ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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連続投稿2日目。

おそらくこの作品の最重要重大情報が盛らされるタイミングだというのに、主人公視点じゃないという事実。


ついに知られる、真実です!!

イッセーSIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 鮮血をまきちらしながら倒れるフリード。

 

「・・・まさかデュランダルまで出るとはな。ミカエルの奴もそれなりに本気だったということか」

 

 コカビエルがなんかうんうんうなづいているが、とりあえずエクスカリバーは何とか出来たってことか。

 

 なんだか全然あわててないコカビエルとは違って、バルパーもう顔が赤くなったり青くなったりと完全にパニクってやがる。

 

「聖魔剣だと!? あり得ない・・・聖と魔は本来混じり合うわけがないのだ。互いに反発し合っているはずだぞ・・・」

 

 バカな俺には何を言っているのかさっぱり分からないが、いまがチャンスなのはわかる。

 

 こいつをこのままにしておいたら、木場の仲間みたいに犠牲者が増えちまう。なんとしてもここで決着をつけないと。

 

「バルパー。・・・これで終わりだ」

 

 木場が聖魔剣を持って迫るが、バルパーは自分の中でブツブツつぶやいているだけだ。

 

「・・・そうか! 聖と魔をつかさどる存在のバランスが崩れているのならば説明がつく!! つまり、あの大戦で死んだのは魔王だけでなクォッ!?」

 

 なんだか勝手に納得してるバルパーに、何かが叩きつけられる。

 

 アレは・・・ベルさん!?

 

「それに気づくとはなかなか優秀だが、別に俺はお前がいなくてもいいんだ。最初から一人でやれる」

 

 ベルさんを叩き飛ばしたコカビエルは、両手を構えると光の槍を作り出す。

 

 でけえ! 最初に体育館を吹き飛ばした時よりはるかにでかい光の槍だ。

 

「ベルのついでだが最大威力で吹き飛ばしてやるよ。せめてもの情けって奴だな!」

 

「ま、まてコカビエル! 私は―」

 

 バルパーがなだめようとするが、構わずコカビエルは光の槍を叩きつけた。

 

 一瞬で光が広がり、木場をふっ飛ばしながら巨大なクレーターができる。

 

 ―跡形もない! そんな、ベルさん!?

 

「・・・所詮は外道。実質、仲間意識などかけらもありませんか」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・うぉっ!? ベルさん!?」

 

 ビックリしたぁ!? いつの間にかベルさんが俺の隣にいるし!

 

「・・・なるほどそういうことか。ミカエルもつくづく面白い連中をよこしたものだ。あのエクスカリバー使いが何故いるのかわからないぐらいだ」

 

 愉快そうに、コカビエルが俺達の方を向くと、余裕たっぷりに両手を広げる。

 

「おい赤龍帝。限界まで倍化の力をあげて、誰かに譲渡しろ」

 

 何だって!?

 

 わざわざ俺達に勝つチャンスを与えてくれるっていうのか?

 

「なめているのかしら、コカビエル」

 

「舐めているのはお前だリアス・グレモリー。まさか、俺に勝てる気でいるのか?」

 

 完全にこちらをバカにしているコカビエル。

 

 いいぜ! だったら本当に限界まで倍化を譲渡してやる!!

 

『そうだ、本気で行け相棒。真面目な話、全力で言っても通用するかわからんレベルなのが奴だからな』

 

 そうかい。だけど、俺たちは絶対に負けられねえよ。

 

 でも誰に譲渡すれば良い?

 

 聖魔剣の木場か?

 

 デュランダルのゼノヴィアか?

 

 それとも朱乃さんか部長?

 

 いや、それよりも適任がいる。

 

 部長もそれがわかっているのか、静かに彼女の隣にたった。

 

「・・・ベル・アームストロング。正直不本意だけど、貴女に託していいかしら?」

 

「実質、それが一番可能性はありますか。・・・わかりました」

 

 アーシアの回復をいつの間にか受けていたベルさんが、俺の手を握ってきた。

 

「お願いします。その神滅具(ロンギヌス)の力を、私に」

 

「・・・はい!」

 

 俺は静かにブーステッド・ギアを起動させる。

 

 今まで、コカビエルを単独で相手にしてきたのはベルさんだ。

 

 たぶん、この中でアイツに対抗できるのはこの人しかいない。

 

 静かに、倍化が続いていく。

 

 その間、コカビエルは全く邪魔してこない。

 

 通用しないと本気で思ってるのか? クソ、どれぐらい倍化すれば良いのか本気でわからない。

 

 ・・・・・・・・・・・・きた。

 

「いけます! ベルさん!!」

 

「ええ、お願いします!!」

 

 俺はベルさんに倍化の力を譲渡する。

 

 これが最後の切り札だ! 一気に決めてくれ!!

 

「コカビエル、覚悟ッ!!」

 

 ベルさんの姿が一瞬で消えて、コカビエルの背後に移動する。

 

 その両手の輝きはもう目がくらむぐらい眩しく、そのままの勢いでコカビエルにせまり―

 

「残念だよ。判断を間違えたな」

 

 ―あっさりと、コカビエルに受け止められた。

 

「・・・な・・・んです―」

 

 渾身の一撃を受け止められたベルさんが我に返るより早く、コカビエルの翼が彼女を地面にたたき落とす。

 

 な、なんでだよ!

 

 倍化の力はあり得ないほど高まっていた。いくらコカビエルが強いからって、今まで一人で相手ができたベルさんの何十倍も強いってわけじゃないはずだ。

 

 それが何で!? なんでだよ!?

 

「・・・さすがに二回も出来るわけがないし、これで終わりか、本当に残念だよ」

 

 コカビエルが心底残念そうにそう呟く。

 

 あいつはこの結果を察していたのか?

 

 いや、そんなことよりどうやって倒せばいいんだよ!?

 

 あのベルさんの一撃でも倒せないって相当だぞ!

 

 いや、そんなこと言ってる場合じゃねえ。

 

 ここでこいつを倒さなかったら、俺たちだけじゃない、この街が終わる!!

 

「雷よ!!」

 

 朱乃さんがコカビエルの隙をついて、今まででも一番大きな雷を放つ。

 

 コカビエルは翼を使ってそれを防ぐ。なんだか愉快そうな顔をして、完璧に余裕だ!

 

「バラキエルの力を継ぐものが、俺の邪魔をするか!」

 

「私を・・・あの者と一緒にするなっ!!」

 

 朱乃さんが心から怒って雷をより強くするが、コカビエルはびくともしない。

 

「まったく愉快な眷属をもっているなぁリアス・グレモリー! お前も兄に劣らずゲテモノ好きのようだ!!」

 

「兄を・・・魔王様を侮辱するな! 何より、私の大切な下僕たちの侮辱は万死に値するわ!!」

 

 部長が激昂するが、コカビエルはむしろそれを面白そうにみてきやがる。

 

「なら滅ぼしてみるがいい!! ここにいるのは貴様ら悪魔の宿敵だぞ! これを好機と見なければ、お前らの程度が知れるというもの!!」

 

 言ってろ! そのにやけた面を全力でぶっ飛ばしてやる!!

 

「手を貸せ! 連続攻撃でいくぞ!!」

 

「イッセーくん! 君は倍化をためるんだ!!」

 

 ゼノヴィアと木場が同時に走り、コカビエルに切りかかる!

 

 振り下ろされるデュランダルと聖魔剣を、コカビエルは光の剣を両手に作って防いだ!!

 

 あの二人と剣技で互角!? いや、下手するとそれ以上だ!!

 

 だが、それで両手がふさがった。

 

 今なら誰かが行けばいける!!

 

「・・・そこ」

 

 いつの間にか小猫ちゃんが奴の後ろに回り込んでいた。

 

 これならいけるか!!

 

「・・・フ、その程度ではな」

 

 コカビエルの翼が縦横無尽に動き回って、小猫ちゃんどころか木場とゼノヴィアまで一気に弾き飛ばした!?

 

 さらに奴は光の槍をつくると、そのまま倒れ伏すベルさんに向けて放つ。

 

 止めを刺す気か! ヤバい!!

 

「甘いわね!」

 

 その光の槍を、部長の魔力が吹き飛ばした!

 

「そんな片手間で作った槍がきくとでも? アーシア、ベルを回復させて!! 彼女の力は今こそ必要だわ!!」

 

「は、はい!!」

 

 アーシアがあわててかけだす中、木場がもう一度コカビエルにせまる!

 

 両手にそれぞれ聖魔剣を持って振り下ろすが、それをコカビエルは指でつまむ!

 

「まだだ!!」

 

 木場はさらに聖魔剣を作り出して口にくわえて勢いよくふるう!

 

 それはコカビエルの頬にほんの少しだけど傷をつけた!

 

 いける! あいつだって頑張ればちゃんとダメージが入るんだ!!

 

 ああ、ベルさんもアーシアが回復している! 俺だって、全身ドラゴン化すれば奴の相手ぐらいはできるはずだ。

 

 そうだ。こんなところで終わるわけがないんだ!!

 

 だが、忌々しそうに吐いたコカビエルの言葉は、そんな俺達を黙らせるには十分だった。

 

「チッ! 仕えるべき主を無くしてまで、お前ら教会も悪魔もよく戦う」

 

 ・・・ん?

 

 今、こいつはなんて言った?

 

 確か先代の魔王様は大戦で死んだんだよな。だから主を無くしたって言うのはわかる。

 

 でも、それがゼノヴィアやベルさんにまで言うことか?

 

「・・・どういうことだ、コカビエル!!」

 

 ゼノヴィアがデュランダルを構えながら問いただす。

 

 それを見て、コカビエルはおかしそうにニヤニヤ笑い始めた。

 

「ああ、そうか、お前ら末端の連中が知るわけがないか」

 

 その様子を見て、ゼノヴィアがさらに詰め寄ろうとする。

 

「答えろ、コカビエル!!」

 

「駄目ですゼノヴィア! 聞いてはいけません!!」

 

 ベルさんが、回復もまだ終えていないのにいきなり叫ぶ。

 

 な、なんだなんだ!? どういうことだよ!?

 

「ク、クハハッハハハ! そうだな、戦争を起こすってのに隠す必要ももうないか!!!」

 

 コカビエルが腹を抱えて大声で笑いながら、俺達をあざ笑うかのように口を開いた。

 

「先の大戦では、四大魔王と一緒に、神も死んだのさ!!」

 

 そうか、神様も死んだのか。

 

 ん? 神様って・・・神様!?

 

「主が・・・亡くなられた・・・だと?」

 

「そ・・・そんな・・・」

 

 ゼノヴィアとアーシアが崩れ落ちる。

 

 おれはよくわからなかったが、神様を信仰している二人にとって、その事実はあまりにも大きかったんだろう。

 

 でもベルさんは、ショックは受けてるようには見えず、視線を気まずそうにそらしているだけだった。

 

 ベルさんはそのことについて知ってたのか?

 

 てかなんでそんなこと隠してたんだよ! 超重要じゃねえか!!

 

「知らされていないのは当然だ。人間とは神がいなければまともにやっていけない弱い種族だ。どこから漏れるかわからない以上、この情報は本当に一部の連中にしか知らされていない。天使どもだって、下級程度には知らされていないだろうよ」

 

 マジか。俺達、そんなすっごい秘密を知っちまったのかよ。

 

「そこの聖魔剣が生まれたのも、それが原因だよ。本来聖と魔は混じり合わない。バルパーが勘づいた通り、神と魔王の死によって根本的なバランスが崩れているからこそできたイレギュラーだ」

 

 コカビエルはそう言って木場を見るが、今度はその視線がベルさんの方を向く。

 

「そして、そのイレギュラーは思わぬ規格外の存在をこの世界に呼び寄せた」

 

 それがベルさんと何の関係があるんだ?

 

 ・・・まて、この世界に、呼び寄せた?

 

「・・・なあ、異世界からの来訪者。それとも、生まれ変わりと言った方がいいかな?」

 

 な・・んだと。

 

 異世界からの生まれ変わりッて、宮白やナツミちゃんと同じ?

 

 っていうか、なんでコカビエルはそんなことを知ってるんだ!?

 

「・・・やはり、神の子を見張る者も把握していましたか」

 

 ベルさんは憎々しそうにコカビエルを睨む。

 

 把握していたってことは、教会でも存在が把握されていたのか?

 

「聖と魔のバランスの変化はこの世界そのものに何らかの渦をつくったとアザゼルは推測していた」

 

 コカビエルは、俺たちが知らない事実を語りだす。

 

 それは、俺にとっても大事なことだった。

 

「それによって一部の魂が引き寄せられて、この世界に生を受けたのさ。とくに特殊能力を持っているやつが引き寄せられるのか、その世界特有の能力を持っているやつがほとんどだがな」

 

 そうだ、宮白やナツミちゃんも特殊な能力を持っていた。

 

 おかしいとは思ったんだ。

 

 なんで二人ともそんな特別な力を持っていたんだろうって。

 

 コカビエルはベルを面白そうに見つめる。

 

 それはなんていうか、動物園で珍しい動物を見るときのそれだった。

 

「さすがのミカエルでも、まさか迎え入れるとは思わなかったぞ。聖書の教えが否定する、輪廻転生を証明する存在だからなぁ」

 

 なんてこった。それじゃあ、この世界で宮白みたいなやつって結構ごろごろいるってことかよ。

 

 そんな中、 ベルさんはアーシアをかばうように立ち上がる。

 

 ダメージが抜けきっていないのにもかかわらず、ショックで動けないアーシアを守ろうとしているようだ。

 

「・・・超能力を持つものが、社会的にも知られている世界。それが私のいた世界でした」

 

 ベルさんは語り始める。

 

 それは、彼女の物語だった。

 

「人種差別も抜けきっていない状態で、そんな異端が差別されないわけがなく、私は死ぬまで異端視されたままでした」

 

 ・・・俺の中で、アーシアとベルさんが重なったような気がした。

 

 もしかして、彼女がゼノヴィアをたしなめたのは、自分とアーシアを重ねたからじゃないのだろうか。

 

「そんな力と記憶を持ったままの私は、当然この世界でも見捨てられる。あの方に何人かと同じように拾われて、実質初めて人のぬくもりを知りましたよ」

 

 アーシアの神器でも体力までは回復できない。

 

 もうふらふらのはずなのに、あの人は決して倒れようとしなかった。

 

「私は私を始めて認めてくださった、あの方の力になる。それが利用であったとしても、それだけの恩義がありますので。神の死ごときで戦意など無くしません!」

 

「安心しろ。奴の性格なら間違いなく下心ゼロでお前を迎え入れたはずだ。その証拠に、危険な仕事に就こうとしたお前を止めたはずだぞ?」

 

 コカビエルは今にも笑い出しそうな顔のまま、両手を広げて宙に浮かぶ。

 

「ちなみにさっきのはお前が異世界の力を使おうとしたからだ。アザゼルが実験したが、倍化や半減といった力は異世界の力とはかみ合わないんだよ。おかげでこいつの正体がわかったがな」

 

 あの攻撃が上手くいかなかったのはそれのせいか! 

 

 っていうか、堕天使の奴らはそんなことまで研究してるのかよ。

 

 いったいどこまで調べてるんだ、あいつら!

 

「だが俺にとってはどうでもいい。そんなことより戦争だ! 俺はいい加減耐えがたいんだよ!! あいつらは二度目の戦争はないと判断し。神器なんてくだらないものの研究にばっかり夢中になった!!」

 

 あいつはそこにいない奴らに鬱憤をぶつけまくる。

 

「あげく、転生者なんて言うくだらない流れものなんか迎え入れる始末だ!! そんなゴミどもその辺に捨てとけばいいのによぉ!! ふざけるな、ふざけるなよ!」

 

 ・・・今、なんて言った?

 

「・・・ふざけんなよクソ堕天使」

 

 頭に血が上った。

 

 ああ、我慢なんてできないさ。

 

「お前の勝手な理屈でこの街を滅ぼして、そのくせ俺のハーレム王の野望を邪魔するだと? 喧嘩売ってんのかこの野郎」

 

「ハーレム? それが貴様の望みなら俺についてくるか? 行く先々で美女を見つくろってやる。好きなだけ抱けばいい」

 

 コカビエルはそんなことを俺に言う。

 

 ああ、いつもだったら思いっきり迷っていたかもな。

 

「欲しいがいらねえ! お前なんかに作らされたハーレムなんか、本気で残念だけど絶対いらねえ!!」

 

「・・・いらないのかいるのかどっちかわからん言い方だな」

 

 うるせえ! ハーレムは俺のロマンなんだよ!

 

 だがなあ、お前は俺に言っちゃいけないことを言いやがった!

 

「お前は言ったな。異世界からの連中はゴミだって」

 

「ああ。少なくとも、現状出力で高位の堕天使を超える奴らは発見されていない。そこの女は例外レベルだが、暇つぶしの相手程度の実力だしな」

 

「よし分かったぶっ殺す」

 

 俺はブーステッド・ギアに力を込める。

 

「お前は俺の大事なもんをゴミと言った! 俺の親友をゴミといった! お前をぶっ飛ばす理由はそれで十分だ!!」

 

 こいつだけは絶対許さねえ!!

 

「たとえ俺の体が全部ドラゴンになったとしても、お前だけは絶対にぶっ飛ばす!! いまさら泣いて謝ったって遅いからな糞野郎!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダダンダンダダン ダダンダンダダン

 

 

 

 

 

 

 

 どこからともなく、某アンドロイド映画のテーマソングが響いた。

 

 ・・・ヤバい。

 

 これはあいつがマジギレしているときに流すテーマソング!!

 

 小学校のガキ大将を一人でボコボコにした時から始まった。中学の番長、高校の暴走族など様々な連中をたった一人で殲滅し、最近だと勝手に動いた俺ではぐれ悪魔祓いを叩きのめしたテーマソング!?

 

 その時、俺の耳には聞こえるはずのない声が聞こえたんだ。

 

 校庭の端から聞こえる、確かな足音が―

 

「・・・イッセー」

 

「は、はい」

 

「・・・自分で言うって、言ったよな?」

 

「そ、そうでございます」

 

「後で、覚えてろよ」

 

 ・・・俺は、死んだ。

 

 ああ、今振り返ったら後悔する。

 

 だけど、振り返らないわけにはいかない。

 

 ゆっくりと、ゆっくりと振り返ると・・・

 

「・・・はあ、改めて、異世界から生まれ変わった魔術使いです。以後よろしく」

 

 ・・・宮白が血まみれで頭下げてるぅうううううううう!!

 

 その隣には桜花さんが、こっちも結構ボロボロで立っていた。

 

 なにが、何があったの!?

 

「・・・おかしいな、手首が落ちてたから最低でも腕一本は吹き飛ばしたはずなんだが」

 

 コカビエルが物騒なことを言ってくる。

 

 腕一本!? あれ、宮白も桜花さんも五体満足だよ!? 木場もベルさんもイリナもゼノヴィアも、特にどこかなくなったりはしてないよ!!

 

「ああ。いいタイミングで代わりができたからちょっとつけてきた」

 

 宮白!? 代わりっていったい何!?

 

「ちょっと兵夜!? 貴方大丈夫なの!?」

 

「大丈夫です部長。あと、だいたいの流れは聴覚強化で遠距離から聞いたから大丈夫です」

 

 部長の問いに答えながら、宮白は平然と魔術の使用を明かしている。

 

 ・・・こいつ、本気でバラしてやがる。

 

 宮白と桜花さんは周りを見渡すと、ベルの方に近づいて少しかがんだ。

 

「・・・酒って飲めるか?」

 

「え? あ・・・私、実質まだ未成年なので」

 

「んじゃジュースだな。・・・これが終わったら異邦人同士話でもしよう。・・・少し休んでろ」

 

「兵夜くんのおごりだってー。高いの頼んでも大丈夫だよー」

 

「お前の分だけ請求するぞ久遠!!」

 

 なんか名前で呼び合ってる! 本当に何があったの!?

 

 宮白は血まみれになったシャツを脱ぎ捨てると、首にある魔術回路を起動させる。

 

 ―おれは、まだあいつが本気で全力の魔術を使うところを見たことがない。

 

 今から見せるのが、それだというのが良くわかった。

 

 コカビエルも、宮白の本気が分かったのか警戒するように空高く飛ぶ。

 

「まあいい。まずは小手調べだ」

 

 指を鳴らすと、ケルベロスが召喚されるは、そこかしこから何人ものはぐれ悪魔祓いが出てくるわであっという間に大軍が集まった!!

 

 まだこんなにいたのか。いったいどこに隠れてたんだ?

 

「こいつらも今まで待ってて退屈してるんだ。どれぐらいできるのか試させてくれよ」

 

「・・・そうしたいところだがちょっと面倒だ。雑魚は減らしてやるよ」

 

 宮白は大軍を前に平然としながら指を鳴らす。

 

 ・・・なんか急に暗くなったぞ? 結界のおかげで少し明るかったのにどうしたんだ。

 

 気になって上を見上げると・・・。

 

「これが俺の新兵器、高速飛行艇レイヴンだ」

 

 なんか巨大な物体ができてる!?

 

 そのまま宮白は左手を下におろし―

 

「必殺質量攻撃」

 

 落下した衝撃ではぐれエクソシスト、全員ふっ飛ばしやがった!!

 

「これー、そんな使い方をする奴じゃないからねー」

 

「道具は使い方次第ってやつさ。去れ(アベアット)

 

 あきれた桜花さんに適当に返事しながら、宮白が何か唱えると、あっという間に巨大な物体は消え去った。

 

 何だったの? 何だったの一体!?

 

 俺は混乱するが、それでもケルベロスは全部残っている。

 

 どうするんだよ宮白!!

 

「ああ、安心しろイッセー」

 

 宮白は、特に警戒せずに俺の方に顔を向けた。

 

「とっと片付けて本番だ。それまで準備してろよ?」

 

 その表情は、悪魔になってから初めて見せるほど明るいものだった。

 

SIDE OUT




ようやくからくりを出せた。

このタイミングが一番ストーリーに設定を絡ませられるタイミングだったんだよなぁ。

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