ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
それでは、技術チートの協力を受けた魔術チートの驚異的技量をご覧ください。
勢い余って威力を高めすぎたか。
・・・死体の確認ができないのは問題だ。
防御を固めたら逆に良いようにぶっ殺せるあの魔眼は危険すぎる。やりようによっては広域展開された結界をつまようじ一つで完膚なきまでに崩壊させかねないし、戦略的価値が洒落にならない。
仮にもそれなりに強者がいるであろう禍の団で聖杯戦争のマスターに選ばれるのだから、ただものではないとは思っていたが、規格外すぎる。
死霊魔術師というのも危険だ。
死体で魔術礼装をつくるということは死体が多ければ多いほど力を発揮するということ。翻って大量の死体が出てくる戦場でこそ真価を発揮する魔術師だ。
禍の団との戦いが撃破して双方ともに死者が出れば、その死体を利用して奴がどんどん強くなってしまうかもしれない。最上級悪魔クラスの死体でも入手すれば宝具クラスの超絶一級品もできるかもしれない。
それらを避けるためにも、できればここで仕留めておきたいんだが・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺もフィネクス卿も一言もしゃべれない。
ちなみにセイバーは消えてないが、これは判断の役には立たない。
確かにエネルギー供給源にして依代であるマスターが死ねばサーヴァントも消えるが、だからと言って死んだ直後に消滅するわけでもない。
さて、どうしたものか・・・。
「・・・やったのか、宮白」
イッセーがそんなことを言ってきた。
そして、俺はそれで確信した。
うん、やってない。
「フラグがたった。全員戦闘態勢とってください」
「フラグってなんだよ!?」
俺の要請にイッセーからツッコミが入るが、そんなことを気にしている余裕はない。
実際、煙の中から人影が見える。
だが、それには問題があった。
一人・・・二人・・・三人・・・四人?
分裂能力でも持っているのかあいつは?
やがて土煙が晴れるころには、その姿が鮮明に映っていた。
黒い蝙蝠のような翼をもった三人の悪魔が、レイヴンをかばうように立っていた。
三人とも年は俺たちと同じぐらいだが、悪魔は見た目も変えられると聞くし、信用はできない。
「カカッ! 手ぇ抜いてぼこられてんじゃねえよレイヴン! だらしねぇなぁ!!」
狂暴な雰囲気を纏った筋肉質の少年。
「あらぁん? 映像は見てたけどいい男も女もいっぱいねぇん?」
妖艶な雰囲気を纏った色っぽい少女。
「・・・これが最後のサーヴァントを抱えるリアス・グレモリーの者達か」
冷静な雰囲気を纏った、鋭い眼をした少年。
ここにきて増援とは困ったもんだ。そろそろアーチャーを令呪で呼んだ方がいいか?
俺達の緊張がこくなる中、鋭い眼をした少年が一歩前に出る。
「お初にお目にかかる、虚像の魔王の血をひくものよ。わが名はザムジオ・アスモデウス。旧魔王の血を継ぐものだ」
こちらを観察するように見据えながら、ザムジオと名乗った悪魔が一礼する。
一見隙だらけに見えるが、しかしそれは明らかにまやかしだろう。
・・・オーラが強い。間違いなく強者の一人だ。
ザムジオに続くためか、残りの二人も一歩前に歩み出る。
「俺様はグランソード・ベルゼブブっつーんだ。カカッ! よろしくな」
「エルトリア・レヴィアタンよぉん。よろしくねぇん」
この状況下でさらに増援とは・・・。マジで迷惑だ。
「旧魔王派が人間を支援するとはね。・・・少し意外だわ」
「そうでもない。なにぶんカテレア達の世代とは折り合いが悪くてね・・・」
部長の言葉にザムジオは苦笑した。
「カテレアのキャスターに相当する人材を確保するためにも、レイヴン殿には食客として行動してもらっているのだよ。なにぶん派閥争いが意外と激しくてね」
「つうわけで、ここでやられんのはさけてぇんだよ。カカッ! 悪ぃな」
「やられちゃった人たちも、自分の体で無念を晴らせたら弔いになるでしょぉん? そういう意味でも助かってるのよねぇん」
思い思いにそう言ってくるが、しかしレイヴンをかばうように立っているのだけは共通している。
どうする? 腐っても相手は旧魔王の血族。部長たちと同世代ならまだまだ発展途上だろうが、だからと言って今の状況でそうそう抜ける相手でもない。
しかも最悪なことに、視線を向ければセイバーまで立ちあがってきていた。
・・・仕方がない、か。
「令呪に命ず・・・来い、ア―」
「もう来てるわよ」
「待たせたなお前ら。もう大丈夫だ」
俺の言葉を遮り、ザムジオ達からかばうようにアーチャーとアザゼルが舞い降りた。
・・・ものすごいいタイミングで来てくれちゃってまあ。
「アザゼル先生! アーチャーさん!!」
イッセーが歓喜の声を上げる中、アザゼルが軽く手を上げて応じる。
「思った以上に悪魔払いの連中が多くてな。時間はかかったが全員片付けたぜ」
「全員に魔力避けのアミュレットを持たせるとはやるじゃない。・・・キャスターの差し金かしら?」
圧倒的強者が圧倒的余裕を見せつつプレッシャーを放つが、しかしザムジオ達は怯まなかった。
「一応同盟関係だったこともあって、その程度の支援は受けれるのだよ。まああまり役に立たなかったようだが」
肩をすくめるザムジオの後ろで、レイヴンがやっと完全に持ち直したのか俺達を睨む。
「やってくれたじゃないか。・・・セイバー、今度は彼らと腕試しだ」
レイヴンの命に従い、セイバーが無言で剣を構え直す。
さすがにきついな。いくらアザゼルが来てくれたとはいえ、敵にも増援が追加で来ているわけだ。
挙句の果てに敵はセイバー。本来キャスター枠で召喚されるアーチャーにとって、高い対魔力を持つセイバーは相性が悪いなんてもんじゃない。へたすりゃ完封負けもあり得る。
その懸念を与えるかのように、セイバーが一気にこちらに迫る。
「させるか! アーチャーさがれ!!!」
俺は鎧を全体に展開し直して駆けだそうとするが、しかし向こうの方が一歩早い。
不味い、やられる―
「心配しないで兵夜」
振り下ろされる剣を前に―
「格と後ろ盾が違いすぎるわ」
両腕を交差して防ぎきった!?
見れば、その服装は一変していた。
いかにも魔法使いのローブっぽい恰好から、ところどころに竜を彷彿とさせる意匠を施したコートへと姿が変わっていた。
その両腕は巨大な竜の爪を模した装甲に覆われ、セイバーの攻撃をギリギリで防いでいた。
「・・・私のスキルには金羊の皮という役に立たない死にスキルがあったわ」
そういえばあったな。
非常に高価であると同時に、竜を召喚する触媒にもできるという代物。ただし、肝心のアーチャーに竜召喚能力がないから役に立たないという死にスキル。
さすがに並行世界にまで干渉することはできないと思ったんだが・・・。
「どうだすげえだろ? グリゴリの技術でそれをベースに信仰を受けて精霊化したそのドラゴンの力を召喚、それをエネルギー源とする魔術礼装と人工神器のハイブリットだ」
ものすごく自慢げにアザゼルが語るなか、アーチャーはセイバーを力任せに振りほどき、さらに伸ばしたしっぽで弾き飛ばした。
「|金羊竜の皮鎧《アルゴンコイン・ドラゴン・レザー・アーマー》よ。いざという時の備えは当然用意しておいてるわ」
・・・今気付いたが、とんでもない組み合わせだよこの二人。
超絶魔術師であるアーチャーなら、キャスターのクラス別スキルである道具作成が無くても相応の礼装は作れるだろう。材料さえあれば宝具一歩手前の代物だって目じゃない。
そこに人造神器をつくり、さらに様々な方面につてがあるであろうアザゼルが技術と材料を提供すれば・・・。
「キャスターも大概だが、君たちの組み合わせも大概だということか」
レイヴンがものすごい嫌そうな顔でそうまとめた。
ああ、これは想定外だった。
まさかこの二人の組み合わせがここまで高い性能を発揮してくれるとはな。
「とはいえ、それではセイバーは倒せんよ」
再びセイバーが突進する。
だが今度は力任せに突っ込むようなまねはしない。フェイントを織り交ぜながら回り込むように接近する。
やばいな、今度こそ前衛として行動しなければ!
「アーチャー! こうなれば天閃を―」
「だから必要ないわ。・・・アザゼルは下がりなさい」
「ちょ、おま―」
次の瞬間、
セイバーとついでにアザゼルが、アーチャーから放たれた波動っぽいもので弾き飛ばされた。
・・・・・・・・・・・・。
イマノ、マジュツデシタカ?
「・・・・・・・・・・・・は?」
レイヴンも度肝を抜かれていた。
ああ、気持ちはわかる。
「いや、セイバーの対魔力はAランクなんだけど。十小節でも無力化するのにどうやってぶち抜いたの?」
うん、気持ちは本当にわかるぞ、レイヴン。
ってちょっと待て、対魔力A?
魔術きかねえだろ!!
「イッセーゴメン。俺幻覚見えてるからちょっと役立たないな、コレ」
「宮白落ち着け! 現実、コレ現実!!」
あれおっかしーな? イッセーが肩を揺さぶる幻覚が見えてるぞ? 感覚まであるとかリアルな幻覚だなぁ。
いやいやおかしいって。アーチャーはアーチャーだけど魔術師だよ? セイバーは対魔力Aだよ? 理論上魔術師じゃダメージ与えられないよ?
「アーチャーさぁああああん!? どどどどどっどどどどどどどどどどどどどどういうこと!?」
こういうときは本人に聞いてみよう!!
「簡単なことよ。・・・対魔力がAもあるのなら、十小節以上の魔術で攻撃すれば良い」
日本には言うは易いがから始まる諺がありましてね? っていうか、
「「そんなものをどうやって無詠唱で!?」」
思わずレイヴンとシンクロしてツッコミを入れてしまった。
いやだって常識外れにも程があるだろ!?
どう考えてもおかしいだろうが!! そんなもん宝具を以ってしてもやすやすとはできないって!?
そんな俺達の視線を浴びながら、アーチャーは懐から何やら高価そうな装飾品やら杖やらハンドガンやらとりだした。
「アザゼルの所有する一品は非常に有益な材料だったわ。・・・おかげで対魔力貫通に特化した魔術礼装やEXランクの魔術行使を可能とする魔術礼装が結構作れたもの。・・・一応兵夜にも使えるように調整しているから、こんど試してみなさい」
「俺のサーヴァント超すげぇえええええええええええええええええええ!!」
規格外すぎる!!
これアーチャーで呼び出されたの必然じゃねえの!? 本命のキャスター枠で呼び出されたらもはやチートだろ!! 並みの聖杯戦争なら余裕で勝ちぬけるよコレ!!
真名聞いてないけど聞く必要がないほどにまで優秀すぎる英霊だ。・・・どうしよう、頼もしすぎて気が遠くなりそう。
そしてそんな頼もしい存在を敵に回すと当然恐ろしいことになるわけで、レイヴンは真っ青になっていた。
さて、攻撃しようにも悪魔三人が邪魔になって攻撃できないしどうしようか。
「ば、ばばばばばばばばばバカな。最弱のキャスターで呼ばれるべき英霊がこんな規格外だと? セイバーを以ってしても打倒が難しすぎグワァッ!?」
ビビっていたレイヴンがいきなり横から吹っ飛ばされる。
三回転ぐらいしながら吹っ飛びやがった。
「バカな、どこから攻撃した!?」
ザムジオとかいった悪魔が動揺するが、それは極めて同感だ。
視界を横に逸らしてみても攻撃をしたような奴はどこにもいない。これはどういうことだ?
「・・・人のことを忘れてもらっては困りますのよ?」
なんか今度はオーラまきちらしながら雪侶が立ち上がった。
そういえば、テロリスト相手に一歩も引かなかったな。もしかして強いのか?
「angry。人の親の会社で好き勝手に暴れておきながら、何を偉そうなことを言ってますの?」
雪侶の周囲から魔法陣がいくつも現れる。
うん、魔力が結構豊富な感じだ。直撃は俺達でもまずいぞ。
「消し飛ぶがいいですの!!」
魔法によるフルバーストが全方位に向けて放たれる。
それらはほとんどがあさっての方向に向かったかと思ったが、途中で思いっきりねじ曲がってレイヴンを狙って降り注ぐ。
「カッカッカ! 面白い技を使うじゃねぇか!」
「面白いわねぇん! 見た目も可愛いし私好みよぉん!!」
グランソードとエルトリアがレイヴンをかばってその攻撃を迎撃するが、その余波で壁が崩壊するあたり破壊力は結構なものだ。
「その年でこれだけの魔法攻撃を使うとは。それもギリシャ系の魔術体系をこの国で見ることになるとは珍しい」
冷静に把握するザムジオの視線を浴びながら、雪侶は胸を張って奴らを見返した。
「Of course! これでもコルキスの魔女メディアの血筋を受け継ぐ由緒正しい魔女の家系。末裔を舐めてもらっては困りますのよ!」
・・・魔女メディアってアレだろ? ギリシャの女神の恋に巻き込まれて人生血なまぐさくなった大変な人。やることえげつないのは本人の資質とはいえ、無理やりやらされたようなもんだし正直訴えてもいいんじゃないだろうか。
この世界でも当然存在しているということか。主にゼウスを含めて迷惑な神様が多い印象があるんだが、今後俺も関わる可能性があるんだよなぁ・・・。
そんなことを考えていたら、うちのアーチャーが度肝を抜かれることをほざいた。
「ああ、だから私が召喚されたのね。血縁者に子孫がいれば召喚もされるわね」
ああ、触媒なしでなんでこんなすごいの召喚できたんだろうとは思ったけど、雪侶という妹の存在そのものが触媒になってたのか。
ある意味的確な召喚だったというわけか。
「ってことはアーチャーの真名はメディアか。・・・やっぱり神に復讐とかそういうのが・・・目的か?」
「まさか。下手な同情はやめて頂戴。せいぜい現世でいい暮らしができれば文句はないわ」
微妙に殺気を叩きつけられたが、しかしそれだけだった。
・・・下手な同情は確かによそう。
彼女の生前は俺なんかより長くて深い。それに俺風情が理解を示そうなどばかばかしすぎる。
それに、今はそれよりももっと気にするべきことがある。
「・・・・・潮時か」
ザムジオが、軽くため息をついてそういった。
とたん、四人の足元に魔法陣が浮かび上がり、セイバーがそれをかばうように移動しながら魔法陣の中に入る。
「逃げる気?」
「ああ。こんなところで双方ともに無用な犠牲を出すことはあるまい。聖杯戦争も魔王の座を賭けた闘争もここからが本番だ」
リアス部長の挑発にも耳を介さない。
どうやら極めて冷静な性格をしているらしい。それに本番がここじゃないというのも同感だ。
「貴様の兄が己を魔王ルシファーと偽る以上いずれ会いまみえる。本番はそれまでとっておけ」
「カカカッ! 先代魔王の末裔と現魔王の弟妹、どっちが強いか俺様は楽しみにしてるぜ?」
「素敵な子たちが多くて、倒すのが本当に残念なのよぉん? また会いましょうねぇん」
思い思いに魔王の子孫とやらが別れのあいさつをし、そして消え去る直前にレイヴンが俺に視線を向ける。
「いずれ、聖杯戦争で会おうじゃないか」
そして光に包まれて消えていく中、俺は静かに言葉を返す。
「・・・当たり前だ、馬鹿野郎」
だいたい初登場の時にばれてましたが、アーチャーの正体はメディアでした。Fateシリーズ魔術師ランキングを付けるなら間違いなくトップ候補のチート存在。
このへん、Fateシリーズの常である『弱いマスターと強力なサーヴァント』をある程度徴収しています。相対的に見て魔術師としては弱い部類のマスターと、超強力だけど弱体化しているサーヴァント。