ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
最近いつも思うことだが、今年は限りなく厄年なのではないかとマジで思う。
と、いうか、常識的に考えて一度死んだのだから不幸以外の何物でもない。
しかもそれから一月経つか経たないかぐらいのタイミングで圧倒的不利な状況下での試合をする羽目になった。
すでにこれだけで不幸以外の何物でもないという地獄の大打撃コンボでしかない。
と、くれば警戒するべきなのはこれ以上の不幸に対する備えである。
特に気にするべきはレイナーレの一件の後始末。
あの時の堕天使連中はあくまで独自行動をとっていただけだし、そのほとんどは部長達によって始末されている。本部の方は一切関知していないはずだし、報復の可能性は少ないと言ってもいい。
が、例外が一つ。
はぐれ悪魔祓いフリード。
驚くべきことに、俺が死んでから部長が俺を発見するまでにあの男は意識を取り戻して逃げ出したらしい。
これに関しては俺のミスだ。
下準備の際のはぐれ連中との実力差から、もっと警戒しておいてもよかったはずだ。
関節の一つでもはずしておけばこんなことにはならなかった。
しかも面倒なことに、奴との因縁はもう一つある。
知っているとは思うが、イッセーが奴に襲われているという情報が入る前に、携帯に知り合いと連絡が取れないという話が入ってきた。
その取れなくなった男の家というのが、イッセーがフリードに襲われたあの家であるということが、後日判明したのだ。
つまりは、間接的に舎弟に多大な迷惑をかけられたということでもある。
なおさらほっとくわけにはいかない。
二度と会うこともないとは思うが、警戒しておくにこしたことはないし、今度会ったら絶対に片付ける必要がある。
ゆえに、まがいなりにも対策はしっかりと整えておいた。
舎弟連中にフリードの特徴を伝え、発見次第俺の携帯にメールを送るように伝達。
さらに探偵やヤクザの知り合いに話を聞き、潜伏地点にできそうな廃屋などを調べ上げ定期的に使い魔を使って偵察は欠かさない。
万一に備えて下水道もチェックし、逃走を許さないように投げて使える発信機も調達した。
そして、その連絡が今まさに来た。
フリードらしき男の姿を確認。さらに同じような神父の格好をした危なそうな連中の姿も発見したとのことだ。
これは非常に不味い。
どうやら、本格的に報復を考えている恐れがある。
あの特訓で段違いに実力が上がったはずの俺たちだが、向こうも何らかの切り札を持っていると考えておいた方がいいはずだ。
これは、必ず報告しなければならない。
ならないんだが・・・。
面倒なことに今は仕事中。
しかも、朝日がさしているので部長達は帰っているはず。
すなわち報告は間違いなく昼間の学校のある時にしなくてはならないわけで・・・。
とりあえず俺がすることは一つだ。
「・・・つーわけで、白髪の男にあったらすぐに背を向けて逃げて俺に連絡しろ。・・・あの野郎悪魔召喚した人間にも手を出すからな」
「殺人大好きなはぐれ悪魔祓いねぇ。アンタらも大変だな?」
最近お得意様になった、この女に警告をしておくことである。
ちなみに、常連には既にメールを送っている。
部長達にも送れ? こういう重要なのは直接いうにきまってるだろうが。
ちなみに今日の仕事も不良の撃破。
相手が集団な上にホームグラウンドが広く。ヤバいと判断した連中が入り組んだ地形で散り散りになりながら不意打ちをしかけるゲリラ戦を展開したため時間がかかった。
しかもあのふんどし軍団のパワーをもらった奴が何人か出ており、以外に苦戦したため朝になっている。
仕方ないので24時間営業のファミレスで朝食をとりながらである。
「それで? そのはぐれって奴はそんなに危ない奴なのかよ?」
「危険以外の何物でもない。腕は立つは性格はイカれてるわ猟奇殺人すら平気でやらかすわと始末に負えん」
できれば二度と会いたくなかったんだが、世の中そんなに甘くない。
「ホントに気をつけろよ? お前みたいないい奴なお得意様が早死にするのは夢見が悪い」
「わかってるよ。まあ安心しな。これでも危機回避能力は高い方だ」
どっちかというと危機に巻き込まれる能力の方が高いような気がするんだが。
「しっかし、アンタも変わった奴だな?」
突然、女がそんなことを言ってきた。
「よく言われるが、そんなに知り合ってもいないお前に言われたくないぞ?」
変なことをいう奴だな。
これで既に五回ぐらい契約してるが、こいつはこいつで変わってるぞ。
まず報酬がそれなりにでかい。
金銭で支払う傾向が強いのだが、どうやって稼いでいるのか知らないが最低でも0が四つはつくほど渡してくる。多すぎると言ってもチップといってきかず、結果として俺の評価はちょっと色がついている。
もう一つはこの口調。
年は俺と同じぐらいかちょっと上かといったぐらいなのだが、この女らしさがかけらもない男勝りな口調なせいで、むしろ年下の男の子と会話しているかのような気にもなる。
さらにその精神性。
今までの契約内容はほとんどが被害にあっている奴を見つけたうえでの仲介人としての行動なくせに、代価を払うのは自分なのだ。
ついでに言えば、かなり積極的にこちらに協力している。お人よしにしてもかなりのもんだ。
「うるせぇな。あーいう力にかまけて暴れてる小物が嫌いなだけだっつーの」
そっぽを向きながらそういう女の姿は、ちょっと可愛いと思った。
結論から言うと、フリードの報告は終了したが、それ以上にヤバいことが発生した。
と、いうより、むしろそれが関わっている自体が発生しているようだ。
何でも俺が仕事を始めるより早く、会長経由で部長に妙な連絡が入ったらしい。
教会の人間が、部長と取引がしたいというのだ。
・・・教会の人間とは初めて関わることになると思うが、一体どういうことだ?
まさか怨敵の悪魔側と交渉を行おうとは。それほどの緊急事態が起こっていると考えるべきなのだろうか。
しかも、連絡を一切受けていなかったが、この街で何人もの神父が殺されているとのこと。
・・・嫌な予感は間違いなく当たっているな。
さらに面倒なことがもう一つ発生している。
「・・・つまり、お前は女の子のことをずっと男と勘違いして覚えていたと。・・・よくその場で浄化されなかったな」
「こ、子供ころだったんだから仕方ないだろ!」
イッセーの幼馴染とやらが悪魔祓いになったらしい。
しかも、どうやら聖剣所有者の疑いまである。
何でもこの街に久々に来たついでに幼馴染にあいさつに来たそうだが、まさかそいつも、友達が悪魔になってるとは思わなかっただろう。
ややこしいことにならなければいいのだがと割と本気で思う。
そして、その光景が広がった。
部長と対面するかのようにソファーに座っている女たちは合計で三名。
一人は、イッセーの幼馴染紫藤イリナ。
もう一人は、明らかにヤバそうな包みを持ったゼノヴィアとかいう女。
二人とも服装はマントをはおっていて、そのままこの街に入っているとか考えるとちょっと落ち着こうか君たちと言いたくなる。
そして、二人の間にいるのが異色だった。
服装はシャツにジーンズという、どこにでもいそうな服装。表情は柔和で思わず見惚れそうになるが、一目でわかる。
・・・こいつヤバいぐらいに強い。下手をするとライザーぐらいするんじゃないか?
「はじめまして。私は、フリーランスの悪魔祓いです。名はベル=アームストロングと申します」
「聞いたことがあるわ。・・・天使長ミカエルに直接見出されたといわれる、上級クラスの悪魔や堕天使を専門とする異端狩りだったわね」
部長がちょっと警戒している。
・・・本当に、面倒な展開になってきたな。
「・・・輝く腕のベルと言えば業界では有名です」
そりゃ大物だ。
そんな大物が出張ってくるとは、ことはフリードとかいった問題をはるかにしのぐようだ。
「それで? あなたほどの人物がこんな地方都市に何の用かしら?」
「面倒なことになるので単刀直入に言います」
そう言って少し言葉を切ると、ベルは表情を改めた。
「ゼノヴィアとイリナ―つまり私の両隣りにいる二人が持っているのを除いた、教会が確保しているエクスカリバー全てが、堕天使幹部コカビエルの手の者により奪われました」
よりにもよって聖剣、それもエクスカリバーか。
見れば、木場の表情がちょっとファンの子には見せれないものになっている。
・・・ってちょっと待て。
エクスカリバーが『全部』?
「・・・エクスカリバーって聖剣の固有名詞だよな? なんでいくつもあるみたいに?」
イッセーも同じ疑問を持っていたらしく、反応した。
「あー、ちょっと俺とイッセー、業界に入りたてでよくわからないんですけど、その辺説明してもらっていいですかね?」
ここはぶしつけにきくとしよう。
あまりイッセーをバカ扱いされても困るしな。
幸い、ベルのほうはあまり不満を見せなかったようだ。
「・・・先の大戦についてはさすがに知ってますね? その大戦はそちらにとっても甚大な被害を生みましたが、こちらも相応の被害を被りました。その一つが、砕け散ったエクスカリバーなのです」
そんなベルの説明に合わせるように、ゼノヴィアとか言った女が手に持っていた包みを解く。
現れたのはやけにごつそうな大剣。
見ただけでわかるヤバさだ。本能的に恐怖心を感じてしまう。
これが・・・聖剣ッ
「今はこのような姿さ」
「ちなみに。私のは
そういうと、イリナとか言った女が二の腕にあったひもをほどく。
ひもはあっという間に姿を変えて日本刀に変化しやがった。こちらもゾクゾク来るほどの寒気を与えてくれてるよ。
とはいえちょっと機密情報をばらしすぎじゃないか? ゼノヴィアとかいうのもいい顔をしてないし。
「イリナ。・・・悪魔にわざわざ能力を教えなくていいだろう?」
「あら、いくら悪魔でも信頼関係は気付かないといけないでしょう? それに、能力を知られたからと言って、この場の悪魔の皆さんに後れをとることはないわ」
・・・微妙に喧嘩を言っているかのような発言だが、これは天然なのだろうか?
あ、ベルがイリナの後頭部にペシンとはたいた。
「・・・イリナ。微妙に挑発状態になっているのでやめてください。これから無理を通すというのに、余計な波風を立たせないでください」
「・・・それで、その奪われたエクスカリバーがこんな極東の地方都市とどういう関係があるのかしら?」
空気が微妙になるわ木場はどんどん殺気を放つわ、部長も大変だ。
ベルもそれに気づいたのか、ちょっと恥ずかしそうにしながら話しを戻す。
「簡単にいえば、下手人である
コカビエルって・・・堕天使の幹部だったな。
そんな大物クラスがこの街に? どういうことだよ。
わざわざ悪魔側に逃げ込まなくても、そんな大物なら自分の領地ぐらい持ってるだろうに・・・。
「私の縄張りはもめごとが豊富ね」
部長もため息まじりだ。
だが、それ以上にベルのはなんかすごく言いにくそうだった。
「それで・・・なんというか申し訳ないのですが・・・」
いったい何を注文する気だ?
三つ巴の敵がやらかした大事件に対して、もう片割れに対する要求って言うと・・・。
「ああ! そういうことか、そりゃ言いにくいわ!!」
「え? どういうことだよ宮白」
イッセーにはさすがに難しいか。
「ようはこのベルって奴はともかく、教会側全体としては堕天使と同じぐらい悪魔側も信用してないってことだよ」
冷静に考えればそりゃそうだ。
もし悪魔側の重要アイテムが堕天使に盗まれて、それがなぜか教会側に逃げ込んだとすれば・・・
「アンタらは俺たちが
「は、はい・・・。そういうわけで牽制球を放っておくよう上に言われてしまいまして・・・」
そりゃ言いにくいわ。
領地のもめごとに対して手を出すななどと、喧嘩を売っているに等しい。
「それはずいぶんな言い方ね・・・」
「落ち着いてください部長。部長の高潔さをしらん連中なら、当然警戒する状況です」
ここでこいつらにケンカを売っておくのは面倒だ。
もし混戦状態になったら被害が甚大になるのは避けられない。いや、最強戦力はおそらくコカビエルだろうし、間違いなく堕天使の一人勝ちになる。
「ほ、本当に申し訳ありません! で、できれば『フ、そういうことならあえて泳がしてやろう。せいぜい我が手のひらの上で勝手に潰し合っているがいい』みたいな感じでワイン片手に嘲笑ってくれるとお互い平和に終わりそうなのですが・・・」
「アンタも無自覚に挑発してるからな!?」
オイオイオイオイ。
平和に終わるのかこの会談!?