ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド 作:グレン×グレン
・・・長かった。とても長かった
でも、やっとここまで来れました!
リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの異世界侵略の野望。そしてそれを利用したフィフス・エリクシルによる根源到達のための下準備のために動かされた一連の事件は幕を閉じた。
リリンと邪龍を手玉に取った男の名から、五の動乱と呼ばれることになるこの事件は、多くの爪痕を残すことになる。
一年弱の間世界を動乱の渦に巻き込んだ、
特に学園都市技術による能力者の存在は凶悪だった。
彼らには精神的な鍛錬が必要ない。それゆえに未熟な精神で暴力を扱うことになり、必然的に犯罪が勃発した。
ましてやそれを抑制するべき警察組織も最新技術の恩恵を受けてきたがゆえに電子機器の壊滅で機能を停止していた。
そこからくる治安の悪化は絶大で、さらにクージョー連盟が内部分裂寸前になったこともあり、世界中で紛争が勃発。その過程において
さらに、のちの調査でリゼヴィムが異世界に余計なことをしていたことが判明した。
かつて兵藤一誠を助けた乳神がいる世界。
善なる神と悪なる神による争いが勃発しているらしい、二大戦力の激戦が行われているらしい世界。
リゼヴィムはその世界に徹底的な挑発を行い、さらにはこちらに向かうための術式の情報すら送り込んでいた。
自分たちが異世界に攻め込めるならよし。攻め込めなくても、向こうから仕掛けてくればそれでいい。あの悪意と熱意の塊らしい手段の択ばなさである。
その異世界の者たちがやってくるまで、推定で30年。異形たちの者たちからすれば瞬きほどの期間だろう。
それらによる人類滅亡を抑制するには、今のままではどうやっても不可能。神話及び信仰存在は、自らの実在を証、人類にその姿を現すことを決定した。
十年以内に人類の問題をある程度鎮圧して存在を公表。そして二十年以内に迎撃の準備を整えなければならない。
だが、幸運なこともある。
龍神に匹敵する力を持ったトライヘキサ。その肢体を基にして開発されたトリプルシックスを確保することに成功したことである。
トライヘキサは七つに分裂する機能があったようで、それを基にして七隻の戦艦へと分離したトリプルシックスは、各勢力に分割されることとなった。
悪魔、堕天使、教会の三大勢力に一つずつ。そして作戦において戦力を多く提供した北欧神話、ギリシャ神話、中国神話、インド神話に一つずつ。
魔獣騒動の原因の一人であるハーデスのいるギリシャ神話や、英雄派との内通疑惑のある帝釈天のいる中国神話に渡すのには難航したが、しかし莫大な戦力を提供したうえに、さらに被害も甚大である以上相応の代償が必要だった。
のちにトリプルシックスや禍の団の軍艦を参考にした艦隊が編成され、定期的にグレートレッドとつかず離れずの距離で護衛することなる。
問題は数多く、しかも強大。
だが、其れでも一つ目の峠は越したのだと、全勢力がわかっていた。
次の峠を越えるための準備をしながらも、彼らは勝利の美酒を味わっていた。
この戦いにおいて、多くのものが多数の褒章を得ることとなる。
被害が甚大である以上、その分繰り上げ昇格をすることになるのは当然ともいえるだろう。
特に冥界では、王の駒の秘匿使用を機に綱紀粛正が大幅に行われた。
不正を行っていた貴族たちは表向きにはこの争乱で後遺症を患ったことにして勇退し、その地位に若手の優秀な人材が選ばれることになる。
もちろん、若手悪魔たちの昇格も盛んだ。
こと若手悪魔の集まりであるD×Dは多くの昇格が行われることになる。
リアス・グレモリー眷属は軒並み中級へと昇格。ソーナ・シトリー眷属も二人昇格。さらに兵藤一誠と桜花久遠は上級へと昇格することになる。
さらに、禍の団第四首魁を滅ぼした宮白兵夜は、特例で最上級悪魔へと昇格することになった・・・が。
この昇格。兵藤一誠と桜花久遠の昇格の儀式のときにサプライズで発表した。
それがまずかった。
もとより宮白兵夜は血統主義に理解があることで有名である。
冥界の政治の現状にも理解が深く、アウロス学園においても上級と下級の悪魔にしっかりと存在する差を提示するなど、転生悪魔としては異例の視点を持っている。
教会のクーデターが未然に防がれたのも、宮白兵夜の功績が大きい。彼が悪魔祓いの不満を理解してそれを発散するための模擬戦を企画したからこそ、彼らは歩み寄りの姿勢を見せてくれたのだという意見は強い。そしてそれは事実だ。
また、四大魔王達のことを「リベラルすぎる」と苦言を呈し、貴族たちの意向をくんだ判断をもとることができる思想を持つ。
つまり、政治的に保守派よりなのだ。
だからこそ、四代魔王としては彼に権力を与えて相応の地位につけたいと思っていた。ゆくゆくは魔王もしくはそれに近しい立場を与えることで、貴族達をうまくなだめられる存在になると期待していた。だからこそこのチャンスを逃さなかった。
だが、そこに茶目っ気を入れたのが失敗した。
「・・・あんたら馬鹿か。馬鹿なのか」
ある有名な映画のBGMを流しながら、宮白兵夜は魔王四名に正座を要求。そのまま一時間にわたり説教を行った。
「だから、ちょっとあんたら自由すぎなんだよ。度の越えた自由奔放に振り回される相手のことを理解しろ。第一種族特性的に冥界は血統主義を捨て去ることなんてできないんだから、もう少しそのあたりを考慮した発想というか、そもそも自国の代表をほかの神話の代表に選ばせようという発想がもう気がくるってるとしか・・・」
各種神話体系の大物すらゲストに呼ばれたこのイベント。ついでに言うと、禍の団の大物を撃破した若手の三名が一斉に昇格するということでメディアも多く集まっていた。視聴率も50パーセントを超える事態に陥っていた。
・・・当然、大騒ぎである。
中にはまだ公表されてない情報もだしていたため、割と本気で機密漏洩だった。
宮白兵夜の昇格は当然中止。ついでに罰則として一年間の最上級昇格禁止が言いつけられた。
魔王派のタカ派は怒りくるい首をはねてしまおうかといわんばかりの勢いだったが、肝心の四大魔王が止めに入ったこともあり、かろうじてそれは防がれることとなる。
・・・この異例の軽い罰則は、いまだ影響力の強い血統主義の悪魔たち、そして魔王を超える政治的影響力をもつゼクラム・バアルのフォローがあったことを付け加えておく。
のちに「魔王の首輪」の異名をつけられることとなる、宮白兵夜の説教伝説の幕開けとなることを、いまだ彼らは知らない。
Side Out
「宮白、お前馬鹿か? 馬鹿だろ?」
「命知らずっていうか、なんていうか・・・」
「・・・ぶはっ! む、無理! お、おなかが痛い・・・っ」
「うるさいよそこ!!」
松田に元浜に桐生の三人をにらみつけて、俺はため息をついた。
うっかりテレビ中継されていることを忘れたのは全面的に俺の責任だが、そこまで言うことないだろうが!
「いや、ほんとお前は時々馬鹿だから。心臓が止まるかと思ったし」
イッセーまで!? ひどすぎるぞその扱いは!!
何はともあれ卒業式も終わり、俺たちは事情を説明しながらだべっていた。
松田と元浜は割と信じられない顔を見せていたが、いろいろ異形の能力を見せたらすぐに納得。元浜は能力者に目覚めてるから理解も早い。松田も、自分の師匠ともいえる人物が禍の団の精鋭だと知ったときは驚愕していた。
「師匠が、師匠がテロリストに加担してたなんて・・・」
ショックを受けているところ悪いが、あのふんどしに敬意を持つのはやめた方がいいと思うぞ?
「それで宮白。これからどうするんだ?」
と、元浜がきいてきた。
まあ、それは学校が終わった後どうするか・・・ではないな。
「俺はもちろんハーレム王だ! ・・・言っとくけど、俺の眷属は全員女の子で固めるからな!」
「てめえ! 俺たちにもハーレム作るチャンスくれよ!!」
「そうだぞこの野郎! 独占禁止法違反だ!!」
ドスケベ三人衆がいきなり喧嘩を勃発させやがった。
しっかし、俺の今後ねぇ。
「ぶっちゃけ、一生食っていけるからなぁ」
すべてが終わった後、ふと気づくとライダーが来ていた。
ふむ、令呪を使って無理をしたようだが、どうやら無事のようだ。
「おめでとう。漁夫の利を得た形だが、お前は聖杯戦争に勝利した」
俺は心からそういうが、ライダーは静かに首を振った。
「いいや、それは違う」
あ? サーヴァントはライダーを残して全員いなくなったはずだ。もう聖杯戦争は終わっている。
それともなんだ? フィフスは聖杯の予備システムでも起動したか?
だが、あれで召喚されるなら陣営作っているフィフスたちの敵に回るはず・・・。
「アーチャーは消滅したのではなく、内臓だけを残したのである。つまり、まだアーチャーは敗退していない」
・・・っ。
そういえばそうだ。アーチャーが完全に消滅したのなら、俺の内臓は消えてなくなる。
しまった。つまりは―
「―まだ聖杯戦争は終わっていないのである」
おいおい、ここにきて最終ラウンドかよ。
ヴァーリたちと最終決戦とか、さすがに勘弁してほしいのだが。
と、思った時に気が付いた。
・・・ライダーの足元が、透けている。
「お前!?」
「いささか無理をしすぎた。残念だが、これ以上は遊べそうにないのである」
そう笑うライダーに、ヴァーリは静かにほほ笑んだ。
「ありがとうライダー。お前と一緒にいて楽しかった。・・・美猴達とは?」
「もう別れは済ませたのである。・・・お別れだ、ヴァーリ」
割とドライに見えるが、しかしそうではない。
ヴァーリの奴は意外と仲間思いだ。・・・こうなることを最初からわかっていたのだろう。
「それでは、長生きするがよい」
そう告げて、ライダーは素直に消えていった。
まさか、俺のために負けを受け入れたのか?
この状態での決着は、すなわちアーチャーの消滅だけではなく俺の死を招く。
だが、なんで・・・。
「ライダーは、ただ人間としての楽しみを味わいたがっていた」
ヴァーリが寂しげにそう告げる。
「だから、あいつは十分満足している。・・・これでいい」
そういいながら、ヴァーリは一つの杯を俺に差し出す。
これは、聖杯だ。
「さあ、これで今度こそ君が勝者だ。・・・君は聖杯に何を願う?」
・・・俺は、割とぽかんとしてしまった。
聖杯を使わせることを阻止したくて、せめてアーチャーに聖杯を上げたくて頑張ってきた。
そしてなんかやりきった感あったからどうしたものかと思ってしまった。
えっと、えっと、えっとぉ・・・。
「お、俺の領地霊的に優れた物にしてください!!」
「「俗ぅ!?」」
姫様とイッセーに同時ツッコミを喰らってしまった。
「そういうわけだから、俺数千年は金には困りそうにないんだが」
「俗物って言葉知ってる?」
桐生、そこまで言わないでくれ。
先立つものは必要なんだ。一万年近い生を生きるとなればなおさらだ。とっさに聖杯なんて渡されたらそりゃそんな願いしか浮かばねえよ。
・・・いや、けが人の怪我を治せとかいろいろあったな。ヤバイ、ちょっと罪悪感が出てきた。
「・・・ま、文字通り世界すくったんだから、それぐらいの要求はしても罰は当たらないでしょうけどね」
だったらいうな馬鹿野郎!!
ま、まあいい。定期的に入るであろう資金で援助活動ぐらいは行わせてもらおう。親父の企業名義で援助させれば親父は評価がうなぎ上りで一石二鳥だ。
「まあ、これで研究費用と霊地の提供を魔術師組合の奴らに渡せるからな。ゼクラム・バアルの協力も合わせれば魔術師の制御はできるだろう」
うん、とっさに願ったにしてまあ大丈夫だろう。
サーヴァント六騎分の燃料でできた霊地の上昇は間違いなく最高峰。冥界でも屈指の霊地が手に入ったといえるだろう。
その気になれば、聖杯戦争を六年周期で起こせるほどの圧倒的霊脈。これだけの霊地はあの世界にも存在しない。必然的に俺の価値は魔術師にとって莫大に増大化している。
「ふっふっふ。これで俺の将来はほぼ安泰。・・・あとはトラブルさえ起きなければ大丈夫だ」
「無理でしょ。三十年後には異世界間戦争が起きかねないんでしょ」
桐生? 頼むから水差さないで?
それに、それはそれとして割と不安になるからな?
「そういえば、アンタ体がやばいことになったんだって?」
「ああ、強化改造の重ね掛けに神格化、さらにはサーヴァントの内臓とサマエルの毒はやりすぎた」
俺は、割と本気で自虐的な笑みを浮かべる。
そう、俺は割と大打撃を受けてもいる。
強化改造だけならまだ何とかなった。もともと後遺症も考慮に入れてたし、そのあたりの最終的な臨床試験をしてない程度の技術が最高限度にしているしな。
だが、神格化からいろいろ狂ったといってもいい。あれはもとからいろいろと最終手段じみた反則技だ。そもそも臨床試験どころか、机上の空論を通り越している。
そこにサマエルの毒による汚染。間違いなくこれはダメージがでかい。後遺症が全くないヴァーリが異常すぎる。
さらにアーチャーの内臓の移植。もともとサーヴァントの内臓を移植なんて、自滅以外の選択肢が存在しないといっていい。神格化で格上になっていたことと、令呪の重ね掛け、そして不完全な小聖杯化があったから死んでないだけで、これまた負担がでかい。
とどめにサマエルの血清だ。血清といっても負担がないわけではないから、これも負担が大きすぎた。
今の俺の体は後遺症の山。ぶっちゃけ、ことが終わった後は寝込んだぜ?
おかげで俺の戦闘能力は最上級悪魔級から上級悪魔級にランクダウン。それでもそこそこあるはずだが、しかし大きく下がったことは間違いない
偽聖剣もぶち壊れしまったしな。アーチャーいないから修復に何年かかるかわからないし、当分はおとなしくしてないと。
「アンタ無茶しすぎでしょうに。なんで死んでないのよ」
「そこについては心底同感。・・・俺、なんで生きてんだろ?」
「っていうかハーデスとかいうのは大丈夫なのか?」
元浜が眼鏡をキランと輝かせて、イランことをさらに言ってくる。
まあ、ハーデスはまた何かやってきそうだ。ほかにも帝釈天とかも考えられる。
くわえてリゼヴィムの死体やイッセーの抜け殻は確保に失敗した。これらを使って禍の団が何かしかしかけてくる可能性は少なからずある。
人間世界は人間世界で、大混乱の真っ最中。その上ありとあまねく神話と宗教の実在が公表されれば、新たに第四次世界大戦だって勃発しかねない。
三十年以内にさらに何度かトラブルが起こりそうだ。
だが、それでも―
「大丈夫とは言わない。でも、何とかして見せるさ」
そう、イッセーははっきりと言い切った。
「なんたって、俺は
「・・・さすがの俺もドンビキだよ」
「なるほど、ここまで突き抜けてるからこそハーレムで来たのか。・・・俺たちには無理だ!!」
割と本気でドン引きする元浜に、もはやそれを通り越して絶望に崩れ落ちる松田。
うん、イッセー台無し。
実際、乳龍帝おっぱいドラゴンはこれを機に新たな領域へとシフトしたわけだ。間違いなくいろいろ酷いことになると思う。そしてそれ以上に大人気になるんだろうなぁ。
「兵藤ぅ。子供は意外とそういうの好きっていうけど、アンタ相性が良かったようね?」
「お前らひどくね!? いや、俺もたいがいどうかしてるとは思うけどさ!!」
だよなぁ。頭おかしいよなおっぱいドラゴンとか。
・・・でもまあ、いろいろと問題は山積みだ。
うん、確かにいっぱい危険だけど―
「・・・あ、兵夜くんー!」
と、そこに久遠が大きな声を上げて手を振っている。
と、そこにはナツミやベル、それに小雪の姿もあった。
「兵夜ー! そろそろ行くよー?」
「朱乃たちも待ってるぞ! ほら来いよ!」
「兵夜様! あの、ご飯どんなものが用意されているんですか?」
ああ、少なくともこれだけは言える。
「俺がこれからどうするか・・・か」
ああ、決まっている。
「・・・みんなで幸せになるにきまってる。だろ、イッセー?」
「ああ、四人とも泣かせるんじゃねえぞ、宮白!」
ああ、最高の激励だ。
これにて、俺こと宮白兵夜の一年間に及ぶ激動の戦いはこれにて終了。
生まれ変わりなんて超弩級の体験した俺が、親友に胸を張れる男になって、愛する女を四人も手に入れるまでの物語はこれで終わりだ。
まあ、この後眷属を集めたりするのにいろいろあったりするわけだが、それは今回の話じゃない。
本来の予定から一年強遅れて行われるアザゼル杯やら、いろいろと俺の長すぎる人生においてトラブルは頻発するが、それは、まあ・・・。
また、機会があれば、話してやるよ。
これにて本編は終了です。
思えば最初からここまでよく続いたものです。
最初は「神様転生ってツッコミどころ多くね?」という感じで始まり、だから大好きなD×Dで納得できるようなものを書いてみようと思いました。
それがまさかこんなところまで続いて、話数の二倍以上の感想にも恵まれる。ええ、これは本当にすごいことだと思います。
票かもなんとか黄色より上。そんな状態で続けられたのは、ひとえに感想をくださった皆様のおかげです。マジでこれがモチベーションでした。
それはともかくとして、滑動報告で発表しましたが後日譚を書く予定ではあります。
新たに二作品ほどクロスしますが、まあ本編より長くなることはないでしょう。
さすがにいったん設定の練り直しとかするのですぐに出ることはありませんが、それでもできれば書いていこうかと思っております。
本当に、応援ありがとうございました!