……まあお前がいいもん手に入れてくれたから、利用しない手は無いわけだが」

 

 そう言いながら千雨はテーブル上の地図を片付け眼鏡を外し、備え付けのベッドへと足を入れる

 

 夕食もとうに済ませ、時刻は間もなく10時を迎えようかという頃

 

 着いた先でも引き続き苦労するであろうことは承知しており、出来るだけこの船内で疲れをとっておきたい

 

 ここ数日カプセルホテルでの寝泊りが続いていただけに、今入ってるベッドは千雨に今は安らぎの時だと教えているようだった

 

「ふあぁ、それじゃあもう私は寝るぞ……ゼンマイ巻くのは明日の朝でいいな?」

 

「はい、おやすみなさい千雨さん」

 

 千雨は最後まで布団をかぶり、それを最後に茶々丸も閉口

 

(東の都での滞在期間は、次の街が近いことも考えると長くて三日。その次の街の名前は……)

 

 千雨の睡眠を妨げぬよう、無言のままなるべく物音を立てず今後の旅の予定を整理した

 

(……オレンジシティ。いえ、最近改名されてサタンシティ、でしたね)

 

 船は西へ西へ、千雨達を乗せてひたすらに進む

 




 ちう茶々編は他のと比べて話の動かし方が違うから書いてて色々面白いです、固定キャラ最小でゲスト的なキャラ出せますから。

 今年中にあと何本投稿出来ることやら……最低一本最高三本?でしょうか

 ではまた次回

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