ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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俺、必ず出世します

イッセーSIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 宮白の言葉に、俺はその場で納得してしまった。

 

 そりゃそうだ。宮白は自力で駒王町じゃ万能といってもいいレベルの力を手にしている。

 

 それが悪魔になったなら、上級悪魔を目指そうとしてもおかしくない。

 

 だけど、俺の顔をみた宮白は苦笑した。

 

「さらに勘違いしてるな」

 

 宮白は酒を軽く揺らすと、窓の方を向いた。

 

 窓に映る宮白の顔は真剣そのもの。本人は隠してるつもりなんだろうけど、あいにくばれてるあたりたまに抜けてるよなホント。

 

 だけど、なんかかなり真面目だ。

 

「知っているだろうが、俺は大勢側が確保している魔術師達を先導して一種のグループをつくっている」

 

「ああ」

 

「ただ、既に俺が開発した回復ユニットなど、彼らの技術は冥界に革新をもたらすほどのものになる可能性が非常に高いわけだ」

 

 確かにそうだよな。

 

 アーシアの神器はもちろん、フェニックスの涙と比べても回復量は少ないけど、その分安定した数を用意できるのが強みだって言ってた。

 

 悪魔も回復できるのはレアだって話だし、これだけでも歴史に名を残しそうな大活躍だ。

 

「まあはっきりいえば。そんな組織のリーダーの座に、お飾りじゃない実際の存在としてい続けるにはそれ相応の立場ってものが必要なわけだ」

 

 宮白はためいきと共にそう言いきった。

 

規格外のバックアップ(総督やら魔王やら現当主)があるとはいえ、そのまま何十年もい続ければ十中八九、虎の威を借る狐として叩かれる。それで変な連中に支配されるのは避けたいし、言いだしっぺとして下の連中をかばえる立場に立つ義務がある」

 

 酒瓶を握る手に力がこもっていた。

 

 宮白は、心底当然な風に言いきった。

 

「そして何より、馬鹿な魔術師を探して止めるためには相応の組織が必要。止めると決めた以上、止めれる態勢は絶対に整える。・・・自分の眷属悪魔ぐらい、自分で用意するさ」

 

 ・・・もう、そんなとこまで考えてたのか。

 

 ただハーレムを目指している自分が情けなくなりそうだ。

 

 宮白は、将来を視野に入れて、そのためにどうすればいいのかも考えている。今の問題点もしっかりと把握している。

 

 本当に、俺の親友はすごい奴だ。

 

「主から独立も出来ない悪魔じゃネームバリューが足りないんだよ。・・・だから、俺は独立して自分の眷属を確保する。事態に対処できるような、優秀な眷属をかき集める」

 

 そういうと、俺の方を笑顔を浮かべて振り返った。

 

 俺を見るその目は、心底俺を信頼しているのが、むしろドン引くぐらいにわかる。

 

「・・・それに何より、俺としては(親友)に並び立つには(実力者)にならなきゃいけないって思うからよ」

 

 ・・・宮白。

 

「・・・俺、上級悪魔になれるかな?」

 

「神滅具持ちの悪魔だろ? むしろ意地でもなって見せろよ」

 

 その目は一切疑ってない。

 

 本気で、俺が上級悪魔になるって確信してやがる。

 

「ま、今回の一大イベントで俺の評価は間違いなく上がった。これまでの戦闘でも活躍はしてるし、悪いが一歩先行だ」

 

 宮白は瓶の中の酒を一息で飲み干すと、俺をゆるぎない目でみてほほ笑んだ。

 

「・・・先に行ってる。お前も追いつけ」

 

「・・・ああ、すぐに追いついてやるよ!」

 

 ホントに、かなわねぇなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西洋風のグレモリー城に置いて、実は意外と和の要素が強いものもある。

 

 実際、部長はちょっと勘違いしている系とはいえど日本大好きで、それは明らかに西洋系の木場に純日本風の名前を与えるところからも明らか。その両親であるグレモリー夫妻も、日本好きの側面があったとして全くおかしくない。担当の領地も日本だし。

 

 そのため、西洋の城にもかかわらず、純和風の露天風呂なんてものが存在している。

 

 しかも天然の温泉! これはまた豪勢な展開になってきた!

 

 そのため、俺は温泉で手酌しながらのんびり休んでいるのである。

 

 当然次の日から過酷なトレーニングをすることになるので、このタイミングを大事にするのは当然だ。

 

「いや~、さすがは天下のグレモリー家が保有する温泉。いい湯だなぁ。そう思わねえか、宮白?」

 

「それに関しては同感だ。気が合うじゃねえか」

 

 学生として真面目なイッセー達では酒に付き合うなんて真似はできないので、アザゼルと一緒に酒を飲みながら湯船につかる。

 

 つまみはあえて塩のみ。ただし、こういうときのために用意していた最高級品だから十分だ。

 

「地獄でここまでバカンスできるだなんて想像もしなかったな。堕天使側にも観光地とかあるのか? 今度お前のコネで連れてってくれよ」

 

「まあ学校が冬休みにでもなったら考えてやるよ。しっかしあれだな。堕天使総督の俺が、悪魔の城で温泉に浸かれるとはいい時代になったもんだぜ」

 

 酒のせいか会話も弾む。

 

 年に数樽しか作られない高級酒。

 

 日本でも有数の場所で作られた塩。

 

 そして豪邸グレモリー城の私有温泉。

 

 夏休みらしいバカンスになってるじゃねえか。

 

「お前は少しは男らしくしやがれ! どっせぇええええいい!!」

 

「きゃぁあああ!? イッセー先輩のエッチィイイイ!!」

 

 イッセーが、なぜか女性風のタオルの巻き方をしているギャスパーを湯船に放り込んだりするのもほほえましい。

 

 過酷なトレーニング前の最後の楽園だ。しっかり楽しむとするか。

 

「おーおー。イッセーはテンション高ぇな。ちょっと指導してくるか」

 

 ものすごいいやらしい笑みを浮かべて、アザゼルがイッセーの方に向かって行く。

 

 あの様子じゃエロネタで盛り上がるつもりだな?

 

 さすがは堕ちた天使の総督。何気に何度もハーレムをつくった男みたいだし、そっち方面は俺なんかとは年期が違うだろうな。

 

「満喫しているみたいだね」

 

 入れ替わりに、木場がこっちに向かってやってくる。

 

 さっきイッセー相手に、顔を赤らめて背中を流そうとしたとは思えないぐらいさわやかな顔だ。

 

 こいつホモに目覚めてないだろうか? それはいろいろな意味で大変なことになりそうなのだが。

 

「ま、明日から大変だからな。俺としてもアーチャーからしっかり教わるつもりだからな」

 

「僕も、師匠にしっかり鍛え直してもらう予定だよ。お互い極めて優秀な師に恵まれたし、最大限に生かさないとね」

 

 肩までつかりながら、木場がそう答える。

 

 ソーナ会長とのレーティングゲームもあり、明日からは特訓が始まる。

 

 アザゼルが既にメニューを組み立ててるし、魔術の鍛錬も視野に入れて注文も入れている。

 

 一組織のトップが優秀なインストラクターとは限らないが、それでも幾度も激戦を繰り広げてきたスペシャルな存在だ。

 

 効果はそれなりに見込めるだろう。せいぜいこの機に鍛えまくらねば。

 

「でも驚いたよ。宮白くんは、イッセーくんが独立したらそのままついていきそうだと持ってたからね」

 

「知ってたのか?」

 

「さっきイッセーくんに聞いた」

 

 別に隠してないけど、口の軽い奴だな。

 

 木場は俺の方を向くと、不思議そうな顔をしていた。

 

「どうしてだい?」

 

「・・・ま、ちょっと考え方が変わったってところだな」

 

 以前、イッセーを社長にエロ会社を立ち上げようと考えたことがある。

 

 半分不真面目だが半分本気で、スカウトする人材も考えたりしていた。

 

「ぶっちゃけた話、俺はイッセーを心底上に見ていた」

 

 自分が親友とか言える立場かどうか、考えたことなどそれこそ無数にある。ぶっちゃけ今でも考えることがある。

 

 だけど、それじゃあ駄目だ。

 

 イッセーあの時、むしろ自分の方が劣等感を感じるとまで言ってくれた。そこまですごいと思ってくれた。俺のことを評価してくれた。

 

 なら、その評価にふさわしい自分でいなければならない。

 

「別に朱乃さんを否定しているわけじゃない。親友の眷属として支える生き方もあるとは思う」

 

 たかが三十数年で、人生がこれだと断言できるわけがない。

 

 むしろ、その生き方には尊敬を抱くところもあるし、少なくとも立派に親友やっているとすら思っている。

 

 これは、つまらない男の意地だ。

 

「だけど俺は、兵藤一誠と張り合える。それを外側の連中にも認めさせ続けたい」

 

 誰かが言った。

 

 自分のことをちゃんと見てくれる人がいるなら、それでいいじゃないかと。

 

 ああいいだろう、否定はしない。

 

 どれだけ周囲から評価されようと、自分で納得できなけりゃ意味がない。その考え方は決して間違ってはいないだろうし、一つの審理ではある。その理屈でいうなら、納得できるのならそれで十分だ。自分を認める存在が確かにいることで納得できるなら、それでいいだろう。

 

 だけど、それは「ちゃんと見てくれる人以外」には適用されないだろう?

 

 つまらないのは承知の上だが、それでも俺は、イッセーの親友だと文句なしに全てに認めさせれるだけの自分でいたい。

 

 赤龍帝の誇りになれるよう、自分自身が赤龍帝を誇りに思えるよう。それらをちゃんと、証明したい。

 

「そのためには明確な実績って奴が必要なわけだ。・・・来月のレーティングゲームは好都合だな。初っ端から並び立ってやる」

 

「すごい決意だけど、僕も負けないよ。・・・彼に並び立ちたいのは、きみだけじゃない」

 

 俺たちは視線を合わせると、ふと口元に笑みが浮かぶ。

 

 そのまま拳を軽くぶつけ合った。

 

「うわぁあああああああああああ!!」

 

 悲鳴が聞こえたのは次の瞬間。

 

 悲鳴の主は我らがイッセー。

 

 視線を向けたら宙を舞う赤龍帝。

 

 下手人はいい笑顔の堕天使総督。

 

 そこまで認識した瞬間には、既にイッセーは仕切りの向こう側へと消えており。

 

「ファアアアアアアアアアアアアアアック!!」

 

「に゛ぁああああああああああああああ!?」

 

 向こう側から、小雪とナツミの悲鳴が響き渡った。

 

「何やってんのお前ェエエエエエエエええええ!?」

 

 アザゼルの暴挙に俺は叫ぶ!!

 

 だが、アザゼルはかなり平然としていた。と、いうより何かを達成したかのような表情だった。

 

「いや、イッセーが女湯を覗こうなんて二流な真似をしようとしてがったからな。俺が一流を教えてやろうとしたまでよ」

 

「ナツミと小雪がいるんだぞぉおおおおお!? あと、小猫ちゃんもいるし!!」

 

 |部長とか朱乃さんとかアーシアちゃんとかゼノヴィア《フラグ構築済み》だけじゃないんだぞこのボケ!!

 

 あ、ベルは抜くことにしている。

 

 いや、あいつはみられても動じそうにないもん。

 

「実質ハプニングですね。・・・とりあえず目を閉じなさい兵藤一誠」

 

 ほら、冷静に対応してるし!!

 

「いーじゃねぇか、減るもんじゃないし。どうだ、お前もいくか?」

 

「行かねえよこの駄天使!!」

 

 バックステップで後退しながら、俺は警戒する。

 

 おのれこの堕天使ならぬ駄(目)天使め!!

 

 さすがは女の乳をつついて堕ちた総督だ。スケベにも程があるぞこの野郎。

 

 ・・・まあいい。

 

「先上がってるぞ木場、ギャスパー。・・・お前らも早めに出とけ」

 

「おいおいそんなにビビんなよ。アレはイッセーだからやっただけで、さっきのは軽い冗談だぜ?」

 

 アザゼルはヘラヘラ笑いながらそういう。

 

 この馬鹿は本当に駄(目)天使だな。そういう意味じゃないんだよ。

 

「早く出なきゃいけないのはそういうことじゃない。・・・女湯に投げ入れられる危険性のことじゃない」

 

 パス経由でヤバいオーラが伝わってくる。

 

 アザゼルは、あまりにも危険な存在をすっかり忘れている。

 

「・・・女湯から危険な存在がやってくるから逃げろって意味だ」

 

 膨大な魔力と共に、それは女湯からやってきた。

 

「やってくれるわねアザゼル。・・・これだから盛りのついた雄は本当にもう」

 

 サーヴァントとしての服に身を包みながら、アーチャーが乗り越えてやってきていた。

 

 うん。戦闘態勢。

 

「・・・・・・・・・・・・げ」

 

 ようやくヤバいことに気付いたアザゼルがうめくが、アーチャーは結構平静だ。

 

「別にイッセーの性格は知っていたし、男と女のあれこれぐらい知ってるんだから、いまさら慌てるつもりはないけれど」

 

 風呂に入ってからそのままやってきていたからか、しずくがしたたる髪を手櫛で整え、アーチャーは静かに魔力を解放する。

 

「可愛いは正義。・・・あんな可愛いナツミを半泣きにさせた罪は重いわよ」

 

 引き戸を占めると同時に音を遮断する術式をしっかりとかける。

 

 とたん、それでも防ぎきれない爆発音が連続で鳴り響いた。

 

 まだ外部供給システムが不完全なこともあって、俺の体から魔力がごっそりと奪われていくが、俺はあえて無視してさっさと着替え始めた。

 

 ・・・グレモリー卿に、なんて言って謝ろうか。

 

 




別にアザゼルアンチなわけではありません。

立場的にアザゼルに厳しくしなければいけないだけなのです

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