ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
………依存対象が変更されるといろいろと大きく変化するのが兵夜という男。
さて、果たして今回はどんな風になるかなぁ?
それは、奇跡的な事だった。
宮白兵夜は、この際奇跡的にうっかりをせずに行動を行った。
彼は、この際確実に魔術的干渉を行っていたのだ。
教室に置かれていた瓶を割ってしまうというミスを、修復魔術によって取り戻す。
その際の対処はきちんと行っていた。そう、行っていた。
事前に陣を張って小規模な結界を張る事で、万が一教室に入られても魔術の行使を勘付かれないようにする。
本当に彼はきちんと行っており、それゆえに兵藤一誠に見られるという事はなかった。
……ゆえに、運命はここで捻じ曲がる。
どたどたどたと足音が聞こえる。
しかし兵夜は一切気にしない。
何故なら魔術的な結界を張っている以上気づかれる事はない。
そう、万が一教室に突入されたとしても、入ってくる子供達は決して自分が壊れた瓶を治しているなど気づくとは出来ないのだ。
その自信を持って、引き戸が開けられた時すら兵夜は意にも介していなかった。
そして、その瞬間その言葉を聞いた。
「……ようやく、見つけた」
その言葉になんとなく視線を向け、兵夜は心から驚愕した。
その目は、焦点は自分に確実に合わさっている。
………あり得ない。何故なら今の自分を認識する事は、常人にはできるはずがない。
しかし、彼女は明確に自分を認識している。
この日、宮白兵夜の運命は微妙にねじ曲がった。
そこから数年後、日本の駒王町にてある噂が流れる。
それは、とある任侠集団に凄腕の若手用心棒が現れたという噂だ。
いや、それは若いという話ではない。二十代どころか十代。それも中学生ぐらいの年齢だという驚愕の話だ。
その任侠集団の跡目争いで、その集団がただの広域指定暴力団になりかけていた時、その勢力を立った一晩で塗り替えた驚愕の凄腕用心棒。
片や、あらゆる警戒網を潜り抜けて相手の弱みを見つけ出し、堅気に手を出す外道の長相手に警察を総動員させる事となった、赤毛の少年。
片や、長めの木刀を振るって、正真正銘の刃物や銃火器を相手に無双を振るったという黒髪の少女。
二人はその任侠集団で英雄視され、事実上の有力幹部として扱われるらしい。
そして、それは事実だとソーナ・シトリーは確信した。
……問題は、その二人が何らかの異能の持ち主である可能性が大きいという事だ。
ソーナと、幼馴染であるリアスが駒王町を担当する上級悪魔となった事で、駒王町に他の異能勢力の手がないか一度真剣に検査してみようと、まだ数少ない眷属の力を借りて一斉検査をしたら、この事実に行き当たった。
既に裏はとってある。
その二人組の内の一人である少年は、よりにもよって駒王町の警察署長や幹部と話しをつけ、任侠手段と警察署の間に不可侵条約を結ぶ事にまで成功していた。
警察とヤクザの癒着といえばそれだけで大問題だが、しかしこれに関しては深入りしない。
件の任侠集団は昔かたぎのヤクザであり、基本的には法律ギリギリをチキンレースで綱渡りするような所業は行っているが、堅気の人間に無意味に危害を加えたりはしない。
むしろ、お役所というフットワークがどうしても重くなる組織をカバーして裏組織を潰しており、この街の治安を守る重要な組織と言ってもいい。その際彼らの持っていた資産を貰っているが、これはお目こぼししてもいいだろう。
そもそも自分達悪魔にとって人間はあくまで契約相手だ。あまり政治に深入りするわけにもいかないだろう。
しかし、それでも今回は接触を図る他ない。
なにせ、おそらくその二人は
その少年や少女に倒された悪党の大半は、何らかの記憶操作が行われている事が発覚した。
既に裏とりはある程度済み、その二人が異能を知るにはそれ以外にないという状況である事は判明した。
少年の方は親族が魔法使い組織に関わっていたり悪魔と契約をしていたりするが、しかし当人には一切教えていないと確認もとっている。
……強力な神器はある程度監視の目をつける必要がある。それも相手が異能関係者でないなら尚更だ。
なにせ、不用意に異能の存在が世界に公表されれば、余計な混乱を人間世界に生みかねないのだから。
更にそれを大義名分に、教会や神の子を見張る者が悪魔を制圧しにきたら目も当てられない。
それどころか、他の神話勢力が動く可能性も十分にある。そんな事になれば異形の世界で大戦が勃発するかもしれないのだ。
「まったく、聖書の神も迷惑な真似をしてくれますね」
そうため息をつきながら、ソーナはどうしたものかと考えを巡らせる。
不幸中の幸いか、その二人はこの駒王学園に入学しており、すぐに身元が見つけられたのは幸運だった。
宮白兵夜と桜花久遠。
顔写真だけ見ると百合関係に見えるが、立派な男女の関係である。
片や女装させたら少女としか思えない顔立ちの美少年。片や大人の雰囲気すら見せる女性と言っても過言ではない美少女。
しかし、同時に場合によっては人殺しも辞さないような危険な雰囲気を示していた。
「これは、強引な手段もやむ無しかもしれませんね」
あの任侠集団とは本格的に事を構えたくないのだが、しかし異能が関わっているとなれば仕方がない。
素直に申し出ても警戒されると思い、偽の情報を流して陽動する事を選択。
同時に、不測の事態を考慮してリアスからも戦力を提供してもらう事を決断。
そして、見通しが甘かった事を心の底から後悔する事となる。
なんだ、この事態は!!
僕、リアス・グレモリーの眷属悪魔である木場祐斗は、この事態をどう説明してもらえばいいのか本気でわからない。
異形の存在を何も知らずに神器に覚醒してしまったらしい二人の学生が、寄りにもよって準犯罪組織の幹部となってしまっている。そう聞かされたのは数日前の話だ。
ゆえに放課後に生徒会室に呼び出して、取り押さえる事も想定して話を聞き出す事にしたので、万が一の為の戦力として待機してもらいたい。
そうソーナ会長に言われて来てみれば、これはもうそんなどころではない。
「……数日前から嗅ぎまわっていたのは会長ですかー」
「人の家族にまで手を伸ばしてるみたいなので、強引に話聞かせてもらいますよ」
その言葉と共に、戦闘が勃発した。
……そして、残っているのは僕を含めて僅か五名。
「何よコレ、
自分達以外を殺さずに無力化した手腕に驚愕するリアス部長。
「……いえ、これは魔力の反応を感知しています。……しかし冥界政府は彼等が転生しているなどという話はしなかったはずです」
比較的冷静さを保ちながらも、しかし冷や汗を流しているソーナ会長。
「会長、危険ですのでお下がりください」
「全くだわリアス。これは接触の方法を誤ったとした言いようがないわよ」
ボロボロになりながらもしかし会長を逃がそうとする真羅副会長と、友人としての顔でリアス部長を庇う朱乃さん。
そして、僕の五人が今残っている戦力だった。
そして、戦闘が勃発してからまだ十分と経ってない。
十人近い戦力で囲んでいたというのに、この短時間で半減するだなんて!!
「……やはり魔術でも魔法でもないな。どうやら俺の推測は当たっていたようだ」
「本当だねー。これ、流石にまずくないー?」
何故かそんな大暴れをしてのけている二人は、頭痛を堪えるかのように額に手を当てている。
え? なに? どういうこと?
「……あらあら、隙を見せてはいけませんわよ?」
それを逃さず雷を放つ朱乃さんだが、しかしその雷は相手に当たらない。
「―防げ」
魔力が篭ったその言葉と共に、水流が生まれてその雷撃を防ぎきる。
一見すると矛盾に満ちたその現象に、しかし宮白兵夜は平然としている。
「……極限まで純度を高くした水は最高レベルの不導体となる。あんたとは相性が良くていいね、このライトニングドS」
「あらあら。そんな事を言われると、本当に感電させてあげたくなりますわ」
Sの側面を見せて興奮する朱乃さんだが、しかし警戒心も強くなっていた。
残っているのはこの場の中でも有数の実力者だが、しかし目の前の2人はそれをしのぎかねない圧倒的な実力を秘めていた。
双方共に上級悪魔クラスはあるかもしれない。それも、桜花さんは本格的な実戦を経験しているとみていい。
断じてヤクザの抗争なんかじゃない。そういう現代的なものでは決してない。
神器による不可思議な現象や、魔力攻撃。ましてや一見して人間と変わらない姿を持つ悪魔が道具もなしに空を飛ぶという事態に、彼女は大して驚愕の表情を浮かべていなかった。
空中から攻撃をしてきたリアス部長に、宮白くんが僅かに驚きを見せたのにも関わらずだ。
彼女は、こちら側の存在としか思えない。
だが、間違いなく彼女は裏との繋がりがなかった。
先祖代々異能と関わりのない存在が、間違いなく異能としか思えない手段を使って、しかもそれを高水準で使いこなしている。
なんだ、何なんだ一体!
「……下がりなさい、祐斗」
その時、後ろから声が聞こえた。
この声は、間違いなく頼りになる声だ。
「―師匠!!」
「総司!? なんでここに!?」
僕とリアス部長が大きな声を上げて振り返る。
そして、その瞬間真後ろに気配を感じた。
そして振り返るより早く師匠は前に出て木刀と刀で打ち合った。
そのあまりの神速の攻防に、僕は呆気にとられる。
師匠の本気に反応できなかったのは仕方がない。だけど、それを木刀で打ち合った桜花さんの方があり得ない。
なんだこの人は! 真剣で切りかかった師匠相手に木刀でしのぐだなんて!!
「……闘気に近いですね。しかしそれを武器に付与してここまで使いこなすとは―」
「―ダーリンー。流石に、この人はちょっとやばそうなんだけどー」
切り込みが入った木刀を引きつった表情で見つめながら、桜花さんがそう宮白君にいう。
ダーリンって……。
「……分かったハニー。ここはいったん退いた方が良さそうだ」
そして同じく凄く甘い呼び名と共に、宮白君はポケットから何かを取り出した。
それは、手榴弾のピンのようなものが付いた、グロテスクな物体だった。
そして、それは一瞬で破裂すると霧を生み出す。
明らかに危険な予感がしたので、風の魔剣でかき消すが、その瞬間には既に二人は数十メートルは離れていた。
「悪いがいったん逃げさせてもらう!! それと、ハニーの両親に手を出した報復はきちんとさせてもらうぞ!!」
「そういう事だからねー!!」
「いえ、逃がしませんよ」
そして、その程度で逃げられるほど僕の師匠は甘くなかった。
一瞬で距離を詰めると、そのまま二人を取り押さえにかかる。
桜花さんは一瞬で更に距離を取るけれど、宮白君は対応しきれずに取り押さえられた。
「さて、こちらの対応に問題が多少はありましたし、穏便な話し合いをしたいのですが?」
「だ、だだだダーリンー!?」
師匠、確かに僕らの対応にも問題点がないとは言いませんが、今のそれはもはや人質作戦では?
その後、超弩級の事実を聞かされて、僕達が絶叫するまで約十分掛かった。
師匠が唖然とする顔を見たのは、たぶん初めてだと思う。
「……んなことがあったんだよ」
「マジか、リアス部長達と最初は喧嘩した仲だったとは思わなかった」
イッセー、はっきり言っておくがあれは喧嘩なんて生易しいものじゃないぞ? 俺は殺しの経験がないのでちょっと躊躇してたが、ハニーは殺す事も視野に入れて戦闘してたからな?
駒王学園に入学してから、前世か何かの縁なのか目の前の
コイツが堕天使に美人局喰らって殺されてから約四か月。もう既に神器の力なしでもその堕天使を返り討ちにできるんじゃないかってぐらい強くなったのは良いんだが―
「お前、もうちょっとまともな物食えよ。……買い出しとか許可貰えなかったのか?」
「近くに人里がねえんだから仕方がねえだろ!! っていうか宮白、お前料理そこそこできるんだな」
まあ、ハニーに家事を任せるのは現代の共働き事情としていかがなものかと思いましてな? そこそこ練習してるんだよ。
「で? なんでその後桜花さんと宮白は別々の眷属悪魔になったんだよ?」
「俺達が言ったんだよ。あの時点で俺は久遠と
あと、万が一どっちかが失脚してもフォローが効くというもの凄く黒い理由もあるが、これはハニーにすら説明してないので秘密だ。
だって一万年もあったら人生で失敗するかもしれない選択肢も多そうだろ? 保険は必要だよ保険は。
まあ、そのハニーとレーティングゲームで戦う事になる事も予想してたが、まさか例外的にこんな早く参戦する事になるとはなぁ。
「そんで? お前の方は禁手に至れたのか?」
「それが全然。……この調子だと特訓終わる頃になっても至れないかもしれなくてさぁ」
『逃げ出さないだけ充分見所はあるのだがな。まあ、禁手というのは本来一か月の特訓程度で至れるようなものではない』
龍王タンニーンが落ち込むイッセーにフォローを入れるが、しかしまあ仕方がないだろう。
俺も、それなりに頑張って到達したわけだしなぁ。
「まあ、十年近く努力を積み続けて、その上で切っ掛けがあって覚醒した俺から言わせれば、「その程度で慣れるわけねえだろうが馬ぁ鹿」と言いたくなるわけだしな」
「ひでえなおい!!」
『まあ、事実それぐらいしても到達できないものが多いのだがな』
実際難しい事なんだぞ、禁手ってのは。
「っていうか切っ掛けってなんだよ? それがあれば俺も至れるんじゃないか?」
その視線が突き刺さるが、俺はすぐに視線を逸らす。
………確かに、コイツなら至れる。そんな予感はする。
だが、いざ実行に移そうとすれば大きな問題が頻発する事だろう。
さて、どうしたものか。
「……………おい、何か隠してないか?」
いかん、勘付かれた。
『なんだ? まさかと思うが後ろめたい事をして覚醒したのではなかろうな?』
いかん、更に変な心配された。
………これは、言う他ない!!
「………………童貞卒業」
「今畜生がぁあああああああ!!!」
当然大爆発だ。
A バカップルになる?
さらに久遠は久遠で兵夜に引っ張られて幼少期から努力を積むので、生前より戦闘能力が向上するというミラクル。手を抜かれていたとはいえ、最強の騎士相手に木刀で攻撃をしのいだなど驚愕のニュースになるでしょう。
兵夜は兵夜で禁手に覚醒。もっとも、天界がイレギュラーではないのでおそらくはノーマルな禁手になるはずですが。