ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
祐斗SIDE
僕が来た時には、既に戦闘は激しさを増していた。
アレは地獄の番犬ケルベロス! コカビエルはあんなものまで用意してきたのか!
そしてそれに対峙するリアス部長と朱乃さんのオーラは、いつもの彼女たちのものとは比べ物にならない。
なるほど。イッセーくんの
あれは、イッセーくんのもつ倍化の力を他者に譲渡することで、そのものの力を倍増させる者。部長や朱乃さんのようなもとから強大なものに使えば、その威力ははるかに増大する。
コカビエル相手では苦戦するかもしれないが、ケルベロス程度なら一瞬で倒すことができるだろう。
ケルベロスはそれに気付いたのか逃げだそうとするが、そんなことはさせない。
「逃がさないよ!」
魔剣を地面から突き出してケルベロスをその場に足止めする。
そのすきを逃さず朱乃さんの雷が、ケルベロスを跡形もなく吹き飛ばす!!
「木場ぁ! 無事だったのか!」
「木場さん!」
イッセーくんとアーシアさんが僕を呼んでくれる。
・・・いろいろと迷惑をかけたのに、本当にありがたい。
「遅かったじゃないか先輩。・・・お互い何とか無事なようだな」
見れば、ゼノヴィアもエクスカリバーを持ってこの場に来てくれていた。
彼女も無事だったか。宮白くんや、桜花さんや紫藤イリナがいないのは気になるが、今はコカビエルが先決か。
「・・・イリナはソーナ・シトリーの自宅で休ませています。実質、あとは両眷属の二人ですね」
ベル・アームストロングも僕の近くに歩み寄る。
ふとその後ろを見て、僕は絶句した。
ケルベロスの死体が何体も! たった一人であれだけ倒したというのか!?
「すげぇだろ? この人ほとんど一人で片付けたんだよ」
イッセーくんもすごいものを見たようだ。
僕たちとは次元が違う戦闘能力だ。
しかも、見れば彼女の動きからは明らかに尋常じゃないほどの疲労の色が見て取れる。
僕らが撤退するまで単独でコカビエルを引きつけておいて、アーシアさんにけがを癒してもらったとしても疲労までは回復できない。エクスカリバー使い二人を引き連れるだけのことはあるということか。
「消し飛びなさい!!」
リアス部長が倍増させた滅びの力をコカビエルに叩きつける。
すごい! 僕らなら余波だけで致命傷を負いかねないほどの力が込められている!!
だが、コカビエルは特に構えることもなく、片腕を無造作に振るうだけだった。
あれだけの滅びの力が、コカビエルに傷一つつけることなく弾き飛ばされた!
「実質、私たちでは火力不足ということですか」
冷静に、本当に冷静にベル・アームストロングは息を吐く。
「増援の悪魔祓いが来るのにあと40分。ルシファーが来るまでには一時間。実質時間稼ぎしかできなさそうですね」
そうか、部長達はサーゼクス様達に助けを求めたのか。
それはそうだろう。
相手は、聖書にしるされし堕天使の幹部。魔王様達でもそう簡単に倒せるかどうかわからない、正真正銘の強者なのだから。
だからと言って、あれを相手にどうやって時間を稼ぐ?
相手が遊んでいるからどうにかなっているが、本気を出されたらはたして勝てるかどうかわからない。
攻めあぐねていると、校庭を包んでいた聖なるオーラが爆発的に増大した。
「完成だ」
陶酔しているかのようなバルパーの声。
視線を向ければ、そこには一振りの剣があった。
なんだあれは? どう見ても、今までのエクスカリバーをはるかに凌駕するだけの力があふれているぞ。
「五本のエクスカリバーが、今こそ一つに合わさったのだ!」
エクスカリバーの統合! アレがそうか!
まずい。
コカビエル達はエクスカリバー統合の余波でこの町を破壊すると言っていた。このままだと危険だ!
「術式も完成したようだな。あとどれぐらいでこの街はけし飛ぶんだ?」
「せいぜい20分と言ったところだよ。コカビエル、解除させるにはお前を倒すしかない」
コカビエルの言葉に、満足げにバルパーが答える。
しかし20分とは。
増援が来るのに最低でも40分と言っていた。二分の一の時間でこの街が崩壊するのでは、どう考えても間にあわない!
しかもコカビエルを倒さなきゃいけないだなんて! どうやればそんなことができるんだ。
「フリード!」
「はいな~ボース!」
コカビエルがフリードを呼びつける。
「最後の余興だ。そのエクスカリバーを使ってベル以外を片付けろ。俺は懸念材料のベルを相手しよう」
「言ってくれますね! ・・・実質、貴方方にお任せします!」
ベルはフリードを無視すると、地面に降り立ったコカビエルに突貫する。
迎え撃つコカビエルとの戦いをしり目に、フリードは狂暴な笑顔を浮かべてエクスカリバーへと歩み寄る。
「ハッハッハー! 人使いが荒いボスですなぁ。ま、いいや。このスープァーエクスカリバーでクソ悪魔ちゃんとクソビッチをズッパリいっちゃいますか!」
フリードがエクスカリバーをその手に取る。
イッセーくんの譲渡を受けた部長達の攻撃もすごかったが、あれもそれに劣らずのオーラを放っている。
どうやって倒す・・・どうやって!
「・・・フリード・・・バルパー・・・っ!!」
僕たちを実験の果てに失敗したからと言って殺し尽くし、挙句の果てにあのような外道にエクスカリバーを使わせるとは・・・っ!
「・・・あの実験で僕たちを処分し・・・その結果がコレか、バルパー・ガリレイッ!」
「ん? そうか、貴様、私の研究の実験体か!」
奴は僕をみて、心底はらわたが煮えくりかえるような嘲笑を浮かべる。
「・・・私はな、聖剣が好きなのだよ。幼いころから本を読み、それに興奮したものだ」
昔を懐かしんでいるのか、バルパーの目はここではないどこかを見つめていた。
「だが、私には聖剣使いとしての適性がなかった。あの時の絶望はキミたちにはわからないだろう。だからこそ、聖剣を使える者を生み出そうなどと考えたのだ」
バルパーは天を仰ぎ、大きく両手を広げながら前へと進む。
「身寄りのない少年少女を使い、どうすれば聖剣が使えるようになるのか調べ上げた。その結果、実験体には聖剣を使えるほどではないが、聖剣を使うために必要な因子が集まっていることに気付いたのだよ」
・・・因子、だと?
「だからこそ、発想を変換したのだ。因子が足りなくて聖剣が使えないのなら、その分だけ因子を補充することができれば・・・とな」
「読めたぞ。イリナ達が祝福を受けるとき、入れられたのは・・・」
バルパーの言葉にゼノヴィアが得心する。
人工聖剣使いになるときに、入れられるもの・・・?
ま、まさか!
「そうさ。数多くの被験者から抽出した因子を結晶化し、それを適性がある者に移植したのだ! こんな風にな」
バルパーが取りだしたのは、光り輝く結晶だった。
あの中に、あの中に僕たちから奪い取った力が込められているというのか!?
もう耐えられない。僕は思わず叫んでしまうのを止められなかった。
「何故だ! だからと言って、何故殺す必要がある!! それが神に使えるものがすることか!!」
「利用価値のなくなった者をわざわざ生かしておく必要がどこにある? ・・・まあ、ミカエルの奴なら確かに殺したりはしないだろう。よかったなぁ、もう教会で死人は出てないぞ? 私が集めた分はさっさと死んでもらったがね!」
「だけど因子ってダメなやつには毒物でさぁ。おかげで俺以外の被験者は因子に耐えられなくてくたばっちまったがね。そうなると、俺様ちゃんはスペシャルだねー」
フリードが見せびらかすかのようにエクスカリバーを振るう。
こんな奴らのために同志たちが・・・同志たちが!
「あ、こんなのに限ってしぶといとか思ったっしょイッセーくん。ハハハッ 俺様はこんなもんじゃないぜー?」
「心を読むんじゃねえ! この糞野郎!!」
「・・・本当に迷惑です」
イッセーくんと小猫ちゃん相手に、フリードはエクスカリバーで翻弄する。
「もう量産できる以上、これにこだわる必要もないな。これは最初の実験で生成した因子の残りだ。実験体のお前にくれてやろうではないか」
バルパーが放り投げた因子は、そのまま転がって僕の足元へとたどり着く。
僕は思わず膝をついてそれを拾っていた。
これが・・・これが同志たちのなれの果てだというのか・・・。
「皆・・・」
僕は、もう自分自身で何を考えているのかわからなかった。
ただあふれだす想いに従い、その結晶に指を這わせる。
僕より夢を持った子がいた。僕より才能があった子がいた。僕よりも生きたいと思った子がいた。
いっそ僕がこんな姿になってしまえばよかったのに・・・っ!
思わず目を閉じる。
彼らなら、憎しみに我を忘れず、部長を説得してでもエクスカリバー打倒に行動できたはずだ!
イッセーくんたちに部長に内緒で行動させることも無かったはずだ!
僕は・・・騎士・・・失格だ。
『・・・泣かないで』
懐かしい、声が、聞こえた。
この声は、確か実験が辛くて泣いていたときに・・・っ!?
目を開けると、手に持った結晶が輝きを増していた。
『キミは頑張ってるよ』
『僕たちのために、こんなに頑張ってくれるなんて・・・』
声と共に、光が集まって人の形をとる。
これは、この子たちは!
「・・・みん・・・な」
忘れるはずがない。
一緒に頑張った同志たちが、その時の姿のままそこにいた。
これは・・・奇跡なのか?
悪魔が、聖剣が、堕天使が・・・さまざまな因子が集まったことで、彼らの残された遺志を呼び出したというのか・・・?
『キミが生きててくれてよかった』
僕を見て、安心してくれている。
『キミが幸せに生きてて良かった』
僕を見て、肯定してくれている。
『僕たちのことは気にしないで』
今までの僕を、認めてくれている。
『あなたは、幸せになっていいの』
晴らして欲しい無念なんて、なかった。
『ちゃんと友達ができたのね』
そんなもの、僕に望んでいなかった。
『キミだけでも、生きてくれ』
ただ、僕に生きて幸せをつかんでほしいと・・・っ!
涙が止まらない。止められない。
同志たちは・・・ただ、僕の身を案じてくれている。
ずっと不安だった。
皆の命を犠牲にして生き残った僕が、彼らの無念を晴らさずにのうのうと幸せに生きて良かったのか、ずっと不安だった。
復讐を晴らさずに仲間をつくって今を生きていることを、責めているんじゃないかとずっと思っていた。
でも、それは僕の思い違いだった。
同志たちは、僕に復讐を求めていたわけじゃなかったんだ。
気づけば、僕は聖歌を口ずさんでいた。
悪魔がそんなことをすれば、ひどい頭痛に悩まされているはずなのに、むしろぼくの心は晴れやかだった。
ああ、思い出したよ。あの時の頑張っていた日々のことを。
辛かったけど、君たちと一緒に頑張っていたのは楽しかったね。
『僕たちは、一人じゃ駄目だった』
『聖剣を扱う因子が足りなかったけど―』
『皆で力を合わせれば、大丈夫だよ』
ああ、そうだ。
僕たちの頑張りは無駄なんかじゃない。
そして、あんな外道たちに使われるようなものでもない。
『聖剣を受け入れて』
ああ、わかってる。
『大丈夫、怖くないよ』
うん、恐れることはない。
『神がいなくても』
そんなものは関係ない。
『神が見てなくても』
そんなものがなくたって―
『僕たちの心は―』
「・・・一つだ」
―バランス・ブレイク―
力があふれてくるのがわかる。
今までの魔剣とは違った聖なるオーラ。
そう、これは
僕たちは、聖剣を扱う力を手に入れた。
だけど、今から生み出すのは聖剣じゃない。
そう、皆で生み出すこの力は、ただ聖なるものでも、魔なるものでもない。
僕の魔剣の力と、彼らの聖なる力が一つに混ざり合うのがわかる。
そうだ、この剣の名は―
「
いこう、皆。
僕は、剣になる
イッセーSIDE
俺は、泣いていた。
あの光景に泣かない奴は、心が冷たいどうしようもない奴だけに決まってる。
そして、同時に戦慄していた。
木場の持つ剣の力は、今までとは比べ物にならないほど高まっていた。
フリードの持つエクスカリバーと比べても劣らないほどだ。それどころか、もしかしたら上回っているかもしれないんじゃないか!?
『驚いたか、相棒』
俺の籠手に宿るドラゴン、ドライグが俺に声をかける。
『あれが
正直できる気が全然しねえよ。
アレが本当の禁手。俺の腕を犠牲にした仮禁手なんかめじゃねえ。
イケる。
あの剣があれば、俺たちはフリードに勝つことができる。
いや、できるんじゃない。
「木場ァアアアアアッ! フリードの野郎とエクスカリバーをぶっ潰せェエエエエ!!」
答えるように、木場が聖魔剣を握り直す。
「お前の力でエクスカリバーを倒すんだ! 部長の、俺達の騎士の力を見せつけてやれェエエエエ!!」
「そうよ祐斗! あなたはこの私の、リアス・グレモリーの騎士よ! あなたはエクスカリバーなどに負けはしないわ!!」
俺に負けじと、部長も木場に声援を送る。
「祐斗くん、信じてますわよ!」
「・・・祐斗先輩!」
「・・・木場さん!」
朱乃さん、小猫ちゃん、アーシア・・・っ!!
「こんだけ皆の期待を背負ってるんだ! 一気に決めろ、木場ァアアア!」
「・・・ああ、もちろんだとも!」
木場が俺達を通り過ぎ、一気にフリードに切りかかる!
「感動的な展開ですなぁ。それが一瞬で砕けちゃうと思うと俺様超興奮しちゃいますよ!!」
フリードの持つエクスカリバーと、木場の持つ聖魔剣がぶつかり合う。
莫大なオーラがぶつかり合い、俺と小猫ちゃんをふっ飛ばしかねないほどの勢いになる。
その中心に立つ木場とフリード。そのつばぜり合いは・・・互角だ!!
「ッ! 本家本元の聖剣と互角だと!? そんな駄剣がっ!?」
「その剣が真のエクスカリバーなら勝てなかったろうが、たかが寄せ集めのつぎはぎなんかに、僕らの思いは負けはしない・・・っ!」
エクスカリバーと聖魔剣がぶつかり合い、すごい勢いで火花を散らす。
「そんじゃまあ、これならどうかなイケメンくぅうううううん!!」
エクスカリバーが何本を枝分かれして襲いかかる。
そのスピードが一気に早くなる。
蜃気楼を纏って、さらに幻影のせいで数が良くわからなくなる。
今度は何本かが透明化する。
聖なるオーラが強くなり、近くにいるだけで俺の肌が痛くなる。
全てのエクスカリバーの力を組み合わせて、ありとあらゆる方向から聖剣が襲いかかる!!
「・・・ダメだね。どれだけ小細工を講じても、殺気の飛ばし方がわかりやすい」
それらすべてを、木場は難なく弾き飛ばす!!
「おいおいおいおいおいおいおいおいおい!! 大昔から最強伝説作った聖剣がこのざまかよ!? なんで当たらねぇんだよォオオ!?」
フリードの声に焦りが見える。
完全に木場が優勢だ。
そんな焦るフリードに、ゼノヴィアがエクスカリバーも持たずにせまる。
「ペトロ、バシレイオス、デオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
ゼノヴィアの手元がゆがんで見える。
いったい何が起こってるんだ? あ、なんかとってみたいなのが見えてきた。
「この刃に宿りしセイント御名において我は開放する。―デュランダル!!」
一気に引き抜かれたそれは、見るからにヤバそうなすっごい聖剣だった。
っていうかデュランダル!? 部長が言っていたエクスカリバー並の超聖剣じゃねぇか!?
「デュランダル・・・」
「・・・だとぉ!?」
バルパーはもちろん、今まで余裕の表情だったコカビエルすら驚いてやがる。それほどの事態だって言うことか。
「実質、これが私達の切り札です。・・・ゼノヴィアは兼任している聖剣使いなんですよ」
コカビエルを驚かせたことがよほど嬉しいのか、組み合っているベルさんの声のトーンが少し高い。
特に驚いているのはバルパーの野郎だ。顔面真っ青だな。
「バカな!? 私の研究ではデュランダルを扱える聖剣使いは生み出せないはずだ!?」
よっぽど信じられないのか腰を抜かすバルパーに、ベルさんとゼノヴィアは冷ややかな目を向けた。
「バカですか貴方は? 実質、あなたの研究でしか聖剣使いができないわけではありません」
「私はイリナと違って天然ものさ。貴様の影響などひとかけらも受けてはいない」
すっげえ! 正真正銘の聖剣使いってことかよ!
あ、バルパーのやつ絶句してる。ざまあみやがれ!
「デュランダルは使い手の私の言うことも聞いてくれないような暴君でね、普段は異空間に隔離して、代わりにエクスカリバーを使わないと行けないほど、聖なるオーラをまきちらすんだ」
ゼノヴィアはそのままフリードにせまると、デュランダルを大きく振りかぶる。
「礼を言おうフリード・セルゼン。貴様のおかげでエクスカリバーとデュランダルの頂上決戦ができる。私は今、歓喜に震えているぞ!!」
「アリかよアリかよそんなのアリかァアアアアア!? こんな超展開お呼びじゃねえんだよ、ふざけんなクソビッチがぁあああああああああああッ!!」
フリードの奴がエクスカリバーを操るが、せまりくる刃をデュランダルは軽々と粉砕する!
「・・・所詮は折れた聖剣か。デュランダルの相手にもならないな」
圧倒的なその光景に呆然とするフリード。
そんな隙を見逃すほど、木場は甘くない。
「・・・見ていてくれたかい?」
とっさに振り払ったエクスカリバーを弾き飛ばし、木場は一瞬でフリードを切り捨てる。
「僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ」