戦姫絶唱シンフォギアG ーAn Utopia is in a Breastー   作:風花

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Fine5 私にとって暖かかった陽だまりⅣ

 戻ってきたオッシアは目の前の光景に、溜め息をたっぷりと吐きたくなった。

 事情を切歌と調から聞いて、もう一度溜め息を吐いた。

 

「どうしてこう面倒事ばかり起こすんだ、お前達は」

「オッシア、オッシア」

「あん?」

「作ってくれたご飯、汁だけになったデス」

「また作って」

「お前らは飯の方が大切なのな」

 

 んなもん後だ、とバッサリ断ち切る。まあ、この二人がこの調子と云う事は心配ない、と云う事で間違いないのだろう。

 それでも、一番まともなマリアに二人の様子を聞いた。

 

「マムはドクターの治療もあって危険は脱したわ。日向はドクターの治療と《外気功》、《軟気功》で治療しているけど……少なくとも一週間は動けないみたい」

「はぁ……それで、こいつが完治するまでは待機と?」

「そうなるわね」

「馬鹿だろ。止めなかった方もだが、絶唱をニ連続で放つとか馬鹿の極みか?」

 

 よく一週間動かないだけで済んだな、と心底呆れた様子で呟くオッシア。

 

「日向の絶唱は特別なの。聖遺物を頼らずに一定のエネルギーレベルを歌だけで維持出来るし、何より日向の絶唱は絶唱であって絶唱じゃないわ」

「聖遺物を使わないだけで絶唱かどうか疑わしいが……絶唱であって絶唱でないとはどう云う意味だ?」

「オッシアの言う通り、日向の歌は絶唱じゃない。だけど、他に納得出来る言葉がないのよ。日向の絶唱は聖遺物のエネルギーを下げる防御型の歌。けど、それは聖遺物の力じゃない――日向自身の力なのよ」

「あいつ自身……聖遺物を抑える人間、いや、記録を見る限り“聖遺物の力を殺す人間”か。ははっ、いや面白いな。音無くして英雄の武具、伝説の化物、神の神具を抑え付ける人間なんかが世の中にいたんだな」

 

 ははは、と高笑いを上げるオッシア。

 その喉辺りに突如、包丁の切っ先が突き付けられる。マリアが鋭い眼光で睨んでいた。

 最後に一笑いすると、両手を挙げて笑みを消す。これぐらい何ともないが、無駄な争いをする気は毛頭ない。

 

「次、日向の事で笑ったら、確実に刺すわよ」

「おお怖い。次から気を付ける」

「まったく……それより、聖遺物の力を殺すってどう云う事?」

「さてな。そこら辺は自分で考えな」

 

 投げ遣りに答えると、部屋を出て行く。

 扉が閉まる間際、「飯作る」と聞こえたので昼食の準備をしてくれるのだろう。

 ただ――食材がまだ残ってたかは微妙だ。

 案の定、すぐにオッシアが戻ってきて、

 

「食材を買いに行くぞ。誰か荷物持ちで付いて来い」

 

 と面倒くさそうに言うのだった。

 

 

  〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

 

 食事が食べられない事に絶望したような表情で、荷物持ちに挙手した切歌と調を連れて、オッシアが買い物に出るのを見送ってから、マリアは日向の眠っている部屋に来ていた。ナスターシャの方に行こうと思っていたのだが、ウェルが最終チェックをしていたので入るのをやめたのだ。

 あれから二日が経過した。日向は一日の大半を寝て過ごし、身体の回復に努めている。そのおかげか予想以上の回復速度を見せ、予定よりも早く完治出来そうみたいだ。

 今は静かな寝息を立てて寝ている。

 マリアはベッドの横に膝立ちし、日向の顔を覗き込む。とても柔らかい表情だ。

 

「楽しい夢でも見てるのかしら」

 

 ベッドに頬杖をついて、日向の頬を指でつんつん突いてみる。くすぐったいのか眠ったままふにゅ、と鳴き声に似た声をあげ、マリアは思わず頬を緩めていた。

 つんつん、と眠りを妨げない程度に突つき続けていると、わずかに頭が動き指が唇に触れた。

 

「ッ――!」

 

 熱を帯びた物を触れたように反射的に手を引っ込める。一瞬だけの触れ合いなのに熱が奪われる気がした。

 もう一度触れたくて手を伸ばす。だけど途中で手を下ろした。

 触れたい。だけど、手で触れるのではない。

 恐る、恐る恐る――日向の顔を覗き込む。顔を下ろしていく。

 鼻先が触れるか触れないかのところで理性がブレーキを掛ける。

 ――何をしているの私はっ。

 そんな事自問しなくても答えはすでに出ていた。

 キス――しようとしているのだ。

 相手が寝ている最中にするなんて、と云う思考はマリアの頭の中にはなかった。心臓が早鐘のようにガンガン鳴り響いてそんな事を考える暇を与えてくれなかった。

 肌は身体の内から発する熱で乾き、喉は水分を欲している。だけどここには飲める物はなかった。

 

「――ん――ぅん」

 

 止める事は出来なかった。ナスターシャは治療を受けウェルは治療をしている。切歌と調はオッシアと買い物に出ている。止めようとする人もいなかった。

 だから――マリアは止まらなかった。

 触れるだけのキス。すぐに離れて、だけど離れたくなくてまた触れて。

 啄むキスを何回か続けてから、深く唇を重ねる。

 続けていると、自分のしている事が悲しくて泣けてきた。何故、自分はこそこそとまるで人の彼氏にキスするようにしているのだろうか。あの子は日向からしたのに自分は奪うように――

 数十秒のキスの後、唇を離して嗚咽を漏らす。

 

「ん――ッ、ぅ、ぅうっ……ぅくっ……!」

「――なんで、泣いてるの?」

 

 涙が止まらない瞼を開け、近距離で眼を覚ました日向と見つめ合う。

 こぼれる涙が頬を伝い、日向の頬に落ちる。

 

「……ひゅう、が……」

「マリア……どうして泣いて――んっ」

 

 最後まで言わせず、マリアは日向の唇を奪った。

 

「――どうして?」

「…………」

「どうして、日向はあの子を気に掛けるの? どうしてキスをしたの? どうして? どう、して……」

「マリア……」

「答えて……分からないのよ、もう。何が大切なのか、覚悟なのか、何もかも……」

「――――」

 

 少女のように嗚咽を漏らし涙を流すマリア。

 日向は頬を伝う涙を気にする事なく腕を伸ばし、マリアの後頭部を押して――唇を、今度は日向から奪った。

 眼を見開いたマリア。だけどすぐに閉じて、キスに没頭する。

 

「僕と融合症例――響ちゃんとは幼馴染みだった」

 

 唇を離して、至近距離で見つめながら日向はそう話し始めた。

 

「もう一人、友達と一緒に遊んで育った。囚われていた時の僕やマリア、セレナのように」

「…………」

「初恋だった。まだ、小さな子供で恋なんか知らない歳だったけど、間違いなく僕は響ちゃんに恋をしていた」

 

 初恋、と云う単語に胸が締め付けられる。

 日向はマリアの表情で分かっても話を続けた。

 

「連れてこられて暫くは響ちゃん達との思い出を拠り所として耐えてきた。――だけど、それを壊したのがセレナだった」

 

 ――思い出に縋ってないで、新しい思い出を作らない?――

 ――嫌って言っても、無理に作るけど――

 

 口調は穏やかなものだったが、言ってる事は無理矢理だった。

 手を払う暇さえなく引っ張られ、日向は閉じこもっていた世界を飛び出した。

 それからはマリアも知っている通りだった。セレナが日向を部屋から引っ張り出しては何かをする毎日。落ち込んでいたりしても慰める事なく前へと突き進む。

 

「セレナが僕に新しい思い出をくれた。記憶を失ってからはマリアが思い出をくれた。切歌ちゃんや調ちゃん、マムも思い出をくれた。楽しい思い出も、苦しい思い出も、全部」

 

 ――全部、響ちゃんとの思い出と同じくらい大切な思い出だ。

 胸に手を当て、自分に向けるように呟いた日向は起き上がる。

 まだ本調子ではないのか緩慢な動きを、マリアが支える。

 

「僕は響ちゃんが好きだ。だけど、セレナやマリアも好きなんだ」

「――――」

 

 あっさり告白されて、マリアは言葉を失う。

 そんなマリアの顔を見て、日向は苦笑を浮かべた。

 

「ごめんね、はっきりしなくて。でも、僕達の戦いに私情を一切挟むつもりはないし、いつかは誰かを選ぶ。それまで、待っててくれるかな?」

「それは……あの子を選ぶ可能性もあるって云う事?」

「可能性としては、ね。まだ決められないけど」

「そう……じゃあ、待つわ。日向が答えを出す日を」

 

 本当だったら自分を選んでほしい、と言いたかった。

 だけど、これはマリアだけの問題ではない。

 もし、日向がF.I.S.に連れてこられなければ、日向は立花響をずっと好きでいられたのだ。

 根本的な原因や責任はフィーネや米国政府にある。だが、好きになった自分にも責任はあると思う。

 だから、マリアは待つしか答える事は出来なかった。

 そして、その日を迎えるためには――

 

「日向。これまでの事を通して分かった気がする」

「何を?」

「私の覚悟の甘さ、決意の軽さを。その結末がもたらすものを」

 

 覚悟がないばかりに組織を危険に晒した。

 決意が足りないばかりに仲間に頼り切っていた。

 その果てに――何が待っているのか、ようやく分かった。

 

「だからね、日向。私は――」

 

 もう迷わない事を告げようとした。

 だけど、その言葉は日向の指によって塞がれてしまった。

 首を横に振る日向。

 

「もういい、もういいんだよマリア」

「なんで――」

「もう、マリアに“フィーネを演じてもらう必要はない”んだ」

 

 日向の言った言葉に、マリアは今度こそ絶句し驚愕した。

 

「ッ――、知って、たの? マムとしか話した事がなかったのに……どうして……」

「勘、かな。マリアを何年も見てきた僕の」

 

 マリアとの付き合いは切歌と調の方が長いが、切歌と調が一番見ていたのは互いーーつまり、調と切歌なのだ。だが、日向はずっとマリアとセレナを見てきた。だから、マリアの事ならばある程度理解出来た。

 フィーネの件だってそうだ。マリアの中でフィーネが覚醒したとはナスターシャから聞いたが、その頃からマリアの様子が少しだけ変わっていた。フィーネに覚醒したためか、と思ったが、見ていれば苦悩している表情だったのだ。

 

「だから早い段階で仮説を立てていたんだ。マリアはフィーネに覚醒してないんじゃないか、ってね」

「――――」

「はっきりと確信したのは、記憶を取り戻した頃かな。記憶を失ってから得たマリアの表情と取り戻した記憶にあったマリアの表情。それが決定打」

「ふ、ふ……相変わらず、変な所は鋭いわね」

 

 泣き笑いを浮かべ、マリアは認めていた。

 

「そう、私はフィーネなんかじゃない。フィーネの魂を宿す事の出来なかった、ただのマリア・カデンツァヴナ・イヴ」

「やっぱり……よかった」

「よかった? どこがっ!? フィーネの魂は誰にも宿らなかったのよ! これまで私達が動けたのはフィーネの観測記録が残ってたから! でも、月の落下を止める手立ては分からないまま! このままじゃ世界は――!」

「まだ時間はある。だからこそ僕達が動いてるんじゃないか。無辜の人達を助けるために」

「どうやって? あの奏者三人でさえ月の欠片を止めるだけで精一杯だったのに、偽物の奏者である私達がどうやってっ!?」

「さあ?」

 

 とぼけるように肩を竦める日向。

 さっきの感情はどこへやら、頭に血が昇ってくるのを感じるマリア。

 

「さあ、って、ふざけてるの!?」

「ふざけてないよ。本当に分からないんだから、そう言うしかないんだ。だけど、方法は必ずあるはずさ。それが見つかるまでは自分の成すべき事を果たすのが先決だと思う」

「自分の成すべき事? なによ、それ」

「二つ。一つは僕が本当に好きな人を見つける事」

 

 まったく関係のない、そして蒸し返した話題に不意を突かれたマリアは頬を赤く染めた。

 それを見ながら日向は指を折り、二つ目を言った。

 

「響ちゃんの身体からガングニールを取り除く――この二つだ」

 

 

  ~♪~♪~♪~♪~♪~

 

 

 郊外にスーパーがあって、本当に助かったとオッシアは思う。なかったら切歌と調の機嫌が悪くなってた。

 たまたま外から戻ってきた店員に「ありがとうございましたー」と言われながら外に出る。

 両手のエコバックにたっぷりと食材を詰めて、三人で持ち運ぶ。

 

「何でこんなにたくさん買うんデスか? 重いよ、オッシア〜」

「仕方ないよ切ちゃん。買える時にまとめて買っておかないと、いつ切れるか分からないもの。それに、過剰投与したLiNKERの副作用を抜ききるまではおさんどん担当」

「調の言う通り、一先ずお前達は身体を休める事に専念しとけ。……つか、よく知ってるな。おさんどんなんて言葉」

 

 余談ではあるが、「おさんどん」とは台所仕事をする下女の事を言うらしい。外国で育ったのに日本人が滅多に使わなそうな単語を使っていると、どうしても気になる。あっさりバラしてくれた二人の過去によれば、二人は一度たりとも閉じ込められていた施設から出た事がないそうだ。

 どこで覚えたのか、聞きたいオッシアだったが、敢えてスルーする事にした。

 ちなみに、オッシアは黒装束を脱いで、鏡華に「二度としない」と言った女装になっていた。長髪のウィッグに身体のラインが見えない服、眼にはサングラス、マフラーで鼻先まで隠していた。

 オッシアの隣から調を覗き込む切歌。気付かない何かを感じ取ったのか、「調の荷物、持ってあげるデス」と言った。

 

「ありがとう。でも、大丈夫」

「でも調、ちょっと調子が悪そうデス」

「そう? 平気だよ」

「んー……じゃあ、少し休憩してくデス! オッシアもいいですよね?」

「俺は構わんぞ……昼飯が遅くなるがな」

「はぅっ! そ、そうでした……」

 

 うーん、と本気で悩み始める切歌。

 そんな姿を見て、くく、と笑みを喉から漏らすオッシア。

 そんなオッシアを見上げる調。

 

「じー」

「ん、どうした? 調」

「オッシア……誰かに似てる」

「誰にだ?」

「ええと……誰か」

「分かってないだろ、それ」

「でも、誰かに似てる」

 

 調はそう言って、じーっとオッシアの顔を見つめる。

 オッシアはこれ以上見られまいと、マフラーで鼻まですっぽりと覆った。

 そう云えば、オッシアは口許と眼だけは頑なに見せようとしない。目立つ傷があるわけではなさそうだが、気になる。

 

「ご馳走が待ってるデスけど、ここは……調の体調も考えて、休憩を選ぶデスっ!」

「ずっと悩んでたのな、お前。まあ、いい。なら、休める場所を探すぞ」

「あ、それならいい場所を見つけておいたデス!」

 

 こっちデスよー、と駆け足で先導する切歌を追い掛けるオッシア。

 調も追いつくために早足で付いて行った。

 

 

  〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

 

 切歌が見つけた場所は建設途中でノイズの襲撃を受け破棄されたと思われる廃墟だった。

 腰を下ろせる場所に座り、さっきオッシアに拝み倒して買ってもらった菓子パンを頬張る。切歌はメロンパンで調はチョココロネ。

 

「ったく……ただでさえ使える金は限られてるのにお前達は。いいか、菓子パンを買うのはこれっきりだからな。次、駄々を捏ねてもお兄さん、買ってやらんからな」

「分かってるデス。ありがとう、オッシア」

 

 袋からメロンパンを取り出してかぶりつく。未経験の味に切歌の頬は緩みまくっている。

 

「美味しいデスねぇ。嫌な事はたくさんあるけど、こんなに美味しい物が食べられるなんて、施設にいた頃には想像出来なかったデスよ」

「そんなに酷い食べ物ばかりだったのか?」

「うん。オッシアのザバーッと掛けたアレより見た目は酷いし、味も美味しくなかった」

「そうデスか? オッシアの手料理やこのパンよりは不味かったけど、あれはあれで美味しかったデス」

「美味しくなかったよ、切ちゃん」

「またまたぁ。美味しかったデスよ」

「美味しくなかったよ」

「美味しかったデスよ」

「美味しくなかった」

「美味しかったデス」

「美味しく――」「美味しい――」

「相手の事は?」

「大好き」「大好きデぇス!」

「それでいいだろ、このバカップル」

「そうだね。切ちゃんが好きならそれでいい」

「誰しも好き嫌いはあるデス。今回は調がそうだっただけデスね」

 

 あっさり和解する切歌と調。

 そんなんでいいのか、と思ったが、二人にはそれでいいらしい。

 笑顔で切歌はメロンパンを平らげる。調も手に持っていたチョココロネを開けようとして、

 

「……ッ、……ッ」

 

 荒い息を吐いて地面に落としてしまった。

 

「調ッ!? まさか、ずっとそんな調子だったデスか!?」

「大丈、夫……ここで休んだから、だいぶ……」

 

 心配させないように言うが、その口調は酷く辛そうだった。

 ふらつき倒れそうになるのをオッシアがいち早く回り込んで抱き留める。

 倒れる事は防いだが抱き留めた際、近くに置いてあった鉄パイプに当たってしまう。軽く触れただけだったが、連鎖的に鉄パイプとぶつかっていく。それらが台の柱に向かって崩れ、さらに多くの鉄パイプの山を崩してしまった。

 落下を始めた鉄パイプの下にはオッシアと切歌、調が。

 

「く……っ」

 

 回避――は不可能。オッシアに凭れている調を持ち上げないと移動出来ない上にそんな時間はない。

 迎撃――も不可能。今この場で出せるのは短剣のみ。とても全てを捌ききれる自信はない。

 となると選択肢は――

 

「切歌ッ!」

「え……!」

 

 近くにいた切歌を引き寄せ、二人の上に覆い被さるように身を屈める。

 切歌が何かを言う前に、鉄パイプが降り注いだ。

 

「ッ――……?」

 

 すぐにくるだろう痛みを予想し歯を食い縛るオッシア。

 だが、一向に鉄パイプは自分の身に落ちてこない。

 恐る恐る眼を開けてみると、

 

「何が、どうなってるデスか……?」

「なに……」

 

 上を見上げて呆然と呟く切歌の顔が見えた。

 視界の端で何かが輝いて見えた。

 後ろを振り返り、天を仰ぐと――

 

「これは……」

 

 発光する正体不明の障壁がドーム状に展開され、三人を守っていた。

 オッシアはこの障壁に覚えがあった。

 そう、これは――

 

「――《ASGARD》、だと……?」

 

 フィーネが使っていたあの障壁。

 それが今、目の前に展開されている。

 何故、と疑問が浮かび、ハッと二人を見る。

 未だ障壁を見上げている切歌と疲労によって気を失っている調。

 それを見て、オッシアはまさか、と呟くのだった。

 まさか――フィーネの魂は本当はこいつらのどちらかに……?


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