ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
欲望に忠実なイッセーコピーをせん滅することになり、アザゼルと俺はそれぞれ独自に準備を進めていた。
幸か不幸か、コピーは欲望が強化されている代わりに知能は低下しているようだ。そこに付け入る隙があると俺は思う。
そして、作戦の火ぶたが切って落とされた。
「てってってー!」
アザゼルが、どこかで聞いたような効果音を口で出しながら、釣竿を取りだした。
・・・緊張感ないなこの男。
「まずはこの釣竿を用意する」
そして糸を長く伸ばすと、先端にのりを付けて本をくっつける。
「んでもって先っちょにエロ本を用意する」
そして窓から身を乗り出すと、釣竿を窓から垂らした。
「後はイッセーが引っ掛かるのを待って釣り上げる。こうすれば簡単に一匹ずつ片付けれるって寸法だ」
そう言いながら、エロ本の付いた釣竿を俺たちに渡していく。
なるほど。確かに引っ掛かりそうだが・・・。
「もうちょっと考えてやれよ! これで引っ掛かかったら本人泣くぞ!!」
「目的のために手段を選ぶ必要はない!!」
いや選べ! それ悪役のセリフ!!。
「全く。前もって俺が仕掛けたトラップの方がよっぽど効果的だな」
仕掛けておいて正解だった。
こんなアホな方法で全滅したらイッセーの心に深い傷が残りそうだ。
親友として、そんなひどい事態になることは決して見逃せない。
「何だよ? サーヴァントでも使う気か?」
アザゼルが深く考えずにそんなことを言うが、舐めてるのか?
「バカかアザゼル? 仮にも格上の存在をこんなバカがアホやったせいで発生したクソくだらない茶番に付き合わせるわけがないだろうが。俺にだって良識のりの字ぐらいある」
「・・・・・・お前は俺に対して遠慮がねえな」
諸悪の根源が何言ってんだ?
「おっぱい!」
「俺んだ!!」
「よませろ!!」
下の方ではなんだか騒がしくなってきた。
エロほんに目の色変えて群がり、釣り上げられるイッセーを気にすることなくエロ本を読もうとする偽イッセー達。
片っぱしから釣りあげられては小猫ちゃんやゼノヴィアに始末されているのに、それには目もくれない。
・・・なんか、涙出てきた。
「吹っ飛べイッセー!! お気に入りだったのに!!」
ナツミはマルショキアスで文字通り消し飛ばす。
吹っ飛ばされたことで消滅するのではなく、消滅するよりも早く粉みじんに吹き飛ばすあたり怒り具合が分かるというものだ。
・・・間違えてイッセーが殴られないように本物と書いたタグでもつけた方がいいだろうか?
「二人とも早く釣りあげなさい!! 大漁よ!!」
部長があまりの連れっぷりになんだかテンションを上げているが、俺は優雅に髪をかきあげるとポーズすら付けた。
「これだけ簡単に反応するなら、俺の作戦は完璧に決まる―」
―ちゅどどどどどどぉおおん!
発動したな。
「・・・宮白? あれ、何の音だ?」
「決まってるだろイッセー。・・・爆弾だよ」
俺は平然と言った。
「それも聖水を利用した対悪魔用聖水爆弾だ。火薬の量が少なくて済むうえに悪魔以外には誤作動しても害が少ないという便利アイテム」
対悪魔戦を視野に入れて開発していたが、こんなことで使うことになるとは思わなかった。
「それをエロ本の下にセットして、エロ本がどかされると自動で爆発するようにしたのをかるく100個ほど用意しておいた。・・・この釣りに引っ掛かるぐらいなら簡単に引っ掛かるだろう」
ふっふっふ。これが俺の実力だ。
「だてに長年親友はやってない。・・・イッセーの好みのエロ本は大概把握している。欲望に忠実なら絶対に引っ掛かる!!」
視線を下に向ければ、イッセーがつり放題でとんでもないことになっていた。
・・・いくらなんでも知能が低下しすぎてないか?
学習されないように同じ場所や近くにはセットしないよう気を付けたのだが、その必要もないような気がしてきた。
アザゼル、もうちょっと上手く作れなかったのかよ。
「先生! 物陰に隠れて様子見しているイッセー先輩もいっぱいいます!!」
・・・と思ったが、ギャスパーがそう言ったように様子見程度の知能を持ったイッセーもいたようだ。
ちょっとほっとする俺だが、そこにアザゼルが無情なアドバイスを送る。
「そういうのはマニアックな本で対応しろ。イッセー程度それで十分だ」
アザゼルがエロ本を取り換えながらそういう。
んなばかな。エロ本で釣られることに気をつけているのにエロ本変わったぐらいで反応するはずが・・・。
「ほ、本当ですぅううううう!!!」
・・・マジで泣いていいか?
「すごいです! すごい勢いでイッセーさんが連れて行きます!!」
アーシアちゃんがなんだか楽しそうになって来たのが怖い。
・・・これ楽しんじゃいけないと思うんだ。どう考えても頭抱える展開な気がするんだ。
どぉおん!
ちゅどん!
どどどん!!
ちゅどどぉおん!!
離れたところから爆発音も連続して響き渡る。
ああ、こっちが引くぐらいに引っ掛かってるな偽イッセー。
「・・・変態撲滅」
「ごふ!!」
爆発に気を取られている隙に、イッセーが小猫ちゃんに殴り飛ばされる。
いかん! 恐れていたことが現実に!!
「やめろ小猫ちゃん! そいつは本物だ!!」
「そんな馬鹿な。本物はもっと卑猥な顔つきです」
なんてことだ! 信じてくれないだなんて!
「よく見ろ小猫ちゃん! ダメージが入る時の腰の曲がり方が偽物より5度急だろう!!」
そうだ! こんな簡単に見分けられるじゃないか!!
「エロ本を見たときの目の見開きぐらいも、目当てなエロ本を見つけるときの反応速度もエロ本を読んでいるときに口のにやけ具合も全てが違う!! もっと冷静になればすぐにわかるはずだ!!」
「・・・それはむしろ分かりたくないです」
・・・あれ? なんかドン引きされてる?
「強敵はすぐ近くにいるようね。・・・負けてられないわ」
「部長さんの言うとおりです。・・・ああ、主よ、どうかお導きください」
「あらあら。宮白くんには負けてられませんわね」
一部対抗意識を燃やされている!?
「み、宮白。・・・マジでキモいぞ」
イッセーにまでツッコまれた!?
なんか釈然としないまま、釣り上げと爆発のコラボレーションは続けられていった・・・。
爆発と釣り上げた途絶えて数分。俺たちは新たな作戦を発動する必要があったが、そこに援軍が現れた。
「実質何人か殴り倒しましたが、なにを考えてるんですかこの総督は」
事情を聞いたベルが頭を抱えてためいきをつく。
そりゃそうだろう。この展開は非常に面倒なことになっている。
「やるならアーシアさんをドッペルゲンガーにするべきです。そうすれば擦り傷などが絶えないであろう運動部員達を一瞬で治療で来て、ミカエルさまも喜ぶでしょうに・・・」
「そこじゃねえよ!?」
俺は思わずツッコミを入れてしまった。
誰がコピーさせる対象についてツッコミを入れろと言った!
コピーそのものに対してツッコミを入れろよ! しかも強制だぞこのバカ!!
なんでこの女は時々ねじりこむようにボケる! 漫才師でも目指してんのか!
「そうでもないぞ。さすがに知恵が付いたのかエロ本に引っ掛からなくなったしな。これだけでいけるかと思ったが予想外だ」
てめえ本当に当事者とは思えない意見を言ってくるな!
本人が、本・人・が! ここにいるんだろうが!!
ええいいっそ殴り飛ばしてしまおうか!
つか、この状況下終わったは終わったで収集つくのか? 記憶処理とかその辺どうするつもりだ!!
「仕方がない。朱乃! お前の出番だ!!」
「なんですか?」
朱乃さんのニコニコフェイスが微妙にゆがむ。
・・・やはり堕天使に対する悪感情は消えないか。
むしろイッセーがアザゼルに対して敵意が小さいのが奇跡的なぐらいだ。こいつはもうちょっと敵意を持つべきだと思うのは俺だけだろうか?
そんなことを考えている間にアザゼルが朱乃さんへと耳打ちし、された朱乃さんの表情に戸惑いの色が浮かんだ。
なんだろう。すっごい頭が痛くなりそうな展開になりそうだ。
「た、確かに有効そうですわね・・・」
「リアスでやるのもいいがまずはお前だ。さあ、レッツゴー!」
数分後。
俺の目の前には、バニーガール姿の朱乃さんの姿があった。
・・・二次元で駄目なら三次元、か。
隣に立つイッセーがガン見していた。
俺もとりあえず脳内に保存しておこう。こんな光景そうそう見れないぞ。
「本体の反応が既にガっついてるな。これは効果抜群だぞ!!」
ちゃっかり自分もガン見しながらアザゼルが断言する。
確かに、エロ本であの反応ならこれは効果てきめんだろう。
「イッセーくーん! おっぱいですわよー!」
旧校舎を出てきた朱乃さんの声が響き渡る。
一瞬の沈黙が起き、その後変化は訪れた。
「「「「「「「「「「おっぱい!!」」」」」」」」」」
一体どこに隠れていたのかわからないが、イッセーにドッペルゲンガーが現れた!
まだこんなにいやがったのか! やはりアレか、ペラペラな紙より肉感あふれる本物か! 気持ちはわかる!!
「なるほど。肉欲を刺激することでドッペルゲンガーを集めるわけですね。実質私も手伝った方がいいでしょう」
この光景を見ていたベルが立ちあがり、服に手をかけながら旧校舎を出る。
ドッペルゲンガーの視線がベルに集まり、次の瞬間。
「私のスタイルを利用する必要があるかもと思い用意していたハニートラップ用武装、実質しっかりご覧なさい!!」
服を豪快に投げ飛ばす!!
その身を僅かに包むのは下着。
それも、ただの下着ではない。
重要部分がスリットが入っているおかげでしっかりと見ることができる、いわゆるエロ下着の類だった!!
「えええええええええええええええええええ!? なにやってんのぉおおおおおおおおお!?」
イッセー(オリジナル)のツッコミが響き渡る。
「「「「「「「「「「おっしゃぁ!!」」」」」」」」」」
イッセー(ドッペルゲンガー)の歓声も響き渡る!!
所詮は偽物、本体のツッコミ属性までは再現できないということだな!!
・・・なんだか、泣いていいだろうか?
「お前何やってんの!? なんでお前、時々ねじりこむようにボケを叩きこむの!?」
俺はそうツッコミを入れざるをえなかった。
イッセーとの模擬戦の時と言い、事後報告の時と言い、この女、隙あらばトンデモないボケを叩きこんできやがる!!
「ミカエルさまのためならば、この身を穢す覚悟などとうにできています!! すべてはアザゼルの尻拭いをして恩に着せるため!! さあ近づいて見に来なさいドッペルゲンガー!!」
「「「「「「「「「「はい! おっぱい!!」」」」」」」」」」
堂々とし過ぎてもはや神々しさすら感じさせる勢いのベルの宣言に、ドッペルゲンガーはさらに大挙して押し寄せてきていた。
おっぱいに飢えすぎだろドッペルゲンガー! ここはツッコミを入れるところだろ!!
そしてそんなドッペルゲンガーは朱乃さんの雷に呑みこまれていく。
雷など気にも留めずにドッペルゲンガーはおっぱいに突進し、そして塵と化していく。
何だろう、この火に飛び込む虫のような哀れな光景は。
俺は無情すら感じていた。それでいいのか、ドッペルゲンガーよ。
「あらあら。これが本物なら嬉しいのだけれども・・・。バニーでご奉仕してあげるのは本物だけですわ」
ドSな朱乃さんの宣言など気にも止めず、ドッペルゲンガー達は雷に飲み込まれていく。
そして、それを見ながらアザゼルは悲哀の表情でイッセーの肩をたたいた。
ただし、その手にはハンディカムが握られている。
「この光景、撮影して同僚におくっていいか? マジで面白すぎんだよこれ」
「俺、アンタを殴っても怒られないと思うんだ」
イッセーとアザゼルの壮絶な殴り合いが勃発した。
一句できた。
雷に、飛んで消え去る、イッセーくん
・・・俺の心の中に封印しておこう。