ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
「いや、あれは俺が人間のころから培ったコネだぞ? 悪魔商売とは全く別の付き合いじゃ無けりゃダメだろ」
俺はイッセーにそう答えた。
イッセーが、「あの人たちを悪魔としての契約対象にしたらお前出世できるんじゃね?」とか言ってきたがなにを言ってるんだか。
そんな失礼なことはしません。彼らはあくまで俺が培った人脈です。
アレの存在が俺の身の安全にどれだけ助かっていると思っている。
一応言っておくと、彼らはかなり善良な部類の極道組織だ。
賭博経営などは確かにしているが、麻薬ビジネスなどは一切手を出していないし、堅気の方に不要に危害を加えることは一切ない。
金融業は法定金利内に納めているのでまっとうな企業。風俗業界も社員の福利厚生に入れている力具合は下手なクリーンな企業をしのぐレベルだ。
そのせいか警察も積極的に手を出さず、むしろ裏の業界でヤバい連中が来ることを押させる抑止力として利用しているぐらい。
ちなみに、俺は警察関係者のコネを使ってそのあたりの情報交換をそれとなく手伝っている。法の力を借りた方が効果てきめんの場合はそっちのコネを使います。
ちなみに、俺たちは今ミニバスで移動している。
あいさつで根回しに時間がかかってイッセー達に余計な緊張を与えたみたいだが、とりあえずそのあたりの問題は終了した。
丁度、ある程度離れたところの土地開発計画に関わっているのを思い出したのだ。
確かあそこはまだ完全に土地を確保できたわけでもないから今は広い空き地と化しているし、あそこなら多少風が強かったとしても大丈夫だろう。
広さも十分すぎるほどに広いし、問題は一つとして存在しない。
「つーわけで付いたら相当に時間がかかるから呼ぶまでそこらのゲーセンか映画館で時間つぶしてくれ」
「了解っす宮白さん。いや~こんな好みピッタリな女の子と握手できるなんて俺は幸せだなぁ。宮白さんについて来てホントに良かった」
運転手も上機嫌で何よりだ。
ある程度の人数も移動できる足の確保も仕事の一環だしどうしたものかと最初は思ったが、丁度いいのが一人いて良かった。
活動的な美少女と握手したくてたまらないという変人だから、ゼノヴィアはある意味でピッタリだ。うん、実に好都合。
やはりコネは素晴らしい。個人があらゆる方向に高いスペックを発揮するのは、非常に困難。はんめん、コネというスペックを鍛えれば後は巡り合わせ次第であらゆる方向のジャンルにおいて、有望な知り合いをつくることで擬似的に万能になることができる。
コネは力だ!!
「とりあえず土地の広さはこれぐらいだから、真ん中に行けばいい感じにやれると思うんですけど、大丈夫ですか?」
「いけるよこれは! ああ、これだけ広けりゃ公式規格以上のものだって飛ばせる!! くっそぅ・・・金があれば大型のだって飛ばせたのによぉ」
「マジすっげぇ! こんな広いところで飛ばしていいの! マジありがとう宮白先輩!!」
「先輩のコネすごい!! ホントありがとうございます!!」
「宮白くんってホントエロ兵藤と一緒にいるのが不思議なぐらい優秀よねぇ。・・・ほんともったいない」
同好会の人たちも緊張から解放されたのか饒舌だ。うん、これならしっかり楽しんでい頂けそうだな。
さぁて、どうなるかな?
「ほほぉ。アンタがアザゼルの奴が言っておった奴じゃな?」
「いや、アンタ誰?」
目の前にいる老人に、イッセーがもっともな疑問をぶつけた。
現地に到着した俺たちはその足で土地へと移動。
風が吹いても大丈夫なように、土地のど真ん中まで移動して行動することになった。
結構機材が重いので人を集めておいて正解だった。せっかくならということで結構な量を持ってきていたのだ。
で、来てみれば先回りしていたかのようにこのちっさい老人が立っていたのだ?
いったい誰だ? アザゼルについて知ってるということはこっちの関係者だとは思うが・・・。
「ワシはアザゼルの茶飲み友達じゃよ。今日はアザゼルの奴が用事で来れないからわしがリベンジの手伝いを頼まれたんじゃ」
茶飲み友達になにを頼んでるんだあいつは。
どうやらよっぽど活躍できなかったことを気にしていたらしい。まあ、自信満々で土地を貸すといった直後に冥界だからダメといわれてはリベンジもしたくなるだろう。
「つったって、既に宮白のおかげで必要なことは完璧にできましたよ? 風の影響の無いめちゃくちゃ広い土地だし、これ以上なにを求めろと?」
美乃符先輩はそういうが、謎の爺さんはニヤリと笑うと、風呂敷包みを地面に置いた。
「わしもキットロケットには手を出したことがあるからわかるが、こんな広い土地ならもっとやれることがあるじゃろう? 心配せずともわしは資格ももっとるから・・・っ!」
風呂敷包みが広げられるが、どう考えても内容量を超えているほどたくさんのものが出てきた。
よく見るとそれは同好会の連中が持っているのと似たような形状をした物体だ。
そう、でかいロケット!?
でか!? 同好会の連中が持ってきたのより二回りは大きいぞ!?
「マジか!? こ、ここここここんなでかい奴作ったことねえよ!?」
「すげぇ・・・このサイズ下手したら成層圏まで飛ぶぞ!? ほ、本物か!?」
「こんなのアメリカとかじゃねえと飛ばせねえかと思ってたのに・・・きょ、許可取ってないけど大丈夫なのか!?」
驚愕に震える同好会の方々。
うん、ちょっと尋常じゃないレベルの驚愕具合だ。
爺さんもその顔が見たかったのか、写真に移しながらニヤリと笑う。
「上の方にはわしが申請しておいたから、テストが終わったら思う存分飛ばしなさい。なに、老いぼれもたまにはガキンチョどもが楽しむ姿を見たいと考えるもんじゃ」
これは嬉しいサプライズだ。
俺はよくわからないが、こういうのをやっている人間にとってこのサイズのロケットを打ち上げるとかいうのは結構な楽しみなんだろう。
・・・たまにはいいことするじゃねえか。小雪が気に入ってるのもわかる気がするぜ。
「ほれ悪魔の坊主ども。お前らもついでに一緒に手伝わんか」
ちょっと感心していたら、爺さんが俺達を促した。
いや、俺たちの仕事はこれで終わりだろ? ロケット打ち上げなんてさすがにかじったことすらないぞ?
「赤龍帝の坊主は無理なのは解っとるが、魔術師の坊主ができるのはわかっとるぞ? お主だからこそできることがあるんじゃ。とっととデータ収集の手伝いをせんかい」
ロケット発射三回目。
俺の目の前を高速で飛びあがっていくキットロケット。
俺はビデオカメラに移しながら、全力で上昇して少しでも近くで移すために飛び上がった。
「おぉおおおおおおおおおおおお!! ありえねえ!? 土地の都合上こんな近距離で飛んでいるロケットを撮影機材で確認だなんてあり得ねえ!?」
「これは今までにない記録データだ! 使えば間違いなく開発研究は一気に進むぞ!」
「こんな別次元のデータがあれば私達の入賞も夢じゃないわ!! ああ、これだけしかロケットを持ってこなかった私達のバカ!!」
テンションがウナギ登りで上昇していく同好会の方々には悪いが、これ結構きついんでそろそろ勘弁してもらえないでしょうか?
ゼノヴィアは新米すぎだし、イッセーはそのあたりが全然できないから俺しかできないし交代要員がいねえ!!
クソ! 気を取り直すんだ! 常識で考えろ、こんな奇跡を起こせるのは俺ぐらいしかいないだろうし、この辺りの開発は年単位でのスケジュールだからあと半年は同じことができるはずだ。
つまりお得意様にできる。ぼろもうけできるぞ頑張るんだ!
・・・いやダメだ! いくらなんでもそう何度も迷惑をかけるわけにはいかん。それはさすがに極道の方々に悪すぎる!!
くそ! やっぱりなんか不満を感じてくるぞ! どうすりゃいいんだよマジで!!
「しっかしもうちょっと風があるかと思ったけど、この辺全然風ないなぁ」
「ああ、なんでも駒王町を中心として狭い範囲で強風が吹いているらしいんだ。なんでだろうな?」
のんきに会話してんじゃねえよあいつら!!
イッセーと会員の会話を聞きながら、俺は額に汗を流してロケット追撃という難行を繰り返していく。
これも仕事だガンバレ俺!!
「まあ少しすればそのあたりも何とかなると思うぞ? 安心せい」
・・・?
「爺さん気象関係をつかさどる妖怪とか何かか? なんでんなことがわかんだよ」
アザゼルの友達というからただものではないのは分かっていたが、まさか気象操作の能力とか持ってるやつなんじゃないだろうか?
爺さんはお茶を飲みながら一息つくと、やれやれといわんばかりにためいきをついた。
「やれやれ。優秀だと聞いてはいたがどうやら気づいてなかったか。むしろ逆じゃよ逆」
逆ぅ?
「今回の強風が続いているのが鬼道の類による気象干渉によるものじゃ。アザゼルはその元凶どもを探し取るんじゃよ。さすがにそこまでできるとなると小童どもでは荷が重いのでな」
あぁ~。なるほど異常気象だとは思ったけど人為的なものだったのか。
なるほどなるほど。それなら範囲が極小なのも説明がつくな。まったくはた迷惑な連中だ。
「そういえばそういった技能を持つ異端の徒を教会時代に討伐に行ったことがあるな。日本にもいたとは」
「極東呪術体系の一環でそういうものがるのは親父に聞いてたが、こんなことで体験するとは思わなかったぜ」
ゼノヴィアと美乃符先輩が関心するが、しかしなんでそんな奴が出てきたんだ?
「たかが注意報クラスの強風を長続きさせるとか何考えてんだそいつ。どういうメリットがあるってんだよ」
おかげで報酬がもらえるのはラッキーだが、労働がきついことを考えるとどっこいどっこいだな。
何を考えてるのか・・・。
「・・・知りたいか? なら教えてやろう!!」
突如、空間に裂け目が走った。
空間の裂け目から、何人もの人影が俺たちに向かって降下してくる。
この感覚、魔力か? だとするとこいつらは悪魔の類・・・!
「イッセー、ゼノヴィア! 美乃符先輩たちをカバーしろ!!」
半ば墜落する勢いで地面に効果しながら、俺はイッセー達に指示を出しつつ得物を召喚。
追加でこっそり回収していた廃棄車両を召喚して美乃符先輩達の周りに壁になるようにする。
金がなくても大きめの障害物を集める程度簡単んにできる。この程度はちゃんとやってのける。
とはいえ、この感覚からするとそれなりに強大なレベルの悪魔が来たようだ。すぐに部長達に連絡して増援を出してもらわなければ危険すぎる。
念のためにイッセーにはアザゼルが作った例の装置を持たせているので短期決戦なら勝算はあるが、さてどうしたものか。
悪魔たちはこっちを睨みつけると忌々しげに舌打ちする。
俺たちが何をした? なぜそこまで敵視する。
つぅか、視線が美乃符先輩達に向けられているのが理解できない。いったい何を考えている?
「まさかこんなところまで来て行動をするとはな」
「よりにもよって神の力を使うとは、おかげでこちらも風を起こせないではないか」
「こちらも相当の報酬をもらってやっているのだ、多少強引だが、貴様たちは活動ができない体になってもらうぞ」
マジで目的は美乃符先輩達らしい。と、いうよりかは同好会の連中全員のようだ。
「な、なんでだ! 俺たちはただロケットを打ち上げてるだけだぞ! 許可だってもらってるはずじゃないのかよ!!」
美乃符先輩はそうどなるが、男たちはいらだつ視線を向けるだけで動かない。
・・・いったい何を考えている。禍の団なのか?
「かっかっか。まさかと思ったがそういうことか。酔狂な連中もいたもんじゃて」
今まで黙っていた爺さんが、何か気付いたのかそう言って笑いだした。
その笑い声を聞いて、悪魔たちの視線が鋭くなる。
「忌々しい八百万の神め。天侯に干渉しているのは貴様か。おかげでロケット発射を妨害できんではないか」
「そう言ってくれるな、Sランク級はぐれ悪魔ジーン・コンスコンとその一派。お主らこそ、モデルロケットの打ち上げ阻止のためだけに何日も気象操作などご苦労なことじゃ」
・・・いま、驚愕の事実が連発して発生したんですけど。
「え、えぇえええええええ!? 爺さん、神様なのか!?」
イッセーもそのことに気付いたのか、眼を見開いて爺さんを指差した。
・・・おいおい、マジでかよ。
確かに神道っていうのは多神教の中でも神の数と種類が桁違いに多いことで有名だが、まさかモノホンをお目に賭ける羽目になるとは思わなかったぞ。
「そういえば名乗ってなかったの。わしはフリーで神様をやっとるアスノミコトというもの。アザゼルとは奴が日本で神滅具と関わることになった事件の調査とかの一環でしりあっての。たまに茶を飲んだりしとるんじゃ」
アザゼルの人脈が恐ろしい。
アイツ一神教の存在だがそんなんでいいのだろうか? いや、まあ別にいいのか?
いやいやいやいや。今はそっちじゃない!
「ジーン・コンスコンといえば日本の魔術体系に詳しいことで有名なS級のはぐれ悪魔だな。犯罪組織を作ってアジア一帯で活動していると聞いてたが、まさかこんなところで対峙するとは」
ゼノヴィアが警戒するほどの大物か。
そんな奴らがなんでたかが地方都市の部活動に手を出すんだ? 何を考えているんだよ。
・・・・・・まてよ、そういえば先輩前に言ってたな。
モデルロケットの大会だか発表会に出るって。
「・・・・・・大会出場者による妨害工作とかいうんじゃないだろうな?」
「よくわかったな」
マジですか。
「え? ロケットの大会でなんで妨害? 大会潰して何か得することあんのかよ?」
「そっちじゃないイッセー。・・・美乃符会長。参加する奴らの中に成績が伸び悩んでいる金持ちとかいませんかね?」
こういう連中は金で動く。
と、なれば問題は動かせるだけの金を持っているやつがいるかどうかだ。
「あ、ああ・・・。参加校の一つに正姫工業の専務の娘とか自慢してるのがいたはずだが」
よりにも寄ってあそこかよ!
「つまり敵の妨害ですよ。気象操作で付近一帯のライバルがロケットをテストするのを妨害している隙に、金の力で開けた土地まで移動して実験を行い、アドバンテージを得ようとか考えたようです」
「その通りだ。こっちも一億も詰まれてるんでな。はなれたところで行動する連中にも突然の強風というトラブルで活動停止に追い込んだりしていたのだが・・・まさか気象をつかさどる神がいたとは思わなかった。おかげで力づくでやらざるを得なくなったよ」
金持ってるやつはこれだから困る。
後でどうとでもなるとはいえ、どうやってこの危機を脱するか。
「いくら神の一柱とはいえ、所詮は八百万の一つでしかない弱小の神。怒れる神を抑える対神の術式すら存在する極東呪術を研鑽した私なら十分勝算があるぞ?」
「ほっほっほ。言ってくれるところ悪いが、わしはこれでも他の神様の手伝いをし続けた結果。気象はもちろんのこと芸能の神やら学問の神やら料理の神やら恋愛の神やら、ついでに神格化した武将の連中の手伝いもしたりで戦闘だって心得はある。暇つぶしに極東の術式も研究したし、そう簡単にはやられんぞ?」
ジーンとアスノミコトがにらみ合うが、ちょっと待ってくれませんか御二人さん?
対抗策をもった上級悪魔クラスと、腐っても神が勝負したらこの辺一帯酷いことになるぞ。
「ふ、二人とも! とりあえず美乃符先輩達を安全なところまで非難させるぞ! 全員全力疾走!! とにかく逃げろぉおおおおお!!」
「させん! 最低でもロケットはすべてブチ壊させてもらう! こっちはアザゼルのせいで組織が壊滅的打撃を受けたんだからな! ついでにお前らも殺して憂さ晴らしをさせてもらう!!」
いかん! 俺たちもしっかりターゲットに入ってる!?
このままじゃ・・・。
「ちょっとうるさいわよそこの雑魚連中!!」
直後、悪魔たちが光の中に消えた。
そして数秒後、ボロクソになって倒れ伏した。
ついでにアスノミコトとかいう爺さんが巻き添えを食って宙を舞った。
「「「「「「「ぇええええええええええええええええええ!?」」」」」」」
バトルが始まるかと思ったら即終了したぁああああああああ!?
「・・・アーチャーじゃないか。あなたも来ていたのか」
砲撃の来た方向に視線を向けていたゼノヴィアがそんなことを言って、俺たちは我に返った。
その声に振り返ってみれば、杖を構えていたアーチャーがこっちに来ていた。
え、今のアーチャー? 全然本気出してる風に見えなかったんだけど、もしかして戦闘これで終了?
あいてSランクのはぐれ悪魔だよ? 間違いなく強敵のはずなのに、鎧袖一触しちゃいましたよこの人。
「モデルロケットに興味がわいたから少し見てこようと思ったのよ。・・・それで、とりあえず学生服来てない連中は全員敵かと思って吹き飛ばしたけど大丈夫だった?」
お、俺たちは大丈夫だけど・・・。
「わ、わしの活躍が・・・」
あ、意外と大丈夫そう。
イッセーSide
「・・・あ~そういうわけでちょっと脅しかけといてくれない・・・かな?」
宮白が電話をかけて事後報告の真っ最中だった。
結局、なんか名前付きで出てきた強そうな悪魔たちは一瞬で拘束されてあっさり引き渡された。
あいつらの勢力も本気を出したアザゼルの前には情報をばらまきすぎだったみたいで、ほぼ全員が捕まったらしい。こっちに来たのは残党勢力といったレベルだったらしい。
それでもSランクはぐれ悪魔となると相当の強敵で、本来なら苦戦は必須とか言う連中だったらしいんだけど・・・。
「悪魔も大したことないのね。アレでSランクだというなら最強クラスも十分倒せそうだわ」
恐ろしいことを平然と言ってくれるアーチャーさん。ロケットを興味深げに見ながらのセリフですが、この人超強いよ!
確かイレギュラーで弱く召喚されたとか言ってなかったっけ!? これで!?
あまりの圧倒的な強さに、あの後同好会の人たちも何人か失神したぐらいだ。
これが
俺たちは、すっごい人に助けられてるんだなぁ・・・。
「なにはともあれ助かったよ」
美乃符先輩が俺たちに笑顔を見せる。
「これでもう妨害されることもないだろうし、思う存分ロケットを上げられそうだ」
「よかったのぅ坊主。その調子で頑張るといいぞ。爺さん応援してるからの」
そう言ってアスノミコトの爺さんがお守りを手渡してくれる。
マジモンの神様が作ったお守りか。効果過ごそうだなぁ。
「しかし大丈夫なのかい? こんな方法では妨害をしてきたその何とか工業の専務とやらを捕まえるのは大変だろう。また妨害をしてくるかもしれないぞ」
ゼノヴィアがそう言ってくるが、正直そこは心配してない。
相手が正姫工業なら宮白ならどうとでもなる。
「そっちは社長経由で警告が入るから大丈夫だろう。悪魔業界はアザゼル達に睨まれるだろうし、現実的な方法も上から睨まれていては意味がないからな」
電話を終えた宮白がちょっと言いにくそうに、しかし断言した。
「全く金があるなら正攻法でやればいいもの、頭のいいバカって言うのは必然的に持ってるものもすごいことになるからたまにバカやるだけでいい迷惑だ」
「お疲れさん。それで、宮白、どうするんだ?」
「決まってるだろ。・・・後片付けだ」
そう言いながら半目で宮白が見るのは戦闘の痕。
奇麗なクレーターができてしまいました。
うん、さすがは超強いはぐれ悪魔を一撃で戦闘不能にする攻撃だね。すごい範囲がクレーターになっていてちょっときれいだ。
っじゃねえよぉおおおおおお!! こんなのどうやって後かたづけするんだよぉおおおお!!
「人里から離れているから音が聞こえなかったのは不幸中の幸いだった。会長さんに悪いから、部長の力借りて整地してから帰ろう」
「ちょ、アーチャーさぁあああああん!?」
「仕方がないわね。手伝えばいいのでしょう? ゼノヴィア、ちょっと力貸しなさい」
「いいだろう。しかしすさまじい強さだ。禍の団があてにするというのも理解できるというものだな」
・・・結果、次の日の朝日を見るころになってようやく整地が終わりました。
もう疲れた! クソ、こんなことなら俺は参加しなけりゃよかったぜ!!
「よくやってくれたわね兵夜。おかげで我が校の宇宙研究同好会は大会で優勝。入部希望者が続出したことで宇宙研究部へと昇格したそうよ」
何日か経った後にその連絡が届き、俺たちはちょっとガッツポーズした。
なんだかんだ言っても苦労したもんな。
ちなみに、正姫工業の専務の娘とかいう人がいるところはビリだったそうだ。
美乃符さんいわく、「妨害するしない以前の問題。一から勉強し直した方がいい」だそうです。ダメなお金持ちっているんだなぁ。
「しかし面倒なこともありました。まさか正姫工業が関わっているとは」
宮白は頭痛を感じているのか頭を抱えていた。
まあ、気持ちはわかる。
「確かにあそこはクリーンな企業で有名だものね」
「あらあら。困った人もどこからか出てきたりするのですわね」
「宮白さんも大変でしたね」
「・・・どこにでも腐った輩はいるものです」
「確かに大変そうだね。大きくなると制御ができなくなるということかな?」
「よくは分からないがどこも大変だということか」
仲間たちが口々に感想をいうが、宮白の懸念はそういうことじゃない。
「いや、確かにこいつ実家とはぎこちないけど、親の会社で問題児が出たらそりゃ頭も抱えますよ」
その辺は大変だよな。うん、同情する。
「「「「「「・・・・・・え?」」」」」」
・・・・・・あれ?
「イッセー。俺、それは言ってないぞ」
あれ? 言ってなかったっけ?
「ひょ、兵夜? あなた、あの正姫工業の御曹司なの?」
部長が震える唇で宮白を指差す。
宮白は視線をそらしながらだが、無言でうなづいた。
「い、いや、宮白くんは名字宮白でしょ? 普通こういう会社って社長の名字を使うんじゃないの?」
木場もそういってくるが、宮白はためいきを一つついた。
「・・・あの会社は世襲制じゃないんだよ。実際、親父が社長になった時は警察沙汰にはならなかったがいろいろと大騒ぎがあったりしたんで、人事面はかなり引き締められたんだけどなぁ」
疲れたように宮白はさらにためいきをついた。
「すいませんがその話はできれば避けてもらいませんか? ほら、俺前世の記憶なんて面倒なもんがあるでしょう?」
ソファーに座る宮白の目は、ここじゃないどこかを映しているように遠い。
「今はともかく最初のころは結構失敗していて、親兄弟とは1人を除いて距離を置かれてるんですよ。正直、あまり家の話はしたくない」
実際、宮白の家族関係はいろいろと複雑だ。
俺と仲良くなるまでは友達も一人もいなかったし、家に招待されたこともあるけどやっぱりなんかぎこちなかった。
今1人暮らししてるのもその証拠だ。親としての情はあるみたいだけど、お互いに距離を取っている。
「・・・そう。ごめんなさい、ちょっと意外だったから踏み込み過ぎたわ」
部長がそう言って頭を下げる。
まあ、相当意外だから仕方がないよな。
実際松田と元浜も始めて知った時は度肝抜かれてたし。
「・・・ま、慣れてるからいいんですけどね。で、親の話で思い出したんですが」
そういうと、宮白は資料を転送するとそれを広げた。
それは、最近宮白が関わっている不良狩り事件の資料だった。
「ちょっと身内が関わってるぽいんで手伝ってもらえないでしょうか? ・・・犯人があいつだとすると一筋縄ではいかないんで」
Side Out