ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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所詮自分は凡人だ。

一生こういう生き方しかできない。

……だから、ずっと一緒に支え合って生きていこう。


黄昏に集え我が郷愁

 

 

 

 

 

「……すごいなぁ、どっちの兄さんも」

 

 その激戦を見ながら、須澄は力なく笑う。

 

「これは、近づけない・・・っ!」

 

「単純に攻撃力が大きいですね、せめてトマリさんの力があれば・・・っ」

 

 圧倒的な攻撃力の高さに、雪菜とアインハルトが手を出しかねている中、須澄はしかし力が抜けていた。

 

 エイエヌは、あの時点でも手を抜いていた。

 

 それが単純な驕りか、それとも肉親に対する情かは分からない。だが、少なくとも本気は全く出していなかったのだけはよく分かる。

 

 神器は想いの力で駆動する。それは即ち、精神力が重要なファクターだということだ。

 

 にも関わらず、結局まともに戦えない。

 

 この事実に、須澄は心が折れていた。

 

「……ははは、流石兄さん。やればできるって言われてただけあるなぁ」

 

 乾いた笑いをこぼしながら、須澄は情けなくて目を閉じた。

 

 もう、この戦いは自分がどうこうできる領域じゃない。

 

 なら、もう全て彼に任してしまえばいいと思いすらして―

 

「……いいんですか?」

 

 その言葉に、閉じた目を開ける。

 

 そこには、ヴィヴィオがまっすぐ見つめていた。

 

「ヴィヴィオちゃん……」

 

「須澄さん。良かったんですか?」

 

 いいんですかじゃなくて、良かったんですか。

 

 その言葉の意味が分からなかったが、すぐにヴィヴィオはその言葉を続ける。

 

「本当に、アップさんを殺して、良かったんですか?」

 

「……良かったとか、悪かったとかじゃないよ」

 

 須澄は心から断言できる。

 

「もう、僕はアップを否定したくなかった。だから、アップをアップのまま終わらせたかった」

 

 加虐に昂る性質は、間違いなくアップの本質だ。

 

 十年近く一緒にいて、しかし少しも分からなかった。分かろうとしなかった。

 

 もしそれに気が付いていれば、アップはあそこまで堕ちたりなどしなかったのだ。

 

 だから、今度は絶対受け入れると心から誓った。

 

 彼女が悪のままでいたいというのならば、せめて悪として相対し続けようと思い―

 

「アップさんは、自分でいうほど悪い人じゃなかったです」

 

 ヴィヴィオは、はっきりそう告げる。

 

「だって、子供を巻き込むことを嫌ったり、人が多くなると戦闘をやめたりしてましたもん」

 

 わずかにほほ笑みながら、ヴィヴィオはそう告げて、須澄は押し黙った。

 

 確かに、アップにはそういうところがいくつもあった。

 

 だが、彼女は確かに悪に堕ちたのだ。それは間違ってないはずで―

 

「……須澄さん。後悔、してませんか?」

 

 ―何よりも、痛い言葉が突き付けられた。

 

 目を閉じて、静かに心を見直して、そして告げる。

 

「……達成感は、本当にあるんだ」

 

 それは事実だ。間違いない。

 

 だけど―

 

「―やっぱり、したくなかったって思ってもいるんだよ……っ」

 

 それも、また事実だった。

 

 アップをアップのまま終わらせたことは誇らしい。

 

 同時に、アップが死んでしまったことがどこまでも悲しい。

 

 同時に、トマリのことも思い出す。

 

 こうなる可能性は心のどこかで感じていた。聖杯戦争とはそういうものだということも理解していた。だから赤龍帝のことも許している。

 

 同時に、それでもトマリが死んだことが悲しくて、赤龍帝に恨みがないわけでもない。

 

 なんだこれは、中途半端だ。

 

 どこまでも揺らぎ続けてどうしようもない。

 

「駄目だ。僕は、弱すぎる……っ」

 

 目から涙があふれ出る。

 

 弱い、弱い、あまりに弱い。

 

 まっすぐ道を進むことすらできないぶれた人間。こう生きてそう死ぬことができない緩い信念。

 

 その事実に、須澄はぽろぽろと涙をこぼす。

 

「いいじゃ、ありませんの」

 

 そんな須澄に、声をかける者がいた。

 

 目を開ければ、そこには雪侶が微笑んでいた。

 

「確かにまっすぐ己の道を持っている人はかっこいいですけど、悩みながらでも前を進もうとしている人もかっこいいですわよ?」

 

「でも、それじゃあエイエヌには勝てない」

 

 ああ、それが本音だ。

 

 できることなら、自分の手で倒してしまいたいと心から願う。

 

 だが、こんなブレまくりの自分で勝てる自信がない。

 

 なぜなら、まっすぐ進んでいる兵夜ですらいまだに互角が関の山で―

 

「兄上は、弱いですわよ?」

 

 雪侶は、そう断言した。

 

「え?」

 

「それはもう弱いですわよ。イッセーにぃにかっこつけたくて頑張ってますけど、それがなければあの始末ですの。エイエヌも、オーフィスという支えがあるからあそこまで頑張れたわけで、それがなければ三流止まりですのね」

 

 うんうんと告げる雪侶に、須澄は改めて兵夜とエイエヌの戦いを見る。

 

「散々イッセーの心えぐりやがって! お前マジで一遍死ねや!!」

 

「オーフィス殺した野郎に遠慮する気はねえからな! ついでにお前も殺してやろうか!!」

 

 激戦を繰り広げる二人は、しかし心に支えを持っている。

 

 親友との絆。

 

 亡き少女との約束。

 

 彼が立っていられるのは偏にそれのおかげであり、だからこそ立ち上がれるのだ。

 

「……心の柱を外にしか持たない弱い人。ですが、だからこそそれがある限り立ち上がる。そんな弱くて強い人が、宮白兵夜という人ですの」

 

 そう語り掛けながら、雪侶はまっすぐ須澄を見る。

 

「貴方もそうでしょう? そういう支えがあったから、ここまで頑張ってこれたのではないですの?」

 

 その言葉に、須澄は自分の心を見直してみる。

 

 ああ、そうだ。

 

 アップのことが大事だから、トマリが一緒に居てくれたから。

 

 だから、自分はここまで頑張れた。

 

 だけど、二人はもういない。

 

 そういうものだし、そのつもりだった。

 

 だけど、だけど、だけど―

 

「やっぱり、会いたいなぁ」

 

 それが、近平須澄の本音だった。

 

 永い間回り道をして、そしてようやく見つけた一つの答え。

 

 それに気がつき、ようやく見える。

 

 ようやく、至った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく、終わった。

 

 楽しい楽しくないでいえば、間違いなく楽しかった。

 

 思う存分弱者をなぶるのは楽しい以外の何物でもない。だから、自分は満足だ。

 

 そう思っているのは事実で、だから去ろうとしているのに、何故か足が止まってしまう。

 

 何故だろう? 地獄に落ちるのが怖いのだろうか?

 

 ああ、きっとそうだ。そうに違いない。

 

 自分は思うがままに悪だった。なら、堕ちるのは地獄以外の何物でもない。

 

―本当に?

 

 どこからか、そんな声が届く。

 

 間違いなく本当だ。

 

 だって、自分はあの時まで自分の本質をまるで使ってこなかった。

 

 そんな生活が、自分の本質を解き放ってからの生活よりいいだなんて、あるわけがない?

 

―本当にっ? 須澄くんと敵対してたのに、本当に楽しかったっ?

 

 その言葉に、彼女は歩こうとしていた足を止める。

 

 彼女は―アップはその時になって初めて矛盾に気が付いた。

 

 楽しかった。少なくともそう言える。

 

 弱者を大上段からいたぶるのはすごく楽しい。生きてて良かったと心から断言できる。

 

 だが、本当に心の底から熱中できていただろうか?

 

 脳裏に、須澄とトマリのことが過ったことが、果たしてなかっただろうか。

 

 考えて、考えて、考え抜いて、そして思い知る。

 

―ああ、自分は半端ものだ。

 

 普通に綺麗に生きていた時、その時自分は無自覚に自覚していた悪性が足を引っ張っていた。

 

 そして悪性になって素直に生きていれば、無自覚だった時の思い出が邪魔をする。

 

 そうだ、その所為で自分は子供を殺せなかった。

 

 逃げ出す理由ができれば、それを盾に逃げ出していた。

 

 そこに思い当たって、アップは天を仰ぐように上を見る。

 

「………中途半端だなぁ、私」

 

 ああ、足が止まる理由が分かってしまった。

 

 アップ・ジムニーは、近平須澄やトマリ・カプチーノと一緒に居たいのだ。

 

 だが、そんなことが許されるわけがない。

 

 散々悪性に忠実に生きてきたのだ、今更そんなことができるものか。

 

 第一自分は既に死んでいる。だからそんなことができるわけがない。

 

 だから、今更そんなことを考えずに無理にでも前に進もうとして―

 

「アップ」

 

 その声に、弾かれるように振り向いた。

 

「………」

 

 ものすごく自己嫌悪と羞恥の感情が浮かんだ表情で、須澄がそこにいた。

 

 その手はまるで自分を掴みたいかのように前に出て、しかしすぐに下げられる。

 

 その様子を見て、アップは全てを理解する。

 

 ああ、須澄も自分と同じなんだと。

 

 覚悟を持って殺したくせに、結局後悔して、なかったことにしたがっている。

 

 無自覚に抱いていたその感情が、今この状況の元凶なんだろう。

 

「………っ」

 

 駄目だ。それはダメだ。

 

 それをやったら、須澄までもが道を踏み外す。

 

 自分が道を踏み外したのは自分の自業自得だが、須澄まで道を踏み外させるわけにはいかない。

 

 そんな感情のまま、アップはふり返って走り出す。

 

 頼むから、頼むから漏れないで私の本音(こころ)

 

 今漏れたら、たぶん今度こそ抑えきれないから!

 

 そう思いながら、アップは冥府の底へと駆け出そうとし―

 

「本音を言うね?」

 

 しかし、その手を掴まれた。

 

 振り向いた先にいるのは寂しげな表情でほほ笑むトマリ。

 

 彼女は、もう片方の腕で須澄の手も掴んでいた。

 

「うん。死んだんだから、大好きな子が生きてるんだから、潔く消えたいって思う気持ちはあるんだよ?」

 

 だが、それでも―

 

「ずっと一緒に居たいって、思っちゃうもんね?」

 

 そう言って、二人の手をゆっくりと繋ぎ合わせる。

 

 思わず振り払いそうになって気が付いた。

 

 トマリの手も、やはり震えている。

 

 ああ、なんだ、そういうことか。

 

 結局、私達三人は等しく中途半端だったんだ。

 

 その事実に愕然としながらも、しかし暖かいものが芽生えてくるのはなぜだろう?

 

 視線を須澄に向けれな、大好きなあの子は泣き笑いの顔で、とても辛そうに言葉を放つ。

 

「アップ、トマリ。………一緒に、居たいよ」

 

 それが、近平須澄の心からの本音。

 

 終わらせたいのも本音なら、しかし一緒に居たいのも確実に本音。

 

 その中途半端さに、しかしアップは哂わない。

 

 自分もそうだ。このまま悪をやりきった誇りとともに逝きたいのに、思い出すのは悪に堕ちるまでの思い出ばかり。

 

 そしてトマリもそうなんだろう。死んだことに後悔はなくても、それで須澄を悲しませていることに後悔があり続ける。

 

 なんてくだらない半端もの。笑えるぐらいに半端過ぎて、これが格好つけるだなんて無理なような気がしてきた。

 

 そう思うともう限界だ。

 

「……ぅ…ぅぁ……ぁああああああっ!?」

 

 両目から涙が大量にこぼれる。

 

 それを抑えきれることができず、思わず隠すように二人に抱き着いた。

 

「ぁあああああああああああああぁん!!!」

 

「……ふぐっ…ひぐっ……えぐっ……っ!」

 

 須澄もまた嗚咽を漏らす中、トマリはそんな二人をポンポンと叩く。

 

「うんうん。私達はみんな半端ものだよね。全然かっこよくない」

 

 まったくだ。心に決めたことを成し遂げることすらできない。こんな調子で一体何ができるというのか。

 

 だけど、それでも……

 

「負けっぱなしは、趣味じゃないよね?」

 

 ああ、そんなことを言ってくれるな。

 

 負けられっぱなしのまま終わるだなんて、それこそが出来やしない。

 

 第一、大事な須澄がここまで傷つけられて、黙っていられる方がおかしいだろう?

 

「最低だけど、最低だけど、最低だけどそれでも言うよ」

 

 すごく不安な表情を浮かべながら、須澄はそれでも何かに縋りつくように弱弱しい表情で、心からの本音を漏らした。

 

「ずっと、二人と一緒に……居たかった!」

 

 それは弱い少年の心からの叫び。

 

 まったくもって我儘な内奥だ。

 

 こんな美人を二人も見つけておいて、どちらか一つで我慢できず、両方欲しいなどと言ってくるのだから。

 

 だけど、それはこっちも同じことだった。

 

「あったりまえでしょ? 今更誰か一人欠けたって立ち行かなくなるんじゃないの?」

 

「そうだよっ? 私はずっと、最後はそんな奇跡で終わってくれるって思ってたもんっ」

 

 トマリと共にそう断言すると、より一層しっかりと三人は抱き合った。

 

 ああ、弱い。

 

 こう生きて、そう死ぬこともできないブレブレの意志。

 

 だけど、一緒に居たいというこの気持ちだけは嘘じゃない。

 

 だから、まだ頑張れる。

 

「……行って、来るよ」

 

 須澄が名残惜しそうに離れて行くので、アップはむっとなって一回引き寄せた。

 

「うわぁ!?」

 

「っもー! そういうところがダメダメなんだよ、須澄君わっ」

 

 トマリにメっとされ、どう言うことかと慌てる須澄の肩に、アップの手が回った。

 

「こういう時はどういうのか、ちゃんと知ってるでしょ、アンタは」

 

 そういわれて、須澄は自分の間違いを悟る。

 

 ずっと一緒に居たい、だなんて言っておきながら、自分は最初の言葉を間違えた。

 

 そう、自分一人が行くのでは決してなくて―

 

「―手伝って、くれると嬉しいな?」

 

 顔を真っ赤にして、そう小さく頼みを入れる須澄に、二人は満面の笑顔で頷いた。

 

「「……はい。喜んで」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、爆発的なまでの光が放出される。

 

「槍よ、今は亡き神の遺志宿す冥府の槍よ」

 

 須澄は槍を手に取り立ち上がり、涙をこれでもかとこぼしながら声上げる。

 

 見据える対象はただ一人。

 

 実兄にして怨敵、エイエヌを見据えて、須澄は告げる。

 

「その極光は小さき冥府を照らす光。どうかその光で、我が同胞を照らしたもう」

 

 そして、詠唱をするのは一人ではない。

 

「ならばあなたも愛しい人よ。どうか私を連れ出して」

 

 その右手をとりながら、アップ・ジムニーが祝詞を紡ぐ。

 

「是非もなし。なれば我らは共にあろう」

 

 その左手をとりながら、トマリ・カプチーノが呪文を紡ぐ。

 

「共に歩もう愛しき双星。我らの未来を紡ぐのだ」

 

 その温もりに涙を流し、近平須澄は今ここに至る。

 

 均衡を崩す神滅の禁じ手に、今、ここに到達する。

 

「「「禁手化(バランス・ブレイク)! 黄昏に集え我が郷愁(トゥルー・ロンギヌス・ヴィーンゴールヴ)」」」

 

 今ここに、あまねく魂を宿す聖槍の極致が具現化する。

 

「……やっぱり、やればできる子だと思ってたぜ、須澄!!」

 

 その輝きに、兵夜は思わず目を奪われる。

 

 そしてその能力もまたすぐに理解できた。

 

「槍そのものを冥界にして、魂を取り込む禁手だと!」

 

 その光景に、エイエヌもまた理解が早い。

 

 そして、問題なのはその場にアップとトマリがいるという点。

 

 それはすなわち―

 

「とうの昔に、到達していたのか!?」

 

「ああ、そうだね!!」

 

 攻撃がやんだ隙を突いて聖槍を叩き付けながら、須澄は自嘲気味に吠える。

 

「最初に手にしたあの時から、僕は心のどこかでずっと二人を縛り付けたいと思っていた。……それで至るとか、自分でも嫌になるよ!!」

 

「えーっ? 全然気にしなくていいよっ!」

 

 眷獣を呼び出しながら、トマリはむしろ顔を赤くして喜んでいる。

 

「だってだってっ。それだけ私達が好きだってことだもんねっ? キャーもう吸血衝動が出てくるぐらい嬉しいーっ!」

 

「はいはい。あとでちょっとぐらい吸わせてあげるから我慢しなさい」

 

 グラム片手にアップもまた、エイエヌに切りかかる。

 

「悪いわねエイエヌ様。目覚めさせてくれたあなたには心から感謝してるんだけど―」

 

「ぬぅおっ!?」

 

 最強の魔剣の名に恥じぬ威力が、聖槍を一気に弾き飛ばし、空いたところに魔力弾の群れが叩き込まれる。

 

「恩返しは死ぬまで頑張ったからこれで終わり! あとは最後までブレブレの人生を送ってくわよ! 二人と一緒にね!」

 

「……羨ましいな」

 

 その姿を見て、エイエヌは本当に羨ましそうに苦笑する。

 

「俺はもう会えないから、そんなことできないんだ。……本当に残念だよ」

 

 そう寂しそうに告げると、エイエヌは即座に距離をとる。

 

「……逃げる気か!?」

 

 あの野郎、判断早いな!

 

「え!? ちょ、トマリちゃんの大活躍シーンはっ!?」

 

「いやまあ、エイエヌ様はイレギュラーは歓迎しない主義だからねぇ」

 

 涙目すら浮かべるトマリの肩に手を置くアップの意見は実に参考になるな。

 

「まあいい。これまでの聖杯戦争で、かすめ取ったエネルギーがあれば十分対抗できる」

 

 そういいながら、エイエヌは黒い霧に包まれる。

 

「アップ。基地名D3だ。……わかるな?」

 

「な! エイエヌ様……まさか!?」

 

 驚愕するアップの表情を見ながら、エイエヌは満足げな表情を浮かべる。

 

 その表情にただなら何かを感じたのか、須澄が焦りながらアップの方を向く。

 

「アップ! D3って、何!?」

 

「……地球侵攻用の、艦隊の駐屯地よ」

 

 なんだと!?

 

「フォード連盟の土地で起こした聖杯戦争での余った魔力を使って、破壊術式は準備できた。それを投入すれば、グレートレッドですら殺せるだろうさ」

 

「聖杯戦争はそのためだったのっ!?」

 

 トマリが驚愕する中、エイエヌは堂々と首肯する。

 

「ああ。もうちょっと時間がかかるかと思ったんだが、念のために設定したフォード連盟と俺に直接危害を加わる願いはアウトって保険……が思いのほか効果を発揮してなぁ。おかげでグレートレッドを殺しうる理論値までようやく到達した」

 

 ……あ、願いは叶えてる人もいるのか。

 

 流石俺。人がいいなおい。

 

 ってんなことを言っている場合じゃない!!

 

 グレートレッドを殺しうる理論値まで到達って、んなもん射程内に収められたら……っ!

 

「できれば聖杯戦争が終わってから出撃するつもりだったんだが、どうやら時空管理局に嗅ぎづけられたらしい。既に艦隊も派遣されているし、予定を早めよう」

 

 そう言いながら、エイエヌは霧に包まれる。

 

「さあ、最終決戦だ。聖杯戦争も、地球の命運をかけた戦いも全てに決着をつけよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―そして、今度こそ彼女に静寂を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉と共に、エイエヌは今度こそ姿を消した。

 

 

 

 




……そこ、ロンギヌス繋がりとか言わない。元ネタ確かにLightだけど!

須澄は実は特訓の昔に禁手に到達してました。出なければアップとトマリの魂を取り込めません。ですが、無意識にそれを自己嫌悪していたため禁手として発動しませんでした。

そんな自分の嫌なところを、ヴィヴィオや雪侶の言葉で見つめなおして、受け入れられないながらも存在を認めて、情けないところをさらけ出して、そしてようやくとうたつした、こう生きてそう死ねない愚かな男の禁手です。










そして最終決戦のカウントダウンがスタート。

聖杯戦争で願いをかなえるといっても、エネルギーを全部使わなければいけないというわけではない。なのでそのエネルギーをかすめ取って少しずつ準備していたのがフォード連盟での聖杯戦争の目的。

一応保険として残しておいたセーフティのおかげでギリギリ間に合っている状態ですね。そうでなければまだまだ時間がかかっていました。









そういうわけでエイエヌは本気。時空管理局も慌てて動いており、本編最終決戦の次ぐらいには規模のでかい戦いとなるでしょう。

ですが、その前に準備もいるし語られていない情報もある。次はそんな話です。

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