ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
数日後、俺はグレモリー城に戻っていた。
イッセーが社交ダンスを含めたそう言った上流階級的技術を習得するために指導を受けることになったからだ。
全員忘れているとは思うが、俺は元会社重役(現社長)の息子だ。
当然、そういった技術は身につけている。
とはいえ身につけただけで一切使っていないこの技術、今の段階でどこまでできるか分かったものではない。将来的にも上級悪魔になれば必要になるだろうし、コネの一つであるヤクザ業界にも今後顔を出すこともあるかもしれないから、相応の礼儀作法は習得しておく必要がある。
と、いうわけで俺もついでにおさらいすることにしたわけだ。
とはいえ、野郎二人を同時にダンスの練習をするわけにもいかない。俺たち二人でダンスするという案もあったが、野郎二人がダンスするのも絵面的にアレだ。
と、いうわけで。
「はい、ワンツーワンツー。そこでターンだイッセー」
「宮白さん、思った以上に完成されてますわね。・・・指導する余裕もあるなら問題はないでしょう」
「そ、それはともかく・・・なんで女装してるんだ宮白?」
実に冷静に対応している俺とグレモリー夫人に対し、イッセーが猛烈なツッコミを入れた。
ガワだけでも何とかしようと、ドレスアップしてみた。
・・・いや、グレモリー夫人とイッセーをダンスさせて、変なフラグ立ったらややこしいことになるとかそんなことを考えていたわけじゃないぞ?
ちなみに俺は女装も似合う。顔と髪型のイメージが女性キャラからとられているのは内緒だ。・・・なんか電波が来た。
これはとても必要な能力だ。性別が変更されるというのは、逃走する際相手の思考を大きくずれるから有効だ。性別の違いで入りにくいところにも潜入できるから、情報収集は格段に便利になるしな。
それに、イッセーに彼女ができないまま見栄を張るという可能性もあったからな。ボイストレーニングもしっかりやっているから隙はない。
「しっかし飲み込み早いなイッセー。俺、ここまで習得するのに2・3日かかったんだが」
「え、マジで? 宮白よりすごいってなんか照れるな」
まさかこっち方面の才能でイッセーに後れをとるとは。ちょっと意外。
まあ、トレーニングの方は前途多難のようだが。
今の段階に置いて禁手の兆候は表れていないとのこと。これではヴァーリが来たらヤバいかもしれん。
朱乃さんもふっきれていないようだし、そのあたりはどうも微妙なようだ。
極めつけは小猫ちゃんだ。ふっきれていなのはもちろんだが、何とか使わずに済まそうと努力しすぎたのかオーバーワークで倒れたらしい。
そう簡単には上手くいかないということか・・・。
「・・・あの、一つ聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」
イッセーも気になっていたのか、トレーニングがひと段落ついた時にきりだした。
「小猫ちゃんのことか。・・・こちらからも伺ってよろしいでしょうか、グレモリー夫人」
「・・・そうですね。あなた方はリアスの眷属になってからも間もないですし、知らなくても無理はありません」
そういうと、グレモリー夫人は小猫ちゃんのことについて語りだした。
ここら辺は原作と同じなのでざっくばらんにまとめる。・・・また電波が。
猫の妖怪だった、幼少期の小猫ちゃん。姉と一緒に路頭に迷う
↓
とある悪魔に姉がスカウトされる。姉、小猫ちゃんと一緒ならと承諾。
↓
姉、才能をグングン発揮。妖術や仙術にも手を出す。
↓
姉、仙術の影響で悪堕ち。
↓
姉、主を殺して逃走。追手をことごとく撃退し現在も逃亡中。
↓
小猫ちゃん、その影響で殺されかけるも、サーゼクスさまが庇って難を逃れる。そのご部長の眷属になり、今の名前に。
「・・・あの、奥様。我が主のめぐり合わせっていうか、窮地に駆けつける天運がものすごいことになっているのですが。なんですかこの主人公補正もどき」
「正直私達も驚いています。・・・まさか赤龍帝や転生者まで引き当てるとか、我が娘はサーゼクスよりめぐり合わせが良いような気が・・・本当に」
ちょっとどんだけだよマイマスター!
イッセーも大概だが、部長も大概だな!!
しかも忠誠心一番低い俺だって、命かけることも考えられるレベルだということを考えれば、そのカリスマ性は間違いなく破格だ。
アザゼルが、王としての側面を中心に伸ばそうというのも頷ける。部長はそっち方面の才能を強化することに徹底した方が良いだろう。俺らが独立した後も余裕で後釜を見つけられそうだ。
しかし、それはそれとして小猫ちゃん・・・か。
本当に、俺の同僚は過去にいろいろある連中が多すぎる。
「お見舞いに来たぞ小猫ちゃん!! これはお見舞いのケーキだ!!」
夕方、いろいろと動いた俺は小猫ちゃんのお見舞いにやってきた。
イッセーは既にお見舞い終了済みなので、一緒には行動していない。
部屋の中には、看病している朱乃さんと、ネコミミを出した小猫ちゃんの姿があった。うん、可愛いな!!
「宮白先輩・・・」
「とりあえず、ある程度の事情は夫人から聞いたよ。・・・お互い大変だな」
精神的にも参っているぽい小猫ちゃんの言葉を遮りながら、俺は近くの椅子に座る。
「まあ二人にとって、今回の特訓は非常に面倒なものなわけで、正直現在同情中」
マジでその辺は同情する。
トラウマになっているレベルなのでできれば避けたいのは当然だろう。
今まで、使わずに封印し、これからも使う予定がなかったものをこの短期間で使おうだなんて、色んな意味で酷い話ではある。
アザゼルも最初から長期的な視野を見ての話である以上、なにもこの休暇中にさっさと済ませろとは言わないだろう。なにも今回の夏季休暇だけで済ませようとは考えてないようだ。
・・・まあ、生まれ持っている物を使いまくっている俺が偉そうなことを言えた義理でもない。
と、いうわけで。
「これ、見舞いのついでに用意してみたもんだけど、ちょっと見てくれ小猫ちゃん」
俺は、これまでの特訓と研究のついでに作っていたものを持って来てみた。
「・・・これは?」
「試験的に魔術的措置を施しまくった個人携行用の杭打ち機の試作型だ。・・・強化しまくった結果、重量軽減魔術を使ってもなおものすごく重い」
正直ここまで持ってくるのに苦労しまくった。
「戦車として筋力が強化されている小猫ちゃんならまだそれなりに持って使うこともできるだろう? ちょっと男のロマン的なものに偏ってるが、威力はお墨付きだ」
「・・・確かに、宮白先輩よりかはこれを使えるとは思いますが、それが何か?」
「そういう方向性もあるって言いたいんだよ」
アザゼルの指導方針が間違っているだなんていうつもりはない。
その人が持つ一番の才能を鍛え上げて、その才能を行かせる職業に就くのが、人生で最も成功しやすい方法であることは言うまでもない。
ただ、俺は選択の自由をもつ一般人的思考を持っているのだ。
「小猫ちゃんが過剰に特訓してでも、持っている才能を使いたくないのは分かった。だけど、個人の肉体的な限界は確かに存在する」
ガキの頃から鍛え続けてきたからこそわかる。
残念なことに、ハードトレーニングに耐えられる限界というものは個人差がある。
そして、その回復のための時間を取ってしまえば、時間は余計に消費してしまう。
さらに最悪なことに、時間というものは一人に付き一日二十四時間という制約まである。
そういう意味では、小猫ちゃんの行動は悪手だ。
もし本当に今の力を使わずに強くなりたいというのであれば、フィジカルの強化以上に、戦い方としての強化を立てるべきなのである。
「聖杯戦争に参戦する以上、俺は皆を巻き込んでしまうから、小猫ちゃん達にはどうしても強くなってほしいと俺は思っている。・・・だけど、本当に心底嫌なものをちゃっちゃと受け入れろだなんて無理を言うつもりはない」
それで小猫ちゃんや朱乃さんがゆがんでしまうのは俺だって嫌だ。
もし過剰に負担を背負うのなら、それはまきこんだ俺が負うべき責務だ。
だから、俺が頑張る。
「・・・魔術修練の一環で、それなりのオプション武装の製作準備は整ってる。・・・さすがに本腰入れる前に自分の強化を終了しておきたいけど、どうしても嫌だって言うならフォローできる武装の作成は考えてある」
幸い、アーチャーは可愛いが大好きな人種だったので協力は取り付けてある。
『もう少し上から目線で言ってもいいのよ。・・・サーヴァントに対する扱いがある意味でなってないわね』
などと微妙にたしなめられたが、まあOKが自発的にもらえたならそれに越したことはない。
「才能を使いたくないっていうなら、それ相応のやり方ってものがある。・・・ただやみくもに体をいじめるのは、やめような」
そっと小猫ちゃんの手を取って、俺はなるべく優しく告げた。
自分で自分の首を絞めているといわれたら、それまでかもしれない。
だけど、
「朱乃さんの方もプランは考えてあります。・・・まぁ、気長にとはいえませんけど、あせらずじっくりいきましょう?」
「兵夜くん・・・」
「宮白先輩・・・」
なんかものすごい感動されているのが照れくさい。
まあ、まだ特訓期間もあるわけだし、それなりに考えるとするか。
・・・さて、正式レーティングゲームまでに、何とかし上げるとしますかね?
本作品においては、味方キャラクターの強化も当然視野に入れております。
とりあえず朱乃と木場の強化プランは完了済みです。どちらもVS生徒会でお披露目する予定。