ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
上級悪魔がごろごろいるパーティに出席するとなると、さすがに少し緊張するな。
駒王学園の夏の制服でいいということで普通に来ているが、念のために前日にクリーニングに出しておいて正解だった気がする。本気出さないと。
しっかし、パーティだってのに制服でOKとか意外とルーズというかゆるいというか。腕章は付けているが貴族のパーティがそれでいいのか?
部長達はドレスアップするらしいし、ちょっと男の扱いが酷いような気がしてきた。
まあ、上流階級の方々が多数出席するというのは非常に都合がいい。
かつて、こういった社交界というのはコネクションの形成などにも一役買ったといわれている。つまり、ここで上手く立ち回ることは今後の関係に一役買う。すなわち俺たち
とりあえず、四大魔王それぞれの派閥に一つずつ、あと敵対派閥である大王派にも一つ必要だ。堕天使や天使側も来るとか言われているし、ついでに確保できれば言うことはない。他の神話体系も来るらしいからついでに作れないか試してみるのもいいかもしれない。
アザゼルやサーゼクスさまのコネクションができているとはいえ、それだけに頼るわけにもいかないからな。今後の部長やイッセーの政治的な関与もあるだろうし、俺個人が持っているパイプというものは必要不可欠だろう。
ふっふっふ。敵対勢力からすれば、相手の情報を入手できるかもしれないパイプというのは必要不可欠だし、魔術理論による治癒業界とのパイプは間違いなく価値がある。
その代表者の一人と化した俺は、間違いなくよだれを垂らすほどの餌になるはずだ。
せいぜい喰らいつくがいい。俺もしっかりその肉を糧にさせてもらうからなぁ。
「くっくっくっく。ああマジで楽しみだ、楽しみだとも・・・」
俺のコネクション能力を最大限に生かすチャンスがやってきた。万が一利用されていたとしても、アザゼルに相談すれば軌道修正は不可能じゃないから作りすぎなければリカバリー可能。
いや、あまりアザゼルに頼るわけにはいかないだろう。アレはアレで組織の長として冷徹な判断もできるみたいだし、あまり手間をかけ過ぎれば怖いお仕置きぐらいは待っているかもしれん。
イッセー殺害命令を出したから、普段からあいつにはハードな対応をし続けているからな。その辺は無理しないようにしなければ。
「おやー? なんか悪人みたいな顔になってるねー?」
よく聞いた声に振り返れば、そこには久遠の姿があった。
あったのはいいのだが・・・。
「・・・なんでタキシードなんだ、お前?」
「いや、パーティだからドレスアップしようかと思ったけどねー? 何かあったらドレスだと動きにくいし、趣向を変えてみましたー」
そういいながらクルリと回転する久遠の姿は、意外とにあっていたりする。
「普段の女子制服とかもにあうけど、そう言った格好も意外とにあうな。ああ、マジ似合う」
「これでも
・・・へえ。
ちょっと意外だったな。
「・・・俺が十代でくたばったんで前世持ちは以前は短命だとばかり思ったんだが、お前は結構長生きだったみたいだな」
ベルや小雪も長生きしてないっぽかったんでそうだとばっかり思ってたが、同僚とかいうなら就職経験ぐらいはあるのか。
そう思ったんだが、久遠はきょとんと小首を傾げてから首を振った。
「え? 死んだの十代だよー?」
「マジ? お前同僚って・・・」
「私のいた業界は魔法世界って言うんだけどねー。実力があれば小学生ぐらいでも活躍できたからー」
なんだその実力至上主義。
「私も小学生の時から戦場で大暴れしてたんだー。15ぐらいには一部隊の隊長とかやらされてたよー。作戦はガンガンいこうぜばっかりだけどー」
「そ、そうか」
ちょっと引くぐらいびっくりだが、こいつすごいな。そんな若いころから戦場で部隊長とか、周りもすごい。
「で、19の時に集中攻撃喰らっちゃってー・・・気付いたらおっぱい吸ってたー」
「・・・え? ってことはお前、合計で35か36!?」
俺より3・4年長生きじゃねえか!?
「あれ? 兵夜くん年下ー? じゃ、今度から久遠お姉ちゃんって呼んでもらおうかなー?」
「いや、呼ばないけどな!」
年上って感じしないからな! 語尾伸ばしまくりだからむしろ子供っぽく見えるし!
「・・・お、宮白に桜花さんじゃん! 桜花さんはスーツ着てるのか!」
話している最中についつい歩いてたのか、イッセーの姿が見えてきた。
隣には匙もいるし、どうやらシトリー眷属の一緒にパーティ会場入りするようだ。
と、思ったが・・・。
「・・・なんで、匙の奴へこんでんだ?」
なんか誰が見てもわかるぐらいブルーな状態に陥ってるんだが、どうしたんだ?
「いや、匙がいつも俺がおっぱいもめてるみたいに言うから、別に普段はお風呂入ったり寝てるぐらいだーっていったら・・・」
「お前一度死んだらどうだ?」
それ同レベルだ馬鹿者。
会長にマジ惚れしている匙からすれば、あまりの格差にショック死してもおかしくないレベルだろうに。自分がどれだけ恵まれているか一切理解していないなこいつは。
「うわー。完全に落ち込んじゃってるよー。おーい、元ちゃんー」
久遠がつんつんとつついているが、匙は全く反応を返さなかった。
「・・・そういえばさ、桜花さんも教師目指しているのか?」
イッセーがそんなことを言ってきた。
何でも、匙が本気で教師を目指しているといったので、その辺が気になったらしい。
「そうだねー。神鳴流を人に教えるのとかは興味があるけど、退魔の剣術だし陰陽師の方たちに教えるのが筋だから、今はあんまり興味がないかなー」
久遠はそう返すが、続けて妙にまじめな顔をして見せた。
「でも、今回の特訓とかでいろいろと皆に教えてみて、楽しかったかなー」
「そっか、じゃあ―」
「でも、それよりやりたいこともあるしねー」
イッセーの言葉を遮って、久遠ははっきり言った。
「・・・会長の夢が学校をつくることならー、私の夢は会長を守ることだよー。そっちの方が、やっぱり大事かなー」
その目は、とてもまっすぐだった。
「会長がいるから、私は『生きて』いるからねー。なにより会長を『生かす』ことが大事だよー。これは、絶対ー」
だろうな。
ああ、それはとても理解ができるとも。
俺たちにとってそれは絶対だ。
己の絶対的な芯を、俺たちはきっと自分に持たない。情けない話だが、生まれ変わったという精神的な鎖をはずしたのは、自分ではない誰かだ。
ゆえに、己の芯は別にあり、それこそが絶対の律なのだろう。
俺はイッセーの親友であり、久遠は会長の刃である。
「ああ、分かる。自分のことのように分かるぜ、久遠」
「だよねー。とっても、よくわかるよー」
二人でうんうん頷いてみる。
ああ、ここまで徹底ているのはあとはベルぐらいだろうか。
「・・・なんか、二人とも仲いいよな」
ポツリと、イッセーが呟いて、俺たちは顔を見合わせる。
・・・ああ、確かに。
「・・・プッ」
なんかちょっとおかしくなって、俺は少し噴き出した。
パーティ会場はにぎやかで、思いっきり主賓のはずの部長達をスルーしていた。
まあ、それはそれとして俺もかなりの人数にあいさつされて大変だった。
どうやら俺の行動は相当有名になっていたらしい。おかげでコネクション形成に置いては大助かりかと思うが、そうでもない。
自分が制御できないレベルのコネクションを形成しても無駄なだけだ。むしろ変な問題が起こった場合リカバリーに苦労する羽目になる。
俺みたいなタイプは自分の力を制御しきってこそ真価を発揮できるタイプだし、この辺は気をつけなければならない。
とはいえ想像以上にコネをつくろうとすり寄ってくる連中が多すぎて大変だった。それを切り抜けられたのも・・・。
「・・・ありがとうございますタンニーンさん。おかげで何とか切り抜けられました」
「いや、リアス嬢のお気に入りの一人だしな。これぐらいは気にしなくてもいい」
このとても人のいいドラゴンのおかげである。
最上級悪魔、元龍王のタンニーンさん。
イッセーのワンツーマンコーチであり、ものすごい鬼のシゴキだったといわれているので警戒していたが、良いドラゴンだ。
何でも悪魔になったのも他のドラゴンの生存のためだというし、かなりまともなドラゴンではないだろうか。
・・・少なくとも、スケベ超特急のイッセーやバトルジャンキーヴァーリよりかはましだろう。
ちなみに、今はサイズがものすごい小さなチビドラゴン状態になっている。芸が非常に細かいな
「噂には聞いていたが、
「部長も信頼しているようですし、内容次第ですがご協力しましょう。あなたのような人物とのコネクションは貴重ですしね」
優秀でまともな者とのコネクションは必要不可欠だ。と、いうかまともなコネクションじゃないと苦労が絶えないのは明確すぎる。
そういう意味では非常に好都合なわけで、否定する要素は一切なかった。
「しかしイッセーはどうなるんでしょうね。・・・禁手に至らなかったのはともかくとして」
最悪あのアザゼル製アイテムを使えばいいわけなので心配することはあっても心底あわてることはない。
だが、それを聞いたタンニーンさんは頭を振った。
「そうもいかん。既に
・・・マジか。よくわからんがイッセーは本当に大変だな。
「あ、兵夜くんだー」
と、頭を抱えそうになったところにのんきな声が。
みればタキシード姿の久遠が・・・久遠が・・・。
「むぐむぐ・・・ここのご飯美味しいねーはぐはぐ」
すごい勢いで食いもん飲み込みながらこっちにのんきにやってきていた。
「お前な・・・。会長の護衛とかしたらどうだよ」
「いや、会長には副会長が常についてるしねー。・・・それにちょっと気になったから色々みてたんだよー」
おいおいおい! まさかまたややこしいことになるんじゃないだろうな!! 嫌だぞ俺はこんな時でも騒動だなんて!!
「あ、心配しなくても今何かあるってわけじゃないよー。・・・私だったらこのタイミングで嫌がらせを考えるかなって思っただけー」
・・・意外とえぐいこと考えるねお前。
まったく。いくらなんでもそこまでヤバいことにはならないだろう。
これだけの規模のパーティともなれば警備体制だって整っているはずだ。少なくとも俺が警備主任なら整える。
そんな状況で襲撃すれば一番最初に警備もうに発見されるだろうし、いくらなんでも俺たちがいきなり戦闘だなんてことにはならないはずだ。
聖杯戦争の連中だって、単独行動で暴れるわけないだろうし大丈夫だろ。
そう思っている俺の視界に、イッセーの姿が映る。
・・・表情が鋭くなっていた。
この瞬間、俺は優雅なパーティを楽しむことをあきらめた。
後に気が付いたが、アサシンのサーヴァントがいるということが確信できる状況下で事前対策もなしにのんきにできるわけもないということに気づいたのは少し後のことである。
いささかうっかりが過ぎたと反省している。
イッセーSIDE
畜生!
状況が明らかに最悪だ。
今俺達の目の前には、ヤバい連中が三人もそろっている。
「やれやれ。尻馬に乗る形でやってきたらややこしいことになってきたなこれが」
1人はフィフス。
なんでここにいるのかまったくわから無いけど、こいつが厄介なのは皆から聞いて知っている。
「いやいや。俺達総出で相手になったらあっという間に何とかなるだろ? 赤龍帝もあきらめとけって」
1人は美侯。
面白半分にこの会場にやってきたヴァーリの仲間。
真面目な話、俺じゃあこいつ一人だって相手にできない。
そして最後の相手がある意味一番驚きだった。
「だめだめな仲間を持つと白音も苦労するにゃん。ちょっと同情しちゃうわ」
・・・小猫ちゃんの姉、黒歌。
こっちの様子を見に来たとかいうふざけた理由でこんなところにいる。
こいつら、遊び半分でパーティ会場を様子見してたばかりか、よりにも寄って小猫ちゃんを誘拐しようだなんて考えてやがる。
そんなこと部長が許すわけもないし、俺だって認めるわけがない。
だから抵抗しようとしてるんだけど・・・。
「・・・部長達になにをした!!」
「悪魔や妖怪にだけ効く、特性の毒霧にゃん♪ なんであんたに聞かないのかわからないけど、赤龍帝はすごいってことかにゃ?」
辺りに漂っている霧を自慢げに見渡しながら、黒歌が俺を変なものでも見るかのような目を向ける。
この霧のせいで部長達が動けない。
くそっ! 俺一人でやるしかねえのかよ!!。
「・・・これは好都合ってことだなこれが。・・・どうやらまだ禁手には至ってないみたいだし、ここで殺すとするか」
フィフスが俺を値踏みしながら前に出る。
ここでこいつが出るのかよ!
やるしかないのか。そう俺が思った瞬間。
―鳩尾にフィフスの拳がめり込んでいた。
「~~~~~~~っ!?」
呼吸ができなくなって膝をつく。
やばい、動けない・・・!?
「おいおい。もうちょっと様子見てもいいんじゃねえかい? 少しは楽しもうぜい?」
「勘弁してくれ。その結果俺達の首が閉まるだなんて俺は嫌だぜ? お前らは遊びが過ぎるんだよ」
美侯の意見をバッサリ切り捨て、フィフスが槍を呼び出した。
ヤバい。アレって確かマルショキアスのナツミちゃんを一発で倒したヤバいやつじゃないか!
「乳が減ると聞いて格上圧倒するような意味不明に強大な奴、ほおっておく趣味は無いんだよ。・・・死ね」
誰が見てもビビるぐらいに魔力を集め、フィフスが槍を振り上げて―。
「イッセー伏せろ!!」
・・・その声に何とか頭を下げた瞬間、ものすごい勢いで何かが通り過ぎた。
「・・・増援だと!? 空間ごと切り離したんじゃなかったのか!!」
槍でそれをはじきながら、フィフスが後ろに飛び退って黒歌に怒鳴る。
それに答えたのは、ものすごい期待感をあおる俺の親友の声だった。
「いや、ギリギリで間にあったんだがこの毒霧だろ? 手持ちの宝石使って簡易防御礼装作るのに手間取ってな」
俺をかばうように宮白が歩き出すと、なんか宝石がついた布を呼び出すと部長達の周りに置いていく。
「そこから出ないでください部長。・・・とりあえず解毒は無理でも持ちこたえられるはずです」
それだけ言うと、その視線を鋭くさせてフィフスを睨みつける。
「俺の見ないところで親友と部長と後輩に手を出すとはやってくれるじゃねえか。・・・殺すぞ?」
「いやいや、殺すのは俺の仕事なんだがこれが。・・・とりあえずこんな風に」
フィフスが不敵な笑顔で指を鳴らすと、その瞬間にあのドラム缶もどきがあっという間に何十体も現れて俺達を囲む。
それを見て、宮白は両手を左右に付きだすと、二つのものを呼び出した。
細長い筒が筒状に並んだ、テレビで見ると壮快な乱射シーンを作ってくれる例のアレ。
・・・ガトリングガン!?
「・・・ファイヤ」
にっこりとしながら宮白が呟いた瞬間。二丁のガトリングガンが火を吹いた。
目にもとまらぬ速さで連射される弾丸が、ドラム缶を鉄くずへと変えていく。
そのままフィフス達にも向けられるが、フィフスは分厚い鉄板を呼び出してそれをやすやすと防いで見せた。
「・・・何を調達してるんだこれが。お前ファンタジーの住人だろうが」
「銃弾を丁寧に作る魔術師に言われたくないなバレットアルケミスト。DGTW-01、イーヴィルバレト。・・・雑魚敵用に作って置いて正解だった」
見るからに重そうなものを軽々と持って、フィフスの嫌味をあっさりと宮白は流す。
あっさりとドラム缶を圧倒した宮白だが、その姿は全然余裕が見えない。
実際、そんなドラム缶なんか話にならない奴らが三人も残っている。
「あらあら。白音には優秀なボディガードがついてるみたいだにゃん? お姉ちゃん羨ましいかも」
「いやいや、赤龍帝の俺ポジションは頑張ってるねぃ。その調子で俺たちともやってみるかい?」
あっちもこの程度じゃ全然脅威と見てくれないのか余裕の表情を向けている。
一人ひとりがヴァーリの仲間を名乗っても問題ない実力者ぞろい。
いくら宮白が超強いからって、この数相手じゃ・・・。
「終わりだなこれが。アーチャーを呼ぶ前に潰すぜ?」
一瞬で踏み込もうとするフィフスに、宮白は逆に嘲笑すら浮かべた。
「あいにくだったなフィフス。・・・俺一人だなんて誰が言った?」
瞬間、毒霧がものすごい勢いで吹っ飛んだ。
勝ち誇ったような笑顔すら浮かべる宮白を追いかけるように、後ろから足音が聞こえてきた。
「術式設置完了したよー。霧もふっ飛ばせたねー」
「なにやら様子がおかしかったのでついて来てみれば、こんなところで冥界に仇なす者たちと会いまみえるとはな」
「つーかあたしまで呼んでんじゃねえよ、ファック」
俺達をかばうように立ちはだかる三つの影。
タキシード姿の桜花さん。
貴族服ごしでも体格のすごさが分かるサイラオーグさん。
そしてドレス姿の小雪さん。
「・・・こんなそうそうたるメンツ連れて歩いたら問題が起きそうだったが、それ以上の問題で助かったというべきか?」
ガトリングガンをフィフスたちに向けながら、宮白は不敵な笑みを浮かべる。
「数ではこっちが上だ。・・・お縄についてもらうぜ?」
出くわした人間をことごとく連れてきた兵夜ですが、超大物はあえて後詰に残した兵夜。
この判断が吉と出るか凶とでるか?