戦姫絶唱シンフォギアG ーAn Utopia is in a Breastー   作:風花

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 これで第五章は終了です。
 次回から物語後編の第六章ですが、その前にしばらく休載させてもらいます。
 次の投稿は未定ですが、四月・五月初めの間には再開しようと思ってます。
 これからも本作品をよろしくお願いします


Fine5 私にとって暖かかった陽だまりⅤ

「えー、今日の体育は、前回も言っていた通り護身術に関する実技を行います。今回は特別講師として二回生並び警備員の夜宙ヴァンさんに来てもらっています。この方から教わるよーに」

「いきなり連れてきて、何を抜かしやがる。この糞教師(ファッキン・ティーチャー)

「態度はアレですが、護身術の実力は中々のものです。――つか、今の説明で分かれよ馬鹿」

「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。貴様の方が馬鹿だろうが」

 

 そんな言葉を投げつつ、身体は自然と動いていた。

 相手が放ってきた拳や蹴りを躱して逆に打ち込む。それの繰り返しを響を除いたクラス全員は呆然と見ていた。

 平然と鏡華は言葉を続ける。

 

「はい、まずは二人一組に分かれた分かれたばっ! ――てめ、マジで殴っただろっ!?」

「当たり前の事をして何が悪い!」

「いいだろ別に!? お前、今の時間授業ないんだから!」

 

 それとこれとは別だ、と巷でよくヤクザキックと呼ばれるフロント・ハイキックを放つ。

 鏡華は腕を交差して防ぐ。体育館だったので滑って後ろに下がった。

 そこで二人共構えを解く。生徒達はこれ以上やるんだったら止める気でいたが、

 

「ふぅ……準備運動はこれぐらいでいっかな」

「ああ。で、どの程度教えればいいんだ?」

「そうだな――」

 

 ――さっきのは準備運動だったんかい!

 ツッコミが心の中で綺麗に重なるのだった。

 話し合いを終えた鏡華はぐるりと見回す。すると案の定、未来が余っていた。今日は響以外休んでおらず、奇数だったので仕方がない。

 

「小日向ー。余ってんなら私とやるぞー」

「……あ、はい」

 

 言いながら手招きして未来を呼ぶ。

 一瞬、反応が遅れた未来は早足で鏡華の許までやってくる。

 鏡華は未来をその場で待機させつつ、ヴァンに近寄った。

 流石に女子生徒を練習台にさせるわけにはいかないので、鏡華が練習台だ。

 全員の視線が集まった所でヴァンが話し出す。

 

「……まず、第一に護身術とは自分の身を守る術であって襲われた際に対抗する術じゃない。あくまで抵抗して逃げるためだけの術だ。そこを間違えるな」

 

 常に逃げる事を頭の中で浮かべておけ、と言って少し離れる。

 第二、と中指を立てた。

 

「基本、女を襲うのは大抵の場合男だ。差別のような言い方だが、女に男を戦意喪失――つまり倒す力はないと考えろ。格闘経験者でも然りだ」

「どうしてですか?」

「どの武道でもそうだが、反復練習をしなければ技を完璧に覚える事は出来ないとされている。お前達はいつ使うか分からない護身術のために何度も練習するのか? 何回、何十回じゃない。何百回、何千回とだ」

「そ、それは無理そう……」

「だろう。それに男と女では初めから出せる力の違いがはっきりしている。女が男を真っ向から倒すのはアニメの中だけと覚えておけ」

 

 アニメ、と言われてうっ、と喉に詰まったような声を出す生徒が一名。と云うか弓美だ。

 アニメ好きなのを知っている創世や詩織、周りの女子生徒は苦笑を漏らしている。

 

「この馬鹿教師が言ったように一応、護身術は教える。だが、結局の所、襲う輩はノイズと一緒だ。逃げないと駄目だと云う事だ」

 

 ノイズ、と云う単語は分かりやすい喩えだったのか、ちらほら頷く女子生徒がいた。

 

「大きな違いは捕まった時だがな。ノイズに捕まれば死ぬ。人間に捕まればセクハラ、痴漢、果てはおか――」

「はい、そこまでー」

 

  ―打ッ

 

 とんでもない事を言いそうになったヴァンを素早く殴りつけて黙らせる鏡華。

 かなり本気だったのか、鈍い音が体育館全体に木霊した。

 

「何をしやがる!」

「止めるのは当たり前だろう。一応ここ、学校だからな。そう云う発言はなしにしてくれ」

「……それもそうだな。――果てはマワされるからな、気を付けろ」

「言い方を変えて言ってんじゃねぇよ! なしにしろって言っただろうがっ!」

「あだっ! ちっ、分かった(オーライ)。――じゃあ簡単なものを教えてく。広がれ」

 

 隠語のような言葉に気付く事なく、首を傾げながら女子生徒達は広がる。

 鏡華を痴漢と見立てて、ヴァンは護身術を披露して実践させていく。回っていき一組ずつ教えている辺り、真面目だなぁ、と鏡華は思い未来の許に戻る。

 

「ん、お待たせ小日向。んじゃ、やろうか。遠慮なく捻っていいぞ」

「……はい」

 

 朝から思ってたが、未来の表情はかなり暗い。

 やはり、前回の戦闘を目の当たりにして、ショックを抑えきれないのだろう。

 まあ、当たり前だろう。久し振りに再会した友人が敵だったり、響があんな事になったり――響の命が危ない事を知ってしまったのだから。

 平静を保て、と云う方が無理である。

 こんな未来を見たくないと思った鏡華は、

 

「なあ小日向」

「はい……?」

「今日の放課後、空いてるか?」

 

 いつかのように、誘ってみた。

 

 

  〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

 

 買い取ったこのリディアンの校舎の中には、様々な理由によって使われない教室があった。そう云う部屋はもっぱら空き教室か物置とされている。

 その中で滅多に生徒や教師が訪れる事のない教室に放課後、鏡華と未来は並んでピアノの前に座っていた。その手は鍵盤の上を踊っている。連弾と呼ばれる演奏の仕方だ。

 

「――ふぅ。やっぱ、未来は上手いな。ついてくのがやっとだ」

「そんな事ないですよ。鏡華さんもすごく上手です」

 

 演奏を終え、互いを誉め称える。

 だが、何も連弾をするために未来をこんな空き教室に誘ったのではない。――だからと云ってそう云う事をするためでもなかったが。

 

「立花の事、気にしてんだろ」

「……はい」

 

 歓談を終わらせ本題に入る。

 未来も分かっていたのか驚いたりせず、ただ表情を曇らせた。

 

「でも、鏡華さんが思ってる程悩んでいるわけじゃないんですよ」

「あり? そうなの?」

「前に響と一緒に奏さんが運ばれた時、起きた奏さんに言われたんです。私は響が身体だけじゃなくて心を休める日常になってほしいって。響だけじゃなくて鏡華さん達も休める居場所に」

「奏がそんな事を……」

「自分が出来る事は決まってないけど、一先ず今は奏さんの言葉を実践してみようって思ってるんです。もしかしたら自分の役目が分かりそうな気がするんです」

「そっか……」

 

 奏が翼以外にそう云う事を言うとは珍しいな、と鏡華は思う。

 それぐらい未来も奏に気に入られたと云う事だろう。

 

「ただ……怖いんです。響が日向みたいにどこか遠くへ行っちゃいそうで」

 

 そう言うと、鏡華に凭れ掛かる未来。

 鏡華は止めない。この教室は場所的に見られる心配もなかった。

 

「そうだな。あのままだと、本当に遠くへ行きそうだ」

「……鏡華さん」

「なに?」

「以前……三ヶ月前の戦いの時、鏡華さんは鞘の力を使って代償なしで皆の傷を癒したんでしたよね」

「ああ、《辿り着きし永久の理想郷》の事だな」

「あれで響を治せないんですか?」

 

 凭れた未来の髪を優しく好きながら鏡華は眼を閉じる。

 それは以前から考えていた響治療の一つだった。だが――

 

「ごめん。たぶん、無理だと思う」

「どうしてですか?」

「あれは気軽に発動出来る技じゃないんだ。それにもし発動しても、立花を治せるかは微妙なとこだ」

 

 あの時、鏡華は叫んだ。「俺の鞘の能力」だと。

 少なくとも騎士王の伝説には相手を癒せるなど記されていない。恐らく、鞘の持ち主が自分に変わったからだと思っている。

 それに治療と云っても、どこまで治癒するものか鏡華には分かってなかった。そもそもアヴァロンは記憶し記録する鞘。本当に治癒しているのかさえ疑わしいものなのだ。

 

「流石に賭けみたいな能力を試す事は出来ないからなぁ」

「そうですか……」

「まぁ、今は未来が守ってくれ。それまでに旦那達が何か方法を見つけてくれるはずだから」

「そのつもりです。だけど――」

 

 凭れた身体をさらに密着させる未来。

 流石にこれには少し慌てる。

 

「お、おい……?」

「今はこうしていたいんです。響の代わり、なんて鏡華さんには失礼だけど……明日を頑張れるように」

「ああ……」

「それに、二人きりになる事なんてあまりないから……」

「うっ……それについては、すまん。優柔不断な馬鹿野郎で」

「謝らないでください。……むしろ、この選択をして私を入れてくれた事に感謝してるんです」

「いや、あれは……ぶっちゃけちまうと、未来の策があまりにも見事だったからで……」

「ふふ……あの時は必死でしたから。どうにか翼さんと奏さんと同じ場所に立ちたかったんです」

 

 まだ同じ場所に立ってはいませんけど、と何故か嬉しそうに未来は言う。

 鏡華の二人に対する感情は出会って(再会して)半年の未来には向けられない程強固で――本物だ。

 未来には未だそんな感情は向けられてない。でも、それでも付き合う以前に比べれば大切にされてる事は分かる。

 だけど今はこれでよかった。一先ずはこれで――

 

「手を出されないのは、少し妬いちゃいますけど」

「……少なくとも、俺から手を出した事はないな。奏に対しても……翼に対しても」

「つまり、手は出された、と?」

「――――」

「答えないと、制服を乱して『助けて』って叫びますよ?」

「間違いなく社会的に死ぬなぁ! それ!」

 

 ――翼にキスされました! と半ば悲鳴のように答える鏡華。

 今の鏡華に男らしさは微塵も感じられなかった。まあ、それが彼のよさでもあるが。

 ちなみに鏡華の中ではライブの時におまじない代わりに額にキスしたのはノーカウントになっている。

 内心で笑みをこぼす未来は頬を擦り付ける。

 

「キスしちゃいます? 今ここで」

「……うぇえ!?」

「何でそんなに驚くんですか……」

「い、いや……一応ここ学校で、教師と生徒なわけで」

「それが?」

「え、えーっと……その、な」

 

 しどろもどろに視線を彷徨わせ、言葉を濁らせる。

 暫くすると観念したように呟いた。

 

「ごめん、無理です」

「ふふっ、分かってました」

「やっぱ自分からの最初は――って、え?」

「初めは翼さんと奏さんとしたいんですよね」

「あ、はい」

「大丈夫です。それぐらいは分かってるつもりですから、でも――」

 

 ――あんまり待たせると、手を出しちゃいますから。

 少しだけやるせなさを含めた笑顔で言われ、鏡華は何も言えなかった。

 そんな鏡華の顔を見て、未来はわずかばかりの幸福感に包まれる。

 戦いなんて起こらなければいいのに、と思う。

 そうすれば、響が苦しむ事もなくこんなにも幸せな時間が続くのに。

 心から未来はそう思った。

 

 

  〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

 

 存分に話し合って(イチャついて)いた鏡華と未来は陽が落ちる前に下校する事にした。

 人だかりの少ない校門までの道を一定の距離を保って歩く。

 

「小日向は帰ったらどうするんだ? たぶん、立花は明日ぐらいに帰ってくると思うけど」

「そうですね……する事もないし、宿題を済ませたら寝ちゃおうかなって思ってます」

「ふぅん……じゃあさ、風鳴の屋敷に来るか? 少なくても翼か奏はいるし、立花の迎えも出来るぞ」

「いいんですか?」

「ああ、別に知らない仲じゃないんだ。翼達も快く受け入れてくれると思うぞ。それに、迎えに小日向がいれば立花も喜ぶだろうし」

「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔します」

 

 鏡華の好意を素直に受け入れる未来。

 んじゃ、行きますか、と鏡華は言って校門を出る。

 

「おい、遠見」

 

 校門を出た所でヴァンが鏡華を呼び止めた。

 

「よおヴァン。授業はサンキューな」

「あれぐらい何でもない。それより、お前に手紙だ」

「手紙?」

「ああ、クラスメイトが下校途中で受け取ったらしい。お前宛だったから俺が預かっておいた」

 

 その手紙を投げ渡すヴァン。風に流れる手紙を器用に掴んだ鏡華は封筒を裏表見る。だが、差出人は書かれていない。

 未来はそんな鏡華を見ている。

 封を開き、中身を見る。

 

「――――」

「鏡華先生……?」

 

 未来の背丈では手紙の内容を覗く事は出来ない。鏡華に声を掛けても反応しない。

 ヴァンはただ成り行きを見ている。

 一分ぐらい経過して、鏡華は便箋を封筒にしまいポケットに乱暴にねじ込んだ。

 

「鏡華先生……」

「ヴァン。頼みがある」

 

 未来の言葉には答えず、鏡華はヴァンに話し掛ける。

 

「なんだ」

「訳は聞かずに未来を風鳴の屋敷に連れて行ってくれ。野暮用が出来た」

了解した(オーライ)。クリスは当然連れて行くが構わないな」

「ああ。好きにしてくれ」

 

 そう言うと、未来に「ごめんな」と言い残して踵を返して校舎に戻っていく。

 声を掛ける暇もなくその姿が校舎に消える。

 あの手紙に何が書いてあったのか未来には知る由もない。

 だけど――だけどだ。

 

  ―鈴

 

 鈴の音が頭の中でまた鳴った。

 何かが起こる気がして――鏡華まで遠くに行ってしまいそうな気がして。

 未来は嫌な予感に、胸を抑えるのだった。

 

 

  〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

 

 満天の星々の中、一際大きく映り、強く輝く月。闇の帳を自然の灯りが蕩々と照らしている。

 月の迫力をはっきりと“感じる”場所に鏡華は独りで来ていた。辺りには草木一本生えてない。荒野の広がる場所にポツンと佇む塔。まるで原初の世界に迷い込んだかのような印象を与えた。

 カ・ディンギル跡地。少し前に訪れた場所を再び訪れていた。

 ザクッ、ザクッ――砂利を踏む音だけが荒野に木霊する。ただの足音なのに、まるで闖入者を拒むように聞こえて、鏡華は音を立てずに歩こうと努力する。だが、どうやっても音が出てしまう。

 諦めて顔を上げた時、鏡華は目的を見つけた。女子生徒に渡し、ヴァンが預かり鏡華に届けられた手紙の差出人。

 

「よお。待ったか?」

 

 見上げて、カ・ディンギルを見るように差出人に声を掛ける。

 鏡華に背中を見せ、カ・ディンギルを見ていた差出人らしき人物はゆっくりと振り向いた。

 黒装束に身を包み、身体どころか顔すら見せない――オッシア。

 

「約五、六時間か……。まあ、及第点の範囲だな。いや、よくぞ解けたと褒めておくよ」

「そこまで難しくなかったけどな。二課の監視網を搔い潜る方が難しかった」

 

 ポケットから取り出す一枚の便箋。

 それは封筒に入っていたオッシアからの手紙。

 

「『終わりが告げんとした言の葉。届けと穿った高みの存在は今や儚く脆く。影はそこで待つ。少年の唱には呪いが刻まれている事を知らしめんために』――最初の文はフィーネが創造主に対する恋の想い。次の文は高みの存在……そのカ・ディンギルの事。そして影……真っ黒クロスケなお前に合う言葉だよ。最後の文はまあ……十中八九、俺の事だろうな」

「少し簡単すぎたか。まあ、オレにそんな器用な芸当など出来るはずもない。上出来な作文だったな」

「くだらねぇ。んな回りくどい事なんかしなくても、てめぇからの誘いならいつでも受けてやってたぜ」

 

 くしゃ、と握り潰した便箋をそこら辺に投げ捨てる。

 

「ああでもしなければ、貴様と一対一(サシ)になれなかったはずだからな。機微に聡い奏と翼なら、すぐにでも追い掛けてきただろう」

「……てめぇがあいつらを親しく呼ぶのは気に障るが、否定はしねぇよ」

「だからこそ、手紙を用いた。夜宙ヴァンならよほどの事がない限り、手紙の中身を覗く真似はしない」

「本ッ当に回りくどい真似をしたな、お前。そこまで二人で話がしたかったのか」

「話? ――ハハっ」

 

 心底、おかしそうにオッシアは笑う。

 弓なりに身体を反らせ、掌で顔を覆う仕草を見せた。

 

「ハハハ――貴様、何度か交えてるのにまだ分からないのか? オレと貴様の間に話し合いなんてものは無意味だ。オレと貴様で出来るのは、戦う事と嫌悪感を身体一杯に感じる事だけだ」

「…………」

「……いや、このご託も不必要なものか。以前言ったな、遠見鏡華。全てを教えてやると」

 

 ――教えてやるよ、何もかも。

 笑みを消したオッシアは片腕を真っ直ぐに突き出す。

 何をするかと警戒する鏡華。しかし、その警戒はすぐに解かれる事になる。

 何故ならば――

 

  ―輝ッ

 

 眩い輝きと共に掌に具現される物体に眼を、意識を奪われたのだから。

 光が集まり輝きだし、それは少しずつカタチを成していき、最終的には、

 黄金に輝く逆二等辺三角形のようなカタチをそれは成した。

 それは――まさしく、その黄金の代物は、

 

「ア……ヴァロン、だと……!」

「まだ、その名でこの鞘の名を呼ぶか。まあ、いい。お前に取ってこの鞘は理想郷(アヴァロン)なんだろう」

 

 鼻で笑ったオッシアは鞘から剣を引き抜くように腕を動かす。

 まさか、カリバーンもか、と鏡華は想定した。だが、その想定は間違いであった。

 引き抜いた手に握られていた柄、刀身を見て、さらなる驚愕を与える事になる。

 鞘のように黄金に輝くそれは、鏡華が秘匿した――デュランダル。

 

「な、なんでデュランダルまで……!」

「――――」

「……答えろっ。お前は一体――アヴァロンを持ち、デュランダルまで手にするお前は、一体誰なんだっ!?」

「まだ、分からないのか」

 

 静かな、だけど怒りの混ざった声で呟いたオッシア。

 アヴァロンを消して、今まで隠し続けていたフードをパサリと下ろした。

 フードの下に隠れていた顔に鏡華の思考は止まる。

 

「……え……?」

 

 アヴァロンを具現化されたよりも。

 デュランダルを手に取った時よりも。

 鏡華の驚きは群を抜いていた。

 だって、フードの下に隠れていたその顔は――

 

「改めて自己紹介だ。オレの名は――遠見鏡華。遠見鏡華(オリジナル)の偽物にして――本物だっ!!」

 

 紛れもなく――遠見鏡華、その人のものだったのだから。


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