ハイスクールD×D 転生生徒のケイオスワールド   作:グレン×グレン

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・・・・・・・・・さて、




ではこのBgmを流すといい


 曲PARAISO


教団 解放

 フィフス・エリクシルは少し精神的に苦境に立たされていた。

 

 さすがに少し甘かったと反省している。むしろ命の危険も感じている。

 

 内通している者たちが多かったので、作戦パターンはほぼ全部把握していたつもりだった。グレモリー眷属が参加していなかったことで、彼らを中心とする伏兵がいることも想定できた。だから結界装置を重点的に配備して中枢部への強襲だけは防いだつもりだった。

 

 まさか軌道降下兵などという反則技を使ってくるのは想定外だ。科学(それ)は、完璧に木原(こちら)の領分だろう。もう死んだが。

 

 状況的に主力幹部は全滅。ふんどしの撃破はさすがに予想外だ。

 

 そう、予想外だが―

 

「想定外なことが起こるのは想定内。・・・さて、こちらも切り札を投入するか」

 

 すでに用同伴の損耗率は四割をこえ、こちらはわずかに一割。彼らが敵を全滅させれば、その時点で押し切れる。

 

 そして、こちらもそろそろ本気を出すところだ。

 

「アサシン!」

 

『『『『『『『『『『はっ!』』』』』』』』』』

 

 そこに現れるのは80前後の黒い影。

 

 百の貌の異名を持つ、ハサン・サッバーハの一人だ。

 

 マスターを狙い暗殺を仕掛けるアサシンのクラスにおいて、基本一人一騎のサーヴァントではカバーしきれない数の暴力を併せ持った、聖杯戦争における最上位のアサシンの1人。

 

 欠点としては霊格が数十分の一になっているということ。それはただでさえ戦闘能力で劣るアサシンのサーヴァントであることから、桁以外の戦闘能力の低さを持つ。単騎でサーヴァントを倒すことなど不可能だろう。

 

 だが、其れをキャスターは克服してみせた。

 

 英霊の力を宿す幻想兵装(ファンタズム・アーミー)。これによる戦闘能力の向上は、アサシンにとってこそ天恵。

 

 型落ちとはいえサーヴァント。そのサーヴァントにサーヴァントの力が宿ればどうなるか・・・。

 

 ここに、その猛威が具現化することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その攻撃を察知できたのは、リアス・グレモリーだけだった。

 

 瞬間的だが未来予知を行うことができるリアスだからこそ、この危険を察知することができた。

 

「来るわ! 上からよ!!」

 

 だが、言っても遅い。

 

 リアスの予測は一瞬先の未来を予測すること。必然的に集団での指揮においては先読みが遅すぎる。

 

 そして真上から、矢の雨が降り注いだ。

 

 実力者で構成されているのでそれで倒されたものは少ないが、しかし隙を突く分には十分すぎた。

 

 そこに、暗殺者の本領が発揮される。

 

黄の死(クロケア・モース)

 

死は明日への希望なり(ラモール・エスポワール)

 

死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)

 

妄想心音(ザバーニーヤ)

 

五つの石(ハメシュ・アヴァニム)

 

 剣が、ギロチンが、音楽が、呪いが、投石が、それぞれ一瞬のスキを見せた相手に襲い掛かり命を奪う。

 

 一瞬で最上級クラスや神クラスすら屠られ、陣営は思考が停止した。

 

 そして、その隙を逃すものはここにはいない。

 

極刑王(カズィクル・ベイ)

 

血濡れ王鬼(カズィクル・ベイ)

 

串刺城塞(カズィクル・ベイ)

 

 無数の杭が一斉に襲い掛かり、戦場を処刑場へと一変させる。

 

 一瞬にして傾き始めた趨勢が逆方向へと傾いていく。

 

 そこに立つのは数十もの髑髏の面。

 

 暗殺教団の長、ハサン・サッバーハ。

 

「・・・アサシン!」

 

「これが、アサシンのフルメンバー・・・いや、遠方にもいると踏んだ方がいいですわね」

 

 何とか攻撃をしのぎながら、リアスたちは彼らをにらみつける。

 

 そして、彼らもまたリアスたちをにらみつける。

 

 そう、これこそ真の最終決戦の前哨戦。

 

 聖杯戦争も最終幕。ついに決戦の火ぶたが切って落とされる。

 

「ふむ、ワシがここまで来たかいがあったということか」

 

 ゆえに、ライダーもまた戦闘態勢を整えた。

 

 ・・・混戦ゆえに明かされていないが、すでにサーヴァントはアサシンとライダーの二騎だけとなっている。

 

 ついに、聖杯戦争は最終幕となったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なら、こちらも遠慮はいらないね』

 

 バロールとなったギャスパーが停止の魔眼を発動させる。

 

 バロールの力を宿した停止の力は、あらゆるものを停止させる。

 

 その力は神滅具すら停止させる。むろん、英霊であろうとその領域に到達しているものはそうはなく、停止できる―

 

「きかん!」

 

 ―はずだった。

 

 骸骨でできた象にのるアサシンが、停止をものともせず闇の獣と化したギャスパーにぶつかっていく。

 

 そして、それはほかのアサシンも同様だった。

 

 炎に包まれた木の巨人も、ゴーレムの群れも、魔術で作られた骨の戦士たちも。

 

 あまねく全てのアサシンが、一切の停止どころか減速すら示すことなく闇の中戦闘を続けていく。

 

「・・・フィフスかキャスターが何かしたということね」

 

 一瞬先の未来を読めるリアスが何とか察知して迎撃しながら、この現象の種を推測する。

 

 だが、令呪にだって限界がある。

 

 神滅具級の停止の力を、令呪の一つや二つでどうにかできるとは思えない。

 

 これは、一体どういうことだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう、俺は止まらない」

 

 トリプルシックスの上で、フィフスは笑みを見せていた。

 

 彼がアサシンに与えたのは、自らの血。

 

 それを飲ませたうえで彼が令呪に命じたことはただ一つ。

 

 ―俺の起源を受け入れよ

 

 起源。それは、彼の世界にある先天属性。

 

 宇宙誕生からの大きな流れより発生する、産まれしものがすべて保有する先天特性。

 

 例えば、燃焼という起源をもつものは、植物であれ動物であれ、燃えやすいという先天的な特性を保有する。

 

 狂乱という起源をもつものは、狂乱に関与した特性を必ず発揮する。それが酒なら酔いが速くなるという特性を得るし、人なら気が狂いやすくなる。

 

 その大いなる流れに人が逆らうことは不可能。起源をもつものは必ず起源に縛られる。

 

 当然だろう。数十億年にも及ぶ大いなる時の流れに抵抗するには、人の靭性はあまりにも短すぎる。これはどうしようもない特性なのだ。

 

 だからこそ、流れに抵抗するのではなく流れを利用することで、魔術師は大いなる力を得る。

 

 フィフス・エリクシルが持つ起源は「続行」。

 

 彼は一度進むと決めたのなら、どのような形になろうと決して止まらない。止められないし止めようとも思わないだろう。そして、彼自身それを受け入れた。

 

 もとより魔術師(メイガス)とは根源を目指すもの。その真理を追究する求道者を指す。

 

 金も名誉も得られなくても、それでも何かを突き詰める者。

 

 ゆえに、彼にとってこの起源は栄光以外の何物でもない。

 

 ・・・ルーマニアにてギャスパー・ウラディの停止がきかなかったことから、彼は自身の起源が強敵に有効であることに気が付いた。

 

 もとより強大な力を得るために限定的な覚醒を果たしていたが、これを利用しない手はない。

 

 フィフスの血と令呪の命令を受けたアサシンは、もはや止まらない。そして停止されない。

 

 グレモリー眷属でも脅威度の高いバロールの停止は、もはや通用しないのだ。

 

「この時点でトリプルシックスに侵入できていない時点で、俺たちが最終的に削りきれるのは確実だが・・・」

 

 だから、フィフスは勝利を確信―

 

「そういうわけにもいかないんだろうな、これが」

 

 ―しなかった。

 

 フィフス・エリクシルはアサシンによる情報収集を決して怠らない。情報戦で勝利したものは、最終的な戦闘でも有利であることを知っているからだ。

 

 だから、あの男が強化されて復活したことに気づいていた。

 

「・・・ああ、そう簡単にはいかないな、テロリストメイガス」

 

 偽聖剣を身にまとった宮白兵夜が、そこにいた。

 

 全身には返り血が飛び散っており、制御を担当していた者たちは壊滅していることが分かった。

 

 自身にリンクしているため、自動制御は十分できる。そしてそれにも気づいているだろう。

 

「・・・最終決戦のスタートだ、これが」

 

「ああ、ケリをつけよう、発狂アインツベルン」

 

 暗黒鬼と偽聖剣が同時にオーラを発動し、そしてぶつかり合う。

 

 ・・・最後の戦いの幕が、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

Side Out

 




以前、フィフスがギャスパーの停止を難なく突破したことがあるはずです。

その理由が起源。さて、皆さんの中でどれだけの人物が正解を引き合てたのか・・・?

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