突発ネタ作品   作:マーシィー

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このお話は、作者のリハビリ作品として投稿しました。よって無理な設定や矛盾した行動、何を言っているんだお前?等ありますが温かい眼でみてください。


傍観少女シリーズ
傍観少女は“視”てるだけ


「また後でね、木乃香」

 

「また後でな~、明日菜」

 

 今私の目の前で別れの挨拶を交わした2人、神楽坂明日菜と近衛木乃香。私の通う麻帆良学園2年A組に通う生徒である。

 

 一見極々普通の一般人の二人組みに見えるのだが、実際は違う。神楽坂の方は本名はアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアと無駄に長い名前でしかも地球生まれではなく魔法世界と言われる別世界の生まれでさらに魔法世界のとある国の王族である。

 今は2年A組の担任であったタカミチ・T・高畑の手によって王族だった頃の記憶を封印されておりその副作用か頭が悪くなっているようだ。

 

 もう一人の近衛木乃香と言うとこちらは日本生まれの日本育ちであるがその体には洒落にもできないほどの魔力を秘めて居るのだが当の本人はそのことを知らないようだ。下手に魔力を暴走させてしまったらこの校舎ごとき簡単に吹き飛ばせられるというのにのんきな事だ。

 

 

 

 何故そんな事を私が知っているのか?簡単な事である。私には“視”えるのだ。無機物有機物関係無しに私が眼で“見て”対象の事を“視たい”と思えば本名から始まり年齢性別種族に職業、得意な事苦手な事趣味性癖等など……。

 もっと詳しく視ようとすれば対象が生まれた時から今に至るまでのあらゆる行動だってログとして視ることだってできる。

 

 そんな私だからとにかく厄介事や面倒な事、危ない事や危険な人から逃げて隠れて逃亡してきた。何せ私が通うこの麻帆良学園には“魔法使い”が存在するのだから。

 

 

 

 私が魔法使いの存在を知ったのは小学校に通い始めてすぐだった。なんてことは無い。担任の職業欄に教師兼魔法使いと書いてあったからだ。

 始めは見間違いかと思ったが何度確認しても職業:教師兼魔法使いと書いてあった。その頃の私は自分の“視える”という事がどういう事なのかをよく理解しておらず、ただ色んな人の色んなことが視えるとだけしか思っていなかった。

 

 その結果、私は一度“記憶を書き換えられた”

 

 ……まあ書き換えられたとは言っても私のこの能力?のおかげで自分自身の過去の行動のログを見てすぐに書き換えられた記憶を思い出せたのだが、魔法使いという人種に険悪感を抱いてしまったのは自業自得とはいえしょうがないと思う。

 

 記憶を書き換えられその記憶を思い出した後の私はとにかく目立たないように生活をした。なぜなら私のクラスの何人かが、職業欄に魔法使い見習いと追加されていたからだ。どうやらこの学園では素質がある生徒を魔法使いとしてスカウトしているらしい。そして見習いなったクラスメイトのログを確認したら極々軽いながらも思考誘導の魔法を使われた形跡があった。

 

 

 私は魔法使いという人種に恐怖した。

 

 

 だからこそ私は小学校での生活はとにかく目立たず静かに過ごしきった。クラスメイトや担任の思考を“視て”印象に残らないような会話や行動を心がけ、とにかく存在感を消していった。

 幸いと言うべきか私自身には魔法使い達が使う魔力、と言うのは一般人よりも少ないようで目を付けられる事は無かったようだ。

 

 この眼の事も備考:魔眼持ち、では無く備考:能力持ちと書かれており私以外で備考欄に能力持ち、と書かれていた人物はおらず魔法使い達も魔眼持ちには声をかけていたが能力もちである私には一切声をかけてくることは無かった。

 魔眼持ちは見つけられても能力持ちは見つけることができなかったようだ。

 

 

 小学生時代を何とか乗り切ったものの中学生に上がってから厄介事が起きた。たまたま隣のクラスである1年A組の1人を“視て”しまったのだがそれがダメだった。なぜならその1人は年齢:678歳、人種:吸血鬼で職業:中学生(強制)兼魔法使いだった。

 

 吸血鬼ってどういう事なの。それに見た目が小学生ぐらいなのに年齢が600歳越えているってなんなの?

 

 それから私は1週間ほどかけて1年A組の生徒を“視て”回ったのだか酷かった。人種に幽霊、ロボット、忍者、魔族にハーフが2人いて、職業には兼業で傭兵、神鳴流剣士、魔法使いが居てさらに備考欄に未来人とか書かれている人まで居た。

 

 隣のクラスは魔境かナニかか!?

 

 だから私は隣の1年A組には絶対に関わらないと決めた。それに違うクラスなのだから早々関わる事も無い、と安心していたのだが、甘かった。

 あんな魔境と化したクラスに通っている生徒が普通なわけなかった。

 

 

 

 私が静かに授業を受けていると隣のA組から破裂音が聞こえ、それと同時に隣のクラスにまで聞こえてくる乱闘音が聞こえてきた。

 

「この、シスコン委員長が!!今日こそ白黒つけてやる!!」

 

「ジジコンの貴方には言われたくありませんわ!!」

 

 このやり取りは今週に入ってすでに5回目である。すでに私のクラスでは日常と化してしまったやり取りである。

 正直凄く迷惑である。この騒ぎのせいで授業が中断するせいで授業が進まない。最初のころは私のクラスの担任が止めに入ったりしていたのにある時を境にまたか、の一言で済ますようになってしまった。なんでかと思って担任のログを見たら魔法使い達によって思考誘導されていた。

 

 再び魔法使い達に恐怖すると共に魔法使い達の考えている事が分からない。なぜあのクラスだけ特別扱いするのだろうか。周りの事も考えずに騒ぎ立てる生徒を止めもせず放置に近い事を何故しているのか。

 その理由は1年後、私が中学二年生になった時に判明した。なぜあのクラスだけを特別扱いしていたのかが。

 

 

 その理由は私が中学二年生となった時にA組に来た新しい担任だった。

 

 

 私が二年生になった時にA組に来た新しい担任。それは10歳の男の子だった。本名ネギ・スプリングフィールド。イギリスの田舎育ちの魔法使い見習い。本当に魔法使いと言う人種は一体何を考えて幼い子供をあの魔境の担任にしたのか?

 

 あの幼い子供があの魔境の担任になった理由は有る意味簡単な理由だった。彼の父親ナギ・スプリングフィールドがどうやら魔法世界で起きた戦争の英雄だったらしく英雄の息子も英雄であるべき、というくだらない理由であの子供はこの学園で教師をさせられる事となったのだ。

 

 そんな理由で教師をさせられるあの子供もA組の生徒もご愁傷様である。

 

 もともとが騒がしかったあの魔境のクラスにあんな子供先生を投入したらどうなるか?火を見るより明らかである。さらに騒がしくなった。

 

 ほんの数週間で軽くログを見てみただけで惚れ薬や魔法バレ、特定の生徒だけでの勉強合宿(その間他の生徒は放置)オコジョ妖精とか言う生き物による仮契約騒動等など……。

 数えだしたらきりが無い。魔法の秘匿とは一体……。

 

 そんななか学園には大停電の時期がやってきた。この学園は電気を自前の施設で補っているのだがその施設の総点検が行われる故にその間は停電となるのだか、どうやらその停電の間に以前見た吸血鬼の子が行動を起こすようだ。

 どうやら吸血鬼の子、マクダウェルさんは子供先生の親に登校地獄とか言う呪いを無理やり掛けられたらしく15年も中学生生活を繰り返しているらしい。掛けられた呪いを“視て”みたが大小様々な縄?のように見えるものが複雑に絡み合ってこんがらがっていた。掛けられた時のログを見てみるとどうやら子供先生の親は魔力に物を言わせて無理やりかけたようで術式がめちゃくちゃになってしまったようで正規の解き方ができなくなってしまっているようだった。ご愁傷様である。

 

 あれこれ言ったが本物の吸血鬼が起こす行動にただ“視る”だけしかできない私が介入できる訳も無いしする気も無いので大停電の日は大人しく部屋の中で大人しくしていた。

 

 で次の日、こっそりとログを覗き見してみたらなんと子供先生が勝ったらしい。いや勝たせてもらった、と言うのが正しいか?

 

 

 大停電が終った後は修学旅行が近づいてきた。私のクラスが行くのはハワイに決まった。一票差で京都が負けた。私としては国外よりも国内の方が良かったのだが……と思っていたがやっぱり国外が良いよね。ハワイなんて早々いけないし。うん、修学旅行の先にまで魔境クラスと係わり合いになんてなりたくないしね。

 

 

 

 

 

 ハワイ楽しかったよハワイ。何所までも青い空と海に白い砂浜。普段の心がけなんて無視してはしゃいじゃった。だってハワイだよ!!ハワイ!!

 とまあ、はしゃいで楽しんでお土産もいっぱい買って学園に戻ってきたら、子供先生の仮契約(パートナー)が増えていた。

 

 確かログで確認した限りでは契約方法は魔方陣の上でキスをするはずだった。つまり子供先生は複数の教え子とキスをしたという事で……。

 

 私も子供先生には気をつけよう。

 

 

 子供先生に近寄らないように生活を送っていたある雨の強い日。私が生活している女子学園寮に悪魔が侵入してきた。なぜ分かったかと言うと私は定期的に“学園寮”の“入出記録”をログで確認しているからだ。いかに魔法を使いばれない様に進入したとしてもばれないのは中で生活している生徒であり“学園寮”に入ったことには代わりが無い。

 

 そして私は無機物有機物関係無しにあらゆる物の情報が“視える”のだ。だから学園寮の入出記録を“視”れば誰が何時何人入ったかなんて筒抜けである。

 侵入してきた悪魔達が向かったのは大浴場だった。悪魔達の学園寮内での行動履歴を見ると大浴場内に居たA組の生徒を数名さらって出て行った。

 

 私はどうするべきか。悪魔に人がさらわれたことを今現在知っているのは私だけ。だが、私自身は裏の世界の事を知っているだけの一般人に過ぎない。それに私はこの寮に居る裏の関係者の事を知っているが向こうは私の事は知らないのだ。

 そんな中私が「悪魔が進入してA組の人をさらっていきましたよ」なんて言えるわけも無い。

 

 どうしようかと考えたが、結局見なかった事にした。薄情かも知れないが知ったことではない。私は魔法使いと係わり合いになりたくないしなろうとも思わない。それにさらわれた生徒は皆子供先生の関係者だ。

 なら彼女達がどうなろうと子供先生、ひいてはその上の魔法使い達の責任である。私には関係ないのだ。

 

 結局の所、さらわれた彼女達は無事に戻ってきた。さらわれた結果裏の事情を知った人も出てきたようだがまあ自己責任なので知ったことではない。裏の世界をしってどうなろうと私には関係ない。

 

 

 

 悪魔襲撃事件が終わり間を挟んで学園祭の季節になった。私のクラスの出し物はもめる事も無く決まり特に問題なく進んでいったのだが隣のA組は相変わらず騒がしい。期限ギリギリまで何も決まっていないとは……。

 それはともかく私のクラスの出し物の準備は問題なく進み学園祭当日を迎えた。私は空いた時間を使って屋台をめぐっていた。こう見えて私は美味しいものに眼が無いのだ。

 

 そうやってお小遣いの許す範囲でいろいろ買っていたらなにやら騒がしくなってきた。いや元々騒がしかったのだが一層騒がしくなってきた。何が起きたのかと周りの人のログを“視”て見たらなにやら武道大会が開かれるとの事。優勝賞金1000万で。

 

 学生主体の学園祭のだす金額ではない。まあ、金額に惹かれるものはあったが武道大会の時点で私が出られるはずも無くすぐに忘れる事にした。その後も私は屋台を回り色んな食べ物を食べ歩き学園祭を楽しんだ。

 

 途中途中で魔法使いが慌しくしていたのが気になったが初日に“視”た魔法使いがこの時期はいつも以上に忙しくなるから大変だ、と考えていたのを“視”ていたので警備ご苦労様、と思うだけでその後、一度も魔法使いのログを確認していなかった。

 

 その結果、私は、いや(せかい)は変わり果てた。

 

 

 学園祭最終日。私は連日の食べ歩きのせいかお腹を壊してしまい寮内で伏せていた。お腹を押さえ唸っていると急に窓から光が差し込んだ。お腹を押さえながら窓の外を見てみるとそこには眩い光を放つ世界樹が。

 慌てて世界樹から放たれる光の情報を“視”て見た結果、驚愕した。世界樹から溢れ出る光の正体は強制認識魔法の光。内容は“世界中の人が魔法を認識する”という馬鹿げた無いようだった。

 

 こんな事を実行した人物は頭がイかれている!!魔法が何故秘匿されているのかを分かっていないのか!?私は痛むお腹を押さえながら寮から抜け出した。目指すのは子供先生。

 なぜならばここ最近の物事の中心には常に子供先生が存在していた。ならば今回の出来事にもなにかしら関与しているはず。ならそこからログを“視”て、“視”て……どうするっていうの。

 

 急に走り出したせいでさらに痛くなったお腹を押さえ私は座り込む。

 

 私は一体何をしようとした?私は裏の世界とは関わらないように決めていたはずだ。いまさら子供先生のログを視て情報を得たとしてどうするのだ。情報を得たところでどうにもできないじゃないか。私は“視”えるだけの一般人じゃないか。主人公でもヒロインでも主要人物でもない。ただ“視”ているだけの人間じゃないか。

 そんな人間が今更何を言ったってどうしようもないじゃないか。私はただ“視”てるだけ、傍観しているだけの人間じゃないか。

 

 お腹を押さえゆっくりと立ち上がりもう一度輝く世界樹を“視”る。

 

「そう、私は“視”てるだけ」

 

 痛むお腹を押さえながらゆっくりと寮に戻っていく。周りの人たちは頭の中に入ってくる魔法と言う言葉に混乱していたが、私はそんな人々を“視”ながら寮に戻り倒れこむように意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強制認識魔法が発動した後、世界中が混乱した。魔法という御伽噺の力が実際に存在すると認識してしまったのだ。世界各国が一同に魔法使いを探し出し、世界各国に存在している大小様々な裏の組織を探し出した。それはまるで中世の魔女狩りを彷彿させる光景だった。

 

 そんな混迷を極める中、子供先生は失踪していた。

 

 いや失踪ではない。正確にはこの世界(・・・・)から消滅していた。子供先生はA組に居た未来人からカシオペアという一種のタイムマシンを貰っており、世界樹の魔力を使い過去に戻っていったらしい。

 子供先生は未来を変えるために過去に戻ったようだが、今更である。この世界はもう魔法がばれてしまっているのだ。

 

 過去を変えたところで結局この世界とは別の“魔法がばれなかった世界”が生まれるだけで私が今いる世界が変わるわけではない。

 主役が消えた世界がどうなるかなんて誰にも分からないけど私はそれでも“視”てるだけ。

 

 

 

 

 

 

 だって、私は傍観少女だから。


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