戦姫絶唱シンフォギアG ーAn Utopia is in a Breastー 作:風花
実習が重なったとは言え、年末から書けないと思いませんでした。
しかも、気付けば原作も四期、五期の制作が決定しているなんて……
まだ忙しいのでとても短いですが、完結はさせますのでどうかよろしくお願いします。
あの時から、いつだって傍には君がいた。
差し伸ばされる手は温かく、このままでいたかった。
だけど、今は伸ばせない。伸ばしたら——
Fine11 遥か彼方の理想郷
感情の瀑布に、君はようやく答えを曝け出す。
剥き出しの想いに、終に奇跡は伝説を創り出す。
「——立花と風鳴翼が月読調、音無日向と出た、か。予想を裏切らないとはこう云う事を言うんだろうな」
『俺と緒川も
「
通信を切って、さて、とヴァンは呟く。地面に突き刺したガラティーンを抜き肩に担ぐ。
「……と云うわけだ。今回は惚れた相手だろうと
—轟ッ!
燃え盛る炎を周りに纏わせながら振り返るヴァン。
彼が見上げる視線の先。そこには言葉通りクリスが立っていた。
既にギアは纏っている。無言で
—閃ッ
—灼ッ!
数十もの矢に対してヴァンは後方へ跳びつつガラティーンを閃かせる。軌跡を辿るように炎が生まれ矢を呑み込みながら灼き尽くす。
—発
—発発発ッ!
崖から跳躍し矢を放ちながら、クリスは片方の武装をボウガンからハンドガンへ切り替える。着地の瞬間まで矢を周りに撃ち放って砂煙を巻き起こす。
彼女が何をするのか予想しヴァンは砂煙の中を駆ける。砂煙から出るのと、クリスが地面に着地し手に握ったハンドガンを向けるのはほぼ同時だった。
—弾ッ!
銃声の音。続いて聞こえたのはグジュッと云う溶けるような音。
「ちっ……苦手分野に片足どころか全身突っ込まねぇといけないなんて……とんだ厄日だぜ!」
—弾ッ!
心底嫌そうな声音で吐き捨て、前へと駆けながら引き金を引く。完全聖遺物の発する膨大な熱量の前では普通よりも強固であろう銃弾でさえ容易に溶かされてしまうだろう。ましてや太陽の恩恵を受けたとされるガラティーンだ。一瞬の熱量でも計り知れない。
基本距離が遠距離のクリスにとって天敵は近距離型だ。銃弾を躱す
それでも、前へと足を動かす。実践では初めての距離だが、相手がヴァンの場合、距離感はある程度掴めている。加えて、無意識なのか意識的なのかは知らないが、距離が空いているのを剣を放つのではなく駆ける事で詰めている。普段ならば《天降る星光の煌めき》を放っていてもおかしくはない。
—斬ッ!
振り下ろされる一閃。
普段であれば避けて距離を取るが、今回は剣に向かって腕を振るう。握り締めた
—発ッ!
至近距離から撃つ。
炎が銃弾を溶かす——事はせず、ヴァンは身体を捻り躱した。
足を軸にして最小限の動きから剣を横に薙ぐ。グリップの底で受け止め、刃がグリップと弾倉を切り裂く前に自ら弾かれるように離れる。その勢いで屈んだ姿勢を回転、横薙ぎを躱しながら屈んだ姿勢から引き金を引いた。
—発
—発発発ッ!
同時ではないとは云え、微妙に位置を変えての射撃にヴァンは後方へ跳ぶ。範囲からクリスが外れ、即座にガラティーンの炎熱を発動して銃弾の雨を灼く。
全ての銃弾を灼き尽くすのにおよそ四秒。恐らく弾倉に弾は二丁とも残されていないだろう。
——にしても、とヴァンは思考する。この短期間でここまでガンカタをモノにするとはな、と。
修行の後、弦十郎がクリスに渡したDVD。内容は映画だったのだが、その主人公が飛び道具で接近戦をすると云う珍しいアクションをしていたのだ。弦十郎はそれを知った上で渡したのだろう、当然クリスの食い付きようはそれはもう凄かった。疲れていたはずなのに、その日から暇な時間は全てガンカタの練習に注ぎ込んで習得しようと特訓したのだ。
結果は見ての通り。初の実践である程度使えるようになっている。
本来であれば褒めてあげたいのだが——
「まずは止める——!」
銃弾を溶かしきった炎を突き抜け駆ける。
弾倉は恐らく空のはず。その隙を——
炎を抜けながらそう考えて、剣を振り上げて。
「——は?」
戦闘中なのに固まってしまった。
クリスは動いていた。銃を構え、身体を回転させながら。
揺れる胸の谷間から予備の弾丸を空へ跳ね上げていた。自由になった六発の弾丸が宙を舞う。
「……おいこら」
ヴァンの小さな呟きはクリスに届く事なく、重力に従い落下を始めた弾丸は吸い込まれるように
「誰が教えたそのリロードッ!!」
吠えるヴァン。
表情を変える事なく、装填し終えた拳銃の銃口をヴァンに向けてクリスは言った。
「
「天も……って、そっちかよっ!!」
絶叫するヴァンに言葉を返すようにクリスは引き金を引いた。