ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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箸休め的な短編です。


意外と、近代的です

 悪魔の仕事というのは想像をはるかに凌駕するほどバリエーションが豊富な気がする。

 

 同じ願いを持っていても叶え方の類は悪魔によって異なる場合があるし、何より悪魔によってなぜか呼んでくる人間には偏りがある。

 

 例えば木場の場合はお姉さんに呼び出されることが多いし、小猫ちゃんの場合は大人の男が多い。イッセーの場合は漢の娘やら全身鎧などの変人の群れだ。俺も不良被害者友の会が基本パターンなので本当に個性的である。

 

 これは、そんな不可思議な依頼の一つで起こった大騒ぎの一つである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪魔の皆さん! お願いがあるんだがいいかな!!」

 

「ブグッホォ!?」

 

 突然大声を上げて突入してきた男子生徒の声に、俺は飲んでいた紅茶を思いっきりむせていた。

 

 いきなり真昼間から悪魔であることを暴露してくる奴がいるとは思わなかった。部室だったから良かったものの、こんなところで大騒ぎになるとかマジ迷惑。

 

 つか、いったい誰だよ? こんな時間帯に悪魔業務とか驚き何だがな。

 

「・・・美乃符さんだったかしら? 一体どうしたの?」

 

 優雅にお茶を飲んでいた部長が優雅に男に向き直る。

 

 美乃符って誰だっけ? ・・・そういえばどこかで聞いたような気がするが。

 

「ああ、ちょっと悪魔の皆に頼みたいことがあってな。今時間ある・・・か」

 

 美乃符といわれた男はそこで始めて俺達の存在に気付いたのか、少しの間きょとんとしていた。

 

「ああ、そういえば新入りがいるとか言ってたな。始めまして、宇宙研究同好会の美乃符だ」

 

 ・・・ああ、思い出した。

 

 そういえば学内の部長クラスは一応顔写真とか集めてたな。その中に確かにこの人いたよ。

 

「あ、どうも。・・・って部長、この人なんで悪魔に詳しいんですか?」

 

 さすがに学内に悪魔の存在を知っている人がいるのは不味いんじゃないだろうか?

 

「ああ、彼は魔法使いの家系の出身なの。私の父が彼の父親と一時期契約していたことがあるからよく知ってたのよ」

 

 あぁなるほど。この人こっち側。

 

「ってそれが何で宇宙研究同好会に? ベクトル真逆ですよ」

 

「俺達の力を宇宙開発に生かしたらどうなるのか気になってな。ちなみに会員全員に俺の素性は教えてある」

 

「いや、それある意味むちゃくちゃ危険だと思うんですけど」

 

 一歩間違えたら世界大混乱だぞ?

 

 だが、美乃符さんはカラカラと笑うだけだ。

 

「不特定多数に正体をばらしながら仕事をするよりかはマシだろ?」

 

 ・・・返す言葉もない。

 

 いわれてみれば悪魔業務って非常に面倒だな。

 

「ま、そんなわけだからこそ頼めることがあるわけなんだが、とりあえず話を聞いてくれよ」

 

 今になって思うが、今回の事態は本当に面倒だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強風注意報。

 

 分かりやすく言えば、風が強いので気をつけましょうという注意報である。

 

 実はいま、駒王町ではこの強風注意報が長続きしているのだ。

 

 それはいろいろな意味で迷惑な事態だろう。

 

 例えば、洗濯物が風で飛んだ。財布から出したお札が風で飛んで行った。風で起こった砂埃で目が痛い。枚挙にいとまがない。

 

 そして、問題の一つとしては・・・。

 

「風が強すぎて部活動ができない?」

 

「厳密には、モデルロケットの類ができないんだよ。風が強すぎて回収装置が上手く機能しなくて打ち上げるたびに壊れてしまう」

 

 そんなもん作ってるのか、本格的だな。

 

 まあ既に一週間近く強風注意報が発令している。こんな状況下ではそもそも打ち上げるのも大変だろう。

 

 風に流されて民家にでも落ちれば学園に抗議が来るかもしれない。そうなれば活動停止処分を受けることもあり得る。

 

「ただでさえ日本じゃ打ち上げ場所に困るのに、ここ最近の強風のせいで活動ができなくてな。今度この辺りの地域でモデルロケットの大会があるんだが、おかげで調整とかができないんだよ。・・・悪魔の力で何とかできないか?」

 

 確かにそれは大変だ。

 

 大会とかでの実績は評価につながる。実績があれば人が増える。人が増えれば部への昇格も行ける。そうなれば部費ももらえて活動がよりしやすくなる。

 

 そういう意味では同好会にとって大会というのは極めて重要だ。それができないというのは問題がある。

 

「今のところ費用は会員が持ち寄ることになってるんだが、それで二の足踏んでいる奴が多くてな。この大会を足がかりに、部費をもらえるようにすれば結構発展できると思うんだが、この状況下じゃなぁ」

 

 美乃符先輩は頭を抱える。

 

「なにせウチは宇宙関係全部に手を出してるから、宇宙食の収集や天体観測も含めてるんだ。やること多いから金かかるんだよ」

 

「それは確かに問題ですね。お金って言うのは重要です」

 

 宝石魔術という金のかかる魔術が本来のメインである俺にはわかる。

 

 お金って言うのは大事だ。

 

「とはいっても困ったわね。さすがに気象そのものに干渉するのはおおごとだし、下手にやれた日本の地を管理する異能者達から苦情が来るのはあなただってわかるでしょう? 私達は事情があってあまり退魔の組織ともめごとを起こすわけにはいかないのよ」

 

「・・・色々あって険悪な仲のもいます」

 

「え、マジで? 結構部長達も大変なんだなぁ」

 

 会話中に入ってきた小猫ちゃんとイッセーの会話が聞こえてくるが、さてどうしたものか。

 

「ただでさえ金がないから遠くに移動するのも大変だし、何とか出来たら俺が持ってる貴重な魔法道具を出すのもやぶさかじゃなかったんだが、無理かぁ・・・」

 

「アンタもうちょっと実家の文化を大事にしたらどうですか?」

 

 いくらなんでも部活動で裏の力を放出するのは不味いと思う。

 

 しかし天侯操作だなんて大魔術クラスだ。少なくとも俺にはできないし、アーチャーだって専門分野じゃなければさすがに手が出せるレベルじゃないだろう。

 

 もしできたとしてもそれが理由で部長達に迷惑をかけるわけにはいかないし、さてどうしたものか・・・。

 

「ふふふふふ。お困りのようだなお前ら」

 

 ドアからアザゼルがカッコよくポーズを付けながら現れた。その姿を見た美乃符部長が硬直する。

 

「だ、だ、だ、だ、だ・・・堕天使総督!?」

 

「あぁビビんなビビんな。別にとって食べるつもりはねぇよ」

 

 変なオーラを出しながら登場するからそんなことになるんでしょうが。

 

 アザゼルは俺達の方を見るとものすごい自慢げな表情を浮かべた。

 

「冥界で俺が保有している土地まで転移させてやろう! それならどれだけぶっ放そうが問題はねえだろ!!」

 

「いや、そんなことしたら俺ん家がややこしいことになるんで」

 

 バッサリ断られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アザゼル先生、かわいそうだなぁ。

 

 一瞬で断られて地味に落ち込んでいるアザゼル先生をよそに、宮白が電話をかけていた。

 

 少しの間考え込んでからかけたということはそれなりに勝算はあるんだろうが、しかしどうするつもりだ?

 

「・・・おや、客でも来ているのか?」

 

 あ、ゼノヴィアたちもやってきた。にぎやかになってきたな。

 

 やってきたゼノヴィアたちに事情を説明しながら、電話を続ける宮白を見る。

 

 あいつ何を考えてるんだろう。どうやってこの問題を解決するつもりだ?

 

「・・・じゃ、お願いしました。さて、あとは報酬だけどどうしたもんか」

 

 電話を終えた宮白が額に指を当てて少しの間考え込む。

 

 ・・・なんでだろう、こいつとんでもないことをしでかしたような気がしてきた。

 

 考え込む宮白は俺達の方にも視線を向けるが、その視線がゼノヴィアのあたりで止まった。

 

「・・・ゼノヴィア、物は相談なんだが」

 

 そういうと、宮白がゼノヴィアに耳打ちした。

 

 なんだなんだ? いったい何考えてるんだ?

 

「その程度なら別にかまわないが、どうするつもりだ?」

 

「ちょっとした報酬だよ。これならいけるか・・・と、いうことで」

 

 すぐさま宮白は再び携帯電話をかけると、今度はすぐに終わらせた。

 

「・・・よし、何とかいけるぞお前ら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とんでもないことになってきた。

 

 美乃符先輩ら同好会のメンバーが、ものすごい緊張した顔で立ちつくしている。

 

 ゼノヴィアはあまり緊張していないが、こいつはたぶんよくわかってないだけだろう。

 

 俺も本気で緊張している。ああ、この状況下で緊張しない学生がいるわけがない。いてたまるものかこの野郎!!

 

 なんで、

 

 な ん で

 

 なんでヤクザの事務所どころか御屋敷みたいな場所に俺たちはたってなきゃいけないんだよ!!

 

「どうしてこうなったぁああああああああ!!!」

 

 俺は頭を抱えて叫んでしまった。

 

 そりゃあそうだろう。

 

 ああ、俺は確かに悪魔ですよ? 一対一なら負けないし、部長は街でも有力な立場に立っているから、うかつに手を出されることはないとは思うよ?

 

 だからってこれはあり得ないだろ!! 心臓に悪すぎるわ!!

 

「な、なあ、本当に宮白くんはここで待つように言っていたのか?」

 

 震える声で美乃符先輩が俺に訪ねてくる。

 

 ああ、宮白は確かにそう言っていた。

 

「なかなか大きな家だね。日本は土地が狭いと聞いていたが、広いところは広いということか」

 

 ゼノヴィアがピントのずれた感想をいうが、俺たちはツッコミを入れることも出来ない。

 

 こんなところでボケっと突っ立ってたら怖いお兄さんたちがやってきたりしないだろうか?

 

 いやだ! なんで悪魔になったってのにこんなことで命の危険を感じなきゃいけないんだ!!

 

 部長のおっぱいを吸うまで死にたくない! 朱乃さんにえろえろなことをしてもらいたい! アーシアを見て癒されたい!! ゼノヴィアとの子作りも正直期待してるんだよ俺は!!

 

 誰かマジで助けてくれぇええええ!!

 

 等と心の中で絶叫していたら、屋敷のドアが開いて黒服の男の人が姿を現してきた。

 

 やばい! ついに怒りにに来たのか!?

 

「お待たせしてすいません。よければ中でお待ちください」

 

 ・・・あれ?

 

 なんでだろう。ものすごい歓迎する態度ですよ?

 

「え、えと・・・」

 

「・・・? 兵藤さまであっていますよね? 宮白さんから伺っておりますが」

 

 ものすごい丁寧な態度だ。

 

 正直イメージと全く違うんだけど、どういうこと?

 

 っていうか、なんでここで宮白の名前が出てくるの? あいついったい何したの?

 

「あ、あの。宮白ってあなた達の何なんですか?」

 

 あいつがただものじゃないのは知っていたが、これはどう考えてもおかしいだろう!?

 

「ああ、宮白さんは我々の恩人です」

 

 誇らしげに語り始める黒服の人。

 

「跡目争いで内部分裂が起こりかけているときに現会長を刺客から匿ってくださり、大規模麻薬ビジネスに乗り出そうとした敵対勢力のボスの居場所を探りだしておびき出し警察に叩きこんでくださったのです」

 

 おかげでこの街も平和なのですと、男の人は締めくくった。

 

「そのため最大幹部クラスの特権を得るほどになったのですが、それにおぼれることなく必ず力を借りた人にはお礼をし、こまごまとした探偵の力を借りたい業務等に関してもそれとなく手伝ってくださり、さらにいろいろな意味で有望な人物を紹介してくださる素晴らしい方です」

 

 すごい大活躍している。

 

 なるほど、そういえばアンダーグラウンドにかなり大きなコネがあるとか言っていたな。

 

 となれば俺が手に入れた裏モノDVDも彼らを経由して入手したのかもしれない。これは素晴らしいことだ。

 

 素晴らしいことだけど・・・。

 

「すごすぎだろ宮白ぉおおおおおおおおお!?」

 

 俺は絶叫するしかできなかった。

 

Side Out

 




ちなみに、事情というのは朱乃さんのアレです。一応気は使っております。

しっかしスピンオフのほうはすごい設定が出てきてますね。まさかそこまででかい家だったとは・・・。

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