ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
Other Side
宮白王座は施設内を走り回っていた。
自分の行動をここまで後悔したことはそうないだろう。しいて言えば雪侶が誘拐された時ぐらいだ。
まさか、雪侶があんなことをしていたとは思わなかった。我が娘ながら行動力がありすぎる。兵夜のことが家族で一番気に入っているから納得といえば納得だが。
だが、それを止めるための交換条件で今回の実験を見学させたのは失敗だった。
このタイミングでのテロリストの襲撃。狙いとなる可能性がある物はいくつかあるが、問題はそこではない。
今、雪侶が巻き込まれているということだけだ。
確かに彼女は今の自分よりはるかに強いだろう。だがそんなことは問題ではない。
始めての実戦など単独で行動させるだなんて危険すぎる。どう考えても1人で巻き込ませていいわけがない。
何としても助け出さなければならない。
そう考えて走りながらも、しかし次第に追い詰められていく。
テロリストがターゲットとなっている会社の社長を見逃すわけがない。当然のことに気づくのが遅れた。
幸い場所が場所なので地の利はこちらにあるし、万一のトラブルなどを警戒してシャッターを遠隔操作する電子機器は持っている。
しかし、それを以ってしても限界はあった。
どんどん近付かれてしまい、そしてついに袋小路に追い詰められてしまう。
「手間をかけさせてくれるな」
「ああ、こいつを片付ければ特別ボーナスまでくれるんだろ? これを見逃す手はねぇよな?」
神父服を着た二人の男。手に持っているのは拳銃だが、それが鉄の弾丸を放つものでないのはよく知っている。
「何故だ? 正式なものかはぐれなのかは知らないが、なぜ悪魔祓いがテロリストに身をやつす!!」
悪魔祓いのターゲットとは悪魔であり、人間ではない。それぐらいはさすがに知っている。
まれにはぐれ悪魔祓いは悪魔と契約している人間もターゲットにすることはあるが、だからといて表社会に大きな影響を与えるような行動は自粛していたはずだ。
自分で言うのもなんだが正姫工業は同ジャンルに置いては国内でもトップの売り上げを持つ大会社で、海外にも支社を持っている程の規模を持つ。
そんなものを潰せば人間社会にどれだけの被害が出てくるかなの考えるまでもない。
教会の側が動くとは思えない。アレは神に仕える者たちであり、人間に対する危害は極力避けるはずだ。
堕天使はもっとあり得ない。現トップのアザゼルは人間社会に影響を与えることを好まない男だというのに、このような騒ぎが起こるのはどういうことか?
「てめぇが知る必要はねぇなあ。ちゃっちゃと死ねよ」
考える余裕すら与えずに、悪魔祓いは拳銃を向け―
「・・・我ながらタイミングがいいことだなオイ」
彼らの後ろから声が聞こえた。
そこにいるのは、自分がついさっき言った駒王学園の制服を来た1人のよく知っている少年。
はぐれ悪魔祓いが振り向いて攻撃するよりも早く、彼は―宮白兵夜はその懐に潜り込んでいた。
「・・・・・・とりあえず、二人とも寝てろ!!」
Side Out
ギリギリセーフだった。
悪魔祓いを一撃で倒し、俺は一息をつく。
・・・自分で言うのもなんだが俺もそれなりに強くなったな。並みの悪魔祓いなら一対一なら確実に勝てる実力はあったが、まさか二対一をこうも簡単に終わらせることができるとは思わなかった。
「無事か? 親父」
「ひょ、兵夜? 一体どうして・・・ッ! まさかもう転生悪魔に!?」
「なんで知ってんだ親父!」
なんか情報の齟齬がある気がするが、とりあえず今はそれどころじゃない。
とりあえず親父の確保には成功した。そして確保に成功すればあとはどうとでもなる。
「・・・とりあえず姉貴たちの移動経路を把握するためのGPSを持て親父。あとこれは攻撃防御用のアミュレットだ、高いから絶対無くすな。そして気配遮断用のコートだ。ちゃんと着込んで移動しろよな」
「お、おまえなんでそんなにいろいろと持ってるんだ?」
A:アーチャーが作った(協力:俺の宝石魔術と冥界の技術力全般)
まさか道具作成スキルがないにも関わらず、技術提供があったとはいえここまでの代物をあっという間に作るとは。
などと言っている場合でもない。このあと雪侶を追いかけるという仕事がまだ残っているのだから。
「アンタが死んだら迷惑被る奴が多すぎるんだよバカ。・・・俺だってさすがにやだぜ」
別に嫌いなわけじゃねえんだ。
一応ここまで育ててくれた実の親だぞ。こんなことで死んでほしいと思うわけがない。
「・・・・・・雪侶は俺が助け出す。アンタは社員のことも考えてやれ」
返答は聞かない。
俺は素早く走り出した。
走り出して屋外に出ると、既に陽動の悪魔たちとテロリストの戦闘が勃発していた。
・・・思った以上に混乱が少ないな。どうやら、マジでこいつらは悪魔の存在について把握してたらしい。
危険すぎる展開になってきたな。いったい何がどうなってそんな組織が表の世界の会社を襲撃するようなまねをしたんだ?
状況は全く把握できないが、だからと言って無視して行くわけにはいかない。
とにかく雪侶を発見しなくてはいけないが、さてどこに行った?
あいつの性格なら逃げるよりもテロリストにケンカを売っている可能性もあるし、とりあえず暴れているところに使い魔を出して把握した方がいいのだろうか?
「Die! 人の親の会社に手を出して、ただで済むと思いますの!!」
・・・探すまでもなかった。
アイツ全力で喧嘩売ってやがる! 売っているとは思ったがまさかあそこまで全力だとは思わなかったぞ!!
水流を足に展開して高速移動。
視界がごっそり移動し、すぐに戦闘の光景を見ることができる。
・・・なんかビームめっさ撃ってるんですけどマイシスター。
とはいえそんなことを気にしている場合でもないので、割って入ってそのまま抱え込んで勢いよく移動しつつ通信を繋げる。
「回収しました! 避難組と合流するので援護の準備をお願いします!!」
「あ、兄上!? なんでこんなところにいるんですの!? あ、っていうかまだ下郎を倒していませんのよ!?」
「うっさい黙れ! ・・・ああこっちの話です。プリーズ援護!!」
『了解した。こちらもてこずっているが手早く片付けて助けに向かおう』
フィネクス卿が力強く答えてくれるが、それを無視するように敵の影がせまる。
なるほど、強そうな連中だ。
黒光りする鉄の装甲。
力強いモーター音。
両腕に取り付けられた銃火器類。
そう、そのものの名はロボット兵器・・・って。
「なんじゃありゃぁあああああああ!?」
なんでロボットがこんなところに来てるんですかぁああああ!?
サイズも人間を一回り大きくした感じだし、もうびっくりだよ俺!!
「知りませんでしたの? アレが正姫工業が自衛隊と共同で極秘開発した工兵部隊と歩兵部隊の強化のために開発した新型強化外骨格ですのよ?」
「極秘ってついてる時点で直接関わってない俺が知ってるわけないだろうが!! おい、まさかテロリストの目的って・・・あれか!?」
なんかすっごい便利になりそうな気がする!
たしか強化外骨格は軍でも研究されているはずだったな。アニメでは直接戦闘だったが、現実では後方支援が目的だったはずだが。
それ以前に民間企業でのテストで銃火器まで取り付けられているはずがないんだが・・・。
「専用のアタッチメントを付けることで重火器を使用できる戦闘兵器ですの。・・・どうやってさばきますの?」
雪侶が俺を心配する声をかけるが、そこは問題はない。
あの程度なら撃破は可能。問題は、ただ一つ。
さすがにあれだけの数の戦闘訓練を受けた相手、手を抜いて倒すのは不可能だ。
少なくとも光力を使う必要はある。そしてその状況下で致命の一撃を与えずにいられるなどおそらく不可能だ。
・・・・・・・・・・・・・・・俺に、人が殺せるか?
「・・・いや、違うな」
それは違う。
魔術師同士の戦いとはそれすなわち殺し合いのはずだ。ましてや聖杯戦争はどう考えてもサーヴァントは殺す必要がある。
できるできないじゃない、やるかやらないかとかいう言葉はあるが、あえて言おう。
やるしか、無い。
「丁度いい。ああ、ちょうど良いな」
物陰に隠れると雪侶を降ろす。
「兄上?」
「ちょっと待ってろ雪侶。すぐに終わらせてやる」
立ち上がり、神器を展開しながら奴らの前に踊りです。
「いたぞ! 逃がすな!!」
「奴は正姫工業の関係者だ、とっ捕まえろ!」
向かってくる強化外骨格の群れ。
深呼吸をし、気持ちを落ち着ける。
天使の鎧を呼び出し、光力を込める。
宝石を取り出し、魔術回路を起動させる。
さあ・・・。
「死んでもらう!!」