ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
割と驚愕の緊急事態が勃発します。
何本も、何十本も、何百本も。
幾重にも光の槍が形成され、天を埋め尽くす。
それらを生み出しているのはエイエヌ。彼は、たった一人で最上級の天使ですらできるかわからないほどの光の槍を生み出していた。
「さあ、始めようか!」
次の瞬間、一斉に槍が放たれる。
「撃ち落とせ、
とっさに古城が眷獣に命じ、魔王クラスの雷撃で吹き飛ばす。
だが、その雷撃のドームに穴が開いた。
「甘い甘い。対雷撃ぐらいなら俺にもできるさ」
そういうなり、こんどはそこに集中して魔獣達が突入する。
見るからに頑丈であることがわかる両腕。
見るからに怪力であることがわかる両腕。
それは、見るからに莫大な威力を生み出すことがわかっている凶器だった。
そして、魔獣達はそれを一斉に振り下ろそうとし―
「―ザ・クラッシャーっ!」
其れより先に、トマリの眷獣がそれを薙ぎ払う。
一斉に薙ぎ払われた魔獣たちはしかし、すぐに体勢を立て直すと再突撃を敢行しようとする。
しかし、其れより先に須澄が突貫していた。
「邪魔、邪魔なんだよ君たちは!」
聖槍が邪魔者を薙ぎ払い、そして須澄はエイエヌに突撃する。
「お前は、お前は殺してしまいたかった!」
「それは残念。俺は君と仲良くしたかったけど・・・」
突き出される聖槍を、エイエヌは両手に剣を出して受け止める。
それは魔剣と聖剣。その二振りを操って、エイエヌは聖槍の乱舞をしのぎ切る。
「・・・気づくのが遅かったのは謝るよ!」
「ぐぅっ!」
さらに、回し蹴りがきっかけとなり爆発が発生する。
蹴りそのものは聖槍で防御したが、爆発の反動までは殺せない。
そのまま須澄は壁にたたきつけられ、そこに魔獣が襲い掛かる。
「・・・この馬鹿!」
それを、兵夜が結晶体を投げつけて撃墜した。
「頭に血を上らせるのは仕方がないが、だからこそ考えろ!」
「えと、えっと・・・ごめん」
顔を真っ青にして怒鳴りつける兵夜に、須澄は素直に謝った。
まさかここまで心配されるとは思わなかった、といいたい顔だ。
兵夜は我に返ると気まずげに目をそらし、そしてすぐにエイエヌをにらみつける。
「今の攻撃、
わずかな攻防で、いくつもの神器を使って見せたエイエヌに、兵夜は戦慄する。
最初に出てきた時点で絶霧と魔獣想像を使った。さらに初手の攻撃に光力系を使い、さらに魔王クラスの雷撃を無力化するほどの雷撃無効化も使う。
おそらくすべてが神器。それも禁手に至らせている。
「お前、いったいいくつ神器を取り込んだ? 十や二十じゃきかないだろう」
後天的に神器を移植する技術は存在する。神器を引き抜く技術も存在する。実際そうしている存在もいるにはいる。
だが、其れでも無理やり移植するという方法はリスクが付きまとうしリターンも少ない部類だ。
それを、目の前の男は数を集めることで対応してのけている。
この調子ではほかにも移植しているだろう。それも間違いなく大量に。
「まあ、ざっと数百は移植してるさ。それぐらいしないとムゲンには届かないだろう?」
「気が狂ってるな。死ぬぞ・・・お前」
そのあまりの狂気に、兵夜はほおを引きつらせた。
こんな過剰な移植、間違いなく寿命を縮めるほどだろう。
おそらく、生命力強化系の神器を移植するなどして無理やり生命力を底上げすることで対応している。
それにしたって拒絶反応は出てくるだろう。激痛が全身を襲うことだってあるはずだ。
間違いなく、目の前の男は何かしら狂っている。人の道理から大きく外れている。
そして、それを肯定するかのようにエイエヌから血がにじみだし、そしてすぐに止まる。
神器の拒絶反応を、回復系の神器で無理やり抑え込んだ証拠だった。
「まあ、これぐらいしないと世界最強にはなれないしな。・・・男なら目指したくなるだろ、最強は?」
「女だからわからないよっ!」
横からトマリが眷獣を差し向けるが、エイエヌは地面を隆起させて巨人を作り出すと、それを難なく受け止める。
そして両手から炎と雷と暴風と雷撃を生み出すと、一斉に四人に向かってそれぞれを放って攻撃を仕掛けた。
「さあ、悪逆の皇帝はここにいる! さっさと迎撃して見せるがいい!」
心から楽しそうにエイエヌは叫ぶ。
まるで、自分は楽しまなきゃいけないとでも思っているかのように。
「かかってこい。俺はここにいるぞ!!」
「これはまずいわね。神滅具を二つも持っているなんて、想定外だわ」
戦闘の光景をみて、シルシは唖然とする。
神器の移植というハイリスクな手段を、あの男は数百回も行っているなどといった。
神器の移植はリスクも大きい。必ず使いこなせると決まったわけではないし、人によっては神器が毒になる。むしろそうなる可能性の方が大きい。
拒絶反応で死んだとしてもおかしくなく、実際に悪影響が出ているほどだ。
「それほどまでに、彼も強さを求めているのでしょう」
どこか理解できているのか、アインハルトは悲しげに目を伏せる。
「きっと、あの人は強くあることを渇望しているんです。私も、気持ちはわかりますから」
「アインハルトさん・・・」
ヴィヴィオがそんなアインハルトの様子に悲し気に目を伏せるが、しかし状況がそれを許さない。
「このままにしておくわけにもいきません! ヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんはそこにいて! 私は先輩の援護を―」
雪菜はそういいうなり、雪霞狼を片手に駆け出そうとして―
「・・・ほう? そこにいたか」
その声を聴いた。
声に反応して全員が視線を外に向ければ、そこには黒い翼があった。
黒く染めた白鳥とでも形容するべき翼を、五対も展開する黒髪の男。
その姿の多くは人間のそれだが、両腕は義手なのか異形のそれだった。
その姿を見て、シルシは目を見開いて寒気を感じる。
よりにもよって、この男までもが参戦していたとは思わなかった。
そして、彼は間違いなく優勝候補の一人だと断言できる。それだけの圧倒的な実力が、この男には存在した。
「・・・コカビエル!」
エストックを引き抜くと同時に、シルシは一気に駆け出した。
この場で最強なのは間違いなくこの男。ならば油断しているだろう隙に速攻で貫く以外に存在しない。
だが、そんなエストックの一撃は、異形の腕によって簡単に受け止められる。
「上級悪魔の娘か? まあ、ギリギリ該当範囲内といったところだが・・・ぬるいな」
「っ!?」
目の前の男の強大さに、シルシは柄にもなく怯えの感情を覚える。
この男が圧倒的に強いのはわかっていたが、ここまでとは。
そして、コカビエルはにやりと笑う。
「まずはお返しだ。・・・受け止めて見せろ」
その瞬間、数十発もの光の槍が一斉に放たれる。
判断は一瞬。シルシはそのほとんどを自分の体を盾にして受け止める。
ポイニクスの不死の特性でも耐えきれるかはわからない。もしかしたらこの一撃で命が消し飛ぶかもしれない。
だが、そうしなければ間違いなく雪菜たちが消し飛ばされる。
そう判断したがゆえに防御は、しかし攻撃を殺し切ることはできなかった。
反動で廃墟の上層部が粉砕され、そしてその衝撃に建物が耐えられない。
一気に、ビルが崩壊した。
ビルの崩壊を察知して、古城は血の気が引くのを感じた。
あのビルは、浅葱たちが安全確保のために潜んでいる場所のはずだ。
「浅葱、姫柊!?」
「よそ見をしている暇はないぜ、ミスターヴァンパイア!」
その隙を突いて、エイエヌは両腕に氷の剣を生み出すと切りかかる。
バスケで鍛えた反射速度で何とか飛び退るが、胸部に深い裂傷が走ってしまうのは避けられなかった。
「・・・グッ!?」
そしてそれを追撃しようとエイエヌが踏み込んだ瞬間、それは起きた。
一瞬で莫大な衝撃が放たれ、周囲の廃墟をまとめて粉砕する。
むろん、そんな反撃を行う技量は古城にはない。彼は身体特性こそ文字通り化け物だが、戦闘技術はろくにないのだ。条件反射で反撃までするようなスペックを保有していない。
それは、彼の体に眠る眷獣の暴走。
主の危機に反応したのか、眷獣の一体が、勝手に目覚めて力を放出させたのだ。
「うぉおおおおお!? ちょ、ちょっと待て暁!?」
「古城くん待ってっ!? それ私たちも巻き込まれるからっ!?」
兵夜とトマリが絶叫しながら後ずさるが、古城にも制御ができないのでどうしようもない。
そしてそのまま魔力は暴発。圧倒的な振動波の破壊が形を成し―
「うぉっと! 危ない危ない」
その古城を、霧が包み込んだ。
そしてその直後、上空で莫大な破壊が発生した。
「あとちょっと初動が遅れてたら危なかったな。いや、マジで大けがするところだった」
額の汗をぬぐうそぶりをむせながら、エイエヌがほっと息をつく。
どうやら、絶霧を使って上空に転移させたらしい。
そして、その隙を逃さず狙ったものがいた。
「もらった!」
躊躇なく振り下ろされる須澄の聖槍。
しかし、その聖槍は固い音とともに弾き飛ばされる。
「だから甘いって」
そう平然と告げるエイエヌはかなり頑丈になっていた。
「
そうタネを告げるエイエヌは、そのまま振動波を須澄にたたきつけ、さらに即座に地面を隆起させるとそのままトマリに投げつける。
「うぁああ!?」
「きゃあっ!?」
あっという間に三人を無力化したエイエヌは、最後の一人に向き直った。
「さて、そろそろコカビエルがあいつらを倒すころだし、これはもう決着かな?」
「やって、くれるな・・・!」
想像以上に危険な敵だ。
これは、明らかに最悪の事態ともいえる。
なにせ上位神滅具を二つも保有している規格外の男。その時点で禍の団に協力すれば不利な戦況をひっくり返しかねない。
少なくとも、実戦経験の少ない者たちや弱体化している自分が相手をするには荷が重かった。
「正直、もうちょっとやれるとばかり思ってたんだ。特にお前はやればできる子だって知ってるからな」
「ハッ! そこまで買ってくれるとは嬉しいことだ」
追い詰められていることを悟られないように態度だけは大きくするが、しかしこれは危険すぎる。
場合によっては、奥の手の開帳すらためらっている場合ではないと判断した。
それを知ってか知らずか、エイエヌは面白そうな態度を示して言葉を続ける。
「いやいや。俺はお前がやばい奴だってわかってる。お前の危険性はイヤってほどわかってるさ」
何とか隙を突くためにも、しゃべらせておかねばらならない。
兵夜はそう判断しながら切り札を切るタイミングを計って―
「・・・なあ、戻」
―次の瞬間には、頭が真っ白になった。
あり得ない。
それは、それだけは知っているわけがない。
その一言だけで、兵夜は今までにないぐらい狼狽した。
「お前っ!」
一瞬で、何の勝算もなく目前まで迫り―
「なんでそれを知っている!」
躊躇なく顔面に拳を放つ。
当然、それは当たり前に防御される代物だろう。
実際エイエヌはそうした。
そして、そのために呼び出したものがまずかった。
「・・・・・・・・・な」
それを見て兵夜は我に返った。
さっきの名前ほどではないが、しかしあり得ないものを見て、兵夜は固まってしまった。
そして、そのまま全身を焼かれて墜落する。
「・・・ば、馬鹿・・・な。なんで・・・お前が・・・」
それは、人類が持てる最強の装備。
それは、神の天敵。
それは、須澄が今も持っている、この世に一本しかないはずの槍。
「・・・黄昏の聖槍を、持っている!?」
最強の神滅具、
伏線は張ってたけどコカビエルも登場。本聖杯戦争優勝候補の一人でございます。
そしてエイエヌの戦闘スタイルは神器のバーゲンセール。禁手も比例して多く、割と本気で化け物級。
そして何より聖槍を保有していることが緊急事態。なぜ聖槍が二つもあるのか・・・についてはある絡繰りがありますのでその辺はお待ちください。