ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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会談、続いてます!

 幸運なことに、会談そのものはアザゼルが茶々を入れる以外はスムーズに進んでいた。

 

 かれこれ一時間ぐらいたったと思うが、俺は会話の内容はあまり耳に入れてない。

 

 目を閉じて使い魔と視界を共有して、周囲の監視に励んでいたからだ。

 

 今のところ、校舎周辺や警備の連中に問題は起きていないようだ。

 

 校内にも不審者の姿はないし、厳重な警備のかいがあって安全は確保できているとみていいだろう。

 

 とはいえ、油断はできない。

 

 特に校舎周辺に直接転移してくる可能性はあるし、徹底的に監視しておかなければ。

 

「ではリアス。先日の事件について、話してもらおうかな」

 

「はい、ルシファーさま」

 

 さすがに公の出来事なので、敬称でサーゼクスさまのことを呼んだ部長が、会長や朱乃さんと共に立ち上がる。

 

 話されるのは、俺も体験したエクスカリバーの一件だ。もちろん、部長の視点での話しなため俺が知らないこともあるが、やっぱり監視はしていたらしい。

 

 ひどく緊張こそしているようだが、淡々と事実だけを話し、感想を交えるようなことはしていない。

 

 とはいえ過敏になっているだろう。ちょっと言い方を間違えただけで、三大勢力のこれからに大きな変化が起きるかもしれないのだから、それは当然というものだ。

 

 単純な人生経験なら、俺の方が倍近くある以上、そのあたりフォローを入れた方がいいのだろうか?

 

 これが終わったら、俺の残ったお金で盛大にご馳走しようか。・・・いや、逆にプライド傷ついたりするかもしれないし、あれだ、手作り料理とかでいこう。

 

 その内容を聞くトップたちは、顔をしかめたりためいきをついたり、笑ったりと反応は様々だった。

 

「―以上が、私、リアス・グレモリーとその眷属悪魔が関与した事件の報告です」

 

「御苦労、座ってくれて構わないよ」

 

「ありがとうね、リアスちゃん☆」

 

 魔王さま二人の言葉に、部長は半ば脱力しながら席に戻る。

 

 その手がイッセーの手に延びる。

 

 俺が言うのもなんだが、イッセーに対して依存し始めてるな。これが悪影響を生まなければいいんだが、まあ、人のことは言えないな。

 

「さてアザゼル。堕天使総督としての、この報告に対する意見を聞きたい」

 

 サーゼクスさまの言葉に、アザゼルは不敵な笑みを浮かべて話し始める。

 

「報告の通りさ。コカビエルの行動は俺や他の幹部に黙って起こした単独犯。そしてそこの悪魔くん達の活躍でぶちのめされたコカビエルは白龍皇達にひっとらえられ、軍法会議にかけられた。・・・いや、ホントご苦労さん」

 

 アザゼルはにやついたままそう言ってくるが、とりあえず我慢しろ俺。

 

「コカビエルの刑は、地獄の最下層(コキュートス)での永久冷凍。この間転送した資料に書いてあった通りだから、もう出てこれねえよ」

 

 ・・・とりあえず、コカビエルがこの会談に何かすることはないのだろう。

 

 それはトップの方々にとっても当然理解している者なのか、特に反応はない。

 

「説明としては最低の部類ですね。・・・それと、あなた個人が我々と大きくことを起こしたくないという話を聞いています。それは本当なのでしょう?」

 

 ミカエルさまの問いかけに、アザゼルは大きくうなづいた。

 

「ああ、コカビエルがこきおろしていた通り、俺は戦争なんかに興味はない。あるんだったら止めるために白龍皇チームを動かしたりしねえよ」

 

 神器の研究に没頭した、戦争に消極的な男。

 

 コカビエルの評価は正しいようだ。このへん、小雪の言っていたとおりみたいだな。

 

「アザゼル、一つ訊いてもいかね?」

 

「なんだ? 言ってみろよ」

 

 アザゼルの了承を聞いてから、サーゼクスさまは鋭い視線を奴に向けた。

 

「ここ数十年間、神器所有者をかき集めている理由はなんだ? 最初は戦争再開のための戦力増強かと思ったが―」

 

「確かに、神滅具(ロンギヌス)を二人も迎え入れたと聞き、我々も強い警戒心を抱きました。・・・だというのに、いつまでたっても戦争を仕掛けてはこなかった」

 

 警戒心の強いサーゼクスさまと大天使ミカエルの言葉に、アザゼルは苦笑した。

 

 っていうか、神滅具使いを二人? ヴァーリの奴以外にもそんなのがいるのかよ? ってか、神滅具っていったいいくつあるんだ?

 

「基本的には研究のためだよ。そのへんもコカビエルがこきおろしていただろう? 俺は今の世界に十分満足してるから、それで戦争なんぞ起こしたりしねえよ。他にも面白いもんはいっぱいあるしな」

 

 そういうと、アザゼルの視線は俺やナツミ、そして久遠の方を向いた。

 

「なあ、異世界の転生者さん? お前ら、力を使った時に死ぬ前よりも威力がでかくなったりしたことはねぇか?」

 

 ・・・流体操作とかのときにやけに効率が上がった記憶はあるが、なんでそれを奴が知ってる?

 

 とはいえ、それを表面に出したらなんかあいつの手のひらで踊らされてるようでちょっと嫌だ―

 

「え、えと、あるけど?」

 

「ナツミ・・・」

 

 この子は素直なんだからホントにもう!!

 

 そのナツミの答えに満足したのか、アザゼルは愉快そうに笑う。

 

「転生者の能力は、この世界の物差しで再設計されるみたいなんだよ。人間が魔法使いになることで天使や悪魔を打倒することも出来る世界なせいか、大概はパワーアップすることが多いのさ」

 

 ・・・とても重要な秘密を、どうもありがとうございます。

 

 それだけ言うと満足したのか、アザゼルはすごくいい笑顔で椅子に座り直す。

 

 と、そこでセラフォルーさまが立ちあがった。

 

「その辺で一つ言っておくことがあるわ☆」

 

 ・・・なんだろう? 他の魔王と一緒に調べてるとかいったし、それ関係か?

 

悪魔の駒(イーヴィル・ピース)などの一部の道具類に対し、転生者の存在はリミッターをはずす効果があるみたいね。・・・久遠ちゃんを調べたアジュカちゃんが言ってたけど、近くにいる人とかにも影響がでて、通常より駒数が少なく済むらしいわ」

 

「そりゃ面白いな! 悪魔の駒はいろいろと隠し要素があるそうだが、それを勝手に使っちまうわけか! うわ、マジで興味湧いてきたぞ!!」

 

 ・・・アザゼルがすごい目の色変えて食いついてきた。

 

 ああ、そういえばイッセー駒八つのところ七つで済んだとか言ってたな。

 

 俺の駒数が一つで済んだのも部長が意外そうだったし、こりゃ相当効果があるようだ。

 

「・・・まあ、さっきの話も含めて俺の子供心をくすぐりまくる愉快なものがいっぱいあるんでな。俺から戦争を起こすつもりは一切ない。どうだ、信用できるだろ?」

 

「いや、いささかあやしいところだな」

 

「それはそうよね☆」

 

「自分の所業を顧みてください」

 

 首脳陣がバッサリいって、アザゼルはほおを引くつかせた。

 

 信用ないにもほどがあるだろ、堕天使トップ。

 

「お前らも先代魔王や神並みにめんどくさいな。分かったよ、どうせそっちもそのつもりなんだし、技術交流もセットで和平を結ぼうぜ?」

 

 ・・・切り出したか。

 

 アザゼルの後ろでは、小雪が拳を握って内心のガッツポーズを示しているぐらいだ。

 

 どうやら、よほどその言葉を聞きたかったようだな。

 

「ええ、そのつもりでしたよ。天使の長である私が言うのもなんですが、戦争の大本である神と魔王がいなくなったのです。これ以上、三すくみを続けることは神の子にとって害でしかありません」

 

「悪魔にとっても同じことだ。我ら悪魔は種の存続すら危うい。これ以上争うことに意味などありはすまい」

 

 アザゼルに同意する天使長と魔王さま。その言葉に、アザゼルもうなづいた。

 

「そう、神はなくとも世界は回る。俺たちは、戦争起こさず平和にやっていくことができるのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、俺は再び使い魔の視界共有に集中したが、集中しすぎてイッセーが大天使ミカエルにトンデモ発言をかましたことを聞き逃していた。

 

 なんでも、アーシアを追放した理由を追及したらしい。

 

 三大勢力のトップが会談を行っている状況下で、一下級悪魔が首脳陣を非難するような発言をするとは、下手したらそれだけで緊張状態に移行しかねないだろうに。

 

 大天使ミカエルが天使の名に恥じない温厚な人物で助かった。

 

 なんでも、神の奇跡や信仰に対する加護は、神が作り出したシステムによって行われているらしい。

 

 自分自身が起こすのではなく、悪魔で作られたシステムによって、十字架などがもたらす力も、それによって行われているという。

 

 たとえ自身がいなくなっても奇跡を起こす余地を残すシステムか。

 

 まさか、聖書に記されし神は自分の消滅すら予期していたのか? マジで神なわけだし、それぐらい用意周到でもおかしくないが・・・。

 

 だが、さすがに信仰の大本である神がいなくなった状況では、いろいろと不便があるらしい。

 

 完璧に信徒全員に加護を起こすことはできなくなったし、システムに近い教会などに信仰を揺るがすものがいると、それだけで不具合が発生しかねないほどデリケートだ。

 

 神の祝福であるはずの癒しの力を悪魔にまでつかえるアーシアは、それだけでシステムにとって害悪となる。

 

 想像以上に切羽詰まった理由だったようだ。

 

 このシステムは本当にビーキーで、神の不在を知っている者が不用意に近づくだけでも不調を起こすらしい。

 

 ゼノヴィアはそちらの理由で異端認定を受けたとのことだ。

 

 幸いというかなんというか、二人とも今の生活に満足していることもあってか、それに対して起こったりはしていないようだ。むしろ大天使ミカエルが恐縮しそうになるほどだったみたいだ。

 

 さらにアザゼルが茶々を入れて、イッセーが軽くキレたみたいだが、その辺は軽くスルーされたらしい。

 

 そして、意識を再び会談へと戻すタイミングで、アザゼルが話しを切り替えた。

 

「さて、俺としては、二天龍やら転生者なんて言う、この世界の根本を揺るがしかねないイレギュラーにも、この和平について聞いておきたいところだがな」

 

 ・・・おいおい、俺注目されちゃってるよ。

 

 丁度いいタイミングで意識を切り替えて良かった。下手したら完全無視でいろいろと面倒なことになっていたな。

 

「お前の世界と同じ世界から来たっぽい転生者は、どいつもこいつも研究資料とかがなくなったことに絶望して落ち込んでばかりなんだが、その辺どう思う? 赤龍帝の親友クン?」

 

 ・・・なるほど、俺の事情は大体把握済みか。

 

「魔術師っていうのは、万物の始まりにして終焉と言われる根源の渦というαにしてΩって感じのものを目指し、社会に存在するものすべてよりもその根源に近いとされるからこそ魔術を研究している。生涯かけての研究が、とんでもない方向で躓いたりしてればそりゃ絶望するだろうな」

 

 どうやら、堕天使側が確保している俺の世界の連中は全員魔術師らしい。

 

「たとえるなら、化石とかを研究する考古学者が化石が一切存在しないスペースコロニーとかに永住を命じられたもんだ。魔術師はロマン追求のためだけに魔術(化石)を調べてるようなもんだから、調べる物そのものがなくなったに近い」

 

「なるほどな。それで親友くんはそのあたりは平気みたいだな」

 

「俺は研究のために魔術を学ぶ魔術師じゃなく、己の利益のために魔術を利用する魔術使いだからな。探偵のまねごととかに便利すぎてむしろヒャッハーだよ。ご依頼があればお高く受け付けるぜ、イッセー殺した計画犯さん?」

 

 これまでの会話で、こいつがこの程度の挑発に機嫌を悪くする奴じゃないのはわかってる。

 

 これは俺の鬱憤晴らしだ。

 

 奴自身わかっているのか、その辺にはのっかってこない。

 

「それじゃあ、お前は魔術を使ってこの世界で大活躍とか考えてるか? 生物全てに聞く治癒魔術とか、魔術を使うためのマジックアイテムとかあるらしいが」

 

 まあ、この世界の悪魔社会を考えれば当然の儲け話だろう。

 

 俺としてもぜひやりたいところだが、そうもいかないのが世の中というもんだ。

 

「あいにく秘密を独占しないと力が出ないしくみでな。個人的に闇医者やるぐらいしかできそうにない」

 

 そういうと、俺は肩をすくめた。

 

「ま、気長に親友の出世街道をサポートしながら甘い蜜をちょっぴりすするぐらいしかすることがねぇ。・・・俺の方はそんなもんだ」

 

 激しく残念ではあるがな。

 

 悪魔社会の治療現場を根本から変えた男とか、言われたかった・・・っ!

 

「そういやそんなこといってたなぁあいつらも。・・・他の連中はどうだ?」

 

 アザゼルの観察するような視線に対し、しかし過激な反応をする者はいなかった。

 

「えと、ボクは楽しく過ごせればそれでいいかな? 桜花は?」

 

「会長のために全力を使うことですー。ベルさんはー?」

 

「実質、始めてのぬくもりを教えてくださったミカエルさまに仕えることです!!!」

 

 最後がやけに大声だ。気合入りすぎだろベル。

 

 と、俺は小雪に目が向いた。

 

 あ、目があった。

 

「・・・あたしは平和に過ごせりゃそれでいい」

 

 それだけ言うと、目をつぶって壁に背を預けた。

 

 それを横目で見てから、アザゼルはイッセーに視線を向けた。

 

「それじゃあ今度は二天龍だ。お前はどうなんだ、白龍皇?」

 

「俺は強い奴と戦えればそれでいい」

 

 そっけなく答えるヴァーリ。

 

 戦争停止の会談に対しての答えとしては不穏当な気もするが、まあレーティングゲームへの参戦とかで補える範囲内だろう。

 

「そんじゃ、次は赤龍帝だ」

 

「お、オレ? 正直、世界がどうこう言われてもよくわからないです・・・なあ宮白?」

 

「イッセーは自分がビッグな自覚が一切ないから、もうちょっとスケールが小さなたとえで説明しろ堕天使総督」

 

 ちょっとため息まじりに俺がそういうと、アザゼルはちょっとだけ考えた。

 

「じゃあ恐ろしいほどに噛み砕いて言うぞ。戦争が起きると二天龍は間違いなく表舞台に出る羽目になる。そうなるとリアス・グレモリーを抱けないぞ?」

 

 ・・・

 

「「はあ!?」」

 

 なんかとんでもないたとえが飛び出してきましたよちょっと!?

 

 思わず部長とシンクロして声を出した俺たちだが、それ以上に驚愕していた男がいた。

 

「なん・・・だ・・・と?」

 

 イッセーが、目を見開いて驚愕している・・・。

 

「和平=戦争なしだ。この場合は種の存続と繁栄のため、毎日子作りし放題だ。戦争なら子作りはなし。どうだ、分かりやすいだろ?」

 

「和平! 和平一つでお願いします!! 部長とエッチしたいでシュグォッ!?」

 

魔王さま(おにいさん)目の前にいるだろうが!?」

 

 脇腹にボディブローを入れて黙らせる。

 

 非常にわかりやすいたとえだったなオイ!!

 

 クソが! この堕天使は本当にトラブルメーカーだな! 俺の最初の予想はしっかりとドンピシャで当たってたよこんちくしょうが!!

 

「お前何考えてんだよこのド阿呆が! ああ、こんなことしている間にテロリストとかが潜入してたらどうするんだよ!! ああもう! 使い魔との視界共有間違えて、旧校舎側の奴とつながっちまったし・・・」

 

 本当に片方の目が使い魔と繋がってしまった。

 

 静かな旧校舎に、遠くに小さく見える悪魔の姿。窓からはローブ姿の女の姿が映り―

 

 ・・・あれ?

 

「・・・部長!? 旧校舎に侵入し―」

 

 瞬間、すべてが止まった。


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