ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
本来なら、こういうことを本人に黙って聞くのはマナー違反だろう。
だが、あのふんどし集団の影がちらつく現状、問題は早めに対処したい。
と、いうことで本日の夕食はファミレスでとる。あいては・・・
「あれ? ボク一緒に来てていいのかな?」
ナツミと、
「・・・ゴチになります」
小猫ちゃんと、
「うふふ。素直にごちそうになるといたしますわ」
朱乃さんだ。
「・・・つーわけで木場と聖剣についてちょっと聞きたいんですけど、いいですか?」
俺はエビフライを食いちぎりながら本題に入る。
木場の様子は明らかに聖剣を見てからおかしくなった。
そして木場は俺やイッセーのように、一度くたばったことが悪魔に転生する要因らしい。
以上、二つのことから推測して―
「木場は聖剣関係の何かで死亡したと考えてるんですけど、ここまでで何か間違っていることはありますか?」
「あっています。兵夜くんは探偵に向いているようですね」
・・・いつもどおりに見えるが、本当にいつも通りならここでうふふとか挟むはずだ。
どうやら、予想以上にシリアスな話になりそうだ。
「兵夜くんはもう予想できているようですが、悪魔にとって聖剣は天敵ともいえる武装です」
「・・・目にしたくもないです」
小猫ちゃんも不機嫌そうな表情になる。
食事の手を止めてるって相当だぞ。
「私達悪魔にとって不幸中の幸いなのは、聖剣を扱うには適性が必要とされていること。扱える者は非常に少ないとされています」
さすがは聖なる剣なだけあるな。所有者を選ぶということか。
そんな俺の思考を断ち切るかのように、ナツミは片手をあげて疑問を投げかけた。
「木場さんって人、魔剣を作る神器を持ってるんだよね? そしたらさ、聖剣を作る神器もあると思うんだけど」
なるほど、確かにそれは考えてなかったな。
「確かにありますが、祐斗くんの魔剣創造もそうなのですが、ちゃんと作られた者に比べると、特に強度の類で大きく劣るようです」
なるほどね。
一見チートだが、実際はそんなことはないわけか。
まあ、あんな即興で作るわけだし、突貫工事のように不安が残るし様なのは仕方がない。
「・・・話を戻しますが、扱える者が少ないという欠点に対し、教会の一勢力が人工的に聖剣を扱える者を生み出そうという実験を行ったのです」
・・・それか。
しかし聖剣使いの量産か。
考えられるとしたらクローンの製造だが、クローンって宗教的観点から問題視されてるし、これは違うか?
「・・・つまり、木場はその実験の被験者か何かで、それが失敗して死亡した・・・とか?」
「え? それって供養とかしないでそのへんに捨てなきゃリアスさんも見つけられないよね!? さすがにひどくない!?」
俺の世界の教会も、結構えぐいことをやってたりしてるって言うからな・・・。どこの世界でも宗教だからこその非道もあるってことか。
などと考えていたが、朱乃さんは静かに首を振った。
「いいえ。そういうわけではないのですが、実際はそれ以上にひどいのかもしれません」
・・・どんな展開だ?
「・・・私達にとっては幸いですが、その段階での実験は完全に失敗したそうです。問題は、その後の教会の行動でした」
・・・ああ、なるほど読めた。
「・・・証拠隠滅も兼ねて処分ってわけですか」
「・・・はい」
まったく、
「十字軍遠征とかでも結構えぐいことしたらしいし、宗教ってのは正義を定義しているからこその外道行為が目立つってわけか」
下手に正義を定義しているから、自分達の行動は正義だと勘違いしているっていうことか。
「正義を定義しているからこそ、自分達が正義となるよう行動していかなきゃならないだろうに、考え違いがひどいなホント」
だがおかげで大体予想はついた。
木場は何とか逃亡しようとしたが、その際致命傷を負って結局死亡。そこを部長に拾われた結果悪魔としてよみがえって救われたというわけか。
「木場以外にも当然被験者はいただろうし、そいつらのことも考えると憎悪してもおかしくないな」
「・・・あの頃の祐斗先輩は怖かったです」
小猫ちゃんが嘘をつくわけないし、あの優男となる前に相当物語があったっぽいな。
「そこまで機嫌が悪くなるってことは、イッセーの家で見た写真の剣って本物なのかな?」
「可能性はありますわ。実際、リアスの前任の悪魔は滅されておりますし、むしろ納得できるというものです」
ナツミの疑問に、朱乃先輩は丁寧に答えてくれる。
だが不味いな。変に火がついてしまった以上、このまま行ってもくすぶったままになっちまう恐れがある。
どうしたもんか、割と本気で心配になってきたぞ・・・。
どうしたものか・・・。
傘もさしていないから、雨が体中に当たって体温を下げる。
だがそれはどうでもいいし丁度いい。この頭に登り続ける血をさますにはこれでも足りないぐらいだ。
目の前に立つのは因縁の男。
たしかフリードといった男だ。
イッセーくんを殺しかけ、さらに宮白くんと激闘を繰り広げたらしい男。
レーティングゲームで見せた宮白くんの高い戦闘能力から考えても、一対一では僕でも苦戦するだろう。
だからと言って、とても憎い神父である彼をただ逃がすだなんてわけにはいかない。
彼は前回の一件で僕らを敵視しているはずだろうから、当然のごとくこのままにしていれば問題を起こすだろう。
そして何より、奴が持っている武器が重要だ。
仮にも実験で何度も聖剣に関わった身だ。そのオーラを間違えるはずがないし、何より強力すぎるその力、そうでなくてもわかるだろう。
聖剣、エクスカリバー。
「はっはっはぁ。このエークスカーリバーちゃんの波動にビビっておりますかな? おりますよね? おるのだろう?」
ふざけた口調は健在だが、幸いそれが気にならないくらい僕の感情は荒ぶっている。
まさか、あれだけ苦しい思いをしても扱うことができなかった聖剣を、あんな男が扱えるとは・・・。
ただでさえ憎いというのに、こんな皮肉には耐えられそうにない。
だがしかし、この男の技量は本物だ。
さっきも数回打ち合ったけど、想像以上に隙がない。
どうやって攻撃する・・・。
「・・・実際、一足遅かったようですね」
・・・人が来たのか!?
マズい。フリードは悪魔と契約をしたとはいえ、ただの人間を猟奇的に殺す男。
既に神父を一人殺している上に、戦闘でテンションが高くなっている。
ここでエクスカリバーを叩きおりたいところだが、罪もない人々を巻き込むわけには―
「ああ、私のことは気にしなくて結構ですよ。・・・一応、教会の所属ということになりますので」
隣に並び立つその姿に、一瞬とはいえ見惚れてしまった。
緩やかなウェーブをえがく金の髪は雨にぬれてなお美しく、その瞳は強い意志を秘めている。
服装は法衣を纏っている者の、下はどこにでもありそうな一般的な服装だ。
だが、その動きは一軒自然体に見えて一切の隙がない。
フリードも、その姿に警戒心を浮かべたのか、一歩下がると身構える。
「ヤッベ。作戦の目的が目的だからビッグサプライズは覚悟してましたが、まっさかアンタが出張るとは~まさにスペシャルな展開だなオイ」
この男がここまで警戒するとは、いったい何者なんだ?
「教会の外部協力者としてはトップクラス、下手したらエックスカッリバー使いよりも強力だと言われるアンタが来ちゃうたー、俺様もいい感じに大物扱いされてるってことですかにゃぁ」
「当然でしょう? 貴方が実力者なのは知っていますし、今上にいる存在が存在ですからね。被害を最小限に抑えることを考えれば、実際、私が選ばれるのは不思議でもなんでもありません」
殺気を叩きつけられながらも、その女性は穏やかな表情を崩さない。
だが、静かな怒りがにじみ出て、思わず僕は殺気を沈めてしまっていた。
そんな女性は僕の方を見ると、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「少々政治的な問題が絡むので、申し訳ありませんが下がっていてください」
そういうのと、女性の体から光が漏れるのは同時だった。
「ミスターフリード。・・・すいませんが、ここで終わってもらいます」
「そりゃ困っちゃうなぁ? 俺もステキにイカれたボスに選ばれちゃってここにいるんですよぉ? つーわけで」
フリードの後ろから、さらに三人の男が現れる。
その手に握っているのも間違いなく聖剣・・・いや、エクスカリバー!
「まさか、合流前に全ての所在が確認できるとは行幸でしたね」
その波動を前に、一切の動揺を見せない姿があった。
静かに構えをとるその女性の体が、うっすらと光って見えるのは幻覚なのだろうか?
「では、そろそろまいりましょう」