ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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今回、個人的な宗教観があらわれますがご容赦ください。


模擬戦、始ります!

 

 終わらなかった。

 

 いや、会談自体はベルが終始申し訳なさそうにしていたおかげで部長も折れてくれた。

 

 が、俺達には面倒な爆弾がいることをすっかり忘れていた。

 

 元シスターのアーシアちゃんだ。

 

 そういえば忘れてたけど、この子聖女→魔女→あげくに悪魔という面倒な変化をしていたんだった。

 

 真面目な話、アーシアちゃんはこの流れに対して自発的な行動は一切していない。被害者として訴えられれば間違いなくこっちが負けると断言できるほどだ。

 

 とはいえ、そんなことまったくしらないのがこの聖剣三人衆なわけで―

 

「そうか、なら私に切られると良い。罪深くともきみが正しく信徒ならば、我らが神は救いの手を差し伸べてくれるだろう」

 

「アーシアに触るな!」

 

 このありさまだ。

 

 しかし意外と考えない女だなこのゼノヴィアとかいう奴。

 

 ただでさえ無理な注文を付けていることで部長の心証は最悪。そのうえ眷属を愛することで有名なグレモリーの次期当主の下僕にたいしてこの行動、全面戦争を切りかねない。

 

 一見クールなタイプに見えたが、実際は脳筋のようだ。

 

 さてどうする?

 

 正直向こうが喧嘩を大安売りしているようなもんだ。

 

 たぶんだが、このまま切り捨てたとしても先にケンカを売ったのは教会側だと突っぱねることは十分可能。ついでに堕天使を始末してエクスカリバーを返却すれば貸しを作ることだってできるはず。

 

 とはいえ、堕天使の幹部を倒すために来た連中だ。少なく見積もってもライザー以上の強敵と考えた方がいいはず。

 

 こっちも少なからず犠牲が出かねないし、さてどうしたものか。

 

 などと考えている間にさらに二人の間でヒートアップ。

 

「ふざけるな! 聖女だなんて持ちあげておきながら誰も友達になろうとしなかったくせに、ちょっと自分が思ってたのと違うからって魔女扱いだと!? アーシアの優しさがわからないなんて皆バカ野郎だ!!」

 

「聖女に必要なのはわけ隔てない慈悲と慈愛だ。他者からの愛情と友情を求めるようなものに聖女の資格はない。聖女なら、神からの愛さえあれば生きていけたはずだからね」

 

 そこについてはまあ良いだろう。

 

 他者からの見返りを求めない者だからこそ、そういう聖なる存在と言える立派なものになるのだからそれはいい。

 

 だが、そんな人物だからこそ愛情や友愛をもらうべきだと思うのは、俺の勘違いかねぇ?

 

「求めてた聖女と違うからって、魔女ってことにして捨てるのかよ!? そんなのねぇだろ!! おかしいだろっ!!」

 

「神は愛してくれていた。それが無かったというのなら、その信仰は足りなかったか偽りだったということだろうね」

 

 平行線だな。

 

「ストップだイッセー」

 

 これ以上言っても無駄だろうから、俺はイッセーを止めることにした。

 

「止めんな宮白! こいつらには言ってやらないと・・・」

 

「根本からずれている相手になにを言っても無駄だ。辛いものが嫌いな奴と好きな奴が、辛いものについて語ったってわかりあえるわけがないだろう?」

 

「そこについては同感ですね」

 

 イッセーを諭す俺に同意したのは、意外にもベルだった。

 

「兵藤一誠・・・でしたか? あなたはそもそもの前提が間違っています」

 

「なんだって?」

 

 かなり頭に血が上ってるイッセーは睨みつけるが、それにまったく動じない。

 

「信仰に生きる者というのは、偉大なる聖書にしるされし神のために生き、神に恥じないよう正しい行いをし、その結果死んだ後その魂に救済が訪れる。・・・意味がわかりますか?」

 

 諭すようなその言葉は、イッセーだけでなく俺たち全員に言い聞かせるようだった。

 

「つまりは、今生というものは神に奉げるものであり、その結果としてたまたま天へと召されるのが信徒というもの。実質、その最中に報われようなどという考え方が見当違いなのです」

 

「生きている最中の欲を叶えるために生きる俺ら悪魔とは大違いってわけだ」

 

 茶化すような言い方をしてしまったが、むしろそれには満足げな様子を浮かべ、ベルは続ける。

 

「実質、正しく生きているのならば、その結果における死は何の問題もない。正しく生きている自信がある者にとって、むしろ長生きとは間違える可能性を高めるようなものです。・・・命を落とすことを恐れるようなのは未熟の証ですね」

 

「な・・・っ」

 

 平然と、ためらうことなく言い放つベルを信じられない者を見るかのように絶句するイッセー。

 

 その言い方には、部長達も気押されていた。

 

 そんなベルにたいしてイリナはなんかヤバい感じに目を輝かせているし、ゼノヴィアも自分のことのように得意げだ。

 

「ベルの言うとおりだ。我らにとって死とは所詮いずれ来る通過点に過ぎない。それを常軌を逸しているなど、失礼にも程が―」

 

「とはいえ」

 

 が、ゼノヴィアの言葉をベルは遮った。

 

「聖女にふさわしくない者を聖女として祭り上げたのは教会側の落ち度。実質、持ちあげて落とすような余計な暴行を加えたことについては、ミカエルさまに直属する者として謝罪します」

 

 そういうと、ベルはアーシアに頭を下げた。

 

「な・・・っ!? ベル=アームストロン―」

 

「追加でいえば我々は神に使えるのだから正しいのではなく、神に使えるからこそ正しくあろうとしなければならない者。相手が悪魔だからと言ってぶしつけな行動をするのは明らかに失態です。ゼノヴィア、謝れとは言いませんが今後は気をつけなさい」

 

 鋭い視線で縫い付けられ、ゼノヴィアも言葉を失った。

 

「あくまで外注に過ぎないあなたに、そこまで言われるとわ、少し屈辱だね」

 

「あくまで外注に過ぎない私でもわかることです。この国の言葉で言うならば、灯台もと暗し・・・が近いでしょうか」

 

「ベルさん。それなんか違う気がする」

 

 唯一日本人なイリナが弱弱しくツッコミを入れるが、なんか空気が妙な感じになってきたな。

 

「しかし困りましたね。・・・ここまで険悪な状態になっては、実質、いろいろと問題が起こりそうです」

 

 指を頬に当てながら、ベルは困り顔になる。

 

 まあ、この険悪ムードでそのまま「まかせた」「おK」とはならんだろうなぁ。

 

 そして、俺はさらにうっかりしていたことにいまさらながら気付いた。

 

「ちょうどいい。なら任せれるだけの実力があるかどうか見極めさせてくれ」

 

 どす黒い殺気を放ちながら、今まで黙っていた木場が前に出る。

 

 ・・・しまった。木場はエクスカリバーのことかなり憎悪しているとのこと。それが目の前にあって冷静な判断ができるわけがない。

 

 その殺気を感じ取ったのか、ゼノヴィアが警戒心を強めて向かい合う。

 

「キミはだれだ?」

 

「キミたちの踏み台になった、ただの失敗作さ」

 

 魔剣の群れが足元から一斉に付きあがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イッセーSIDE

 

 どうしてこうなった?

 

 球技大会の練習をしていた旧校舎のうらで、俺と木場と宮白の三人が、教会の三人組と向かい合っていた。

 

 木場の言い分はこうだ。

 

 少なくとも、一対一で自分達を下すことができる実力者じゃなければ、コカビエルを倒すなどできるわけがない。

 

 それに応じたゼノヴィアを止められないと判断したのか、ベル・・・さんって言えばいいのか? 彼女が双方ともに上に報告しないことを条件に同時進行で三試合することになった。

 

 で、

 

「しかたねぇ。幼馴染同士でやり合うこともないし、俺がイリナっていうのと相手しよう」

 

「では、私は兵藤一誠の相手をさせていただきます。ゼノヴィアは、喧嘩を買ったのですからその人を相手してください」

 

 と、宮白とベルさんが応じあった。

 

 木場VSゼノヴィア、俺VSベルさん、宮白VSイリナの構図が出来上がったわけだ。

 

「結界ははりました。これで、外からこの戦いを把握することはできませんわ」

 

 朱乃さんが結界をはったのを確認して、俺たちは互いの相手を見る。

 

 俺の相手はベルさんだけど、この人エクスカリバー使いじゃないんだよな?

 

「ベルさんだっけ? あの、武器なしで大丈夫なんですか? エクスカリバーどころか、光の剣とか銃とかも持ってないみたいですけど」

 

「構いません。私はどちらにしてもそういったのは使いませんし―」

 

 そういながらベルさんは両手を構え―その手が光に包まれた?

 

「神器、天使の鎧(エンジェル・アームズ)。私はこれをつかった徒手空拳が本領ですので」

 

 天使の鎧!?

 

 あれ? でもそれって手甲の形をしてて、右手でしか使えないんじゃなかったっけ!?

 

「俺の同型にしちゃぁ、なんか変なことになってないか?」

 

「あら、知らないの? 神器って、たまに本来とは違う形状の亜種が出るのよ」

 

 宮白の疑問にイリナが答える。

 

 マジか! じゃあ他にも神器もいろいろとおくが深いんだな!

 

 そんなイリナを笑顔で見ながら、ベルさんはむかいあい、しかし光を消し去った。

 

「とはいえ、模擬戦で殺す気になるわけにいきませんし、まずは実力をしっかりと見させていただきます」

 

 あ、この人良い人かも!

 

 木場は木場で、既に魔剣を何本を出しているが、その表情はなんか学校の女の子には見せられないような笑顔だ。

 

「ふふふ。ドラゴンの近くにいると力を持つものに出会えるとはきくけど、会いたくてたまらなかったものにこんなに早く出会えるとは思わなかったよ」

 

「聖剣計画の失敗者で、処分を免れた者がいると聞いたがキミのことだったのか。思い通りの魔剣を生み出す魔剣創造(ソード・バース)といい、因果な出会いだ」

 

 ゼノヴィアは警戒しながらエクスカリバーを構えるが、それを見て木場はさらに笑顔を深めながら魔剣を構える。

 

 一方、宮白と向かい合うイリナはその目に涙を浮かべていた。

 

「再開した幼馴染は悪魔になっていた。正直ショックだったわ」

 

「・・・まあ、俺もイッセーが悪魔になったと知った時はちょっとショックだったな」

 

 同情するように宮白は目を閉じるが、神器を呼び出すと即座に光の槍を生み出す。

 

「まあ、お互いいろいろと喧嘩を売ったようなもんだ。お互いなかったことにするって言うなら―」

 

「・・・ああ! なんて過酷な運命!」

 

 あれ? 宮白を無視してイリナはポーズ取り出したぞ?

 

「聖剣の適正を認められ、イギリスにて主のお役にたてる代行者になれたと思ったのに! いいえ、これも主がおあたえになった試練なのだわ! これを潜り抜け、使命を果たしてこそ、私は真の信仰にいたれるはずなのよ!!」

 

 あれー? なんだかすっごく難易度の高い言葉を言っちゃってるよー?

 

 完全に自分に酔ってる!?

 

 ヤバい! これは深くかかわっちゃいけないタイプの危ない人だ!

 

「俺が言うことでもないが、お前やっぱイッセーの友達らしいよ!!」

 

 宮白!? それどういうこと!?

 

「・・・すいませんがそろそろ良いでしょうか? ゼノヴィアはもう動いているようなのですが」

 

 見ると、なんか向こうでは激しい剣戟が始まっていた。

 

「うぉおおおっ!!」

 

「なるほど、あの計画に選ばれただけあってなかなかできる・・・っ!」

 

 おいおい、こっちを無視して始めちゃってますか!

 

 仕方ない、俺もそろそろ全力で!

 

「なんかついてけないけど、ブーステッド・ギア!」

 

 左腕に現れる赤龍帝の籠手。

 

 それを見て、三人が三人とも警戒心をあらわにする。

 

「・・・神滅具(ロンギヌス)

 

魔剣創造(ソード・バース)聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)ときて、さらには赤龍帝の籠手か」

 

「本来教会か堕天使側にくみするであろう天使の鎧も含めて、実質、リアス=グレモリーのもとにこれほどのイレギュラーが来るとは思いませんでした」

 

 思った以上に警戒されてるな。

 

「イッセーくんに気を取られている場合かい!」

 

 俺の方を向いていたゼノヴィアに向かって、木場が魔剣を両手に持ってありとあらゆる方向から切りかかる。

 

 いつも以上に一撃が重い気がする。木場の奴、本当に模擬戦だってわかってるんだろうな!?

 

「この力は仲間たちの無念の塊。この思いを受けてみろ!!」

 

「言うだけのことはある実力のようだ。だが・・・っ!!」

 

 ゼノヴィアは明らかに重そうなエクスカリバーを軽々と振るうと、木場の魔剣をあっさりと砕く!?

 

「我が剣は破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)。砕けぬものなどない」

 

「七分の一でもこれほどか・・・っ!」

 

 あんな破壊力を目の前にして、しかし木場はいっそう闘志を燃やす。

 

 木場・・・。

 

「あまりよそ見してもらっても困りますね!」

 

 たしなめるような声に振り向けば、そこには思いっきり拳を振り上げたベルさんの姿!

 

 うわっ! 小猫ちゃんよりやばそう!?

 

 あわててかわすが、僅かに当たった服が思いっきり破れる。

 

 クソッ! 反則だろこの身体能力!? ライザー相手でもいい勝負するんじゃないか!?

 

 こうなったら俺も本気だ!

 

 俺の超必殺技、洋服崩壊(ドレスブレイク)をお見舞いしてやる!

 

 はっきり言ってベルさんの体形は部長に匹敵・・・バストの大きさだけなら上回ってる!

 

 これはやるべきだ! やらないと損だ! やらなきゃだめだ!!

 

「・・・回避能力はなかなかですが、なんだか変なこと考えてませんか? 戦闘中に無駄な思考は隙を作りますよ」

 

 俺の純粋な想いを感じ取ったのか、ベルさんが少し警戒する。

 

 ふっふっふ。だがあえて言うまい。そして言わなきゃ理解できまい。

 

「・・・気を付けてください。イッセー先輩は洋服崩壊という触れた女性の衣服を全部破壊する技を持ってます」

 

 小猫ちゃん!? 味方の機密情報をなぜ敵にバラす!?

 

「・・・最低ですよ、女性の敵」

 

 ・・・反論できない!?

 

「最低だわイッセーくん! 悪魔に堕ちただけに飽き足らず、その心まで邪悪に染まって! ああ、主よ! この変態を決してお許しにならないでください!」

 

 うるせえよイリナ! お前は宮白の相手をしてろ!

 

「いやちょっと待て。それだとまるで、お前と一緒の時のイッセーは変態に目覚めてなかったみたいな言い方だぞ!?」

 

 宮白もなにについて驚愕してんの!?

 

「・・・え? 悪魔に堕ちてから変態になったんじゃないの?」

 

「いや、小学生のころからこうだったぞ。少なくても俺と出会ったときはおっぱい星人だった」

 

「あら意外。昔のイッセーくんは別におっぱいに興味とかなさそうだったのに」

 

「マジ? え、アイツお前と一緒にいた時どんな感じだったんだ?」

 

 あれ? なんか戦闘そっちのけで俺談義始めちゃったよあの二人?

 

「・・・さすがは欲望に忠実な悪魔。らしいといえばらしいのかな」

 

 ゼノヴィアもものすっごい軽蔑の視線だし!

 

「なんか・・・ゴメン」

 

 木場まで謝ってるし!

 

 なんだよまるで俺だけ悪者みたいな!

 

 だが、ベルさんはそんな光景を平然と眺めると一つうなづいた。

 

「実質そんなに恐ろしい技でもありませんね。・・・すいませんがちょっと待っててください」

 

 そういうと服のボタンに手をかけ・・・

 

「・・・はい?」

 

 ―正直、頭の中がちょっと真っ白になった。

 

 そんなに時間はかからなかったと思うが、そんな短時間で目の前の光景は一変していた。

 

 具体的には―

 

「・・・お待たせしました。それでは続きを始めましょうか」

 

 ベルさんが、全裸になってた。

 

「えええええええええええええええええええ!? いやいやいやいや! ちょっとまってベルさん!?」

 

「・・・ああ、ここに置いたままでは服が汚れますね。気を使っていただいてありがとうございます」

 

 違うよ! そこじゃないよ!

 

 なんで自分から全裸になってるのこの人!? ここ、俺も含めて男が三人もいるんだよ!?

 

「裸なんですけど!? 裸にしようとした俺が言うのもなんですけど、恥ずかしくないんですか!?」

 

「・・・別に戦闘で服が破れるのは自然なことです。実質、全裸になる程度を気にする人間が戦場に立つなと言いたいですね」

 

 畜生! この人はまともだと信じてたのに!

 

 別の意味で大丈夫なのかよこの人たちは!!

 




あさっての方向にぶっ飛ぶ教会メンバー。

我ながら濃いキャラを作り出したものです。

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