ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
シルシ・ポイニクスは割と本気で頭を抱えていた。
いきなり慌てだした兵夜に飛行艇を任されて、途方に暮れていたと言っていい。
見ている限りどうやら因縁があったらしい。恰好からしてはぐれ悪魔祓い、それも和平後に堕天使から追放されるほどの危険人物。そんな奴が幼女の近くにいたら慌てるだろう。
しかも兵夜と戦った事があるらしい。あのグレモリー眷属と一戦交えて、捕縛もしくは抹殺されていないという時点で確かに厄介な部類だ。
少なく見積もっても中級悪魔クラス。もしかしたら上級クラスは相手をできる手合いなのかもしれない。
だから、そんな状況下で助けに行ってこれるような人物である事にシルシはむしろ喜びすら感じている。
流石は政略結婚対象として、ゼクラム様が選んだ人物・・・と表向きの
「わたし、サポートはできるけど運転はできないのだけれど」
表面上は冷静で、だからこそ何とかバランスをとれてはいる。
だが、このままだといずれ墜落する。それぐらいこれの操縦は難しかった。
そもそもこの飛行艇は魔力操作システムを兵夜用にしているものだ。だからこそ兵夜は楽に操作できるが、裏を返せば兵夜以外は操縦が無駄に難しい。
これが宮白兵夜のうっかり。もう船を見捨てて脱出した方がいいのではないだろうか?
というより、これはもう墜落するしかないだろう。
「まあ、ポイニクスだから死にはしないだろうけど、一応最後まで持っておかないと怒られるわよね」
そう覚悟を決めて、せめて不時着に収めようとシルシは覚悟を決めて操作を行う。
何とか低角度で地表にぶつかろう。幸いまだ森なので、木々がクッションになってくれるはずだ。
そして、そのまま勢いよく地面に近づいた時、急に飛行艇が受け止められた。
「・・・何かしら?」
視線を向けるとそこには巨大な八首の蛇がいた。
その巨体がクッションになって、飛行艇を受け止めていたのだ。
「これは・・・味方でいいのかしら?」
シルシはエストックを引き抜きながら、慎重にその蛇を見る。
驚くべく事に、この蛇は魔力で出来ていた。
サーヴァントと同種と思えるその存在は、間違いなく強大な戦闘能力を保有するだろう。
どう対応したものかと苦慮していると、少し離れたところから声が聞こえてくる。
「安全確保ー! 須澄くん、褒めて褒めてっ」
「分かった、分かったから落ち着いてねトマリ。はいなでなで」
と、いちゃつきながら出てくるのは、一組の男女。
染めた者と思しき金の髪を持つ幼い風貌の少年と、藍色の髪を長く伸ばした、どこか落ち着いてない女性。
だが、シルシが二人を見た瞬間に、思わず目を疑った。
「・・・貴方達、何者なの?」
あり得ないだろうとすら思う。
女性の方はまだいい。理論上の存在だが、あり得ないわけではないと判断されている。
だが、少年の方がどう考えてもおかしい。あり得ない。
あれが、あの槍がこの世に二本もあるわけがないのだ。
あの男が殺されたとも考えづらい。
彼は、槍の力もあって人間の範疇内なら最強候補だ。その彼を殺せるだけの実力者との戦闘があれば、こちらでもすぐに気づくだろう。帝釈天もそんな緊急事態をこの状況下で黙ってるとも思えない。
そんな疑念を浮かべるシルシに、少年たちは微笑んだ。
「とりあえず、僕達は敵じゃないよ。・・・ようこそ異世界の方々、聖杯戦争が行われる、このニュークレオンに」
俺は、ものすごく久しぶりだけど全然嬉しくない再会をしながら、警戒を解かず睨みつけていた。
既に神器を展開して光の槍も展開しているし、高速用の魔術を込めた弾丸も装填済みだ。
何か動けば、すぐにでも攻撃してやる。
「下がってろ。こいつは人を殺すのが大好きなシリアルキラーだ。・・・既に何人も殺している」
「うーん。俺のことよく知ってるね。あれ、もしかして俺に恋してるの!? 残・念! 俺はお前を殺したいとは思ってても愛してるなんて思ってないよん!」
相変わらずふざけた奴だ。子供の前じゃなければ、速攻で殺しているものの。
「おい姫柊、あいつの言ってること、マジか?」
「少なくとも、相応の実力者だと思われます。・・・先輩、その子達を連れて下がっていてください!」
と、黒髪の子がなんか機械的な槍を取り出しながら俺に並び立つ。
「・・・攻魔官としては黙っているわけにはいかないようです。手助けします」
「こうまかん? なーるほどなーるほど、やっぱりあんたらがプロモーターの言ってたサプライズってやつだねぇ?」
・・・サプライズ?
「どういうことだフリード! お前ぺらぺらしゃべってくれるタイプだろ? 話してくれよ?」
「OK! 俺と君との仲だしね! 特別にペラペラしゃべってやるぜ!!」
・・・うん、お前はそういうタイプだと信じてたよ。
とりあえず情報を聞き出さない事には話にならないからな。シルシがいれば真贋の判定も楽だったんだが。
「まずはそこの幼女ちゃん達とカップルの正体だけど―」
「違います! 先輩はあくまで監視対象です!!」
「―え、そういうプレイ? 君がSなのん? 俺、切り刻むのは好きだけど監視されるのは嫌いなんだ、ごめんちゃい♪」
「幼女の情操教育に悪いから話を進めろ!!」
俺も凄い気になるけどね! 監視対象っていったいなんだよ!!
「俺達は兵夜きゅんも知ってるあるゲームをやっていてね。そのプロモーターがサプライズで、異世界から適当に誰か召喚するとかなんとか言ってたぜ! 座標は凄い適当だから、もしかしたら大災害が発生するかもしれないからこの辺りに呼び出すと言ってたのさ!」
「・・・はあ!?」
なんだその考えなしは! っていうかそんな事できんのかよ!?
「い、異世界召喚!? どこのラノベだよ!?」
後ろの先輩とか呼ばれてた少年が驚愕の声を出す。
ああ、そんなもん簡単にできる事じゃない。できる事じゃないけど・・・。
「理論上は可能ですが、それだけの出力をどうやって・・・?」
緑色の髪の幼女は、比較的冷静だった。
ん? 彼女がいた世界は異世界間移動が比較的楽なのか?
まあいい。今は話を進めるところだ。
「そいつらの首を取ったら、プロモーターから戦力を提供してくれるって話だったんだけど、綺麗な幼女だからちょっとレイプしちゃってからでもいいかなーって思ったら、まさか君が来るなんて思わなかったぜ!」
この外道が、本当に腹立たしいな。
「・・・ここで死ぬか? 一応言っておくが、俺達三大勢力はテロリストは
「うっひょー! そりゃスリルがあってワクワクするぜ! でもさぁ、そんな君の冷静さをぶっ飛ばす事を教えてやるよ」
そういうフリードがにやりと笑いながら、とんでもないことをぶちまけやがった。
「このゲームの名前は、聖杯戦争っていうんだぜ?」
・・・なん、だと!?
「どういうことだ!? なんで異世界で聖杯戦争が勃発している!?」
意味不明にもほどがある。
なんだと!?
「落ち着いてください! 聖杯戦争とは一体何ですか!?」
姫柊ちゃんとやらが俺に声を飛ばすが、そっちも顔をこっちに向けるな!
「馬鹿来るぞ!」
「ヒャッハーもちろん!!」
フリードは素早く光の剣を振るって、姫柊ちゃんの首を切り落とそうと襲い掛かる。
姫柊ちゃんはそれを槍で受け止めるが、何やら奇妙な波動が出て、剣が揺らいだ。
「ん~? 対異能系の能力でもデフォなのかにゃー?」
一瞬鍔ぜり合った二人は、すぐさま飛び退る。
そしてフリードは即座に拳銃を引き抜くと今度は俺達じゃなくて幼女達に―!
「ってさせるかコラ!!」
素早く銃を撃って牽制。フリードを即座に引き離す。
ええい、この状況下で色々と面倒な!
「ひゃっほう! 中々楽しそうな戦闘になってきたぜ! じゃあこっちもテンション上げていこうか!」
そう言いながらフリードが指を鳴らすと、地面が闇に包まれて、そこから魔獣が現れた。
やっぱり魔獣創造の量産型は開発済みか!
っていうか数が軽く三十ぐらい入るんだが!?
ああ、そしてもちろんの如く後ろの幼女達に襲い掛かったぁああああ!!
「クソが! 流石にカバーしきれない!!」
「先輩! その子達を連れて逃げてください!!」
俺達は接近してくる連中をぶちのめしながら声を荒げる。
戦闘能力は大したことないが、いろんな意味でディフェンスが強い! このままだと押し切れない!!
くそ! あの少年は戦闘訓練とか詰んでる動きじゃないし、このままだと―
だが、幼女二人は怯えるどころか強い戦意を見せていた。
あれ? なにその表情?
「クリス!」
「ティオ!」
そう幼女達が声を上げると、兎と猫のぬいぐるみっぽいものが宙に浮かぶ。・・・宙に浮かぶ!?
「「セットアップ!」」
そしてぬいぐるみとともに幼女達が光に包まれ―
「な、なんだぁ!?」
その少年の言葉が、何よりも分かりやすい返答だろう。
気づけば幼女達は。
「カイザーアーツ正当、ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルト。状況は呑み込めませんが助太刀します」
「あ、私は高町ヴィヴィオです! お手伝いします」
なんか成長したぁああああ!?
はい、勘違いされている方も大勢いましたが、舞台は全く別の世界です。
というより、ミッドチルダにしろ絃神島にしろ、今回の黒幕を動かす場合使い勝手が悪いため、こういう形にいたしました。
前半で登場した二人組もオリジナルキャラです。詳しい説明は結構後になると思います。
初期の妄想していただけのバージョンでは、聖杯戦争ではなく侵略戦争とかぶちかます予定だったんです。そのころはどれを参戦させるかも決めてなくて、結果的にある人物がリーダーとなっている対侵略者同盟の傭兵という形で兵夜を参加させようという考えでしたが、ストーリーが大きくなりすぎて複雑になりすぎるため書ききれないと判断して没にしました(´;ω;`)