朝食を食べ終わった後、家の戸締りをして俺は黒歌と白音と一緒に学校に向かった。
『駒王学園』
隔離都市『駒王』にある高等学園である。異文化交流を掲げるこの学園は学園生徒の約半数以上が外国人と言う珍しい学園である。アメリカ、イギリス、ドイツに中国と世界各国からの留学生が通う学園で多種多様の見た目の生徒が通っている。
……と言うのが表向きの理由である。
では裏側から見ると、この学園の生徒は約半数以上が日本に亡命してきた者達で構成されているのだ。そもそもが駒王学園は亡命してきた者達の社会復帰?のために作られた学園である。亡命してきた者達は大概が過酷な生活をしてきた者達ばかりであった。
そんな過酷な生活を送ってきた者達が日常生活を送るために常識やら知識を蓄えるために作られ、多種多様な見た目の亡命者たちが違和感なく通えるように考えられた駒王学園。そんな学園に俺達3人は通っていた。
「……そういえば一誠、また亡命者が来たらしいにゃね」
「ああ。……全く3大勢力のやつ等には困ったものだ」
「ホントですね。3大勢力なんて
毎日行われている定時報告でまたこの日本に亡命者が来たらしい。これで今月だけでももう30人以上の亡命者が来たのだ。まだ今月に入って二週目も過ぎていないのに。
「勢力として落ち目で、何とかしようと言う気持ちは分かるがだからと言って他者に迷惑を掛けて言い訳ではないのに」
「ホントにゃ。おかげで私たちの仕事が増えて大変なのに」
俺達3人は日本勢力内にある特殊部隊的な組織の中で働いている。その組織の中の任務で亡命者の保護が一番多いのだ。本当に3大勢力の奴らはいい加減にして欲しいものである。
そんな風に任務の事で愚痴を言ったりしながら歩いていると学園が見えてきた。
「着いた、と……ん?あいつは」
学園の正門付近まで来ると何やら人だかりができていた。その人だかりの中に1人の女子が見えた。
「リアス・グレモリー、か」
「残念姫かにゃ」
「残念姫ですね」
リアス・グレモリー
3大勢力の一つ、悪魔勢の中のグレモリー家の悪魔である。何故はぐれでもない悪魔であるグレモリーがこの学園にいるのか?一言で言えば彼女は悪魔社会から実質的な追放処分を受けてここに来たのだ。
正確にはある種の人質的な感じで来たのだが彼女の実家であるグレモリー家には嫡男が生まれておりそれまで跡継ぎとして育てられていた彼女はお役ごめんとなってしまったらしい。本当はもっと複雑な政治の駆け引きとかが合ったらしいが、関わってないのでよくは分からない。
ちなみに残念姫とはリアス・グレモリーにつけられた二つ名でありもっとも彼女を言い表した二つ名として定着した名である。
残念姫という二つ名が定着する前は「滅びの戦乙女」とか「滅びを齎す赤髪」と、かなりまともな二つ名があったのだが。
「成績優秀、容姿端麗、文武両道で人当たりのいい性格」
「公爵家の出身で気品も持ち合わせているのにそれを鼻につけず」
「恋愛相談は百発百中との噂ももっいるのに」
一見して完璧超人?超魔?とも言えるほどのスペックを持っているのだがその長所をすべてだめにる欠点を彼女は持っているのだ。
「まあ、レズで」
「ショタコンで」
「腐女子です」
「「「……ハァ」」」
そうなのだ。彼女リアス・グレモリーはレズでショタコンで腐女子なのだ。さらにこの欠点を表側の人間には一切気づかれないように完璧に隠し通しているのだから手におえない。
「あら?……一誠に黒歌に白音。ごきげんよう」
俺達に気がついたグレモリーは周りの友人達に断りを入れてこちらに来て挨拶をしたが、本当に一見すると完璧な淑女なんだが、実際は腐女子でレズショタコンである。
「ああ、おはようグレモリー」
「おはようにゃ、リアス」
「お、おはようございます。リアス先輩」
俺は普通に、黒歌は親しく、白音は少し威嚇しながら挨拶を返す。
「一誠はもっとフレンドリーでもいいのに」
「勘弁してくれ。ファンに殺されちまう」
「たかだかファン程度に殺されるほど柔じゃないでしょう?一誠は」
クスクスとにこやかに笑う姿は大和撫子と言ってもおかしくは無い。だが腐女子だ。創作作品は裏で高額で売買されているという噂である。ちなみに登場人物は全員架空の人物しかいない。グレモリー曰く実在の人物を使うのは妄想力が足りないとの事。
「黒歌、この前教えてくれた料理。私風にアレンジしてみたんだけど今度食べに来ないかしら?白音と一緒に」
「いいにゃ。私も新しい料理を試してみたかったからその時に持っていくわ」
黒歌とグレモリーは以外かもしれないが仲がいい。お互いに手料理の意見を言い合ったり食べ比べしたり、休日には一緒に遊びにいったりもする。だがレズ関係ではない。恋人がいる相手には手を出さないのが主義だとか何とか。
「わ、私はその……」
「白音には創作お菓子の感想を聞きたいのだけど、駄目かしら」
白音に苦手意識を持たれているのが分かっているグレモリーはちょっと眉を下げて機嫌を伺うように話しかける。白音もグレモリーを完全に嫌いなわけではないしグレモリーが作る創作お菓子は一級品なので、お菓子好きな白音はついつい食べに行ってしまっている。
「その、いきます」
「来てくれるのね、ありがとう白音。今回のは自信作だから期待してね?……では私は先に行くわね。あなた達も遅れないでね」
グレモリーはそう言って教室に向かって歩いていった。歩く姿は優雅で気品が溢れていた。だがしかし彼女はショタコンなのだ。ロリっ気もあるらしくかわいい子供はグレモリーの射程範囲らしい。休日に孤児院や近所の子供達にお菓子を配ったり一緒に遊んだりしていて人気はかなり高い。それでいて犯罪は一切起こっていないのだから、不思議である。
「……最近思うんだが、グレモリーがこの学園に来たのって悪魔社会から隔離するためな気がするんだが」
「さ、さすがにそんな理由でここに来る訳が」
「三大勢力内でグレモリー作の作品が高額で取引されているという噂を聞いたんだが」
「……」
本当に、どうしてああなってしまったのだろう。